医療コラム 医師の働き方改革 現場の肌感覚で書いてみようと思う 後編 | 外科系集中治療医による新NISAの記録

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3連休の3日目。

そして本日も休日コラム。「医師の働き方改革」の続きから。

 

超過勤務に対してそれに見合った報酬を支払うのではなく、超過勤務しないように勤務時間を制限することで働き方を見直そうとする、現行の「医師の働き方改革」。

 

その根本的となる理由の一つが「保険診療」。

私たち医師の大部分が「保険医として政府に雇われている」といった話を前回した。

 

保険診療とは何か?

非常に簡単に書けば、私たち国民が保険料を定期的に払う代わりに、病気になったときには医療費の大部分を保健機関が支払ってくれるというものである。

保険医とは、その保険診療を行う医師のことである。

医療機関で保険医が患者の診療を行い、患者の代わりに保険機関が医療費をその医療機関に支払うことで経営が成り立っている。

 

ちなみに、保険機関から医療機関へ支払われるお金を「酬診療報」と言う。

それぞれの病気の治療・検査などにいくら支払うかは2年毎に改訂されており、今年2024年はその年にあたる。

 

 

難しいことが色々書いてあるが、文章から伝わってくると思う。

膨らみ続ける医療費は政府の財政を圧迫しており、このお金の問題をなんとかしなくてはいけない...と。

お分かりだろうか。この医療コラムで度々書いてきたが、「医療は金にならない」のである。

 

診療報酬を支払う政府・保険機関もしんどいだろうが、現場も厳しい。

病院側に支払われる診療報酬から諸々も経費などを引いて、残ったお金が医療従事者の収入となるわけだが、多くの病院が赤字を抱えている

 

 

そもそも「医師の働き方改革」が問題になる遥か前から病院の経営赤字は問題となっていた

診療報酬だけではやっていけない。だから、政府の補助金を頼ったり、人間ドックなどの「自由診療」を併設することで、なんとか経営のやりくりをしている訳である。

 

こんな状態だから、超過勤務にたいして報酬なんて支払えるわけがない

基本給を上げること自体も困難だ。

だから、「医師の働き方改革」は就業時間ベースで考えなければいけなかったのだろう。

 

しかし、実際に「働き方改革」が進むとどうなるのだろうか。シワ寄せは患者にもくる

医師の就業時間が減ったところで患者の数は変わらない

「働き方改革」以前の今でさえ、「診療時間外だから」とか「専門外だから」といった理由で断られる患者は多い。

緊急の治療が必要であっても、それが可能な施設が引き受けてくれないといったケースだってざらにある

ますますこういった問題が増えてくるのではないか?そう感じてしまうのは私だけではないだろう。

 

 

近年は医療技術も進み、カルテの電子化・作業の効率化なども進んでいる。

医師も分業化がすすみ、それぞれの医師がそれぞれの分野で専門性を高める重要性が増してきている。

心臓であったり、神経であったり、あるいは小児であったりなど、国の政策として「専門医」の育成が進んでいる。

そういったマテリアルを上手に使うことができれば、もしかしたら現行の「働き方改革」も可能なのかもしれない。

 

ただ一つだけ、「お金」の問題に関しては何ともできない。すくなくとも現行の方法では。

「保険診療」という枠が決まっている以上、病院も医師も得られる稼ぎには限界がある。

つまり、専門性を高めたとて、それが諸外国のように必ずしも高収入にはつながらないということだ

 

もし、このブログを読んでいる医療従事者の方、あるいは将来医療従事者として働きたいと考えている人は、是非覚えておいてほしい。

専門性を高めるのもよいが、様々なことに手を伸ばしてみることも忘れてはいけない

自身の可能性を高める方法は専門家になることだけではない。

Generalに色々なことができることでもあるのだということを。

何でも良い。医療以外のことでもよいかもしれない

 

だからまずは、「専門外なので診れません」というのはやめにしませんか

自分自身の可能性のために。私自身も気を付けますので...。