松下幸之助は、「企業は社会の公器である」と言った。その言葉は、「企業は、社会が求める仕事を担い、次の時代に相応しい社会そのものをつくっていく役割があり、そのためにはトップのみならず、あらゆる職階において、本来の「経営」が機能しなければならない」と、松下が作ったPHP研究所のシンクタンクにより説明されている。

https://thinktank.php.co.jp/policy/4976/

 

この言葉が企業創業者の口から語られることは、日本文化の中でしかないだろう。公器を辞書を用いて英訳するとpublic institutionであり、パナソニックのような会社を意味するprivate companyとは全くことなる。(補足1)

 

松下幸之助の言葉を英語にした場合に発生するこの言葉上の矛盾は、日本と欧米との文化の違いによる。

 

私企業でありながら、公共に寄与すべきという創業者による発言は、「公」と「私」が峻別される社会ではあり得ない。日本では「公」と「私」は対立する概念でありながら、「公」は「私」を包含する関係にある。

 

「公」は大きな家である。多くの「私」(個人、民)が、その大きな家に棲み、且つ、それを構成する。その大きな家とは日本社会である。全ての民がこの社会のあり方を当然のこととして信じている。自分たちが棲む社会をを豊かに清潔になり棲みやすくするという民族の中での合意が、個人だけでなく日本の企業にも、存在するのである。(補足2)

 

為政者が民衆に向かって、そのように説教すること、或いは法を制定して強制することは西欧でもあるだろう。しかし、その法律はそのような思想を多くは持たないことを前提にして制定されている。それは、単に行政コストの削減のため、民衆に対する強制に過ぎない。

 

この大きな家に棲むという意識が日本社会の特徴であり、それは誰もが心得る道徳である。道徳の中心に宗教があるとすれば、日本人はその宗教「日本教」の信者であるとも言える。これは山本七平氏の説く日本教とは相当異なる。(補足3)

 

山本氏の日本教は、日本教の西欧的文化へのシニカルな投影である。日本教は日本神道と深く関係しているか、それに等しいと思う。多くの日本人は自分は無宗教だと信じているようだが、殆どはその信者と言ってよいと思う。
 

全ての「私」が、「公」の意識を衣のようにまとって共同体を形成し、その機能と繁栄を担う。この公私の関係は、日本が均質な国民によって構成されること、構成されていると信じることによって可能となる。従って、日本は公私混合社会である。(補足4)

もう一つの表現では、「公」という感覚が「私」という自覚とともに日本人の原点に存在する。昔の人はよく「御天道さんが見ておられる」という言葉で、「公」を意識する習慣を子供や若者に教えた。恥とは、「公」に貢献出来ない「私」の自覚だろう。

 

最近ネットで明らかになった回転すし屋での若者の不埒な行動は、この「おおやけ」という概念の衰退が一つの原因である。日本社会から公を除いたら、失礼だが、中国社会のようになってしまうだろう。(補足5)

 

 

2)「公」の感覚が全くない米国社会


日本人の多くが持つ「公」という感覚は、世界一安全な街と道徳を弁えた道行く人々を作り上げている。西欧でも、その「公」という感覚がまだら模様のように存在はするかもしれないが、全て異なった政治色に強く染まっていて、本来の「公」感覚ではない。

 

多分、キリスト教などの権威が強く存在した昔には、純で統一的な「公」感覚が西欧にもあっただろう。しかし、それがキリスト教の衰退或いは変質により、欧米、特に米国では失われている。(補足6)

 

「法」が「公」的感覚の喪失を埋め合わせるべく導入されても、社会から「公」の感覚が跡形も無く消え去った場合、悪用されるだろう。つまり、どのような法も恣意的に適用され、混乱の時代や暗黒の時代に導く原因となるだろう。


その状況が前回記事で書いたスターリンのソ連の状況だった。その100年後の再現が、現在進行中の米国での左翼民主党が中心になって行ったトランプの逮捕・起訴劇である。

 

それは今回だけのことではなく、この数年間の米国全体の傾向である。同様の左翼検事の暴走は以前も書いた。サンフランシスコでリコールされたChesa Boudin地区検事である。トランプ逮捕を考えるとき、以下の動画を見てその原因を考えるべきである。

 

彼は、昨年の6月リコールされるまでの2年間の在任中に、極端な検察改革を行った。例えば、”生活の質が低いことが原因の犯罪”は起訴しないことなどである。強奪や強盗でも950ドル以下のものは罰せられなかった。https://www.youtube.com/watch?v=2n10KfB1zPs

 

 

自分と自分に近い人たちの損得を優先する姿には、国家全体や国民全体を見る視点が全く欠けている。その結果、行政も司法も、常に敵と味方の戦場であり、言葉尻にでも引っ掛かれば如何様にも法を適用し、公平さなど視野にない。

 

公平に見れば、民主党の歴代大統領などはとっくに懲役刑を食らっている筈。バイデンのウクライナや中国での収賄、ヒラリーの国務省での私的メールアドレスの流用、ペロシと夫とのインサイダー取引疑惑など全て重罪である。

 

因みに、トランプ逮捕の起訴状には、弁護士マイケル・コーエンがトランプと一度関係を持った元ストリップ嬢のストーミー・ダニエルズに、大統領選挙中にスキャンダルを流さないように要求に対して支払った口止め料の会計処理の不備が書かれているという。ヒラリーやバイデンのケースに比べれば微罪である。

 

しかも、その関係とはトランプが過去ホスト役だったテレビ番組に出たいので行った枕営業だったという。この件、ダニエルズの処罰だけで終わってしかるべきはなしである。元トランプの弁護士マイケル・コーエンの暴露本にあるそうだ。https://ameblo.jp/chuka123/entry-12794674827.html

 

緊急避難的なその口止め料に関する記帳不備という軽い犯罪で、元国家元首を逮捕起訴し、それを片方の政党は批難し、もう片方の政党は支持し喜んでいる。そこには、米国という大きな家(おおやけ)の幻さえも存在していない。

 

その背後にある病根を一掃しようと戦っているトランプは、起訴に応じて召喚されたのち、「私の間違いは、この狂った米国を救おうとしたことだけだ」と言ったという。https://www.youtube.com/watch?v=h8cMUdSgdII

 

補足:


1)public institutionは公的機関であり、日本語では公社に近い。一方、会社(company)は通常私的な人の集まりである。

 

2)大リーグ中継の中で大谷翔平選手がグラウンドのゴミを拾う光景が屡々みられる。ワールドカップサッカーの試合のときに日本のサポーター(応援者たち)が観客席のゴミを拾う姿もあった。これらも全て、日本人の上記思想或いは信仰による。

 

3)日本人は集団全体として共同体をなすと言える。日常的にはその存在感は希薄だが、非常時には存在感を増す。「公」の意識は、この共同体意識に等しい。この共同体メンバーを集めて機能体組織を組むことが難いのが、日本の衰退の原因の一つである。それが、私とあなたの対立を嫌い、主語の明確でない日本語となり、非論理的な日本文化の原因だろう。その状況を幾分シニカルに形容したのが山本七平の「日本教について」である。これについては既に議論している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12498442798.html

 

4)一般に言う公私混同とは全く異なる。公私混同は公の財布から金品を盗み取る行為である。公私混合とは、「私」の利益と「公」の利益の両方を、すべての個人が考えるという意味。

 

5)中国社会の凄まじさは、以前ブログ「中国人群衆の自殺見物と「早く飛び降りろ」の合唱について」に書いた。中国社会では、同じ社会のメンバーに対する思いやりがない。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516516.html

 

6)イエスの言葉に「汝の敵を愛せ」「敵のために祈れ」などがある。これは当面の敵対関係にある相手も、同じ社会同じ神の下に棲むことを忘れるなということだろう。これと関連して、伊藤貫とジェイソンモーガン両氏による「米国のモラル崩壊とその原因」についての議論を3月14日の記事で紹介した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12793627762.html

 

<終わり>

トランプ元米大統領が、マンハッタン地区検察により逮捕起訴された。在カナダの日本人ユーチューバーによると、起訴状の内容には以前から言われている口止め料の会計処理に若干の不正があったという類の罪以外は明確には書かれていないようである。 https://www.youtube.com/watch?v=J8LZcXas7fY

 

今後、手続き上大きな間違いがあったなどの理由で、裁判所が起訴を却下するなどの措置が取られなければ、そして当事者であるアルビン・ブラッグ検事が全く無事なら、米国は今後内戦か、ソ連や中共のような一党独裁の全体主義国家のどちらかになる筈である。

 

勿論、これまで民主主義を装っていただけであるという意見もある。そしてその本質に関する議論は、メジャーなマスコミにより陰謀論(或いは都市伝説)として葬られてきただけなのかもしれない。ただし、これからはその本質を隠さない米国となるだろう。
 

NewYorkサバイバルというハンドル名で動画配信している元日本のジャーナリストが、あるソ連高官のセリフを紹介している。

https://www.youtube.com/watch?v=owE4SJ-7qSM

 

 

それは、スターリンに向けて発した内務省高官の言葉である: Show me the man and I will find you the crime.


 

 

意訳すれば、「私に男の名を知らせてくれれば、刑務所に放り込むための罪を用意します」となる。今回、一地方検事のアルビン・ブラッグが、ソ連の秘密警察がやるようなことをやったのである。

 

今回の米国のケースが誰かの要請によるとしたら、その誰かは、現在の民主主義国の大統領の様に見える人物を遥かに越えた権力者だろう。つまり、バイデンを大統領に据えた人物、真の独裁者の指金があった筈である。
 

1941年から13年間最高裁判事だったロバートジャクソンという人の言葉を日系米国人ユーチューバーのHaranoTimesさんが紹介している。「検察官のもっとも危険な権力は、起訴したい人を選べることである。比較的簡単に、誰でも何らかの犯罪を犯したことを証明することができる。(要約)」 https://www.youtube.com/watch?v=0aBPq3VM1Ug

 

しかし、現在は、そのような議論をしても無駄である。検察官が危険な存在になる可能性を云々する時は既に終わっている。何故なら、元大統領がどこにでも転がっているレベルの罪で、既に逮捕起訴されたからである。

トランプ元大統領が予想通り逮捕された。歴史上初めての元大統領の起訴であり、米国は今異常な事態になっている。この起訴の目的はトランプを次期大統領にさせないことだろう。しかし、それは単にトランプの評判を下げることで達成するのではなく、もっと激しい手法を念頭に置いている筈である。(補足1)

 

何故なら、トランプを起訴収監しようという動きが出る度に、トランプの支持率が上昇しているからである。実際、FOXテレビの世論調査では、今回の起訴騒動によりトランプの共和党内での支持率が55%程と相当上昇したようだ。

 

単にトランプの評判を落とすために司法の政治利用という禁断の手を使ったのなら、それは逆効果だろう。この件について、及川幸久氏が動画を配信して、分かりやすく解説している。https://www.youtube.com/watch?v=lIvEWyw_aOA

 

 

及川幸久氏はその動画の中で、次期大統領選の期間が裁判と重なり、トランプは出馬できないことになると言っている。しかし、裁判中でも有罪が確定しなければ立候補資格があるので、トランプなら立候補するだろう。

 

トランプを起訴したのは、ニューヨーク州マンハッタン地区検事局のアルビン・ブラッグ検事である。彼は大富豪ジョージソロスの支援で選挙に勝った(補足2)ので、ソロスの考えの通りに動いている筈である。

 

これまでジョージソロスと米国国務省は協力して米国の“戦争外交”に関与してきたので(補足3)、この件もブラッグ検事の思いつきや私情によるのではなく、その政治勢力の良く練られたシナリオに沿っていると思う。

 

もし重罪でトランプを有罪にできるのなら、既にその罪状は明らかになっている筈である。今回、そうでなくてもトランプを起訴する決断をしたのは、おそらく正常に次回大統領選挙が行われないことを想定している筈。例えば、トランプ支持派が大暴動を起こすこと等を想定しているだろう。

 

彼ら左翼は、もしその様になったら我々の勝ちだと思っているだろう。その暴動鎮圧の中で、トランプ支援者もトランプ本人もまとめて面倒を見てやると思って、この最後の手段に出たのだろう。内乱状態になれば、大物は命を失うのではないかと想像する。

 

従って、トランプ支持派が勝利を得たいのなら、できるだけ静かにすることである。トランプの手錠をかけられた姿を見ても、犯罪者として写真をとられそれが新聞に掲載されても、抗議集会位にして見守ることである。内乱になっては正規軍を持つ政権側に弾圧されて終わりだろう。

 

及川氏の動画の後半に現れる政界の大物たちのコメントが面白い。中でも、元下院議長のナンシーペロシが、トランプに「無罪の証明」をするように求めるコメントを出したという。及川氏はペロシが「推定無罪の原則」が分かっていないことが分かったと言っているが、そうではないだろう。
 

ペロシがそれをを知らない訳がない。彼女は「無罪の証明」ができないトランプは悪人であるという論理が大衆一般には通じると思ってインチキを言っているのである。民主党左翼はウソとインチキを武器にこれまでやってきたのだが、それは大衆を馬鹿にすることで成り立つのである。


 

補足:

 

1)先月のブログで、そのあたりのことについて少し書いた。トランプが拘束されたら何が起こるかわからない | Social Chemistry (ameblo.jp)

 

2)米国では検事は選挙で選ばれるそうだ。この選挙が政治的な性格を帯びる場合、検事が政治的な意図を持つに至ることは必然である。今回のケースは、英国コモンローシステム(陪審員制度を含む)が伝統の浅い多民族国家に持ち込まれた時のデメリットと、検事を選挙で選び、それに民間から多額の選挙資金が流れ込み得るという米国の歪な検察制度のデメリットが重なった結果だろう。

 

3)ジョージソロスは、2014年のウクライナでの政変の裏でテロ支援に資金提供したことが知られている。また、その後のウクライナの大統領を誰にするかを米国の国務省の担当官(ビクトリアヌーランド)が電話で誰かと相談している場面が録音され、公開されたことがある。この一連の作戦で、ウクライナから親露派大統領ヤヌコビッチが追い出された。

 

(17:30編集)