1)フローとストック:
フローとストックという言葉がある。流量と蓄積量という意味で使われる事が多い。会社の場合、一年間どれだけお金を稼いで、それをどこに投資したり長期債務の返済にあてたりしたかを示した書類をキャッシュフロー計算書という。そして営業純益というフローが蓄積されたのが、利益剰余金というストックである。
 
国家の場合は、プラスのキャッシュフローは税収や国営事業の益金などと国債発行により調達した金額である。マイナスは、社会福祉や軍備など様々な事業に用いた金額である。ストックは、固定資産や国債残高など債務である。ストックを仕分けた表が、貸借対照表であり、これまでの金の出処が債務(liablities)であり、その金がどのような形で存在しているかを示すのが資産(assets)である。債務=資産が貸借対照表の基本式である。
 
この両方、ストックとフロー、をみなければ国家財政の健全性は議論できないというのが、西部邁氏と藤井聡氏(内閣参与)の話であった。https://www.youtube.com/watch?v=6D3AX75K78w&t=113s そして、その話があまり良くないとしてコメントを書いたのが、数日前の記事である。その第一の理由は、西部邁氏は国民の貯蓄と国家(財務省)の債務をごちゃ混ぜにして議論していること、更に(それは西部氏の考えと同じなのだが)、藤井氏らの財政拡大派の意見は要するに国民の貯蓄はインフレで消失しても構わないという考えが根本にあるからである。
 
因みに、このフローとストックの関係は、色んな場面で出てくる。食べた食物がフローで、それが脂肪となったり筋肉となったりするのがストックである。フローの大きさは欲望により決まるとすれば、食べる前の食欲と食べている時の満足感は食べる速度(フロー)に比例する。数学の言葉で言えば、フローをFとすれば、ストックはFの積分であり、食べている時の満足感は、Fの微分だろう。 
 
それは人間関係でも言えるだろう。良い付き合いと、それにより築き上げた良い関係は、フローとストックの関係となる。(勿論、マイナスの関係も同様である)男女間、同性間、友人間、家族間、会社の付き合い、近所の付き合いなど、色んなバリエーションがあるが、夫々にフローとストック、フローの微分などを考えると、意外と人間関係の理解が深まる可能性がある。
 
フローとストックは、時間による微分或いは積分の関係にある。つまり、フローの積分がストックであり、ストックの微分がフローである。同様に、距離による微積分の関係もある。多くの文系の方が理解していないかもしれないのが、力とエネルギーの関係である。ある物体に働いた力を動いた距離で積分したのがエネルギーである。
 
このように理系の基礎的知識は、社会現象においてもその理解の助けになると思う。以上、下らないかもしれない雑談でした。
 
2)次に、非常に重要な日本の政局について書くが、この文章は米国の人向きではない。それは、最近の小泉元総理の脱原発の動きが気になるという話である。この動きは、日本から核武装の可能性を永久に排除する米国の策略に、”国賊小泉”が協力しているという事だろう。そしてこの政治運動は、米国が北朝鮮の核廃絶を諦めて、中距離核を残し和平の道をとる(と予想される)ことと関係していると思う。http://www.mag2.com/p/news/347302?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_0119
 
米朝和平のとき、核武装の話が日本国内で出るだろう。その声が大きくなり実際にその選択を日本国民が考える前には、日本からプルトニウムを無くさなければならないと米国は考えていると思う。オバマ同様トランプも、日本が蓄積しているプルトニウムを引き取ると言うだろう。(補足1)
 
勿論、北朝鮮の和平後すぐに核武装の動きが日本で具体化する恐れはない。国民の多数は、原爆を落とした米国よりも原爆そのものが憎いという、訳の分からない知的情況にある。日本人の殆どは、原爆が数十万人を殺したという情報から、その決断をした一人の人間の存在を、そしてそれが「友邦」米国の大統領であるということが、どうしても信じられないのである。(補足2)
 
それはまた、唯一神を信じない日本民族の宗教観から来ているのだろうし、そのような宗教文化は他民族から酷い仕打ちを受けた記憶に乏しい民族のものだろう。原爆を戦争の道具としてではなく、霊を持った存在のように感じてしまうのは、短く言えば太古からの平和ぼけが原因の一つだとおもう。(補足3)
 
それどころか、中途半端な知識を得たために、国民は原子核や放射線などの言葉にまで強烈なアレルギーを示す。それが抜けるには、北朝鮮或いは中国やロシアによる核兵器を用いた脅しや攻撃が具体的になるまで、相当の時間がかかるだろう。米国や周辺諸国は、その時までにプルトニウムが持てないように日本を導いておけばよいと考えているだろう。
 
日本国が将来に亘って存在するためには核武装は必須であるという、伊藤貫氏や片岡哲哉氏(「核武装なき改憲は国を滅ぼす」の著者)の考えは正しいと思う。例えば、これも西部邁氏が登場する動画だが、伊藤貫氏らとの討論を聞いて貰いたい。https://www.youtube.com/watch?v=2JV_UPDjW0U&t=665s
 
もう一つの狙いは、安倍政権潰しである。小泉元総理の脱原発の動きが定着した場合、その是非を問うのが次回の総選挙の争点になる可能性が高い。その場合、自民党の中の国会議員を父祖からの家業だと考える層が、安倍おろしに動くからである。
 
米国は、安倍政権の長期化を警戒し始めたのだろう。小泉と細川は国賊である。細川は祖父近衛文麿と同じく、日本潰しを扶ける役割を買って出たのだ。
 
補足:
1)原爆にはウラン型とプルトニウム型がある。高純度のウラン235を得るには、遠心分離機を何段にも用いてやらなければならない。それよりも、原発から得られるプルトニウムの化学処理による抽出の方が簡単だろう。勿論、完全爆発がプルトニウムの方で難しいが、それは技術の問題である。
2)戦勝国米国が敗戦国日本に進駐したとき、日本国民の多くはむしろ歓迎した。それは、大切な家族を兵隊に取られ無駄死にさせずに済むからであった。その後の米国の政策は計算しつくされており、日本国民は全て(私も含めて)親米にした。その日本国民の意識は、米国だけでなく、戦時日本政府(それを敢えて薩長政府と言いたい)と、戦後吉田自民党政府の三者の合作である。
3) I CANとういグループが、核保持国の核兵器独占のための工作を請け負っているのか、それとも日本人的な核兵器アレルギーなのか分からない。善意に解釈すれば、日本人と同じように平和ボケの一種なのかもしれない。平和が長く続けば当然平和ボケも多くなるのが人間の常だからである。ただ、ノーベル財団があるスウェーデンで、戦争に備えよという声が上がっているというのだから、ノーベル財団には皮肉の一つも言いたい気持ちでいっぱいだ。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180118-35113335-cnn-int
藤井聡内閣参与の西部邁氏との討論を見た。税収内で国家の予算を組まなければならないという考え、つまりプライマリー・バランス(補足1)の黒字化、を重視する財務省などの姿勢に対する反対論を展開している。しかし、素人の私にもその正確さは低く感じられたので、ここに少し書く。https://www.youtube.com/watch?v=6D3AX75K78w
 
1)最初に西部邁氏が、財政拡大策を用いて経済成長を目指すべきだという考えのあと、「この4半世紀の間、フロー(つまりプライマリーバランス)だけを考えていては駄目であり、ストックも考えるべきであると、大蔵省の幹部クラスに言ってきたが、誰も聞いてくれない」と言っている。しかし、株をやっている町中の男性を捕まえて聞けば、「ストック(貸借対照表:BS)だけを考えては駄目だ、フローが大事だ」と言うだろう。
 
つまり、資産の数値化には注意を擁するのである。預貯金ならそのまま数値化が可能だが、米国債など債券になれば数値化が多少或いはかなり困難になってくる。(補足2)そして、道路や湾岸施設などになると、それを数値化してどれだけの意味があるのか。国でも会社でも、資産の数値化には大きなバラツキがあるだろう。会社の場合、公認会計士がチェックしていても、東芝だけでなく不正会計がかなりあった。(補足3)国家(財務省)の作ったバランスシートをチェックする法的根拠やチェック方法を国会がもたないとすれば、その結果は更に信用できない。
 
元財務官僚で最初に日本政府のBSを作ったと公言している高橋洋一氏が、「現在発表されている日本政府のBSに国の徴税権も資産として加えれば、債務超過ではない。国の徴税権は、税収の15倍ほど(補足4)つまり900兆円位の純資産として計上できるからだ」と言っている。しかし、今日気がついたのだが、これは資産の二重計上である。つまり、財務省の作った貸借対照表(BS)にある有形固定資産(つまり道路や湾岸施設など)があるから、その中で企業等の経済活動が可能であり、徴税ができるのである。
 
勿論、プライマリーバランス(PB)を死守する必要はないし、国家のバランスシートの拡大は経済発展とともに大きくなるのは当然である。そして、現在の日本が従来型のデフレ下にあるのなら、確かに財政拡大策は必要だろう。一時的な財政拡大が破綻に繋がるほど日本のバランスシートは悪くない様である。(日本政府と米国政府のバランスシート:https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43416690.html
 
従って、国家の防衛に不安があるのなら、そこに予算を倍付けたとしても、それは当然の決断である。しかし、地震に備えて防潮堤を築くなどの国土強靭化は、地震が予測出来ない以上、無駄遣いである。そのような無駄使いができる情況には、日本はないと思う。尚、国債の信用と日銀のバランスシートについては、昨年ブログで紹介した。
 
2)現在のデフレ的経済情況は経済のグローバル化による先進国に共通した現象であり、従来型不況ではない。日本は現在殆ど完全雇用にあり、企業は最高益を上げているところも多い。財政拡大で偏った部門、例えば建設業、に需要を起こしても、人手不足が深刻化して政府が外国人労働者受入枠を拡大するだけで、消費財での継続的な需要拡大に繋がらないのではないだろうか。
 
政府が議論すべきは、如何にして国民が感じる将来への不安を減少させ、国民の貯蓄性向を減少させるかということだろう。企業の設備投資を増加させて労働生産性を向上させるのは、企業が独自に判断することであり、国家が口出すことではない。企業も自社の実力と将来に不安を感じているので、設備投資や新規展開を控えているのだろう。将来に向けて考えるべきは、日本の企業の体質や能力の改善である。
 
米国(マイクロソフト、アップル、フェイスブックなどナスダック銘柄)で為し得たことが何故日本では為し得ないのか?創造性、革新性、攻撃性に欠ける日本文化がその主要な原因の一つであると思う。ダイソン型扇風機のアイデアが東芝の研究現場にあったのに、何故それが取り上げられなかったのか?何故、日本の大胆な経営が外国から帰化された人たちによって主に行われているのか?何故、ダイエー、日産、シャープ、東芝が潰れ、外国の支配下に入るのか?それらが本当の日本の問題である。
 
それらは、PBに対する考え方で解決する筈がない。経済のグローバル化と共に、独特な労働市場や社会構造に関する文化も根本的原因の主要な部分である。巨額の財政出動とそれによる大幅なインフレは、国民や企業の貯蓄の実質的評価を下げる働きがあり、それは益々それらの経済活動を消極的にするだろう。
 
また、資源や食料を外国に頼る日本は、円は基軸通貨ではないので、経常赤字になる可能性が予想されたら、行き過ぎた円安は防がなければならない。そのため、財政もPBを意識しなければならない。円の価値は、現在日本国債の信用に裏打ちされている。国債の信用低下は、突然の利息上昇と円安を招くことになり、デフレどころか資源価格や食料価格の上昇による大幅なインフレとなり、国民は食えなくなる。
 
藤井氏の書いた本の表題「プライマリー・バランス(PB)の大嘘」は、日本語的に可怪しい。表題であっても、もうちょっと日本語の正しい使い方が出来る人でないと、意見を聴く気にならない。
 
3)最初に、会社でも国家でもストックよりもフローが大事だと言う主旨のことを書いた。例えば家計の話をすると、30代に家を買ってローンを組むことは普通である。その年は大赤字であるが、それが許されるのは返却の目途が立っているからである。返却の目途が立っているということは、キャッシュ・フローが黒字だということである。
 
ここ40年ほど日本の財政収支は赤字である。http://ecodb.net/country/JP/imf_ggxcnl.html
また、現在日本の経済は斜陽であると私は感じている。その原因には色々あるが、上にも書いたように日本文化にまで遡る必要がある。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43514249.html この様な時、借金をよりふくらませる方向で予算を組む場合には、明確な理由が必要であると思う。
 

その是非を議論するには、財政赤字を最少にすること至上命題と考える財務省と、そんなことを気にしている場合ではないと考える、防衛省、経産省、文科省、総務省などその他の省が議論をして折り合いをつけ、その議論の仕上げを国会でやるのが正しい筈である。従って、西部邁氏が財務官僚の幹部を非難する根拠はなく、非難すべきは内閣と国会だと思う。

現在を簡単にデフレというが、今年の物価上昇率は+0.37%である。宅配便の値上げや郵送料の値上げ、時間給の上昇など、現在インフレの気配が出ている。過去20年程のデフレ的経済情況は経済のグローバル化による先進国に共通した現象である。高橋是清の財政政策の猿真似で解決できるのか疑問である。最近の動画で、藤井氏は韓国の経済も財政をどんどん拡大すれば良くなると言っていた。私は、藤井さんの経済の知識を全く信用しない。
 
追補:西部邁氏の主張の中で、「日本国民の金融資産が1,700兆円あるので、国債残高を差し引いても700兆円あまる」とい話がある。しかし、国家財政と日本国民の金融資産とを合算するわけにはいかない。また、日本国債は円建てであり、殆ど全て日本国内で売られているという話があった。それは、国家財政の破綻を防ぐことは可能であることを意味している。その場合、激しいインフレになり、国民の金融資産の価値が激減することになる。新円を発行して、旧円と交換することで、実質的に国民の金融資産の国家財政への移転ということになるような気がする。
 
今回の議論は筆者の専門分野内ではありません。厳しい反論や意見等期待します。
(追補:21:30)
 
補足:
1)プライマリー・バランスは、一般会計における歳出額から公債費と税収を引いた収支のことである。
2)トランプ大統領になって、米国の財政破綻の危険性すら議論されている。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4693.php
3)ストックの評価が難しいのは、ソフトバンクの貸借対照表を考えれば分かる。https://biz-kyoyo.link/mba-finance/franchise-softbank/
4)徴税権の17倍と言ったかもしれない。
たまたまyoutubeで中川一郎の自殺(1983/1/9)について考察した動画を見た。恐らく、1997/4/18放送の「驚き桃の木20世紀」というテレビ朝日の番組からの抜粋だろうと思う。この番組は見ていなかったので、メモとしてその概略をここに残そうと思う。
 
1)政治家中川一郎と彼の当時の状況:
中川一郎は1925年3月9日生まれ、1947年北海道庁職員になり、1953年に大野伴睦北海道開発庁長官の秘書になる。1959年に12年間の役人生活を止め、大野伴睦の秘書を経て、1963年大野伴睦の勧めで北海道五区から立候補し衆議院議員になった。1977年福田赳夫内閣で農林大臣、次の鈴木善幸内閣で科学技術庁長官を務めた。
 
石原慎太郎や渡辺美智雄らと青嵐会を結成したのは、1973年のことである。青嵐会の政治目標は、自主独立の日本をつくることだったようである。1979年自由確信同友会(事実上の中川派)を結成し、自民党に属してそのチャンスをまった。1982年秋の自民党総裁選が行われ、勝つ見込みはなかったが、石原などの強い要請で立候補した。(補足0)
 
当時自民党では、田中角栄がキングメーカーとして君臨していた。それに対抗していたのが福田赳夫で、角福戦争と呼ばれた時代である。田中角栄は中曽根康弘を推していたが、対立する福田赳夫が対抗策を考えていた。
 
福田派のプリンスと呼ばれた安倍晋三を総理にしたかったが、国会議員の選挙で勝ち目がないと考え、党員党友が票を持つ総裁選予備選(補足1)を行うことを考えた。福田は予備選を行う為には党則では四人の立候補が必要だったため、頭数を揃えるだけの目的で中川に推薦人を貸し、立候補させた。
 
地元以外の各地に出向き演説をした際に、中川は予想外の人々の熱気を感じた。「それを総理総裁も無理ではないかもしれないと感じたとしたら、それは経験のない中川の誤解だった」と石原慎太郎は語る。蓋を開けてみれば、それら国民の人気は、自民党党員と党友の票には直接繋がらず、最下位となった。その結果を非常に深刻に受け取ってしまった中川(石原談)は、自分には総理総裁の道は永久に来ないと思い込んだのかもしれない。
 
中曽根内閣が発足した夜、福田邸を訪れて激しい口論になったという。(補足2)その後、福田赳夫との間の関係が険悪になっていき、櫛の歯が抜けるように何人もが中川派を離れた。翌年の1月8日、の派閥の新年会で周囲の観測では尋常な姿ではなかったという。(補足3)5分間ほどの挨拶ののち、周囲に勧められてホテルの自室に戻った。「もうダメだ、俺は今日が限界だ」と漏らしたという。翌朝夫人により浴室で首をつった姿で発見された。中川をベッドに移したのち救急車を呼んだのは、古くからの友人で側近の佐藤尚文氏と秘書である。
 
病院での検死の後、中川の周囲(おそらく佐藤尚文氏や秘書)の依頼で、警察は嘘の死因と死亡時刻を発表した。佐藤氏は、「死因をそのまま発表するのが、可哀想だという気持ちだった」という。4日後、結局本当の死因と死亡推定時刻がリークされて新聞紙上にでた。
 
2)動画の後半で、此の時期に中川が抱えていた別の問題が紹介されていた。それは、ソ連側の工作の対象に中川がなっていたことである。 ソ連側の資料(1982年8月29日のソ連中央委員会書記局121会議録)に、イワン・イワノビッチ・コワレンコというスパイ(ソ連共産党中央委員会国際部副部長)を日本に派遣し、中川に対日交渉の窓口になるように抱き込むプログラムの記述があったのである。
 
コワレンコへの直接取材でその工作は以下のように進行したことがわかった。最初彼は田中角栄に近づこうと考えたが、ロッキード事件で不可能になった。そこで他の接触すべき日本のリーダーを探した。コワレンコは青嵐会の「日本は自主独立で平和な国になるべきである」という主張を重視し、中川と会うことにした。(補足4)総裁選立候補から10日後の1982910日、ある筋の紹介で中川と赤坂の料亭で会い4時間ほど話した。そして高いポストを持つ日本人である中川の口から初めて、「ソ連と有効平和関係を持ちたい」という言葉を聞いたという。
 
会談の翌日、コワレンコはソ連大使館からクレムリンに、ソ連との善隣有効関係を結ぶべきとの考えを持っていると打電した。その話は、青嵐会の無二の同志(石原氏談)である石原慎太郎氏も知らなかったとのことである。中川との話の中で、コワレンコは「日本はサハリン油田の開発にも将来参加することができる」との考えを伝えた。
 
石原氏は、「アメリカの手の届かないところで日本の技術と資本で原油開発ができるとなれば、アメリカは日本を押さえておく手立てを失うことになるので、反対しただろう」と述べている。(補足5)ソ連大使館は中川の死の5日後、「中川は、CIAの手先に米国に不都合な人間として消された。米国は中川が総裁になって、独自の政治路線を出すことをおそれたのだ」とクレムリンに打電した。
 
コワレンコもそのように取材に答えている。「ただ、CIAは誰を使ったのかわからない」と言っている。石原も、わからないが、そのような話が本当ならDIA(米国国防情報局)は大きな関心をもっただろうと言っている。CIAは(朝日放送の)取材要請に文書で回答してきた。それによると、中川一郎に関する情報は、国防および外交上の機密に関するため、いかなる情報も公開できないと回答してきたという。(補足6)
 
解説の森田実氏は、「中川氏をよく知っている人は、このコワレンコの話を荒唐無稽な話として受け取るだろう」と話をしている。(補足7)そして、「日本の政治が米国の対ソ戦略の中に組み込まれていた。中川氏は農林大臣であったので、日ソ漁業交渉の際にソ連と人脈ができるので、ソ連が中川に接触を求めたのは事実だろう」と続けた。「否定する明確な根拠がないのは恐ろしいことだ。真実はきっちり残すべきだ」と語った。
 
此の時期の日本は、東西冷戦の渦の中に巻き込まれていたのである。そして、中川も渦の中にいたのは事実だろうが、どれほど深く巻き込まれていたかは明らかではない。
 
3)放送では、北見での死の前日の姿を映している。その中では、中川の姿は深刻な様子は見えなかった。その後、旭川で友人の佐藤尚文氏と合流して、札幌に向かった。「中川はとにかく死ぬと言うのだ。俺の政治生命は終わった、死ぬと言うのだ」、「そこで奥さんと二人で一生懸命元気をつけた」と語った。
 
直前、午前3時半から午前4時過ぎまで、最後の言葉を友人と電話でかわしていた。北海道庁勤務時代で友人だった石原二三朗氏である。その時石原氏は、「“総裁選挙なら何度でもできることだし、色んな人が解決してくれるので、あまり気にしない方が良い”と言った。そして、それは(中川は)納得していたのですよ」と語った。
 
そして、「電話を切る直前に、“おーおー”という中川の声を聞いた。だれかが近くに来た時の中川の癖であった。そこで、電話を切った。午前4時を回っていたとき、だれかと会ったと思う」と石原氏は言った。
 
この重要な言葉について、深く追求されていないのは不思議である。警察がそれを無視したのなら、他になにかがあるだろうと思う。あるいは、適当な理由を見つけて、話を小さくまとめて中川の死を警察として処分したかったのかもしれない。
 
石原二三朗氏は中川自殺と関係があるかもしれない以下のような話をした。総裁選の数年前、二三朗氏はその同じホテルで中川と会った。当時中川の札幌事務所長とともに不動産会社を経営していた石原氏は、その会社の解散を依頼されたという。中川は、自らの政治生命のためと話した。そしてその時、中川は「総裁になれなかったら、俺はこのホテルで死ぬ」と言ったという。石原二三朗氏は、その時中川は軽く言っただけだと思ったと語った。(補足8)
 
動画の最後で、石原慎太郎氏は「あれだけの男が自分で死ぬというのは、それだけの重いものがあっただろう。自分の推測を語る気はないが、彼は政治家として自分で責任ととったのだろう」と語る。更に、上草義輝氏(中川派の議員)の「この世の中にただ一つの真実を知る人間が数人いる筈ですから…」と不自然に言葉を切った場面が挿入されている。他に上記、佐藤尚文氏と中川一郎の後をついだ中川昭一氏の言葉が紹介され、動画は終わった。
 
4)おわりに:
この動画を繰り返し見て、上記文章を書いた。そして、この番組が非常に不真面目につくられていると感じた。重要なヒントの多く無視して、ストーリーのほとんどを中川の友人で側近の佐藤尚文氏の証言に沿って作っているからである。そこには、重要な政治家の死の真相を追求することにより、日本国にプラスになる何かを掴みたいという姿勢のかけらもない。
 
この放送では、未完の推理小説を視聴者に紹介する娯楽番組に終始している。北海道庁時代からの友人で死の約30分まえまで話していた石原二三朗氏の言葉にあったように、そして二人の弟たちが語ったように、総裁選で落選しただけでは中川の自殺の動機として十分ではない。
 
その他に番組(動画)で無視した重要なヒントとか異常な取り扱いを以下に羅列する。①友人の石原二三朗氏の証言にある、自殺推定時刻午前5時の30分ほど前に、中川が誰かと部屋であっている可能性;②同じ中川派の参議院議員の上草義輝氏は、この世の中にただ一つの真実を知る人間が数人いる筈と言ったこと、③同じく石原慎太郎氏も独自の推理を持っているが言えないと言ったこと、④警察による検死を病院で簡単に済ませ、司法解剖しなかったこと、⑤司法当局は、現場を即時に抑えることを怠ったこと、⑥翌日早々に火葬したこと、⑦第一発見者の中川夫人や秘書であった鈴木宗男氏などの重要な人物との関連をほとんど詮索していないこと、などである。
 
現場近くに居た人間からの聞き取りなどで事件の真相が全く掴めないのなら、一旦網を大きく広げてヒントを探すことが謎解きの原則だと思う。
 (22時20分編集)
 
補足
0)動画では、立候補を決断したのは、沖縄戦で死亡した大田実海軍中将の慰霊式の際であった。その時中川は「私は神になった」と言ったという。
1)自民党の規定では4人以上の立候補者が出た場合に、党員・党友による予備選挙を行い、予備選挙で1位と2位の候補を対象として党所属国会議員による本選挙を行う。その候補として、福田派の安倍晋太郎、河本派の河本敏夫が出ることになったが4人目がいなかった。そこで福田は、兼ねたから総理を目指すと噂のあった中川に立候補を勧めた。党則では立候補には50人の推薦人が必要だが、中川派は僅か14名しか居なかったため、福田派の応援36名を得て立候補した。
2)上記動画では、福田は推薦人を中川に示す際、「本気になるなよ」と念を押されたとの語りが挿入されている。それが事実なら、最下位落選後福田と口論になる理由はない。何かが隠されているのか、それとも中川はその時すでに精神的に異常に追い詰められていたのかもしれない。あるいは、
3)友人で後援会員の佐藤尚文氏は、背広が濡れるほどの汗をかいていたと証言している。
4)この会食については、公安調査庁もそれを把握していた。(菅沼光弘氏談)
5)独自の資源外交を展開しようとして失脚した政治家に田中角栄がいる。同じ理由で、中川がサハリン石油の開発に乗り出せば、同じ虎の尾を踏むことになる。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111004/223006/
6)何故か全文が見えない形で動画に出している。以下の写真参照:
イメージ 1
 
7)荒唐無稽というのは、コワレンコの話した内容の内、“中川を殺したのはCIAである”という部分だろう。
8)この動画は、この冗談か何かわからない中川の言葉を、意図的に重要視している。