彼はイタリアのテノール歌手。
自動車事故のため43歳という若さで不運な死を迎える。
あれから、もう7年の歳月が流れてゆく。
彼を一躍有名にしたのは2002年のメトロポリタン歌劇場。パヴァロッティが
演じるはずだった『トスカ』を病気のためキャンセルし、彼の代役としてリチートラを指名。
見事、カヴァラドッシ役をこなし、この公演自体が空前の成功となり、
リチートラの名が知れ渡り、30代の前半で一気に大輪の花を咲かせることになる。
彼が歌の世界に入ったのは18歳の時。パルマの音楽院に入学する。
それは、単に母親のススメ。人生はそんなもの。
20代でコンクールにエントリーするが、全て落選。
一つの転機は、27歳。生涯の師となるカルロ・ベルゴンツィに師事。
そこで研鑽の日々を送ることになるが、彼に言われた言葉が
「君には君の声しかない。人の真似をするな。自分を信じろ」
だった。
師との出会いがかくも人を変えるか、ということを思わせる。
今、命があれば、どれほどの歌手になっていたであろうかと、思わされる一人。
今、窓辺では秋の虫たちの鳴き声が聞こえてくる。
耳を澄ませれば、様々な、独特の歌声のように聞こえてくる。
その声は、それぞれに特徴がある。
習って歌うものではなく、自分流の歌を奏でている。
ラフカディオ・ハーンの言葉に
「クサヒバリは詩人だ。小さな虫は命がけで歌って、
自分の脚を食ってまで歌声をあげる」とある。
今、窓辺で聞こえてくる虫の声にはそのような悲壮感はない。
むしろ、自信を持って、歌っているように思える。
それは、リチートラを変えた言葉
「君には君の声しかない。人の真似をするな。自分を信じろ」
そんな自信に裏打ちされたような声のように響いてくる...
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<了>