何年か振りに本を売った。
24冊で確か640円ぐらいだったか。
その24冊はどれほど自分の心に影響したのかと、選別しているときにふと頭をよぎったのだけど、蓄積はきっとそれを読んでからの数日で、あとは氷のように溶けて、水が蒸発するように消えていったんじゃないかと思う。
影響を与えてくれるものは常に今であり、蓄積の取捨選択というか、身体に浸み込んで血肉となるようなものは、ほんのわずかなのだろう。
そのわずかな血肉の蓄積こそが、今の自分を形成しているんじゃないかと思ったりする。
大人になってからは特に。
どのジャンルにも先人というものが在り、僕らはその知恵を知ってか知らずか受け継いでいる。
そんなこともほとんど知らないで、何が蓄積だろうと自分で思ったりもするのだけど。
今のように情報が何でも手に入るような時代じゃない時、指針となるものもなかった時、先もわからないまっくらな道を突き進んで切り開いてきた人たちがいる。
自分が受け継ぐ人であるならば、その偉大な先人たちから学び、その先をさらに進もうとするのが良いと思うのだ。
そしてその結果たちは、好ましいものも好ましくないものも、また誰かに蓄積され、いつしかその先へ。
歴史や伝統はそうやって創られていくのだと、この無知な人間も、28年の「自分」という人間の歴史の中で感じたりはするのだ。
「今」が最期で、この一瞬一瞬に「過去」が生まれていく。
この瞬間に生まれる「過去」すらも蓄積の材料なのだと、そう感じられることは表現者として幸せなことなのかもしれないと、そんなことを思うのだけど、どうだろうか。