1)ゲストは佐藤外務副大臣、武藤元駐韓大使、黒田産経新聞客員論説委員であった。議論の中心は、先日行われた韓国代表団と北朝鮮首脳との会談についての分析である。

その中で、最初に佐藤副大臣が言った様に、「北朝鮮が非核化などに関して具体的に何もやっていない段階で、圧力緩和に動いてはならない」のは、当然である。また、途中で話に出た様に、「今回の南北会談は韓国が米朝会談の仲介をするために行われた」という解釈も当然である。昨日と一昨日書いたこのブログ記事も、完全にそのような解釈で書いている。昨日の記事では以下のように書いた。
 
これまで、北朝鮮は米国と水面下で交渉をしてきたが、核の放棄ということは一切言わなかった。そして、これまでの経緯を考えれば、この北朝鮮の言葉を信じるのは愚かである」という意見もある。確かにその通りだろうが、今回大きな違いがある。それは韓国が本気で仲介の労を取るという点である。金正恩にとって、文在寅は世界中を探して最も信頼できる最高の仲介者である。 https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43590366.html
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しかし、合意事項を箇条書きにした上の文章に関して、武藤氏の「非核化とは、核兵器放棄を必ずしも意味しない」とか、黒田氏の「昔(金正日時代か?)もそのような発言をしていた」とか、佐藤氏の「北朝鮮は韓国を上手く取り込んだ」とかいう発言に象徴される、“斜めから”見る分析などには、辟易とする。(補足1)
 
おそらくゲストたちは、「北朝鮮と韓国の話し合いだから、斜めから見るべきだ」という、日本の空気に無意識に迎合しているのだと思う。そのような言葉を軽視する日本文化にどっぷり浸かって良しとする姿勢では、外交などできないのではないか。
 
それに続いた議論のかなりの部分は、合意事項の中の「非核化」及び「体制維持」などの言葉の解釈に費やされた。合意文書中にある非核化というのは、朝鮮半島からの非核化であり、それは核の傘もあってはならないと彼等は言ってくるだろうと、昔の話を掘り出して黒田氏が言っていた。そんな解釈が許される筈はないし、そんな古びた議論を今する理由など無い。
 
米国の核の傘が韓国を覆っていることをどのように実証するのか。実証できないことを重大な合意の条件にすることなどある筈がない。あまりにも言葉を軽視した議論である。そのような言葉の定義が問題になる筈がない。”斜めから見る”態度の典型である。ちなみに、在韓米軍は核兵器を20年以上前に撤去したことになっている。
 
この番組でも、日本が何をすべきかではなく、南北談話と米朝会談の進行の予想などについての分析が中心であった。話が慰安婦問題に対する文在寅の話などに移ったので、重要な部分は終わったと解釈してテレビを切った。
 
2)いずれ行われる韓国仲介の米朝交渉において気になるのは、北朝鮮、文在寅政権、及び米国が、北朝鮮の非核化の話を進めたことにして、北朝鮮の中距離核までの核武装を差し当たり黙認することに成らないかということである。
 
つまり、北朝鮮問題の解決を急ぐあまり、米国は核廃棄の予定について時間と方法を明記する形での約束をしない可能性である。それは必然的に、北の核保有をイスラエルのような形で認めることになる。
 
それを防ぐのは、日本が独立国家として目覚めて、北朝鮮問題の解決に間接的でも深く(米国に介入する形ででも)関与することだと思う。北朝鮮に「最大限の圧力を掛ける」という主張ばかりしていては、従属国家として外交を米国に丸投げしていることになる。日本は北朝鮮の核兵器の脅威の中にいるのだから、言葉と事実が一致する形で合意形成されるように、朝鮮半島からの非核化に関与する資格があると(同盟国)米国に主張すべきであると思う。
 
慰安婦問題など日本の歴史問題を取り上げ、日本の過去の悪事として南北一緒になって世界に告発していこうと文在寅が言っているという話が、番組の後の部分ででた。日本は、文在寅が狂っていると言って済ますのではなく、日本政府の外交にそれほど力がないと考えるべきだと思う。日本が国家としての体裁を整え、威厳を再獲得すれば不合理な発言は慎む筈だと思う。
 
兎に角、韓国歴史問題にしろ、北朝鮮非核化問題にしろ、日本は”斜めから見る”ような分析や批判だけで済まさず、自国の重要な課題と考えるべきだと思う。そして、日本の成果として具体的に歴史に残すレベルの活動をすべきだと思う。

補足:
1)「斜めから見る」と表現したのは、韓国や朝鮮の姿勢を何かにつけて小馬鹿にする姿勢である。慰安婦問題や反日法などに対して、韓国を批判するだけで十分な対策を取らず、自尊心を満足させることに終始する姿勢を形容する表現に用いた。それら韓国の姿勢は、相手国を馬鹿にしていることが原因である。両国の、互いに馬鹿にしあって感情的敵対を深める姿勢は、両国とも言語が不完全で、その必然として言語の地位が低いことが原因であると思う。両国は、西欧諸国にyellow monkeyと馬鹿にされ無いようにまともな会話をすべきである。(補足を3/9am改訂)
 北朝鮮は核を放棄するか? 今日7日のNHKのニュース9(午後9時)において、慶応の准教授がこの質問に対して、「核兵器は、金正恩にとって(軍事的)抑止力だけでなく権威付けの意味を持ち、益々重要性をましている。従って簡単には放棄しないだろう。また、体制の維持が約束されるのなら、核を放棄するというが、それを約束する信頼性のあるシステムを作るというと、壮大な話になる。」と答えている。 

核兵器の重要性は言わなくても分かっている。体制の維持の約束は、単に米国との平和条約の締結位の意味だろう。つまり、米国の軍事的脅威に関する部分だけの話だと思う。北朝鮮が自律的に変化する部分は、約束の範囲外の筈である。 

兎に角、何らかの合意をしないで米国と正面衝突することは、金正恩は殺され、国家が崩壊することを意味している。何処かに着地点を探したいのは、金正恩(北朝鮮)の本音だと思う。この准教授はそれらのことをあまりにも軽視している。 

この問題、二人の首脳がマッドマンを演じてチキンレースをやっているとよく言われる。しかし、これは本当のチキンレースではない。何故なら、トランプ大統領には命の危険も国家崩壊の危険性もない。最後まで両者が降りなければ、多数の死者がでるとしても、それは日本と韓国の市民&軍人と米国等の軍人である。米国市民の死亡数はあまり大きくはないだろう。 

「これまで、北朝鮮は米国と水面下で交渉をしてきたが、核の放棄ということは一切言わなかった。そして、これまでの経緯を考えれば、この北朝鮮の言葉を信じるのは愚かである」という意見もある。確かにその通りだろうが、今回大きな違いがある。それは韓国が本気で仲介の労を取るという点である。金正恩にとって、文在寅は世界中を探して最も信頼できる最高の仲介者である。 

このチャンスを逃しては、これまで通りの片務的チキンレースを続ける必要がある。それには、自分が生き残るシナリオはない。金正恩はそのように考えるだろう。金日成のときや金正日のときと違って、緊急性&緊迫性は比べ物にならないほど高いレベルである。 

リビアのカダフィが、核放棄をした後に殺された。それと同じ危険性を金正恩は深刻に考えてきただろう。しかし、国家の中央集権体制はリビアよりもしっかりしていると思う。そして、核兵器開発で箔をつけた金正恩は、それを使って別の大きなものを手に入れれば、権威失墜にはならないだろう。 

それは、体制維持の約束とその後の朝鮮統一の道筋である。つまり、米国との平和条約締結である。韓国との条約では将来の統一を盛り込むが、実際には平和共存を目指す。米国と韓国とは、朝鮮戦争の再開に備えた米韓軍事演習は取りやめるだけで、同盟関係を維持する。 

北朝鮮は江沢民派との関係は崩れているが、習近平政権の支援を受けると言うかたちで、中国の面子も立てることができるのではないだろうか。 
1)昨日は朝鮮の南北対話が大きなニュースになった。文在寅大統領の特使として北朝鮮を訪問した大統領府の鄭義溶国家安保室長(閣僚級)は6日記者会見で、4月末に板門店で南北首脳会談を行うことに合意した。

以下に、北朝鮮が表明したことと、各国の南北会談と合意事項についての評価をまとめる。
 
北朝鮮側が表明したこと:
朝鮮半島の非核化に対する意志。鄭氏によると、金委員長が「非核化の目標は先代の遺訓であり、先代の遺訓に変わりはない」と明言したという。
②北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消され、体制の安全が保証されるのであれば核を保有する理由がない。
③非核化問題の協議や米朝関係正常化に向け米国と対話する用意がある。
④対話が続いている間は核実験や弾道ミサイル発射を凍結する。
 
米国の反応:
トランプ大統領はツイッターに、「北朝鮮との対話を巡り、進展の可能性がみられている。過去数年間で初めて、関係各国すべてが真剣に取り組んでいる。世界中が注目し、待っている!肩透かしとなる可能性もあるが、米国はどちらの方向に向けてもハードに対応する用意がある」と投稿した。
 
米国のペンス副大統領は6日、北朝鮮が非核化に向けた措置を講じるまで、最大限の圧力を掛け続ける方針を表明した。同氏はホワイトハウスの声明で「北朝鮮との対話がどの方向に進もうとも、われわれの決意が揺らぐことはない」と述べた。また、北朝鮮に関して「すべての選択肢を検討している」とも述べた。
 
日本の反応:菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国特使との会談について「北朝鮮との過去の対話が非核化につながっていないという教訓を十分踏まえて対応すべきだ」と述べ、韓国政府に慎重な対応を求めた。
 
河野太郎外相は会見で、「経済制裁で困っているから必死にほほ笑み外交をやっているのだろう」と指摘した。河野氏は会談内容に関し「韓国側からしっかり説明を受けたい」と述べるとともに、「日米韓で緊密に擦り合わせをしている」と強調した。https://www.jiji.com/jc/article?k=2018030600405&g=prk
 
中国の反応:外交部報道官は6日、「朝韓間の連動を、朝米を含む各国間の連動へと拡大し、南北関係改善の努力を朝鮮半島の非核化と恒久平和の実現に向けた共同努力へと拡大することを希望する。中国側もこのために積極的な役割を発揮したい」と表明。
 
2)以上のまとめについての私の考えを以下に書く。


米国副大統領や日本の官房や外務省は、金正日時代の時間稼ぎ外交の延長であるとの見方である。一方、トランプ大統領はそのような予断はないようである。中国も同様にポジティブな評価をしている。戦争になれば我が国でも膨大な人命が失われる可能性があることも十分考え、日本政府が過去の経緯を乗り越えて、朝鮮半島の非核化を目指しこの新しい動きに協力すべきだと思う。

官房長官の言う様に、米国の従来の勢力の忠実な犬のように行動すれば、日本の国際的評判は地に落ちるだろう。北朝鮮の”微笑み外交”は、時間稼ぎの可能性もあるが、少なくとも一般論としても、両方の道を睨みながら対応すべきだろう。
 
ペンス副大統領は、北朝鮮が自発的に核放棄を始めるまで圧力を掛けるべきだと考えているのだろうが、それは非常に愚かな考えである。それが可能なら、すでに問題は解決して久しいだろう。まるで米国と北朝鮮の軍事衝突を望んでいるような発言である。日本国民は、日本側に膨大な人的被害が出る方向でも、日本政府が米国の犬として行動するつもりなら、内閣を不信任すべきである。
 
考えるべき点は、現在は金正日の時代ではなく金正恩の時代であること、それに、金正恩は西側留学の経験もあり、西側諸国の様子を知っていることである。更に注目すべきは、金委員長が「非核化の目標は先代の遺訓であり、先代の遺訓に変わりはない」と明言した点である。
 
つまり、金正恩は朝鮮半島の非核化を先代に遺訓として、自分がその方向に進む根拠を明確にしている。勿論、核保有国としての国際的地位は、今後の外交を考えると非常に欲しいだろう。しかしそれに固執すれば、むしろ自分の体制が崩壊することを知っているのだと思う。
 
また、話し合いの間に核実験などはしないこと、更に、非常に早い時期に南北会談をセットしていること等も注目される。時間稼ぎなら、もう少し引き伸ばした設定をするだろう。
 
日本側では、金正恩のことを狂犬とか狂人のように言って、独自に分析思考することを放棄し、米国の犬になっている。しかし、そのように言う評論家や政治家は、あの国のトップとして6年間君臨するという困難を乗り越えた人間であることを、忘れているのだと思う。
 
彼等は、「自分なら、6年間あの国のトップに居れるだろうか?」と自問してみれば良い。確かに異母兄弟を殺害するなどの行為は異常に見えるだろう。しかし、中国の江沢民派と組んだ張成沢は、金正男をトップにつけて自分の立場を確立すると企んだことを忘れては成らない。(追補1)トランプ大統領もそのように見ているだろう。
 
繰り返しになるが、情況がこのように急展開した今、これまでの経緯に拘らず、日本側は韓国文在寅大統領に協力して、米側が米朝対話に動くように説得すべきである。

追補:(3月10日)
1)この記述は筆者の思い違いの可能性大です。張成沢は習近平と組んで、金正男をトップに据えようとしたというのが通説のようです。訂正させていただきます。(https://news24-web.com/north-k/