表題のびっくりする内容の話を、評論家の山口敬之氏がyoutube松田チャンネルでしている。前回記事で言及した米国による610憶ドルのウクライナへの軍資金支援は、ウクライナへの貸付金であり、その債務保証を日本が行うという話である。

 

そんな話何時決まったのかと不思議に思うのだが、それが訪米した岸田首相とバイデンとの密約であったというのである。ビックリし、そして次第に腹が立ってくる話である。兎に角、すべての国民は以下の動画を視聴すべきである。信じる必要はないが、何れ思い当たる時もくるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=unYJhQeWyA8  

 

 

トランプ前大統領と共和党議員たちが反対して殆ど廃案となっていた筈の米国による巨額のウクライナ支援が、何故か急に共和党多数の下院で通過したことが不思議だった。

 

前回ブログで書いた、ジョンソン下院議長のフロリダトランプ邸での話合いは、岸田―バイデン密約の説明だったというのである。この話は、 TBSワシントン支局長時代の知人で共和党の幹部クラスの女性の人からの問い合わせを受け、その後両方で調査をした上での結論だという。

 

実はこの話、シェリルさんのブログ記事で初めて知った。文字おこしもされており、頭に刻み込むにはこちらの記事も利用価値が高い。https://ameblo.jp/sherryl-824/

=== 

もしトランプが次期米国大統領になったら、米国はどうなるか、日本は、そして世界はどうなるかという分析は、恐らく方々で行なわれているだろう。

 

トランプは、時代の周り角にあって市民一般の広範な支持を背景に政治の方向を大きく変える可能性のある政治家である。これまでの米国の政治の根幹的部分に変化を加える可能性があり、当然ながらこれまでのエリート層からは様々な妨害を受けて来た。

 

ポピュリズム政治の危険性と革新的政治に対する期待を伴って、このような政治家が現れたということは、これまでの政治が市民一般の要求を長い間無視してきた証拠である。所謂Deep Stateが本当の支配者だったのか、マスコミとそこに出る評論家などが全く無能か欺瞞的だったかのどちらかか或いは両方である。

 

このトランプの理解(モデル)として標準的なのは、米国金融資本家などグローバリストたちの利益優先ではなく、各国に出来るだけ干渉しないで米国民の利益を第一に考える政治家(モデル①)である。(補足1)ただその姿勢の背景に、グローバリストに対抗して主権国家体制を維持すべきであるという国際政治にける思想が存在するのかどうかは、明確ではない。

 

つまり、地球規模で発達した経済システムと密接な国際政治の時代、つまり狭くなった地球上での社会変革について、所謂グローバリストたちの方向に対して、対立軸を提供出来るのかどうかは不明だと思う。(補足2)従ってトランプのモデルのその部分は様々だろう(②)。

 

1)グローバリズムVS反グローバリズムの対立とトランプ

 

冷戦終結後の米国の戦争に対する公式説明は、法と正義及び民主主義の下で自由主義経済圏を拡大し、リーダーである米国を中心にしたグローバルな政治・経済体制を維持発展させるための戦いというものだった。ただ、2017年からのトランプ政権下、米国は一度も戦争することが無かった。

 

そしてこの4年間に、米国民そして世界中の人々と米国グローバル資本家たちとの間の対立関係が大きくなったと思う。米国と同盟国の自由と民主主義の体制を守るためというこれ迄の戦争の論理には、細部に多くの疑問点が残されていても、相応の説得力があったかもしれない。しかし、この4年間だけ何故その体制に対する脅威が無かったのかという疑問には、答えようが無い。

 

遠い土地での戦争で亡くなった若い米国民の死を、自由と民主主義を守る為に命を捧げたとして説明する話は、これまでの米国の支配層による嘘ではなかったのか? 彼らは、世界の政治と経済を米国のグローバルな覇権で統一し、その中で彼らの資本を巨大化し、その利益を得るために我々(若い兵士を出した米国の家庭)を利用してきたのではないのか?(補足3)

 

そのグローバルな政治・経済の恩恵を、多くの米国と同盟関係にある国々や中国などその周辺国は受けたとした場合、彼らは相応の負担をして来たのか? 現在においても、その義務を果たしているのか? トランプ周辺から周囲に向けて、このような疑問が発信されたのではないだろうか。これが序論のトランプモデル①の主張である。

 

20世紀後半から、そのグローバル経済に矛盾が発生し始めた。その一つは金融資本の巨大化と人々の間に発生した貧富の差の拡大、そして伝統的な人々の生活様式つまり文化の破壊が進んだことだろう。ここでそのようなことが発生する理由について少し考えてみる。

 

自由主義経済とは、各資本が人間社会を競技場にして勝敗を競うゲームのようなものだろう。様々な技が発明され、資本は活動の自由度拡大の本能のままに、いつの間にかその競技場そのものまで拡大し変質させるのである。(補足4)競技と競技場がペアとなって変化することはどのスポーツの歴史にもある事だろう。

 

人間の為に奉仕する筈だった資本が自由主義経済のフィールドで、いつの間にか人間社会を支配下に置く暴君のような資本に巨大化し変質する。伝統的な社会の様々な要素を、それらの自由主義の障害であるとして排除するように要求する。その競技での負けは、その資本周辺の人間の生活を破壊することになるから、それらは本当は要求ではなく命令的である。

 

その様にして、社会の家族をはじめとする人間関係、そしてそれらで創られた地域共同体は既に破壊されている。(補足)現在、それら巨大資本は西欧の近代政治文化が作り上げた主権国家体制まで破壊しようとしている。それは自然の成り行きなのかもしれないが、ある時点からは意図的にその方向に政治活動が始まった。

 

そのグローバル経済の主役である国際金融資本家たちが、結託して行っている世界の政治運動をグローバリズム、それを支持して活動する勢力をグローバリストと呼ぶようになった。現在グローバリズムのプロパガンダの中心は、クラウス・シュワブが主催する世界経済フォーラム(WEF)であり、シュワブが主唱する世界の大変革の開始が、グレートリセットである。

 

グローバリストにエネルギーを供与するのは、巨大資本を動かす金融資本家達である。主権国家体制と国際法などを遵守すべきだという反グローバリズムの主張をする者たちは、当然ながらその他多数だが、そのリーダーと見做されている人たちは国際金融資本の力により撲滅されつつある。彼らは時として民族主義者と呼ばれるが、それは不適切な呼称であり、単に保守主義者と呼ぶべきだろう。

 

最近反グローバリスト活動をしている及川幸久氏が、グローバリズムと世界経済フォーラムの関係について解説しているので、その動画を引用させてもらう。

 

 

 

冷戦終結以降、米国グローバル資本家(殆どがグローバリスト)たちの利益と米国民一般の利益とが、互いに対立するのではないかという疑問が広がった。更に、上述のトランプとトランプ政権の4年間は、反グローバリズムの反撃とでも言うべき政治であり、そのグローバリズムVS反グローバリズムの戦い(第三次世界大戦と言う人も居る)が始まったのだという考え方が、米国だけでなく世界に広く伝搬した。

 

栄光の米国を取り戻すと言う風にトランプは言っているが、それは上のような思想をその背後にしている訳ではないかもしれない。つまり、トランプを主権国家体制を衛る人物と考える人たちがおおいが、それは買いかぶりかもしれない。これが序論の②で示したトランプに対する各人各様の理解である。

 

 

2)対ウクライナ政策におけるトランプの妥協とハマス・イスラエル戦争

 

トランプは嘗て、「自分が大統領になったなら24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」とか、「ウクライナ支援に金を一銭も出さない」と言っていた。

 

しかし、その姿勢にも大きな変化が出て来た。例えば、419日のガーディアン紙の記事には、最近トランプはウクライナの存続は米国にとって重要だと言い始めたと書かれている。その記事掲載の数日後、米国下院でウクライナ支援を含む予算案が通った。https://www.theguardian.com/world/2024/apr/19/ukraine-war-briefing-donald-trump-says-survival-of-ukraine-important-to-the-us

 

提出された法案には、ウクライナ支援の610億ドル、イスラエル支援の260億ドル、台湾支援の80億ドルが組み込まれ、合計950億ドルのパッケージとなっており、現在既に成立している。トランプのウクライナを守るべきという最近の変節発言で、共和党の多くもグローバリストたちに迎合するようにウクライナ支援法案に賛成した。(補足6)

 

この変節の理由はどこにあるのだろうか? ハマス・イスラエル戦争と関係あるのだろうか? 私は素人ながら、米国のネオコン・グローバリストたちは、トランプの固いユダヤとイスラエルを支持する姿勢をトランプ崩しの取っ掛かりとして利用したのだと思う。

 

つまり、ハマス・イスラエル戦争が始まった後(或いは始めた後)、トランプは「あなたのイスラエルとユダヤを支持する気持ちは、本物ですか」と問われることになった。つまり、イスラエルとウクライナを支援する人たちに、ロシアがイスラエルの潜在的敵国(補足7)であるのに、ロシアと戦っているウクライナを支援しないトランプの姿勢は何か変だと指摘されたのだろう。

 

その“問い質し”が、今年411日の記事に書いた3月下旬のイスラエルのネタニヤフ首相に近い新聞ハヨムによるトランプへのインタビュー(動画を引用)だったのだろう。その記事の中で、まるでイスラエルによるトランプの面接試験のようだと書いた。そのインタビューに臨んだ人たちは、イスラエル政府や米国のユダヤロビー(補足8)とも関係が深いと思う。

 

この他、トランプが共和党からの大統領候補に決まってから、ユダヤロビーやイスラエル政権の周辺人物達とトランプの間で、密な接触があったと思われる。日経新聞によると、上記法案の審議に際して、下院議長ジョンソンは方々からレクチャーを受け、4月にそれを持ってフロリダのトランプ邸を何度か訪問したという。

 

その結果、トランプはグローバリスト勢力との闘いを断念か、或いは彼らと妥協した可能性が高い。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN234YV0T20C24A4000000/

 

その情況下では、トランプと雖も先ずは生き残り、大統領選挙に勝利する必要がある。それが最近のトランプとその周辺の柔軟?な対応に関係しているのだろう。トランプはイスラエルを強く支持して来た。イスラエル支持は、グローバリスト達の心の最底部にある重要ファクターであり、それはバイデンよりも明確であると思う。

 

もし、トランプが次の4年間の任期中に妥協してくれるなら、彼らにとってバイデンよりも好ましい大統領かもしれない。民主党からの大統領候補のバイデンは、焦っているかもしれない。イスラエルへの弾薬輸送を止めたのは、その結果かもしれない。

 

このようにトランプを落とし込む米国グローバリストたちの戦略が成功したのだろう。ただ、大統領選挙でトランプを応援する筈だった一部の人たちは、反トランプになる可能性がある。米国は混沌としている。ロバートケネディJr.に今後スポットライトが当たることになるかもしれない。そうなれば、彼の命が危くなるような気がする。

 

 

終わりに

 

日本からトランプを支持している人たちの多くは、彼の言葉の背後にプーチンなどと同じ民族主義者トランプを見ていた筈である。そして、ウクライナ戦争に関しては、ゼレンスキーが戦争を継続できなくなって、戦争に不利な情況下でも和平に動くことをトランプは想定していただろう。

 

この姿勢は、ロシアを潰してしまいたい米国ネオコングローバリストたちの考えとは本質的に相容れない。ただ、トランプは現実主義的な政治家であり、民族主義者としてグローバリストたちと理念で対立し潰されては元も子もないので、姿勢を修正したのだろう。

 

ハマス・イスラム戦争が始まった以上、イスラエルの支援を明確にしなければ次期大統領の椅子には座れない。トランプは、イスラエル支援のためにはウクライナ支援も同時並行的に必要ならと、これまでの言動との矛盾を最小限に抑えつつウクライナ支援の方向に舵を切ったのだろう。

 

これまでトランプを支援してきた人は、最近トランプ支持者が書いた次期トランプ政権(仮)のウクライナ政策などに関する記述や、その要旨のツイート(補足9)などを見てがっかりするかもしれない。これらは次期トランプ政権(仮)の実現を睨んでの妥協が反映されていると思う。兎に角、大統領にならなければトランプは何も出来ないのだから。

 

大統領選挙が近づくにつれて、米国のあらゆる面で混乱が発生している。大学生によるパレスチナ支援のデモなども、大学生以外が大勢参加しているようだ。場合によっては軍事攻撃を伴う内戦に突入する危険性すら存在する。

 

米国では、今後34ヶ月、内戦と暗殺事件が勃発する可能性がある。米国には是非この国難を乗り切ってほしい。米国の国難は、日本にもその余波が及び、たいへんな事態になる可能性がある。トランプ大統領候補とその周辺の変化も、崩壊に向けた遷移状態にある米国を反映していると思う。

 

 

補足:

 

1)このようなトランプのモデルで国際情勢を分析している日本人youtuberとして、馬淵睦夫氏、渡辺惣樹氏、及川幸久氏などを私は思い出す。勘違いだと思われる方がおられましたら、コメントにて御指摘ください。

 

2)トランプは過去の第一期の政権において、北朝鮮の金正恩、中国の習近平、そしてロシアのプーチンの3人とも高く評価していた様に思う。ただ、世界のリーダーである米国の大統領として、彼らに市民一般にも解るような明確なメッセージを送ったという話は聞かない。彼らが米国と同盟国にとって味方なのか敵なのか、その根拠とともに明確にしなければ、世界のリーダーとしての米国の大統領に相応しいとは言えないだろう。ポピュリスト的政治家が成功するには、エリート層の冠である従来型に比較して極めて優れた能力と、実行力を示さなければならない。トランプ嫌いの多くの人は、その点が不安だから嫌うのだろう。

 

3)グローバリストの世界覇権の獲得の背景(目的)にシオニズムを考える人も多いだろう。シオニズムは、聖書にあるイスラエル王国の再建の話を、神に代わって人間つまりユダヤ人が行うべきだという思想である。聖書にあるのは大イスラエルだが、人間が行うのならそれが世界全体となるのなら、それは彼らにとってベストだろう。

 

4)不換紙幣でもドル基軸通貨体制を護る工夫、資本の移動の自由などWTO体制の構築、IMFなどによる国際金融システムの維持など。

 

5)日本では、巨大資本が集まる都会の周辺にニュータウンと呼ばれる地域が数多く造成され、全国から集まった人々はただ棲息の為の街を造った。子供は大学教育の後に、親元を離れて遠くの企業に就職し、長子相続などの伝統や家族共住の慣習も無くなり、昔の地域共同体は形は現在存在しない。形だけの祭りをその地域で継続する街の姿は、空蝉のように見えなくもない。

 

6)トランプの”変節”については、日経新聞も書いている。それによれば、この法案では支援金を単なる贈与ではなく、貸与と言う形にして、免除する場合は議会の議決を経るという形でトランプの意見を取り入れているようだ。トランプの姿勢の急変の背景に、大統領選へ向けた票固めと見るのは、ある意味当然だろう。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN234YV0T20C24A4000000/

 

7)旧約聖書のエゼキエル書38章に書かれている世界の最終戦争において、イスラエルを攻める国(民)としてゴグとかマゴグという名称が出てくる。新約聖書のヨハネの黙示録にも似た記述がある。それは現在ではロシアと考える人が多いようだ。因みに、現在の政治情況でも、ロシアはイランの味方であり、イスラエルの潜在敵である。グローバリストたちがロシアを潰したいと思う心の大元に、これら聖書の記述があると考える人が多いだろう。

 

8)イスラエルのユダヤ人も様々な考え方の人がおり、ユダヤ教正統派からあまり宗教を感じない人までいるだろう。正統派は、シオニズムにすら反対しており、将に神の御心のままに生きることを100%実行していると言える。一方、現実主義の人たちは、シオニズムを世界帝国建設に読み替えて、グローバリズムを実行しているのだろう。ネタニヤフ首相、米国のユダヤロビー、そして米国政界の大部分は、殆ど一体だと考えられる。

 

9)トランプ支持のグループが書いたトランプが次期政権に就いた時の政策とについて書いた本https://apnews.com/article/america-first-trump-biden-russia-ukraine-policy-54080728c6e549c8312c4d71150480ba とそこに書かれたウクライナ戦争終結のプランに関しては、https://ameblo.jp/sherryl-824/entry-12852302264.html を見てもらいたい。これらは妥協の産物であり、それでトランプを捨て去るのは“もったいない”と思う。

 (18:30 編集あり)

 

 

日本では、国内企業の改善や成長が世界に追い付かず、国民の間に貧富の差が拡大し、途上国に似た状態が現れつつある。金融資産の外国逃避が円安とともにスパイラルに起これば、その方向へ加速される。新NISAはその切っ掛けになる可能性大だが、しかし切っ掛けにしか過ぎないと思う。

 

日本経済の低調の根本原因は、政治ではなく文化にある。西欧文化を受け入れながら、その経済発展モデルを拒否する日本の文化である。終身雇用を最善とし発展には必須とされる労働の流動性(適材適所の実現)を拒否する。突出したアイデアは、和を乱すものとして議論されない。

 

人々は、「世間」の標準に従順で新規性を好まず保守的且つ平和的で「波風」を嫌う。議論が出来ず、西欧風社会を作っても、村社会の本質を無くそうとはしない。


勿論、これはあくまで平均としての話である。グローバル企業ともなれば、そんなことはとっくに卒業していると言う人も多いだろう。ただ、少なくとも政官界やマスコミ、更に大学などの研究機関などでは旧態依然だろう。若い人が教授になれば抜擢人事だと言われる。抜擢とは何のことだろう?

 

日本経済は政府のデフレ政策が原因であり、”財務真理教”を排除して積極財政に転ずれば、日本経済は復活するという人は今でも多い。(補足1)しかし、彼らと財務省幹部或いはその方針を支持している正統派の経済人との議論がマスコミに流れることはない。国会での議論は、予め決まった原稿を読むだけの儀式である。

 

日本文化の下では、議論すれば口論となり、最終的には喧嘩となって人間関係が破壊される。そして、山本七平が言うように、主語が明確でない言葉が、人と人の間に空しく投げかけられる。街中に見られる多くの標語は、その残骸である。(補足2)

 

 

1)経常収支の中身

 

上の図は日本の経常収支の中身を1996年からグラフにしたものである。経常収支とは、IMF(国際通貨基金)が示した方法により計算した、輸出入、金融取引、旅行などサービスや知的所有権などの取引、無償資金援助などにおける国全体の収支の合計である。

 

折れ線グラフが示している様に、経常黒字は毎年達成されている。しかし、その中身に大きな変化が生じている。21世紀の始めまでは、貿易黒字によって安定した経常黒字が達成されていた。しかし、2011年から貿易収支が赤字となる年が多くなり、それに代わって第一次所得収支が増加し、経常黒字を保っている。

 

第一次所得とは、主に海外への債券や株などの投資が産み出した所得である。この項目は、企業の海外進出や年金基金等の海外投資による収益が主だろうが、今後新NISAによる海外株式(補足3)への投資が大きくなれば、個人投資の寄与も大きくなるだろう。

 

この変化は、日本国内で企業が産み出した製品が、海外での競争力を無くしつつあること、そして、金融資産を持つ者は海外へそれを移動させ、その投資収益をかなり得ていることを示している。つまり、投資をする場合、競争力を失いつつある日本よりも、外国に投資することの方が有利ということである。

 

その結果、労働で稼ぐ一般市民の多くは益々貧しくなり、海外投資で稼ぐ階級の者は一定の所得を保つことになる。今後海外投資が出来る層とそれが出来ない層との間に大きな貧富のギャップが生じる可能性が高い。

 

勿論、一流企業の日本株を買うことは、その企業の海外進出という形で、その投資の一部は海外に向かう。更に日本の安い労働賃金や円安などの恩恵で国際競争力を今後も維持できる企業なら、海外直接投資をする企業と同様に生き残りが可能だろう。

 

そして、そのように生き残った企業の経営者や投資者は、先進国と同様の所得を得ることが出来るだろうが、労働者は現在のベトナム等の労働者と同じ所得となるだろう。それが表題の意味である。

 

 

2)円安について

 

通貨の交換比率、つまり為替レートは、貿易や金融取引など海外との決済の合計で決まる。外貨を持つ人が、日本円に交換して日本の商品を買うことが多くなれば円高に動き、逆に日本円を持つ人が、それを外貨に換えて海外製品を買うことが多くなれば円安方向に動く。

 

日本での人件費や家賃、更に国内での商品価格が幾らであっても、国際取引でなければ通貨の交換レートには影響しない。(補足4)

 

それら海外との取引収支の合計が日本の経常収支ということになる。ただ上述のように、日本国全体の収支(経常収支)が黒字でもその中身が変化していることに注意が必要である。何故なら、為替レートは現金のやり取りで決まるからである。

 

第一次所得が増加して黒字を維持しても、外国で稼いだ資金が再び外国に再投資されれば、お金の流れ(キャッシュフロー)で見た場合、赤字となっている可能性がある。つまり、日本全体としてせっせと稼いでも、稼いだ方々が外国に蓄財するのでは、日本は彼らのベッドタウンになってしまう。

 

そのように指摘する人がいる。東京財団政策研究所の「進む円安と経常収支の構造的変化」と題する文章を見てもらいたい。https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4352

 

その中で、小黒 一正氏は以下の様に書いている。

 

海外で現地生産している企業であれば、ドルで稼いだこの収益の多くは円に変換して日本に戻さず、ドルで再投資するはずだ。

 

また、「証券投資収益」は株式配当金および債券利子の受取・支払を表すが、このうちの「債券利子」から得る収益は証券投資収益の約90%(2022年度)を占める。断言はできないが、ドルで稼いだこの債券利子の収益の多くも、円に変換せず、ドルで再投資する可能性が高い。

 

この海外で稼いだ金は海外に再投資されるという指摘は他にも多い。キャッシュフローが赤字なら、ドルと円の交換レートが円安に向かうのは当然のことなのだ。

 

勿論現在の円安の主要な原因に、日米の政策金利における大差があるだろう。しかし、日銀が金利を上げても、円安の本質的治療にはならないということである。またここで重要なことは、金利を上げれば、日銀は実質的に債務超過になることである。そうなれば日本円の信用は保てないだろう。

 

それでも日銀総裁は、簿価では債務超過ではないので、国債の償還を受けても新規国債は買わなければ良いのだと強弁する。そうなれば、日本政府は大日本帝国のように変身して、国債購入を日本国民に強要することになるかもしれない。その時、新ニーサを始めたことによる国民の預金の海外流出を悔いるだろう。一体、岸田は誰に言われて新NISAを始めたのか? 分っている人は分かっているだろう。

 

 

3)貿易統計等

 

日本は農地の狭い資源小国であり、食糧とエネルギーを外国に頼っている。それは本質的なもので、日本は本質的に政治的に脆弱な国である。そのこと位は国民は熟知する必要がある。余計なことだが、日本の右翼系の方の頭にはこの自覚に欠ける人物が多い。

日本の経済活動を輸出入の点から眺める。上の表は、財務省の輸出入の統計(令和5年)である。合計すれば、93000億円余りの赤字である。この赤字への寄与が大きいのが赤でマークした食糧(8.2兆円)とエネルギー(25.7兆円)である。

 

我々の生命維持は、食糧とエネルギーの供給をしてくれるこの貿易の結果であり、その為のシステムのお陰である。この貿易システムは米国を中心に世界に根を張っており、米国は世界最強の軍事力でそれを護っている。それが日本の政治経済の基本的構図である。

 

この貿易の赤字幅を現在辛うじて抑えているのが、自動車など輸送機器(19.5兆円)と一般機械(8.9兆円)等の輸出産業である。(カッコ内は概数)日本に外貨を運び込むことにおいて、トヨタやホンダなど日本の自動車メーカーが最も大きな役割を果たしているということである。

 

その外貨収入が廻り廻って、食糧とエネルギーの購入費となっているのである。繰り返しになるが、日本は、外貨が入手できなければ国民の生命の維持さえ出来ないという脆弱な国なのである。以前、そこまで言って委員会という番組で、自称元皇族が日本は内需依存国であり、経済的に強い基盤を持っているなどと言っていたが、これが右翼の典型的な間違った意見である。日本は貿易立国なのだ。

 

この日本の自動車産業を破壊すること念頭において特に欧米を中心に繰り広げられているキャンペーンが地球環境問題である。日本が得意とす内燃機関型の自動車を追放して、構造的に簡単な電気自動車以外を禁止する方向に進むことを目的の一つとしている運動である。

 

それは、EVは大型蓄電池の製造を必須とするなど、製造から廃棄までの全プロセスを考えた場合、例えばプラグインハイブリッド車と比較して、CO2の発生や重金属汚染の問題などで、決して”環境に優しい”とは言えない。そんな事を無視してEVを推進する姿勢が、この運動のうさん臭さを示している。

 

そんなことには欧州特にドイツや北欧の人間は素知らぬ顔である。彼らは生存競争を非常に厳しく考えている。

 

貿易収支の話に戻る。上の表を良くみると、輸出産業の中で電気製品や機械類の競争力が低下しているようである。(補足5)進む円安の中でこの収支となる程の競争力であれば、この分野が今後貿易収支の赤字幅縮小の為に大きく働くとは思えない。赤字が今後大きくなる可能性が高い。

 

終わりに 

 

新型コロナ以降、各国がバラマキで財政支出を拡大し、日本も大量接種と大量廃棄のワクチンなどで無駄な政府支出が多かった。そのお金のバラマキによる物価上昇も加わり、インフレ状態になって来ている。最近では下図のように3%程度の物価上昇率が定着している。今後、更に円安による輸入物価の上昇も加わるだろう。https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 

今年中に日銀は、この物価上昇を見て利上げを決断するだろう。それは、預金金利や住宅ローン金利だけでなく国債金利の上昇を意味する。その結果、国民の貧困化が進むだろう。国の財政も、ウクライナ支援などで今後放漫財政を続けて、益々借金体質が進むだろう。

 

また、利上げによって新規国債の発行が徐々に困難になることに注意が必要である。最悪の場合、政府は財政難に陥る可能性も今後出てくる可能性があると思う。今は英知をあつめて国難に対処する時である。のんびりと政治資金問題を議論している場合ではないと思う。

 

以上、理系素人による日本経済に対する感想です。批判やコメント期待します。

 

 

補足

 

1)この主張をする人は、民間人では三橋貴明氏、藤井聡元内閣官房参与(安倍内閣)など。江田憲司衆議院議員(立憲民主党)、西田 昌司参議院議員(自民党)などもこの中に入ると思われる。彼らの国家の債務がGDPの何倍あろうが、意味がないなどの発言が強烈である。

https://www.youtube.com/watch?v=ZqANXqn1Tlw

https://www.youtube.com/watch?v=xpNB-_v3Pnc

 

2)日本語と日本教について:10年前にブログ記事として書いているので一応引用します。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466514091.html

上の図が私の日本の言語文化に対する理解である。

 

3)海外への株投資にはNASDAQ100、S&P500などのインデックスファンド(株価連動型投資信託)を含む。日本のインデックスファンドとしては日経225に連動するファンドなどがある。世界中の有名株を組み合わせたオルカン(オルカン=all country)と呼ばれる投資信託が積立NISAでは人気があると前のブログで書いた。

 

4)発展途上国の名目年収5000ドルの人は、先進国の同じ名目年収5000ドルの人よりもはるかに裕福である。一人当たりGDPなどの国際比較データを見るとき、この事を忘れると全く間違った理解をすることになる。

 

5)電気製品と一般機械の輸入は夫々3%以上増加しているが、輸出は同程度減少している。自動車を含む輸送機器の輸入22%増加(金額は4133憶円余り)し、輸出は24%増加(金額は236300億円余り)

 

(19時、編集あり;5/15早朝全面的に編集の上、最終稿)