3月18−19日アラスカで行われた米中2:2会談で、中国の楊潔篪が予定時間を大きく超えて、米国の対中姿勢を攻撃した。中国は、鄧小平の韜光養晦外交から習近平の戦狼外交にスイッチを替えたことを世界に印象付けた。多くの人は、一度出来上がった米中の対立は、簡単には修復不可能だと考えた。

 

そして、この米中の関係を背景に、322日、米国、カナダ、英国に加えてEUが、ウイグル人権問題での制裁に動いた。

 

しかし、アンカレッジでの会談の2日後3月20日に、米国と中国の橋渡役のヘンリー・キッシンジャーが、中国の北京で開催されたThe China Development Forum 2021にビデオで参加し、今こそ米中は協力的な関係を強めなければならないと、挨拶していたのである。https://www.youtube.com/watch?v=KWnD1pbWik8

 

「大統領から周近平へのプレゼント」と第するyoutube動画 で、元記者の”motoyama”(ハンドルネーム)氏は、その会議での米側の参加者として、キッシンジャーの他に、クリントン政権のときの財務長官のロバート・ルービンや、オバマ時代の官僚、世界銀行の関係者らを挙げている。

 

 

中国新華社の子会社新華網が配信する英語版ニュースでも、上記中国発展フォーラムの様子が配信されている。それによると、元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、協力的でポジティブな米中関係の重要性を強調し、それに向けてこれまで以上の努力を呼びかけた。

 

キッシンジャーは次の様に発言した。現在、米中は二つの偉大な社会であり、個々には別の文化と歴史を持つため、時として異なった方向を見ることは当然だろう。しかし同時に、世界の平和と繁栄は両国の相互理解に依存しているため、現代の技術、地球規模の意思疎通、およびグローバル経済は、これまで以上に両国の集中的な協力的実践を必要としている。( require that the two societies begin ever more intensive efforts to work together.) http://www.xinhuanet.com/english/northamerica/2021-03/20/c_139823698.htm

 

アラスカでの楊潔篪のパーフォーマンスは、一般には中国の国内向け発言だと理解されている。しかしその裏で開催された、本音を喋る非公開の会議において、米国バイデン政権は明確に米中の関係親密化に動いていたのだ。従って、アンカレッジでのパーフォーマンスは、米中共演の全世界向けだった可能性すら存在する。

 

北京五輪に対する姿勢も、このバイデン政権の対中姿勢の本質を表している。ニューズウィーク日本版の8日の記事によれば、「米国務省は当初、北京五輪のボイコットも選択肢のひとつだと示唆していたものの、その後、ボイコットの問題についてはまだ議論されていないと修正した」と報じている。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96018.php

 

つまり6日、ネッド・プライス米国国務省報道官は定例記者会見で、「米国が同盟国と北京五輪の共同ボイコットを協議しているのか」という質問に「明らかに我々が議論したいことだ」と答えた。

 

その後、中国から”スポーツの政治利用だ”という猛烈な反論にあった。

 

その勢いに動転したのか、翌日の7日、ジェン・サキ米国ホワイトハウス報道官は定例記者会見で「我々は、同盟国やパートナーとの共同ボイコットに対するいかなる議論もしておらず、現在進行中の議論もない」と述べた。https://news.yahoo.co.jp/articles/a3ccece42feef9ca9303befb43894fbe85febbe6


これでは、米国に同調して対中制裁に動いた国は、はしごを外されることになる可能性がある。今後米国の自由主義陣営のリーダーとしての能力が相当弱まるだろう。善意に解釈すれば、バイデン政権は、対中外交において跛行しているのだろう。(4月9日午後7時30分編集)

 

今日、最大の脅威は中国である。その国は、戦争を含む多くの犠牲を経て到着した、主権国家体制や人権と法治を最優先する体制への欧米の歴史を無視し、一顧だにせず破壊しようとしている。その西欧の作った体制を利用して巨大化したのにも関わらず、多くの弱小国を飲み込もうとしている。例えば、中国国防大学教授で解放軍少将の朱成虎は、人口が多いところ、例えば日本やインドは、核兵器を利用して人口を減らせば良いという発言をしている。

 

この欧米の価値観を全く無視する姿勢は、前回の記事に書いた中国人民大学翟東昇教授のパンデミック後の一帯一路構想にも、明確にあらわれている。

 

以下に再録するのは、24時間以内に閲覧があった5年前の記事である。内容を読み返し、全く古くなっていないことから、日本の外交は全く5年間前進がなかったことになる。そこで、リブログをさせていただく。全ての日本の人々に、上記朱成虎の発言(ウイキペディアにあります)とともに、読んで理解してもらいたい。

 

1)今朝(3/31)の読売新聞によると:
岸田外務大臣は4月10日から広島市で開催される先進7ヶ国外相会合で、核軍縮・不拡散を推進するための「広島宣言」を発表することを明らかにした。G7外相会合では、核兵器を保有する米英仏を含む各国外相が平和記念公園で献花し、平和記念資料館を訪問する方向で調整を進めている。
岸田外相は「広島宣言という文書を発表したい。初めて被爆地で開催されるG7外相会合なので、今しぼんでいる核兵器のない世界に向けての機運を盛り上げるメッセージを発信したい」と述べた。
 
私が最初にこの記事を読んだ感想は、「この外務大臣は政治家なのだろうか? 単なる夢想家ではないのか?」というものであった。なぜなら、核兵器廃絶は世界政府ができない限り実現しないと思うからである。現実を見ればそれは明らかである。核兵器が米国で発明されて以来、核保有国が増加し続けている。そしてその理由は、ちょっと考えれば直ぐ解る。つまり、核兵器保有国を近くに持つ場合、核兵器の保持以外の方法で核抑止力を持つことが極めて困難だからである
 
また、出すのなら、英米仏の核削減計画と、中国やロシアなどの核兵器をどのように削減させるかの、それぞれ具体策を添付しなければ全く意味がない。言葉を虚空に投げるような宣言を出して、何の意味がある。
 
外務大臣は、G7(英、米、仏、独、伊、加、日)の中で、最も核兵器の脅威に晒されている国は何処だと思っているのだろうか。それは明らかに、中国や北朝鮮の核兵器の脅威に晒されている日本である。その二カ国が参加しない会議で、そのような声明を出すことにどのような意味があるのか?インドやイスラエルは日本国民を気の毒に思ってくれるかもしれないが、中国や北朝鮮は薄気味悪く笑うだけではないのか。
 
また、そのような宣言を出すことは、日本が核保持のオプション放棄を宣言することになる。現在最も核抑止力を必要としているのは日本、韓国、台湾である。そして、核兵器の脅威は核保持でしか除去できないのだ。もし、米国が孤立を目指し、且つ、世界の多極化を許すのなら、日本の核抑止をどう実現するのか?ミサイル防衛システムは、米国の専門家も完璧には程遠いと証言している(以下に引用する)ので、それ以外のオプションを具体的に示すべきである。
 
2)G7外相会合でそのような「広島宣言」を出すのなら、岸田外相には中国と北朝鮮の核の脅威に対して、どう対処するかを明らかにしてもらいたい。米国のミサイル防衛システムが完璧には程遠いだろう。湾岸戦争で米国のパトリオットはスカッドミサイルを全く打ち落とせなかったこと、細長いミサイルが軌道上で回転して的が絞れないこと、THAADでも囮弾と実弾の区別がつかないなどの弱点が議論されている(ウイキペディアのパトリオットミサイルと下記サイトを参照)。http://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_international/697543.html
 
韓国の新聞に、THAADなどのミサイル防衛システムがたとえ配備されたとしても、システムそのものの有効性に対する疑問とともに、多額の負担金に関する心配などが報道されている。http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/23681.html
 
米国が核兵器に対する防衛の基本としているのは、当然核兵器による反撃だろう。米国に核反撃を受ければ当該敵国の滅亡は確実なので、通常の場合は核兵器保持だけで核抑止力がある。しかし、国家的な自爆テロ(国家滅亡を覚悟の上での攻撃)には、核兵器保持だけでは核抑止力にならない。そのような彼らの視点で異常な国家(北朝鮮、補足1)を対象にした核抑止力が、ミサイル防衛(MD)システムであると思う。最初の一撃をMDシステムで打ち落とせば、あとは核報復で敵国を完全破壊できる。米国は、この二つの抑止力で完璧を期しているのだろう。それは米国などの核保有国にのみ有効な理屈だろう。
 
そもそも、鉄砲の玉から身を守るために、発射された鉄砲玉を撃ち落とすという技術が完璧に働くと考える方がおかしい。最新型であるTHAADシステム(補足2)を、日本や韓国などの同盟国が買うことは、米国の防衛産業の防衛には非常に有効だろう。そのためには、北朝鮮の脅威は好都合である。北朝鮮から核兵器開発を朝鮮戦争の終結という形で阻止できたにもかかわらず(補足3)、放置して北朝鮮に核兵器を持たせた魂胆はそのあたりにあるのではないだろうか。
 
3)何故、日本の政治家はこれほど頼りないのか?その答えは、マッカーサーにより無害と判断された政治家の二世三世議員が日本の与党の政治家群を構成するということにある。他のタレントやスポーツ選手出身の政治家は、更に頼りにならないだろう(補足4)。
 
例えば、岸田外務大臣は3世議員である。父の岸田文武(以下敬称略)は元衆議院議員で、祖父岸田正記も元衆議院議員。参議院議員の宮沢洋一は従兄弟であり、伯父の宮沢喜一元首相の地盤を継いだ。宮沢喜一元首相の弟の宮沢弘は元法務大臣で、お祖父さんは元鉄道大臣の小川平吉。小川平吉の長男の小川一平は元衆議院議員で次男小川平二も文部大臣などを歴任。(以上ウイキペディアによる)宮沢喜一元総理は、非武装を宣言した憲法を守ると証言している(片岡鉄哉「日本永久占領」472頁)。
 
このような世襲政治家が非常に多いことを、国民はどう思っているのだろうか? 一国の大臣はその国の天才的人物がなって然るべきであるが、世襲でどんどん天才を生む家系などこの世に存在しない。第二次安倍内閣が出発した時の大臣の50%が二世議員だったという記事がある。http://blogos.com/article/96845/ バカバカしい限りである。
 (2021、4月8日9時、前書き、編集)
 
補足:
1)米国は、その他にイスラム国などや昔の大日本帝国などを想像するだろう。米国(など覇権国)は、「完全降伏か、それとも死か」という選択を相手に迫ることは、自爆テロ的反撃を生む可能性があることを想像できないのだろうか?
2)高度100kmから高速で落下してくるミサイルにも対応できるという。しかし、囮と本物の区別ができないなどの弱点があるという。
3)菅沼光弘「守るべき日本の国益」5-6章、特に230頁参照
4)例外もある。アントニオ猪木議員のイラク人質解放での功績は忘れてはならない。また、北朝鮮からの人質解放でも相当努力されたようだ。https://ja.wikipedia.org/wiki/アントニオ猪木

12月6日頃に、YoutubeHaranoTimes氏が再録した中国人民大学翟東昇教授の動画は、米中関係の背後にユダヤ系資本家の協力があったこと、バイデンの資金供給に中国が協力したこと等を暴露した。https://www.youtube.com/embed/gTcWNnYltaU(このブログ・サイトでは127日に紹介した)

 

その動画は中国では削除されている。しかし、中国政府から独立していると言われるVision Times(本拠地は米国)の日本語版「看中国」が、話の内容とその中で出てくるユダヤ人女性の正体について、1211日に記事を書いている。https://www.visiontimesjp.com/?p=12134

 

その中国人民大学の国際関係学院副院長で、貨幣研究所の研究員でもある著名学者が、今度は新型コロナのパンデミックを、一帯一路構想をバージョンアップするチャンスだと主張する講演をしている。その動画を紹介しているのも、HaranoTimesさんである。https://www.youtube.com/watch?v=jDm2cz8JRQU

 

その講演内容が興味深いので、ここでその概要を紹介する。

 

1)講演の内容について

 

これまでの中国と先進諸国との経済関係は、ドル基軸体制下の米国を中心としたバブルである。西欧の資本投資により中国で大量生産が成され、輸出であげた中国の利益は、米国等の国債購入という形で欧米に還流する。

 

しかし、このグローバル経済を米国人の半分はもうやりたくないと考えている。彼らトランプ支持者はトランプに騙されている訳ではない。明確にグローバル経済に反対しているのだ。欧米諸国は既に年を取りケチになっており、この関係は長続きはしない。

 

そして、中国が利益をあげても、欧米が無限に信用拡大をすれば、中国の債権は希釈されてしまう。今後は、中国は欧米以外の50億人で、中国を中心にした新しい経済関係をつくるべきである。新しい債権と債務のバブルである。(補足1)

 

そこでは人民元が価値の基準となり、中国が(現在の米国のように)世界最大のマーケットとなる。そのためには、現在貧しい途上国の経済が発展して、そのマーケットの中で自立しなければならない。それは、途上国の王族や貴族では無理であり、中国が指導しなければならない。

 

何故なら、貧国には(自国民のための)強い政府がなく、それらの国の王族貴族は、欧米に投資して低い利子を貰うという無駄をしている。貧国が自立発展するには、輸出できる産業を育て、そのためのインフラ整備がなされる必要がある。そのために中国がそれらの50億人が属する貧国に輸出すべきは、強い政府を作る経験と能力である。(補足2)

 

先進国の資本、商品、貨幣の循環の中に入るには、それらの国は貧しい状態から競争力を持つ国に“離陸”しなければならない。その時、その推進力を産み出す「強い政府」がなければならない。その強い政府は、宗族、社会、家庭、非政府組織、メディア、世論等に対して、強いコントロールができなければならない。

 

ただし、貧国の人を、直接我々の社会に入れてはならない。異文化の人間の混住は、様々な衝突が起こるからである。我々も、五湖の激動などの悲惨な経験を知っている。(五胡十六国: 中国史上の民族大移動)

 

以上から、パンデミック後の中国が一帯一路の周辺途上国を対象に執るべき政策は:

 

 投資を増加して、資金貸しを減らす。途上国への債権増ではなく、設立された会社の株所有を増加すべき。それらの国々を周辺において、中国中心の人民元を決済通貨とする第2のグローバル・マーケットを築く。そして、世界から投資を呼び込む。

 

一帯一路上のこれらの国々に、分散投資ではなく集中投資をする。集中でなければ、制御ができないからである。

 

これらの国々には道路建設だけでなく、貿易可能品の産業育成を手伝う。これを現地の王族や貴族に任せてはならない。現在失敗しているし、失敗必定である。

 

具体的にはこの100年ほどの期間に、100程度の特区の設立をして、そこに例えばパキスタン人300万、インド人300万人、その他300万人の1000万人規模の都市とする。多種族は問題ないが、単一文化でなくてはならない。共通語はないので、中国語が公用語になる。

 

大体以上の内容である。

 

2)私の感想

 

翟東昇教授の講演は、中国の自分勝手な論理が満載されているが、それでも尚、論理の筋は通っている。現在のグローバル経済の金融の構造や、途上国が工業化できない理由なども正しい指摘だと思う。

 

「先進国の経済の中に一定の位置を得るには、先進国との間の貿易可能品を作り出す必要がある。そのためにインフラへの投資が必要だが、途上国の王族や貴族は、自身の資金を先進国に投資して低い利息を得ている」という指摘である。

 

これは王族貴族の愚行というより、利己主義である。つまり、強い政府があれば、或いは創る事ができれば、王族や貴族の資産は国内投資に向かう可能性が高くなる。しかし、現状では自国に投資しても砂漠に水を撒くようなことになることを知っているのだろう。(補足3)

 

自国への投資が可能になるには、一定の目論見が成立することである。それは、先進国の協力があって出来上がる。例えば、中国に対して米国(そして日本も)が果たした役割などがなかったなら、中国は工業国に離陸できなかっただろう。

 

早期に先進国の経済ループに入れば、その離陸のエネルギーが少なくてすむ。しかし、今となって(先進国が年をとっている現状で)は、途上国が自力で工業国等に離陸するのは困難である。

 

檻の中に置かれたような途上国の情況は、恐らく植民地主義の遺物だろう。植民地支配で、それらの国に王族や貴族と一般大衆という分裂が固定的に出来上がったからである。独立により途上国の富が、収奪されないとしても、それは途上国の王族や貴族に渡る。その結果、彼らによる欧米先進国への投資という形で、結局欧米に還流するだけだからである。

 

翟東昇教授の中華思想的な途上国開発のモデルは、非常に勝手なものである。最後の多民族都市の構築と中国語の公用語化など、その最たるものだが、それに反論するには相応のレベルの別のモデルを出す必要がある。

(4月7日早朝 改題)

 

補足:

 

1)このバブル(泡)という表現は、ここでは金融における債権と債務の関係が巨大化していくことだろう。いつかは破裂して無に帰するからである。会社の資産査定は一定のルールで成されて、債務超過の会社は破産となって潰れ、債権のかなりの部分は債権者に分配されるだろう。しかし、国家の債務超過、特に世界の中心となる国家の債務超過は、無限に大きくなり得る。覇権が別の国に移動すれば、これまでの覇権国には高度なインフレが発生し、これまでの周辺国が持つ莫大な債権は紙くずとなる。

 

2)この翟東昇教授の考えには説得力がある。ただ、その強い政府が、習近平の独裁中国では、この論理は成立しないだろう。つまり、翟教授が把握している現在の中国は、共産党の一党支配の国であり、習近平の独裁体制ではないのだろう。

それはこの動画の最初の発言、「私の民本主義政治経済学の理論観点から、一帯一路をどう建設すべきかについて話したい」から明らかである。

 

3)この点は大事で、如何にGDPの大部分が内需であるとしても、生活必需品(エネルギーや食料)を輸入しなければならないのなら、先進工業国の中に輸出できる品がなければ、その国(例えば日本)の経済は崩壊する。三橋貴明氏や藤井聡氏などの政府財政支出がデフレの元凶という考えの人達は、その点を看過していると思う。