未成年裁判 | ヲタクの生きる道

未成年裁判

NETFLIX公式サイト

 

【オススメ対象】

・韓国ドラマが見たい

・韓国の少年法事情に興味あり

・法廷ドラマが見たい

 

この評価を読む前に
映画の嗜好について
を一読してください。

レンタルは劇場での上映時期とはズレてます。

 

ジャンル・・・サスペンス

 1)オススメ・・・8
 2)ツボ・・・8
 3)脚本・・・9
 4)映像美・・・7
 5)特殊効果・・・7
 6)俳優・・・9
 7)監督・・・8
 8)音楽・・・7

 9)独自性・・・9
10)キャラ・・・9
合計・・・81点

 

【概要】

NETFLIX公式サイト

NETFLIXオリジナルドラマ。

吹替版あり。

2022年2月配信・約60分くらい、全10話

脚本:キム・ミンソク

出演:キム・ヘス、キム・ムヨル 他

 

【トレーラー】

 

【ストーリー紹介】NETFLIX公式サイトより引用

地裁の少年刑事合議部に着任したシム・ウンソクは、子供たちに親身に接するチャ・テジュと出会う。触法少年による殺人に不可解な点を見つけるウンソク。

 

【総評】ネタバレなし

最近レビュー記事が滞っていたのは、このドラマのレビュー記事のせい。

扱っているテーマに関して関心があることもあり、非常に長文になってしまい、このレビュー記事に非常に時間がかかってしまった。

 

ドラマ自体が」知りたいだけなら、下記の1〜4までで十分。

あとはネタバレあり記事と、少年法に思うことなんで、自己満足内容。

 

下記の項目でまとめてみた。

1)作品概要

2)ストーリー概要

3)韓国の少年法について

4)結局どうなの?

 

ネタバレあり

5)違和感

6)ツッコミどころ

7)少年法に思うこと

 

 

1)作品概要

韓国の未成年者の犯罪における裁判というかなりエッジのきいたテーマに真正面から挑んだ意欲作のドラマ。日本では地上波で絶対に放送できないドラマではないかと。まずスポンサーがつかないだろうし。

 

韓国もまた日本と同様に少年法があり、3類型(犯罪少年触法少年ぐ犯少年)に区分されているのだが、日本と同様に未成年は刑罰について更生を見越した減刑制度があり、ケースによっては殺人を犯していても「未成年だから」という理由で成年なら重罰相当であるにも関わらず、軽い罰あるいは無罪になるケースがある。このタブーともいえるテーマに、主人公に少年法を扱う地方裁判所の裁判官を据えて、現行の少年法に問題はないのか、問題があるとしたらどういうものがあるのか、あるいは実際の少年法に適合する加害者にどう向き合えばいいのか、更生の実情はどうなっているのかなど、かなりしんどい部分に切り込んでいる。

 

2)ストーリー概要

各事件は基本前後編の2話構成で進行しつつ、全体を通したストーリー進行があるのだが、どちらかといえば各事件のほうを重視しており、全体の流れのストーリーの各話の密接度はそれほど高くない。各話のエピソードの濃度はかなり濃いエピソードで、主人公の過去をからめた全体を通したエピソードは最終事件に集約している。

 

私的な印象としては、各事件エピソードはなかなか見応えがあるが、全体を通してのストーリーは予想通りなひねりのない展開で、それほど面白味はなかった。あと被害者の悲しみの慟哭というか泣きのシーンが若干長めでちょっとウザく感じた。

 

3)韓国の少年法について

詳しくはWikipediaを読んで欲しいが、このドラマを見る上で、軽く知っておいた方がより楽しめる情報として、自分なりに簡単にまとめる。

最も気に留めておくことは最初に触れた「3類型(犯罪少年、触法少年、ぐ犯少年)」なので、このワードを中心に書き留める。

 

【少年】20歳未満の者(男女の性別は関係ない)

【犯罪少年】罪を犯した少年

【触法少年】刑罰法令に触れる行為をした12歳以上14歳未満の少年

【ぐ犯少年】

・保護者の正当な監督に服しない性癖

・正当な理由がなく家庭を離脱

・罪性のある者若しくは不道徳な者と交際し、又は自己若しくは他人の徳性を害する性癖

上記にあって、その性格又は環境に照らして、将来、刑罰法令に触れる行為をするおそれのある12歳以上の少年

 

2000~2004年の5年間の実際の韓国内の処理人員

犯罪少年88%、触法少年12%、ぐ犯少年10人余り。

 

4)結局どうなの?

キャラのクセが強いこと、わかりやすい対立構造、各事件の濃密さ、各事件が必ずしもハッピーエンドにならない点など見どころが多い。しかし扱っているテーマが非常に重く、ドラマ自体がはっきりと「現状の少年法に問題が多い」というメッセージ性を強く打ち出しており、その辺りのアクの強さが非常に好みが分かれるところと思われる。

 

少年法はとりあえずおいておいても、ドラマ自体が裁判所内の法廷劇にとどまっていおらず、さまざまなバリエーションの場面があって、動きが多彩なところもあるので、面白いのではないかと。

 

 

 

 

 

 

 

ここからはネタバレありで

 

5)違和感

日本では完全にアウトと思えるシーンがちょっと目についた。それは主人公シム・ウンソク判事の上司である部長の怒りの表現。主人公たちが部長の指示に従わず、勝手な判断で状況を悪化させたことに激昂するんだが、激昂するのはとてもよく分かる理由。でもその部下たちを怒鳴り散らし、近場の花瓶やコップを床にたたきつけるシーンは、これって日本だと民間のブラック企業ならあり得るが、このシーンは地方裁判所内であり、パワハラやセクハラ事案も裁判で扱うような司法機関の場であり、こんなあからさまなパワハラが表面上はあってはならない場。にもかかわらずこのわかりやすい直情的なパワハラ。完全にアウトでしょう。ほんとにこんなシーンが韓国の地方裁判所内ではあるのだろうか。ちょっと安易な感情表現をやりすぎではないか?この演出には違和感が大きかった。

 

6)ツッコミどころ

私的に非常に変というかおかしいと思った部分がある。

それは第6・7話のエピソード。名門進学高校の試験の不正に関する裁判を扱った事案で、主人公の上司であるカン・ウォンジュン部長の法曹界での最後の案件であり、部長は政治家へ転身する夢を果たすので、無難にその裁判を成し遂げ、政界へ布石とする案件のはずだった。しかし部長の息子がその不正に関わっていることが発覚し、自分はその不正に絶対に関わるなと止めていたにも関わらずやっていたので、超ブチギレする。息子は父親からの日々のとんでもないプレッシャーにつぶされかけていて、追い詰められたあげくの不正への関与だった。

 

どちらも非常に事情にわかる話で、息子が自殺を図るのもまったくおかしなところがない流れなんだが、この自殺を図ったあとに非常におかしいと思ったのがこの部長の態度。なんでこんなバカなことをしたんだっていう態度。何を言ってんだと。この部長は自分の政治家転身の夢ががけっぷちになったことで激昂し、息子に「死ぬならひとりで死ね!」って言った。息子に死ねってお前が言ったんだよ。だから自殺を図ったのになんでそんなことをしたのかわからないってのはいくらなんでもおかしいでしょう。

 

息子の母親に責め立てられ、そこで初めて自分が息子を追い詰めていた元凶でありその成れの果ての不正の関与だということに気がつく。成績優秀な弟と比較して自殺を図った長男を責めていたことを思い出す。これだけのことを日々していたのに、プレッシャーをかけていたという自覚のなさ。それまで自分は家族ともども順風満帆だと思っていた。だからなんの問題もなく政治家へ転身できると思っていた。それがこのありさま。これは非常に罪深い。

 

あと、これはこのドラマを見たい人が誰しも思うことではないかと思うんだけど、判事が法定外でそこまで調べるのか?ってところ。ドラマに動きをつけたかったんだろうけど、ちょっとこれはやりすぎではないか。カン部長の後任のナ・グニ部長が方針に掲げていた効率主義は、たくさんの事件を扱う判事では、まともな意見だと思った。ここまで一つ一つの事件に入り込む必要があるのかと。提出された証拠からだけ判定すればいいはずで、なぜ提出されていない証拠を求めて、捜査権のない判事自ら現場に行くのか。完全に越権行為。絶対にやりすぎで現実離れすぎ。

 

 

 

 

 

 

7)少年法に思うこと

このブログでも何度も書いてることなんだけど、今作で改めて思うことがあり、説教臭く書いてみる。うざい内容なんで、興味のある方だけここから先は読んでください。

 

 

まず自分の基本スタンスは、少年法撤廃派。

被害者から見れば、加害者の年齢が何歳であろうと、やられた被害の大きさに変化があるわけではない。犯した犯罪になんで年齢が関係するのかが全く理解できない。というか、なぜ加害者側の事情を法廷の場で考慮しなくてはならないのかわからない。

 

例えば、殺された側が非常にクズ野郎で、加害者側のどうにもならないほどの被害の日々の果ての犯行ならば考慮しなくてならないのはわかる。しかし単純な強盗殺人の場合、ここに加害者の年齢や事情は被害者には一切関係ない。関係ないことになぜ情状酌量の余地を考慮する必要があるのか。日本は強盗殺人は重罪である。ならばその強盗殺人を犯した未成年はただ重罪として罰すればいい。何件もやってるなら死刑は相当の罰である。未成年であるからなんだというのだ。

 

少年法に限らず、日本の刑法はなぜ加害者寄りなのかが全くわからない。加害者の更生なんて被害者には全く関係ない。誰しも被害者になる可能性はある。一番守らなければならないのは被害者である。被害に遭う者が少しでも減らせるようにするのが平和社会の基本であると思う。一番最後についでに考えてもいい存在が加害者ではないのか。

 

昔、「世にも奇妙な物語」で非常に興味深いストーリーがあって、それは犯罪を犯した者は人権を剥奪され、更生施設に収容される。そこで自らの人権を取り戻すために、量刑に基づいたさまざまで過酷な更生プログラムが課せられる。現行の刑務所と何が違うのかというと、彼らには人権がないので、どう扱ってもいい存在であり、民事で訴えたりする権利を有していないということ。極端な話、食事を与えなくても問題になることはないし、おおよそ人間が住める環境でなくてもいい。人間として扱う必要がないから。朧げだけど、オチはここでのプログラム内容は世に知られることがないので、人権を取り戻せるとしていながら、人権が戻ることはなく、人知れず処理されている、って内容だった。

 

非常に極端なもしも話ではあるが、加害者に対してこれくらいやってもいいと思ってる。昨今の強盗事件の多発、あいかあわらず多い未成年犯罪、世間を騒がせるバカッター。量刑に幅がある事例たちだが、もっと罰は重くしていいと思う。

 

話が少年法から逸れてしまったが、加害者優先の更生を前提とした少年法なんていらない。もっともっと被害者を最優先に考えた刑法であるべき。被害者を最優先とする社会であってほしい。