吉本ばななさんはデビュー当時からずっと読み続けている作家です。
「キッチン」で鮮烈なデビューをした時には、
「ずいぶん話題だけど、『ばなな』なんて名前の人の本は読めない」なんて今となっては意味不明なことを思っていたのですが、素敵な装丁に心惹かれて読んでみたらとても面白かったので、すぐ「ごめんなさい、わたしが悪うございました!」となったのでした。

今は「ばなな」って覚えやすくて親しみやすくてとてもいい名前だと思います。「いちご」とか「さくらんぼ」とか変にかわいすぎないところもいい。そして果実ではなく「ばななの花がきれいだったから」というペンネームの由来もなんかいいですよね。

昔わたしはひとつおもしろい作品にめぐりあうと、夢中になってその作家のものをすべて読むことが多かったのですが、(自分も作家も)歳を取るにつれて飽きてしまったり、作風の変化が好ましくなかったりで、今では読まなくなってしまった方がたくさんいます。
でもばななさんはずーっと読み続けていられる作家さんなんですよね。

特に弱っている時、悩みごとがあってとても小説を読む気分になれない時、ばななさんの本だけは読める、ということがよくありました。
心の深いところに寄り添ってくれ、傷をそっと温かく包み込んでくれる。
世の中をうまく渡っていく方法ではなく、不器用でも自分らしく、でもそのままよりも少し内側の光をしっかり受け止めた自分で生きていくヒントをくれる。
そして深く考えたくないときにはことばの美しさと物語のおもしろさだけを味わえる。
そんなところがどんな時でも読み続けられる理由かなと思います。

それから、若い頃は良かったけど、文章はうまくなっても中年の女の人特有の苦味が出てきちゃったな、と思う作家さんもいるのですが(←わたしの苦手なテイスト)ばななさんにはそういうところがないのもいいです!

上差しわたしの持っているばなな本。単行本の巻。いつも装丁もすばらしいですね。

上差し文庫の巻。

図書館から借りて読んだものも多いので、ここになくてもほぼ全部読んでます!一度読んだけどやっぱり手元に置いておきたいから、と後から買ったものもあるし(文庫にはそういうものが多い)、これから買おうと思っているものもあります。(今とってもTSUGUMIが読みたい)

本当は、刊行当時の「キッチン」と「哀しい予感」と「TSUGUMI」があったはずなのに、姉よ、どこにやったんだ〜い?

本本本

お気に入りを少しだけご紹介。

吹上奇譚

今いちばんお気に入りの物語。架空の不思議な街のわくわく感と、そこに暮らす人のいろいろな心の美しさ。読んでいる間は自分もその世界で生きられるし、読んでいない間も登場人物たちが、わたしの世界のどこかにいることを感じられる作品です。
装丁も美しいし、連作なので、読み続けられる楽しみもあります。まだ二作めだから追いつけますよ。ぜひどうぞ!

スウィート・ヒアアフター

図書館で借りて読んでしまって、「失敗した!」と後悔した作品です。とっても好きだったので、最初から買えば良かったぐすん
ということで、文庫で買いました。
ああ、なんだかとても大切なことが書いてある、なんだかとても心に迫る、と心をつかまれた作品でした。読むと身体の中を綺麗な光が流れる感じがするのです。

Q 健康って?

健康って病気じゃなくて、怪我もしてなくて、いつも明るく元気なこと、だけではないのです。
病気じゃなくてもいつもあちこち調子が悪くて常にへとへとだったわたしに本当の健康をみせてくれた本です。
最後の章にばななさんのお友だちのるなさんによる壮絶な闘病記が載っているのですが、こんな風に病気の中で生きていくことができるんだ、と光を向いて立つ力をいただきました。

「違うこと」をしないこと

もうタイトルだけで!
わたしはこの本を読んでから、もしかしたらタイトルを見た時から、「違うことをしないこと」を猛烈に意識して行動するようになりました。
とってもとっても大切なことだと思うので、何度も読み返して落とし込んでいきたいです!
プリミ恥部さんとの対談が、難しいですがかなり興味深いです。

そのほかにもたくさんお気に入りはあるのですが、キリがないのでこの辺で〜。


バナナバナナバナナ


わたしはよくばななさんのブログにコメントを残しているのですが、昨日のブログの中で、とてもとても優しい励ましの言葉をいただきました。
ものすごくお忙しいのに、一読者のことをこんな風に気にかけてくださるなんて感激ですお願い

小説からもエッセイからもブログからも、たくさんいただいた大切なものを、ただ通過させるだけではなくしっかり自分の力にして恩返ししたいな、と思います。

好きな作家が同時代に生きていて新作を読むことができ、こんな風に交流までできるなんてしあわせなことですねキラキラ