炭焼きのアングラー(短編小説)③ | あかみちのブログ

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「今年は森も村も豊かになったなー」英兄ーが聞いたような口を利く

 

「マイタケの大株見つけてさーぁ一ぺんにゃあ籠に入らんけよ」

 

「中尾沢のマソウはオスめすつるんで卵を渕尻で生んでいた、メスは腹が出てオスの方は背中が張ってそりゃあ立派な体つきだったよ」

 

「そうかそうか、そんなの竿に掛かったらたまらんのになーぁ」

 

「俺はもう歳だで竿がブレて竿を伸ばした所で気付かれて逃げられチまわあ」

もうちっと若けりゃあ釣りあげたかもしれんが」

 

「無理な事言ってもしょうがないマイタケは逃げはしないよ」

 

「そういえば錠坊が初めてマソウを釣ったそうだ、どんどん釣れるようになればなー」

 

吉坊も熱心にやってきたが、まだ一匹も釣ってねえって本人から聞いただ」

「まぁいずれおいらを追い越す時が来るさ」

 

「おおっ噂をすればあれは吉坊」

 

市場のはずれから吉少年がトボトボ歩いて来た少年は一人で居ても寂しさにおしつぶされそうになっていたため体を小さくして村人たちの中に入ってきた

幼馴染の錠君と何かにつけて比較されるのが怖かったのである

 

堂々としていない子供らしい元気が無い様子に皆とっつきにくそうになるのは必然なのか声をかけたくても掛けられずにいた

 

「よし君おはよう、珍しく出現したね」照れ

 

重い空気をはじくようなキリっとしたおおきな声さっきから市場の上空を旋回している鷹の鳴き声にも似たその挨拶をくれた主は愛子だった

 

細い眉と輝きを帯びた大きくて切れ長の瞳背中の真ん中まで伸びた黒い光沢をもったストレートの髪は白肌で瘦せた体格とあいまって誰もが見て美しいと評価せずにはいられない娘であった女の子

 

「あっ  おッ  おはよう ど どうも」あせるあせる

 

少年は額に冷や汗をかきながら視線が愛子の顔を捉えないうちに又うつむいてしまった、自分の顔面が熱かった、思い切り赤面していたのかもしれなかった

 

「そうやって姿みせてくれればさぁー死んでなかったって安心するんだよぉーこっちだって」

愛子はそう言って腰に手を当てて「あははは」と笑った照れ

 

顔を赤くしている間自分が愛子に対してどれだけの妄想を募らせていたかを「ごめんなさいごめんなさい」と心の中で反省し謝っている

 

妄想の中身はと言うと中身は見事恋仲になって愛子の髪などに気軽に手を触れて又彼女も筋肉の付いた二の腕をつついたりしてくれてたりして何の抵抗感も無くお互いが夕闇の中で許される限り良いムードに慕っているというようなものだった。ラブ

 

妄想を誤り終えて視線を上げると愛子の姿は其処には無かった

 

全く無縁なんだよなあ、違う世界の人物だよなぁ、それにしても俺はどうしてこんなにかたまってしまうんだ 「はあー、気が遠くなる」泣

 

好意を寄せていた娘が遠い存在だという事は何と空しい事か

気力にさえあがなえない己が悲しくもあったハートブレイク

 

次の日の朝、少年は昨日の出来事を振り払うかのように炭焼き小屋から2キロ程遡登った上流にマソウを狙うため大きな落ち込みの有る渕尻の岩陰に身体を沈めていた

 

④に続きます

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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