パプーシャの黒い瞳 | Pokopen Photographic

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久々のポーランド映画でした。何年ぶりだろう。ポーランドの
映画監督と言えばアンジェイ・ワンダとかロマン・ポランスキー
(もっとも彼の場合はポーランド生まれですが、監督作品は
フランスで撮られていますので一寸違うかな)
クシシュトフ・キエシロフスキー位しか知りません。


なかなか素晴らしい作品で、しかもジプシーの生活なんてまっ
たく知らなかったので社会勉強にもなった?映画でした。



以下の文章はネタバレとなります。(ネタばれしても価値が
下がる様な映画ではありませんが念のため)


この映画は実在のジプシー女性詩人パプーシャ(本名は
ブロニスワバ・バイス)の生涯描いたものです。年代的には第一
次世界大戦後から1970年代前までの間。ジプシーというのは
当時は、幌馬車で転々と移動しながら暮らしている為、当然ながら
教育を受ける機会もなく、文字もないそうです。そう言う中で文字
に興味を持ちそして、詩を作っていくのでのですが、自身作家活動
という意識はなく、あくまでも日常の生活の中で自然と生み出された
物。それをたまたま反体制的な行動をとった為、ジプシーの集団に身
を隠した作家が才能を見出し、後にそれを新聞に発表することになる。
同時に自身のジプシーと暮らした体験を基にジプシーに関する本を
発行する。パプーシャはいくばくかのお金を得たが、むしろジプシー
の本が発刊されその本にジプシーの言葉、風習等が書かれており
自分たちの秘密が外に流れてその手助けをしたと、ジプシー社会
から追い出されてしまう。


パプーシャも知らなくてもいい物(文字)を知った為の天罰と
考え、書いた詩を燃やし、さらに精神を病んでしまい、最後は
自分が詩を書いていた事すら忘れてしまう様になってしまったと
いうストーリ。


映画は時代の流れに沿っているわけではなく、ある時代を行ったり
来たりして流れて行きます。そこらへんが半分謎解きのような
緊張感を観客に与えます。


この作品はモノクロで撮影されていて、確かに美しい映画となって
います。ただCGを使っているところもかなりあってあって、そこら
へんが一寸不自然な感じもして、たまたま見た、フィオナ・タンの
「プロバンス」という作品と比較しての話ですが。実際映画であの
美しさを超えるのはかなり難しいとは思いますが。あれを見てしま
った後なもので・・。なんとも言い難く。

映画を見て興味があったのは夫との関係。元々父親の楽団仲間。
(父親はジプシーハープ奏者)最初は直接求婚するも断られ、
そこで父親に有り金をすべて渡し娘を貰う事に成功。これで
結婚は成立した物の、パプーシャは自分の頬をナイフを当てて傷を
付け、森の精に「子宮を閉ざしてくれ」と願う事に。このシーン
は結構壮絶でした。その後二人の夫婦生活は詳しくは描写
されませんでしたが、途中夫が「この役立たずな女(多分子供を
産めない事を指している)」と怒鳴るシーンがある一方、
ジプシーの本が発行されるという事でパプーシャの裁判のような物
(本人は参加していない)があった時、一人パプーシャを
弁護するシーンがありました。さらに精神が病んだパプーシャ

を一緒に病院に連れて行ったり、そして夫が亡くなった後
夫がパプーシャが作った鶏のスープが好きだっととかで
鶏を盗み(多分)夫の亡骸の傍らでその鶏の羽をむしるシーン
がありました。どの程度実話に基ずいているのかは判りませんが
最初はともかく、夫はパプーシャを大事にした結果、夫婦
生活が上手くい行ったのか、そんな感じもします。


さてラストシーンはジプシーの馬車隊が、雪の降る荒野を進んで
行く様子をロングショットで捕えているシーンでこのシーンも
冒頭のパノラマ的なシーンと同じく。美しい映像でした。

ただ背景に流れる音楽が勇壮で力強い音楽でなんかソ連時代の
「人民万歳」的な映画のラストシーンを連想して一寸違和感
ありました。
もっともパンフレットでは高名な映画評論家が「この音楽は
素晴らしい」と絶賛してましたが。


ところでパンフレット買って分かったのですがこの映画
岩波ホールで上映される映画つまり、エキプ・ド・シネマ
で取り上げられた作品で、昔はシナリオなんかも載っていた
のですが、今回の作品は載ってませんでしたね。ページ数
も薄く成った感じで。でも最後にはエキプ・ド・シネマ
で上映した映画のリストがあって、あれも見た、これも見た
と懐かしく思う反面。見た映画がどんな映画か思い出せない
事もあって・・・。歳取りましたなあ(苦笑)


テオ・アンゲロプロスの「アレクサンダー大王」 って
どんな映画だったけ!