① 中尾渓谷を鋭利に穿ってその最深部を浸み伝うように流れる中尾川は太古から細々と生き延びる中尾部落の人々に潤いを与えていた。
又 一木一草鳥獣虫魚 谷から溢れんばかりに生み出して共存という形で命を平等に交換させていた、
強い焼けつくような夏の日差しは地上や人間に届く前の間に有る場所を焦がし草木の傘にその暑さを遮られ照らしそこなったりしていたが徐々にその勢いを弱め焦がしした場所をポカポカと温かく
照らせなかった場所をひんやりと変化させていた天は谷に季節の移ろいを知らせていたのだった
命の交換をするという事つまり糧を得るという行為に生き物たちはこの頃躍起になり始めた
秋の訪れである
こうした自然の流れに考え込むというある意味独特の趣を見せる種がいる、人間である
吉少年もそんな人間の一員として炭焼きの煙
に巻かれながら女衆が洗濯に利用する中津川の畔の水場で、少し傾きかけた腰掛に使えるような大石に自身の姿勢もやや斜めになった状態で膝を使って頬杖を突いて座り込み冷たそうな川面を一点に見つめるある思い
にふけっていた
「そうか錠君が先に釣ったか 何で どうして俺は くそっ」 くやしがっていた
ここで小石だか木片だかを目の前の水面に叩きつけたいところであつたが、そういう行動をとったら誰かに明ら様に拗ねているのを見つけられる気がして 代わりに吉少年は
奥歯をぎりっとかみしめた。
②に続きます
今回も最後までお読みいただきありがとうございました