CUBE 一度入ったら、最後 | ヲタクの生きる道

CUBE 一度入ったら、最後

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この評価を読む前に
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レンタルは劇場での上映時期とはズレてます。

 

ジャンル・・・SF

 1)オススメ・・・4
 2)ツボ・・・2
 3)脚本・・・2
 4)映像美・・・6
 5)特殊効果・・・6
 6)俳優・・・7
 7)監督・・・2
 8)音楽・・・6

 9)独自性・・・4
10)キャラ・・・3
合計・・・42点

 

【概要】

上映時間:108分

Amazonプライムサイト

Amazonプライムにて鑑賞。

2021年公開の邦画。

原案:ヴィンチェンゾ・ナタリ

監督:清水康彦

脚本:徳尾浩司

出演:菅田将暉、杏、岡田将生、斎藤工、田代輝、吉田鋼太郎

 

【ストーリー紹介】Amazonプライムサイトより引用

目が覚めるとそこは謎の立方体=CUBEの中だったー。 突然閉じ込められた男女6人。エンジニア、団体職員、フリーター、中学生、整備士、会社役員。彼らには何の接点もつながりもない。理由もわからないまま、脱出を試みる彼らを、熱感知式レーザー、ワイヤースライサーや火炎噴射など、殺人的なトラップが次々と襲う。仕掛けられた暗号を解明しなくては、そこから抜け出すことは絶対にできない。体力と精神力の限界、極度の緊張と不安、そして徐々に表れていく人間の本性… 恐怖と不信感の中、終わりが見えない道のりを、それでも「生きる」ためにひたすら進んでいく。果たして彼らは無事に脱出することはできるのか?!

 

【トレーラー】

 

【総評】最下記にネタバレあり

このレビュー記事は、今作に対して非常に否定的な内容になります。

今作が好きな方には不快な内容です。

ご注意ください。

 

 

下記の項目でまとめてみた。

1)なんてことをしてくれたんだ

2)ダメな部分(会話劇)

3)ダメな部分(演出)

4)ダメな部分(人物設定)

5)結局どうなの?

6)ツッコミどころ ※ネタバレあり

7)ダメなところのまとめ

 

1)なんてことをしてくれたんだ

ソリッドシチュエーションスリラーの元祖であるカナダ版「CUBE」のリメイク日本版。

 

簡単に言ってしまうと、元になった映画の大事な部分が欠落した劣化版。こんなに素晴らしい6人の演者を出演させて、製作側はなんてことをしてくれたんだっていう、怒りの感情が沸き上がった映画。

 

ストーリーの全体のおおまかな流れはほぼ元の映画と同じだが、元の映画の面白かった部分をなぜか簡素にしてしまって、的外れで面白くないエピソードを無理矢理挿入して、中身のないスカスカの作品になってしまった印象。

 

元となった映画を未鑑賞の人が見たら面白いと思うのかは全くわからないが、傑作と言われた元の映画をなんども見た自分からしたら、これはあらゆる面でダメだと思った。なんども言わせてもらうが、こんなに素晴らしい6人の演者を出演させて、なんてことをしてくれたんだよ、マジで。

 

一般レビューの大半が酷評してるのがよくわかる。自分も一般の酷評と全く同意見。

 

元の映画が好きなら、絶対に見ない方がいい。

好きな演者が出演していても見ない方がいい。

 

2)ダメな部分(会話劇)

たくさんあるダメな部分のなかでも、まずはソリッドシチュエーションスリラーの肝である会話劇について触れてみる。

 

今作のダメな部分の象徴であるのが会話劇。元の映画の面白かった「キャラ同士の心理的駆け引き」は会話劇に凝縮されていたと思うが、それは少ない登場キャラと限定された空間と生死を常に伴うサバイバルという極限状態に追い詰められた状況のなかで、それぞれが生き残るために、時に協力し、時に対立しつつ、誰が陣頭指揮を執るかなど、目まぐるしく変わるパワーバランスが巧妙に展開していてそれが面白さにつながっていた。今作はそのキャラの駆け引きが激減していて、それぞれの行動に至るエピソードの盛り込み方が少なく薄すぎて、駆け引きが全く面白くなくなってしまっている。ていうか駆け引きそのものが激減している。

それに比べて主人公後藤(菅田将暉)の過去映像をしつこいくらいに差込み、最後の驚きの展開へと導きたかったんだろうけど、大したオチでもないのでまるわかりで、だからなに?ってくらいの、そんなことはもうわかってるんだよって感じに陥っていて、全く驚き要素でなくなってしまっている。あんまりにもまるわかりすぎたので、驚愕のひねり展開の前のフリだと思ってたくらい。だけどフリではなくただのまるわかり映像で、このエピソードの配置や演出はひどいし、盛り上げる方法がまるで機能していない。

 

もっと言うと、その面白くなくなった会話劇の大きな要素として説明調のセリフが多く、そこまで説明しなくていいことまで説明していてうざい。そこまで説明されなくてもわかるっての。なんとなく察するようなこととか、あとになってあのセリフにはこんな意味があったのかとか、そういう練りこみや伏線としての散りばめ方が全く不足していて、限定された空間で展開するソリッドシチュエーションスリラーの醍醐味が根本的に欠落している。はっきり言ってしまうが、脚本の完成度が低すぎる。会話劇を構築できるレベルに達していない。

 

3)ダメな部分(演出)

脚本的にダメな部分のウエイトが大きいが、演出面でもダメな部分が目立つ。似たような空間の連続だからこそ、カメラワークにこだわって、様々な見せ方で緊張感を演出してほしかったのだが、カメラワークのこだわりを全く感じさせてくれなかった。全体的に迫力がなく緊張感が薄い。

 

あと主人公後藤の過去映像の差し込む量の多さ。あのしつこさはなんなのか。なんであんなにしつこくやるのだろう。視聴者はバカじゃない。あんなにしつこく差し込まなくてもわかるっての。それにその過去映像も、同じ映像の使いまわしばかりで、徐々に判明するのはいいんだが、見せ方を毎回変えないと、いい加減うざいだけ。演出が全体的に稚拙で、不慣れというか経験不足感を強く感じた。演出的にも今作のようなソリッドシチュエーション作品を手掛けるレベルに達していない。

 

 

4)ダメな部分(人物設定)

全登場人物の設定が薄い。悪く言うと厨二病が思いついたような、ありふれた底の浅い設定で、全登場人物の掘り下げが不足しており、意外性がほとんどないってのが見ていてきつい。はっきりいってサイコ設定もバレバレだぞ。こういう元の映画があるアレンジ映画なんだから、良い意味で裏切る展開にしないと。悪い意味でいろいろと裏切ってくれたけど。

 

世界設定でも杜撰なところが多々あるが、それらも含めてツッコミどころとして、最下記にネタバレありで連記する。

 

5)結局どうなの?

かなり評判が悪かったが、好きな演者が多数出演してるので、自分のように怖いもの見たさで見る人もいるだろう。結局、評判通りの作品であることを確認するだけ。元の映画を期待すると、がっかり感が半端ない。

 

強力で個性的な演者を集めても、脚本と演出がダメなら、どうしようもない。なんにも期待しないで見れば、がっかり感は少なくともないかな。自分は二度と見ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6)ツッコミどころ ※ネタバレあり

ツッコミどころはたくさんありすぎるのだが、特に気になった部分について触れてみる。

 

■途中からトラップの発動に時間差が生じる

トラップが当初はその部屋に入るとすぐ発動していたのに、終盤になってくると部屋に入って少したってから発動する。理由は不明のままで、その伏線もない(その部屋に入った人間の数が一定数になると発動するという見解の人もいたがそれにはまったく賛同しないし、終盤の人数が減った状態になるとその条件では発動しない部屋ばかりになるのでゴールが近くなるほど簡単になるという理屈になるのでバランス的におかしい)。おそらくただの映画的な見せ場の演出と思われる。各トラップに対し命がけで挑んでいる設定で、途中からトラップ発動のルール変更をするなら、ちゃんと伏線を伴った設定をしろ。つまらない人物設定はしつこく説明をするくせに、大事な部分は説明調のうざいセリフすらなしか。トラップが入室してからある程度経過したあとに発動するって、かなり対応を変えなくてはならない事象だってわかってるのか?この途中の設定変更は説得力が伴わないならアウトだぞ。

 

■主人公後藤に運営側が固執する理由

主人公後藤しか知り得ない情報を運営者側がなぜ知っているのか。後藤のトラウマを終盤の一番の見せ場に持ってくるのはいいが、運営者側がどうやってそのトラウマを知り得たのか。あるいはどうやってでも知りたいとする理由はなんなのか。なぜ運営者側は後藤に固執するのか。そのへんのなぜ?なぜ?が一切明かされないまま終わるのはいかがなものかと。しつこいくらいに後藤の過去映像を流したのに、そのへんの大事な部分をまったく描かないのは無責任すぎやしないか?

 

■主人公後藤視点の映像の記録がなぜあるのか

これが一番あり得ないんだが、主人公後藤の一人称視点の映像をなぜ第三者が見れるのか。これはあまりにも無理すぎやしないか?一人称視点の映像を第三者が映像記録として残すのはいくらなんでも無理すぎる。主人公の脳内の映像を視聴者に見せるところまでで抑えればいいのに、なぜ主人公以外の登場人物に映像で見せることまでしたのか。絶対にありえないんだよ、このカメラアングルの映像を第三者が見るのは。

 

■甲斐麻子(杏)の立ち位置

運営者側だったことが最後にわかる甲斐麻子だが、入場者たちを自力で攻略させていたのに、なぜ最後に甲斐が出口のヒントを与えたのか。これは全ての入場者がある程度のところまで攻略すると、出口へ促すということ?いまひとつ甲斐の役割と運営者側の意図がわからなすぎる。まぁ運営者側の意図は元の映画でもわからないまま終わったんでそこはいいとしても、運営者側の人間?がトラップ攻略者メンバーのうちにいるには、それなりの強い理由が必要。それさえもはっきりしないまま終わっちゃうのか。

 

7)ダメなところのまとめ

結局のところ、オリジナルがまず大前提にあって、今作の面白さを加味するために、いろいろなアイディアを付け足して、なんとか作品の独創性を膨らませようとしたのは痛いほどわかる。しかしその付け足したアイディアが、元からある世界観設定とちゃんと適合し、上乗せの効果に結びついたのかの検証が全く足りていない。また自分らで新たに作ったキャラクター設定やキャラクターたちの相関図がストーリーの面白さに結びついていない。

 

メンバー内に管理者側の人間を最初から加えて最後にネタを明かしたらびっくりするんじゃないか。

メンバー内にサイコさんを入れたら物語がスリリングに展開するんじゃないか。

主人公に強烈なトラウマを設定してそれが逆転する事実を加えたら刺激的な物語になるんじゃないか。

 

たぶんちゃんと上記のアイディアを生かせていたなら、それなりに面白くなったと思う。でも脚本・演出ともに技量がまったく足りていなかった。ソリッドシチュエーションスリラーの何が面白いのかを整理してから制作してくれよ。

一番の罪はこんな素晴らしい演者に黒歴史を加えたことだ。