タイガー&ドラゴン
【オススメ対象】
・宮藤官九郎脚本の傑作ドラマが見たい
・長瀬智也が見たい
・岡田准一が見たい
・落語大好き
この評価を読む前に
映画の嗜好について
を一読してください。
レンタルは劇場での上映時期とはズレてます。
ジャンル・・・コメディ
1)オススメ・・・10
2)ツボ・・・10
3)脚本・・・10
4)映像美・・・7
5)特殊効果・・・7
6)俳優・・・10
7)監督・・・8
8)音楽・・・9
9)独自性・・・10
10)キャラ・・・10
合計・・・92点
【概要】
NETFLIXにて鑑賞。
2005年地上波放送
全12話。54分。初回のみ114分
脚本:宮藤官九郎
出演:長瀬智也、岡田准一、西田敏行、
笑福亭鶴瓶、銀粉蝶、阿部サダヲ、春風亭昇太、
桐谷健太、塚本高史、伊藤美咲、蒼井優、
尾美としのり、北村一輝、荒川良々 他
【ストーリー紹介】NETFLIX公式サイトより引用
借金持ちの落語家に弟子入りした若いヤクザ。一方、その落語家の息子は、センスもないのに、裏原宿でブティックを経営していた。
【総評】ネタバレなし
下記の項目でまとめてみた。
1)作品概要
2)魅力的なキャラたち
3)卓越した構成力
4)珠玉のエピソード
1)作品概要
2005年にTBS系で放送された宮藤官九郎脚本の傑作ドラマ。
私的には宮藤官九郎脚本ドラマの最高傑作だと思ってる。
あらすじ。
山崎虎児(長瀬智也)は借金取り立てを生業とするヤクザ。その借金してる人のうちのひとり落語家・林屋亭どん兵衛(西田敏行)の落語を初めて見て感動した山崎は彼に弟子入り志願する。しかしそんな簡単に受け入れてくれるはずがなく、どうしても落語を学びたい山崎は、ある妙案を思いつく。
大きな流れはあるものの、基本形は一話完結型。その形ながらこのドラマが脚本的に圧倒的に優れているのは、各話のベースに古典落語の1作があり、その古典落語を現代の今作の登場人物たちになぞられつつ、山崎が経験した体験話をその古典落語として演芸で披露しながら、実体験と古典落語が絶妙にまじりあい、山崎の落語として完成していくという、そんじょそこらの脚本家では真似できない非常に高度なスキルが必要と思われる展開で、古典落語を全く知らない自分でも、グイグイと引き込まれる面白さがあり、1話あたりの濃密さと、登場人物たちが光り輝く見せ場の多さで、古典落語の面白さを知らしめる意味でも、このドラマの功績は非常に大きいと思われる。
2)魅力的なキャラたち
一番の見どころはもちろん脚本。古典落語を現代の出来事へアレンジする大胆さと緻密さを兼ね備えた稀有の傑作。
そのとんでもない脚本で輝きまくる登場キャラたちも見どころであり、各キャラの設定のアイデンティティも際立っている。
ちょっとだけメインキャラに触れてみる。
山崎虎児・林屋亭小虎:長瀬智也
昼は借金取りのヤクザ、夜は落語家。彼が落語に魅せられたことにより物語が動き出す。言葉使いは荒いが義理人情に厚く落語に向き合う姿勢は真摯。彼の独特の落語に魅せられた人が徐々に増えていく過程が丁寧で面白い。
谷中竜二:岡田准一
自らデザインした洋服を売るショップのデザイナー兼オーナー。しかし洋服のセンスは絶望的。山崎がほれ込んだ落語家どん兵衛の次男で以前は落語家をしており、一度見た落語は瞬時に覚えてしまう天才。古典落語を現代風にアレンジする才能もあり、虎児が落語のアドバイスを求めて竜二に会いに行ってから、タイガー&ドラゴンの関係が始まる。
林屋亭どん兵衛:西田敏行
落語の世界の重鎮。ある理由により借金を背負い、山崎に取り立てられる。落語家として全く違和感なく古典落語を披露する西田敏行の俳優としての実力はとんでもない。山崎とどん兵衛の関係性がこの物語の面白さの中心にあり、落語では師弟関係であり、借金では負債者と取り立て業者という、上下関係が真逆になっていてそれが同時に成立している絶妙な関係性の面白さ。このアイディアには脱帽。
この3人を中心にストーリーは展開する。他にもレギュラーメンバーはたくさんいて、回を経るとともにレギュラー陣が増えていき、それらの重厚なからみがまた面白くなる。
ちょっと話がそれるが、レギュラー陣のうちのひとりで、林屋亭どん兵衛の弟子のひとりの丸坊主がどこかで見たことあるなぁと思って調べたら、なんとあの星野源。まだ無名の頃か。かなりびっくりした。あなたは11年後にあるドラマにメインで出演し、そのドラマのエンディングテーマを作って大ヒットし、そのドラマの共演が縁で、あの新垣結衣と結婚するんだぞ。って教えてあげたくなる未来。
3)卓越した構成力
第1話のスペシャル版も含めて全12話なんだけど、1話完結型の各エピソードの完成度の高さはもちろんのこと、全話を通してのストーリーも素晴らしく、ちょっとずつ小出しに、なぜこの人はこうなったのかとか、イベントがあってからの相対関係の変化など、どの話数に古典落語のどれをからめて全体のストーリーをどう進展させるかという構成力がとんでもない卓越さで、全話を通して視聴すると、最後の後味感の良好さもあって、とにかくたくさんの人に見てほしいと思わせる傑作ぶり。
4)珠玉のエピソード
数ある珠玉のエピソードのなかで私的には第7話「猫の皿」が最も好き。最後のオチを言ったとき、毎回奥さんと見てたんだけど、ふたりして拍手してしまった。オチのスカッと感が素晴らしい神回。この「猫の皿」という落語の内容は事前に知っていたのも大きかったかもしれない。つまりベースとなる古典落語を知っていると、より一層楽しめる仕掛けでもあるということ。
よって、ちょっと忘れたころに、また見たくなるドラマでもあるのだ。
5)最高のラスト ※ネタバレあり
最後の第11話と第12話は古典落語の演目は別々だが、直結したエピソードで、ドラマ史に残ると言えるほどの素晴らしい後味最高のラスト。12話がそれぞれのキャラたちのその後的な話も絡めていて、非常にうまい構成。ずっと濃いエピソードたちをずっと見続けて、最後に特大のご褒美をもらえるような作り。是非ともたくさんの人に見てほしい。