「ヴィオレッタ」観てきました。去年の10月イリナ・イオネスコの
写真展がナダール大阪で開催されました。オリジナルプリントで見る
のは初めてで、彼女の独特の世界を垣間見る事が出来ました。その彼女
の娘であり、モデルである。エヴァ・イオネスコの自伝的映画が、この
「ヴィオレッタ」。原題は「My Little Princess」ですが邦題では
「ヴィオレッタ」なんですねえ。自分の未成年の娘のヌードを撮って
それが彼女独特の世界観と相まって写真家として成功するわけで。
一方、自分のヌードが世に広まって、学校では疎外されて精神的
に追い込まれていく。
自身、親に対して、20万ユーロの損害賠償と写真返却を求める訴訟
を起こしているので、親に対する姿勢がもう一寸攻撃的なのかな?
と思ったら意外にも、クールでした。あるいみ客観的。
自身も女優であることから、芸術家としての母親を認めていたのか、
それとも自身のヌード写真が売れたことで生活の糧となった事実が
そうさせてしまったのでしょうか?
最初は母親のモデルになる事が嬉しかったのですが、それを拒絶
するようになるのは娘にとっては、自分が愛されているのか、それ
とも単に利用されているのかそこらへの葛藤があったわけですが
そこらへんが意外に淡泊に描かれてました。
印象的だったのはシド・ビシャスとヴィオレッタの撮影のシーン
(そんな企画があったのは知りませんでした)夜寝られない
ヴィオレッタがシド・ビシャスの部屋に訪れ、一緒に麻薬を
吸い(実際に吸ったのか、吸う真似をしたのかは不明)
二人芝生に寝転んで月を見上げるシーンは印象的でした。
世間から好奇な目で見られている二人が安らぐ場所は
ないようなそんな感じでした。月=世間の眼みたいな感じ
で。後のシーンでヴィオレッタが学校の宿題で皆の前で
ビクトール・ユーゴの詩を朗読するシーンがあるのですが、
そこにも月の光の一文があって、多分そのシーンと
連動していたのでしょう。
いみじくもネガの破棄を母親に要求した時母親が「一度
世に出た物は皆の心に残る。心に残った物は破棄出来ない」
と語っていたのと同じかな。
ただ思ったのですが、本人自身が監督をした事が本当に
良かったのかと。なんか妙に公平に描こうとしているような
そんな変な配慮を感じてしまったのですが。個人的には
もう少し先。つまりご本人は女優として生きていく事
になるんですがそこらへんの葛藤とかそんな所も
見てみたかったような・・。ラストが一寸あっさり
過ぎますねえ。