衆議院憲法審査会の参考人質疑が6月4日開かれ、早稲田大学の長谷部恭男教授ら3 人の憲法学者が、集団的自衛権の限定的行使を容認した政府見解について「憲法違反 」との意見を表明し、各紙が報じた。そして、安倍内閣がその成立を目指している、安全保障関連法案の行く末に大きな影響を及ぼそうとしている。ある評論家が、これで潮目が変わったと発言する位である。

衆議院憲法審査会は、小渕内閣の時から準備が始まり、最初の委員が選任されたのが、2011年10月の野田内閣の時である。衆議院憲法調査会のHP http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/gaiyo.htmを見ると、憲法調査会は、日本国憲法改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する為に国会に設置されたと書かれている。このHPを信じれば、憲法調査会の設置の目的は、下線部にかかれたことであると解される。従ってこの調査会の権威は、この下線部の目的から判断される所にあり、それ以外にはない(注1)。

憲法調査会で招致された3名の参考人が、どのような経緯で安倍内閣の出した安全保障関連法案が違憲だという意見を述べたのか、新聞を読んでも、社民党のホームページhttp://www5.sdp.or.jp/comment/2015/06/05/戦争法案に対する衆議院憲法審査会参考人の「違/などを見ても書かれていない。憲法調査会は裁判所でなく、行政に於ける何かについて違憲判断をする資格はない(注2)ので、参考人達が野党議員か誰かの疑似餌的質問にひっかかったのだろう。

資格のないものが、何かを言って資格のある者の意見や行為を縛るのは、法治国家ではあってはならない。従って、国会において、あの意見を学者の意見としてとり上げるのはかまわないが、憲法審査会で出た意見という権威付けはおかしい。最近のこの件の議論の為され方は、私には訳がわからない。

注釈:
1)確認の為には、法律を調べる必要がある。もし与党が合憲というお墨付きを得ようとしたとしたら、見当違いも甚だしい。
2)資格があるのは、最高裁判所である。学者の意見としてとり上げることは非合法ではないが、学者の意見は学問領域以外: 国民の利益、国民の安全、国際環境の変化などとは一切無関係に出される。その点について、野党は全く判っていない。
<改訂版;6/13/17:00>
§1)新安保法制に関する議論が盛んである。3名の憲法学者による違憲解釈が出てから、新安保法制を違憲として政府を攻撃する野党の勢いが増している様に見える。野党の政治家であっても日本国の政治家であるならば(学者ではないのだから)、第一に考えるべきは、憲法よりも国民の安全である(補足1)。 

集団的自衛権行使を可能にする新安保法制は違憲であり許せないとする、民主党などの姿勢の根拠は、(A)国民の命よりも憲法に反しないのとが大切、或いは、(B)現在及び将来において、日本に対する大きな脅威はなく、集団的自衛権行使を可能にする必要がない、のどちらかだろう。 

(B)に類似した意見として、冷戦時代の危険が高かった時でさえ、集団的自衛権行使は自民党政府も違憲判断を持っていたのに、何故今憲法の壁を無視してまで可能にするのかという議論がある。それは、物騒な時代でも我が家には鍵が掛けてなかった。現在、あの時代よりは安全と思われるのに、何故玄関に鍵を付けるというのか、と言う議論と等価である。

つまり、過去の経緯や周辺事態とは独立して、本来の国家としてあるべき姿から考えて、政府案を議論すべきである。先ほどBS5チャンネル"激論”で(6/13/am)、枝野氏と磯崎総理補佐官が、田原氏の司会で議論していた。野党第一党の幹部でありながら、枝野氏の議論は、憲法解釈を重視する上記(A)の姿勢、又は、現在の脅威と冷戦時代の脅威を比較して、上記(B)の立場を主張するものであり、国家のあるべき姿という視点に立っていない。つまり、反対の為の反対にしか見えない。

§2)6/11午後8時からBSフジで放送されたニュース番組で、小池晃氏、岡本行夫氏、西部邁氏のゲスト3名が安保法制について議論していた。その中で西部邁氏が、大半の憲法学者は集団的自衛権だけではなく、自衛隊自体も憲法違反だという意見を持っていると発言していた。更に、前提として憲法9条や非核三原則などを置かずに、安全保障体制を第一歩から議論すべきであると発言していた。将に正論である。しかし、それも学者的意見である。 

自民党政府が正面から憲法改正を表に出せない理由は、国会の2/3(国民の過半数)が憲法改正に賛成しそうにないからである。そのような国論が出来上がったのは、米国が日本を本格的な武装した国家にしたくないという考えを持ち、戦後の日本を設計したことが原因であると思う。 

これまでの自民党による安全保障体制は、米国の日本を仮想敵国とする戦後の姿勢とそれにより日本国の背骨に埋め込まれた憲法9条という制約の下で、解釈改憲により築かれて来た。その代わりとして持ち込まれたのが、日米安全保障条約である。そろそろ、米国は日本を保護国から普通の同盟国にしようと考えているかもしれない。それが先日の安倍総理に上下両院議員の前での演説をセットした背景にあるのだろう。 

また、発展途上国であった中国が、あと数年くらいでGDP世界一の巨大国家となる。そして、共産党独裁に新しい中華思想(補足2)がカップルした世界一の軍事大国の隣に、我国が位置することになるのである。そのような時代背景があっての新安保体制構築を安倍内閣は考えているのだと理解する。

政府を構成する政治家は、国民の安全に対して責任を自覚し、上記のような変更が困難な憲法や複雑な国際環境(米国が日本を仮想敵国と看做していた;補足3)という制約下で、国家のあるべき姿を模索している様に見える。その責任と制約条件とを共有しないで新安保法制を批判するのは簡単である。しかしその態度は、国民の安全よりも自分の議席や地位を重視する卑怯な政治屋的態度である。 

§3)6月12日、日本記者クラブにおける会見で、元自民党幹部の四名が新安保法案に反対の意志を表明した。山崎拓、亀井静香、武村正義、藤井裕久、の各氏である。亀井氏は、「必ず戦死者が出る。戦争に負けて以来、ある意味最大の危機」と言った。また武村氏は、「集団的自衛権の行使は、国際紛争解決の為の武力行使だ。必要と考えるなら、憲法改正の道を歩むべきだ」と言ったという。(中日新聞/6/13日朝刊第一面) 

何を寝ぼけたことを言っているのか?
個別自衛権行使が国際紛争解決にあたら無いのか?(自衛の戦争は、国際紛争にふくまれないのか?)
憲法改正の道など何処にあるのか?あるなら、絶対多数をを維持していた時代の自民党が何故やらなかったのか?
そもそも、憲法9条第二項は言語学的には明確に自衛隊を違憲と記述しているのだ。(補足4)これまでの自民党による安全保障体制は、米国の日本を仮想敵国とする戦後の姿勢と、それにより日本国の背骨に埋め込まれた憲法9条という制約の下で、解釈改憲により築かれて来たのだ。この経緯を無視出来る立場には、この四氏は無い筈だ。  

第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

補足:

1)憲法学者が、学者としての意見を聞かれたのなら、集団的自衛権行使は違憲であると答えるのは当然である。何故なら、国民の安全なども含め命題に無い前提を全て無視して考察するのが学者の仕事だからだ。

2)アジアインフラ投資銀行(AIIB)と新シルクロード計画などは、中華思想そのものであると思う。

3)北朝鮮が核実験をした時に、米国のライス国務長官が急いで日本に来て、北朝鮮の核兵器から日本を守ると発言した。このことは明確に日本を仮想敵国と看做していたことを示している。つまり、北朝鮮により日本が核攻撃される可能性が高くなっても、日本に絶対核武装させないという米国の姿勢を示している。また、田中角栄総理の時代に日本が米国と対中国関係の改善を競った時、田中元総理の早業の国交回復を「あのジャップめ!」と、当時の国務長官だったキッシンジャー氏が悔しがった。米国の日本を見る目は、それらの事実に明確に現れている。

4)彼らに問いたい。お孫さん達に、戦車に乗り、戦闘機を操縦し、軍艦に配備された自衛官の写真を見せて、自衛隊は軍隊ではないと自信を持って、説得できますか?

黒田日銀総裁が今日6/10の国会答弁で、「さらに円安に振れることは、普通に考えればありそうにない」などと発言したことを受け、東京市場でドル/円レートが124円台半ばから122円台まで急落した。あまりに大きい効果に驚いたのか、経済産業大臣が黒田発言について“「趣旨が曲解された」などと述べたことが伝わり、今度は黒田発言の1/3ほどの効果だが、急上昇に転じた。

この種の為替への介入ととられかねない予定外の発言は、市場に混乱を持ち込む。今回の黒田総裁の発言そのものは、「”実質実効円レート”からみてこれ以上の円安はない」と言ったそうで、その通りであると専門家は言う(注1)。しかし、市場は発言者の地位から考えて、何か意図があっての発言と受け取る。日を改めてもドル/円相場に大きな変化がないことは、日銀は今後金融緩和をしないと市場に受け取られたことになる。

この発言によるナーバスな為替の変化は、日銀による(そして世界的な)異常と言える程の通貨量増加策が原因であると思う。つまり、正常に投資などに向かわないお金が金融機関などにあふれていることが、このような不安定な為替の動きの原因だろう。
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上は日銀及び米国連銀が銀行などへ送りだしたお金(マネタリーベース)の総量の変化である。日銀はこの図の端で約270兆円、米国連銀は4.5兆ドルであり、経済規模から考えて、日銀の方が大きい位である。かなりの部分が日銀当座預金に0.1%の金利(付利という)を貰って眠っているとしても、世の中お金であふれていることには違いない。

夢遊病の様な状態の大量のお金が、株式や為替の市場に流れ込んでいれば、株価はバブル的になる。そして、今回の日銀総裁の一言の様に何か金融に影響しそうなことがあると、それら相場に大きな影響を与える。今回の混乱はそれ程大きくはないが、今後更に大きな問題が生じる可能性がある。それは、連銀の利上げとそれに伴って起こるかもしれない混乱である。これは、テイパータントラムtaper tantrum((米ドル量の)先細り癇癪)と呼ばれ、新しい経済用語となっているようだ。

テイパータントラムの可能性が示唆される様になった切っ掛けは、たぶん2013年5月下旬に当時ニューヨーク連銀の議場だったバーナンキ氏が量的緩和を終了すると発表した後の出来事だろう。その発表直後に新興国のドルが流出し、それと呼応する様に各国の金利が上昇した。日本の株価は1日で1000円以上下落し、その後3000円ほど下げて底値になった。このことで、今の世界の金融は非常に恐ろしい情況にあることが判った。昨日の件も、同様の教訓を与えたと言えるのだろう。


兎に角、近い未来に何か大きな混乱があるかもしれない。遠くで眺めるだけで済む様に祈っている。(素人のメモですので、批判歓迎します。)

注釈:1)黒田総裁の発言の中の”実質実効円レートが低い”とは、外国から日本に来た人は平均して安く買物が出来るということだろう。