中国では全国共産党代表会議が開かれており、習近平が第三期の総書記を目指している。Motoyama氏(以下M氏)のyoutube動画がそこでの習近平の発言を紹介している。昨日(20日)は、習近平の共同富裕策の考え方についてであった。

 

 

習近平は、富の蓄積及びそのメカニズムを規制することで、共同富裕を実現すると言うのである。M氏は、それは共産主義の考えに忠実だが、共同貧困への道であると看破する。今回、私が理解するこの動画の主旨とM氏の言葉についての考察を書く。

 

この動画で興味深いのは、共同富裕策が世界で唯一成功したのは、1960年代の日本における「一億総中流」社会であると言う指摘である。最後のセクションで、それが成功した理由やその限界等について、習近平の中国と比較して少し考察する。

 

1)共同富裕策の具体的姿

 

習近平の発言の概要:

現在の中国による社会主義政策のスタイルは、昔(農業が主要産業であった時代)の共産党の考えと異なり、多種多様の労働とそこからの分配も認めたことである。その結果、一部の国民は企業の経営や不動産投資などの分野で働いて利益(社会からの分配)を得て来た。
 

その結果、一部の産業が成長発展し、関係する一部国民が豊かになった。しかし、生じた不公平や不平等は、解消しなければならない。そのため、今回、富の蓄積メカニズムを規制することになった。それは国民の希望でもある。
 

先ず、豊かになった富が合法的に得られたのかどうかを調査し、違法なら取り締まる。そして、労働者と経営者の富の差を調整する。尚、労働により収入を得ることが基本であるから、単なる投資による富の蓄積は禁止する。

 

この習近平の発言を聞いて、多くの人は喜んでいるという。これらの人々は、彼らを富ませて来た鄧小平の先富論を完全に忘れているのだろう。鄧小平の改革開放路線とは、先に豊かになれる者は富ませ、落伍したものを助ける義務を負わせるという方針であった。

 

習近平路線の共同富裕策は鄧小平路線の否定である。共同富裕策の実際は共同貧困策であることは、社会主義国の歴史が証明している。そしてその事実は、習近平が自分の権力維持のために意図的に見落としているのかもしれない。

 

或いは、本当に共同富裕が実現すると思っている可能性も完全排除は出来ない。現在、共同富裕策は、既に実行され始めている。その結果、学習塾は潰され、インターネット企業(アリババなど)等も叩かれ低迷している。その光景は、中国での共産党独裁による嘗ての農村経済の衰退に似ている。

 

つまり、農民が共産党員になり実権を握った結果、地主等富農が持つ土地、農業機械、畜牛などの蓄積された富が国(人民公社)に没収された。そして、地主は消され、農民たちは自分や家族の為に働く動機を無くし働かなくなった。その結果、結局中国の農業は衰退した。

 

それは、3000万人が餓死したと言われている1959-61年の大飢饉の原因である(補足1)富の蓄積が許されない共産党独裁の下では、努力し、土地を広げ、知識を積み上げ、少しづつ成長する農家の姿が消えるのである。

 

生産手段である土地と農具が共有されると、それらは能率的に使用されない。自由主義の世界のような、能力と意欲のある農民の増産や品質向上に努力する姿は無くなるのである。

 

それだけでなく、目立って能力を発揮することは自分の為にならないばかりか、むしろ危険だというのである。農業でもなんでも、共同富裕は共同貧困に終わるのである。
 

習近平は、自分の権力維持のために、反腐敗運動で政敵を追放する一方、国民を富裕層と貧困層に分けて富裕層を叩くというポピュリズムで政権維持を謀っているのである。それが共同富裕策の別角度から見た姿である。


 

2)共同富裕策と日本の一億総中流社会

 

1960年代の初め、一億総中流が日本のスローガンだった。それは共同富裕策によく似ており、そのような策が成功した世界唯一の例だと思う。政府の政策が素晴らしいと言うより、日本企業の経営に成功の理由がある。

 

年功序列や終身雇用という“素晴らしい”日本企業の人事(M氏の考え)があっての成功であり、普通の国では困難である。ただ、中国人元記者のM氏は、日本の企業経営の特徴に言及しているが、日本文化との関係については言及していない。
 

ここでM氏は、中国の悲しい現実について若干追加した。それは、習近平の共同富裕策で企業が倒産し、飲食店などが潰れるのを一般人は見て喜んでいるというのである。それは中国の大家族社会をユニットとする社会の特徴であり、厳しい大陸の歴史が生んだ庶民文化だろう。(補足2)
 

最後に、これからの中国経済と国家としての中国の没落を憂う言葉があり、ここでM氏の話は終わる。共同富裕策は、大陸で生じた中国文化とは相いれない。


 

3)一億総中流の日本型共同富裕策では、先進国の地位を維持できない(私論)

 

M氏が、周近平の共同裕福策と一億総中流時代の日本との類似性に言及したことは、非常に興味深い。伴に社会主義的であると言う説に納得する一方、一億総中流の日本型会社経営も所詮社会主義の欠点を共有していると私は思う。

 

例えば、機能体組織である会社が、年功序列や終身雇用で人材確保と人事を一通り可能にするとしても、その効率的運営には十分ではない。これらと情実人事は、まとめて日本型人事であり、日本の低迷経済の元凶の一つと考えられる。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12556307937.html
 

日本文化は沈黙の文化であり、我慢の文化である。議論と口論と喧嘩はまとめて悪とされる。例えば、17条憲法の第一条は、議論の不一致は障害であり、それを和で克服(つまり我慢)すれば、何事も成就すると謳う。それは意見の不一致を多角的観測と捉え、社会の改善につなげるという西欧の考えとは合わない。(補足3)

 

上下の和により、年功序列と終身雇用制を維持するのでは、労働生産性は非常に低く留まるだろう。しかしそれは日本版共同富裕策には必須である。
 

日本型雇用は、経済の目的は人々の暮らしの維持であるという共同富裕策の原則と、企業各部門への人材配分の両方を短絡的に実現することである。能力評価と適材適所の人事無しでは、労働生産性を揚げるのは無理である。その西欧型冷酷人事は、日本版共同富裕策を破壊する。

 

従って、日本型雇用及び人事は、低賃金が許される途上国型経済では成立し得ても、先進国となった後は経済発展の手かせ足かせとなる。その温存により競争力は低迷し、デフレの30年はそれを実証している。これを政府の財政的無策だけに帰するのは間違いである。

 

発展途上国と先進国の中間に甘んじるとしても、単独民族を信じる孤島でのみ成立するだろう。移民を多数受け入れる大陸的政治を模倣すれば、治安の悪化と政治的混乱を招くだけである。自民党米国追従政権は、その危険性が解っていない。

 

日本文化を温存したままでは、不自由の原因を議論で明らかにし、その解消を役割分担と契約で実現するという西欧文化の本格的実現は不可能である。法と人権と人々の暮らしを最優先するというのが与党の謳い文句だが、それは西欧文明の門前の小僧が習わぬ経を詠んでいるだけである。

(19:00編集)
 

補足:
 

1)Motoyama氏は言及していないが、このころは毛沢東による大躍進運動の時期である。産業発展には鉄の生産が重要だとして、全国で鉄の大増産が行われた。その結果、品質の悪い鉄が大量に生産され、それでも足らないのか、農民に農具などの鉄を供出させたという。ワイルドスワンなどの小説に詳しい。大量餓死の原因は一つだけではないだろう。

 

2)これに似た光景についてブログ記事を書いた。「中国人群衆の自殺見物と「早く飛び降りろ」の合唱について:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516516.html

また、広島と長崎への原爆投下は戦争犯罪だとは思わないと公然と言い放つ在米ユダヤ人たちとこの中国人の類似性も、このような大陸文化を考えると分かるような気がする。「ユダヤの圧力団体サイモン・ヴィーゼンタール・センターと日本」:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12762996977.html

 

3)17条憲法の第一条:和を以って貴しとなし、忤うこと無きを宗とせよ。人みな党あり、また達るもの少なし。ここをもって、あるいは君父に順がわず、また隣里に違う。しかれども、上和(かみやわら)ぎ下睦(しもむつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理おのずから通ず。何事か成らざらん。

中国共産党の第20回全国代表大会が16日から北京で開催されている。この会議で、中国共産党の総書記を含む政治局常務委員の7名を始め、党の人事が決定される予定である。中国では共産党の方が政府よりも上位にあるので、この大会が今後の中国を決定する最重要会議である。(補足1)

 

今回の会議では、習近平が異例の総書記三期目に入るか、それとも交代するかが決定される。(補足2)それは中国が嘗ての社会主義の国に戻るか、それとも改革開放路線を継続するかの決定でもある。何故なら、習近平の共同富裕策は、毛沢東路線への回帰(鄧小平路線からの離脱)を意味するからである。

 

この会議の代表等の構成や注目点等については、元中国人記者のmotoyamaさんのユーチューブ動画が詳しく解説している。以下、私が理解した範囲で、その一部を自説を交えて紹介する。

 

https://www.youtube.com/watch?v=qGAHuoLDE5s

 

最も大事なのは、会議の主席団であり、今回は46人が指名されている。25名は習近平を含む7名の常務委員とそれ以外の政治局委員19名であり、残りの21名は長老たちである。(補足3)その中には、先日習近平は退任すべきだと言った宋平、胡錦涛や江沢民のような元総書記、温家宝のような元首相などが含まれる。

 

総書記を始め7名の常務委員を挙手で決定する他、各部門の代表団に人材を推薦するなど、この会議で主席団は大きな働きをする。

 

一般には習近平の続投は確実だといわれている。しかし、motoyamaさんは動画の最後の方で続投は困難だろうとの自説を紹介している。習近平が続投すれば、今後の中国経済は崩壊する可能性が高いことを、主席団の多くが気付いていると思われるからである。

 

このままでは国民も党員も食えないから鄧小平が改革開放路線を導入した。そしてそのシステムが、今日の強大な中国を作ったことを長老たちを含め全ての幹部が理解している。習近平の“共同富裕策”はそれを否定し、中国経済を停滞から衰退に導くことはほぼ確実である。

 

更に、習近平のゼロコロナ策が、外国資本の流出に拍車をかけるなど、国家にとって独裁が如何に危険か、そしてそれが上記経済衰退に拍車をかけることなどを、幹部全員が肌身で感じている筈である。

 

一旦誰かが習近平の続投に反対し、数人の長老がそれに続けば、あとは雪崩を打つように、習近平引退の方に動く可能性があると思う。

 

 

2)米国民主党政権の対中国の強硬姿勢表明とその影響:

 

米国民主党の背後で隠然たる力をもつジョージソロスがダボス会議で習近平は退陣すべきであるとの演説をしたのは良く知られている。民主党ネオコン勢力も習近平政権の共同富裕路線から旧江沢民派の改革開放路線に戻ってほしいのである。https://www.afpbb.com/articles/-/3208017

 

米国は107日、米国の持つ半導体技術への中国のアクセスを制限する措置を決定した。その技術はオランダのASML社の半導体露光装置に用いられている。その装置のASMLの世界シェアは何と80%以上を占めるという。

 

そして、中国は先端ICチップを製造するASML社の装置が輸入できず、ハイエンド半導体分野から閉め出されることになる。その結果、中国の半導体業界に未来は無いことになる。(補足4;追補1)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-10/RJIQT9DWLU6801

 

更に、1012日、バイデン政権は、ロシアは本当の競争相手ではなく、中国こそこの10年間の対決すべき相手であると宣言する「国家安全保障戦略報告」を発表した。https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/10/35758db0c6dd9568.html

 

このような相次ぐ措置でバイデン政権は何を狙うのか? 恐らく中国を改革開放路線に戻したいのである。それには、習近平の退陣が無ければならない。今回の二つの策は、第20回中国共産党全国代表会議へ出席する代表、特に上記主席団メンバーたちへのメッセージなのだろう。(補足5)

 

習近平が続投した場合、12日の米国の発表が示すように、今後西側経済から疎外されるようになる。その場合、共産党の殆どの幹部たちは、自分と多くは米国等外国に居る家族や愛人などとのこれまでの暮らしが出来なくなることが解っている。

 

従って、上記二つの政策は、中国共産党の46名の主席団などの幹部に対する、飴と鞭をセットにして、何方を選びますかと示した民主党バイデン政権の脅迫状(或いは罠)だと思う。

 

中国共産党の幹部たちや長老たちに、北京北三環路の“四通橋”に「習近平は国賊である」との横断幕を掲げた勇士の半分の勇気があれば、習近平の続投は否決されるだろう。一般には習近平続投が確実と言われる中、通説に疑問を呈するmotoyama氏の意見には十分な根拠があると思う。

 

勿論、現在恵まれた境遇にありながら、自分が弾圧され殺される可能性を覚悟して、習近平続投に反対することは至難であり、何もなかったかのように習近平の第3期目が決定される公算も相当大きい。それが通常のだれもがする解説である。

 

しかし、今朝の朝日TVの羽島慎一モーニンショーで中国専門家が言っていたように、習近平続投は昨年から決まったいたことで議論の余地がない情況ではないと思う。日本のテレビの解説は、かなり粗雑である。私はmotoyama氏の解説がより詳細で深いレベルからの話だと思う。

(20:35編集)

 

追補:(10/18/早朝追加)

 

1)以下は昨日から考えて居たことである: 反対意見も多く出る中で再選を決定した場合、習近平はハイエンド半導体チップが必要なら台湾を武力併合してしまえばよいと考え、台湾侵攻を実行する可能性がある。米国バイデン政権の上記二つの政策は、比較的経済力が残っている今が、台湾侵攻の機会であると、周近平に思わせるためのものだとも考えられる。そう考えると、バイデンのグローバリスト政権が共和党の政策に相乗りするような今回の対中国政策が読めるような気がする。

 

2)(10/18/6:30追加)昨日付けのmotoyamaさんの動画では、周近平の第三期総書記就任は50%以上だと思うに変更されていました。共産党大会一日目を過ぎた時点での観測結果だと思います。https://www.youtube.com/watch?v=FY7FUalzn28

 

補足:

 

1)共産党のトップが総書記であり、国家のトップが主席である。一般に、共産党のトップは行政組織である国家でのトップより上である。外交では楊潔篪(党)の方が王毅(国家)より上位にある。ただ、中国の政治権力でもっとも大事なのは中央軍事委員会の主席だそうである。例えば、国家主席にも総書記にもならなかった鄧小平が最高権力者としての地位を保つために、中央軍事委員会の主席のポストだけには拘った。

 

2)三期目が憲法で禁止されていたのは国家主席のポストであり、共産党総書記のポストではない。国家主席の三期目禁止条項も2018年に憲法改正でなくなった。総書記が国家主席を通常兼ねるので、総書記三期目が通例に無かったことになる。

 

3)中国の重要な意思決定は中央政治局常務委員7名の多数決で決定される。これが北朝鮮の独裁と大きく異なる点である。尚、常務委員はチャイナセブンと呼ばれることがある。以前9人だったこともあり、その際にはチャイナナインと呼ばれていた。

 

4)このような規制はWTO(世界貿易機関)の規定には違反すると思う。現在の世界は、この国際条約の規定を議論する段階を超えていることを意味する。

 

5)今回の国家安全保障戦略報告での中国脅威論は、先日のポンぺオ前国務長官の「中国共産党の敵は中国人民である」という考えとは根本的に異なると思う。(8日の記事:

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12768333572.html )何故なら、もし中国共産党政権が最大の敵なら、その崩壊は習近平が続投して独裁を完成した方が早いと思われるからである。一旦豊かさを知った国民は、今後の経済の衰退に耐えられないだろう。その不満を弾圧する先にあるのは、中国政府の北朝鮮化である。それは、中国の旧ソ連型の崩壊まで後戻りが出来ないだろう。しかし、習近平が退陣すれば、従来の強い経済力の中国に戻り、民主党政権は徐々に10年まえの関係に戻る筈である。

 

最新の及川幸久氏の動画では、表題のようなことが語られている。

 

日本のマスコミ報道では、ウクライナ戦争ではロシアが敗退しつつあるという説が殆どだが、これは米国ネオコン・バイデン政権のプロパガンダであり、実際は逆だと言うのである。

 

そして、その戦況を挽回すべく、ゼレンスキーは米国にロシアの核攻撃を要求しているという。そのゼレンスキーが米国にはそろそろ鬱陶しくなってきたというのである。

https://www.youtube.com/watch?v=sC1I_h6hcMo

 

そういえば最近、バイデンはロシアなどたいした敵ではなく、中国こそ最大の敵だと言い出した。

 

 

これは単に中間選挙を睨んで、共和党の票のうちトランプを鬱陶しく思っている人たちの票を取ろうという策略だと思うが、上記ロシアとウクライナの戦争で、ゼレンスキーを持て余していることがもう一つの理由かもしれない。

 

中国では今日から全国共産党代表大会が始まる。ジョージソロスなどは江沢民派の中国を応援してきたのだが、周近平は邪魔者だと思っている。従って、今回の大会で習近平が共産党総書記の地位を獲得すると考えての発言だろう。

 

兎に角、上記及川さんの動画を推薦したい。この動画は、グーグルににらまれているようで、上記HARANO Times の動画のような形に引用できませんでした。削除される前にみることを進めます。

尚、私は未だこの情報を自分の考えとして出すほど、自信はありません。