決してマネしないでください。(3) [ 蛇蔵 ]

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理系クンの恋を応援しながら、アブない実験を行い、かつ偉人たちの業績(+悪行)を紹介する怒濤の学習コミック3巻目。

この巻の中心はロボットコンテスト(通称ロボコン)。
物理学部の掛田クンは、意中の人、生協食堂の飯島さんとロボコンを見に行きたいのですが、「デート」と構えすぎてうまく誘えません。頑張りつつも方向が間違っている掛田クン。
コンテストに登場するのは、トランプを手裏剣のように投げてニンジンに突き刺すロボット、紙から紙飛行機を折って連射する装置、ルービックキューブ完成機、テンキーで数値を入力すると、そろばんで計算してくれるロボット、と役に立つやら何やらよくわからない世界。
このあたりは実際に作製された装置がモデルになっていて、笑いつつもその情熱と着眼点に感心させられます。

偉人ネタでは、フェルマーの定理に関わる話や、意外に肉食系だったキュリー夫人の話もなかなかおもしろかったですが、電話発明者のグラハム・ベルが意外な2人を繋いだ話が興味深かったです。
ベルの父は発音学者、母は難聴のピアニスト、妻は耳が不自由という家族構成で、ベルは音声学と聾唖教育の第一人者でもありました。そこに舞い込んだのが「目と耳が不自由な娘に教育を受けさせたい」という依頼。依頼者はヘレン・ケラーの母。ベルが家庭教師として紹介したのが、他ならぬアン・サリバンだったのだそうです。
ベルという人は人柄も温厚で新しいものへの情熱も深かったそうで、機会があれば少し詳しい評伝を読んでみようかなと思います。

主要登場人物である工学部の有栖君と留学生のテレス君。2人併せると「アリストテレス(有栖とテレス)」だというのにようやくこの巻で気が付きましたw
・・・いや、それより「ニュートリノ」の語源が、「neutro-」(中性)+「ino」(小さい)だというのに「おお!」と感動しました。何となくニュー・トリノなのかと思っていたので(新しいトリノって何だ(^^;))。や、勉強になりました。

さて冒頭のひとことは、掛田クンが飯島さんに精一杯の告白をした際のセリフ。それに対する飯島さんの答えは!? ここまでの実験と学習が十分に生きたものでしたよ。
決して泣くところではないと思いますが、私、うるっとしてしまいました。
そう、違いはあっても互いへの関心があれば、乗り越えられる。
エンタメに仕上げつつも、「知らない世界」へのキラキラした瞳で、科学の世界へと読者を誘ってくれる本シリーズ。「愛」は興味と関心を持つところから始まるのです。読後感のよさはそんなところから来ているように思います。


<決してマネしないでください>
1巻
2巻

*笑いながらいろいろと勉強になった本シリーズ、何とこの巻で完結なのだとか。
確かに掛田クンには春が来そうな気配ですが・・・。
えー、もったいないなぁ・・・。発行部数や知名度は「日本人の知らない日本語」シリーズには及ばないとは思いますが、負けず劣らずおもしろいのに・・・。
と思ったら、アンケートはがきが入っていて、「続編が発売されたら購入しますか?」の質問が。もちろん、もちろん。花丸付けて返送します♪

*作中に掛田クンが飯島さんへの恋心を分析した論文が登場しますが、そういえば、リアルでも論文でプロポーズというのが昨年ニュースになりました。「謝辞」に、協力を感謝したうえで、"Will you marry me ?"( Brown, C.M., and Henderson, D.M. 2015. Current Biology, 25: 1641–1648)。お相手の答えはYesだったそうです。よかったですねw