帰る場所。 | ショピンの魚に恋して ☆羽生結弦選手に感謝を込めて☆

ショピンの魚に恋して ☆羽生結弦選手に感謝を込めて☆

清冽な雪解けの水のようにほとばしる命の煌めき・・・
至高のアスリートにしてアーティスト、
羽生結弦選手を応援しています。

結弦くんは今季後半に向けて大きな決断をくだした。先日韓国で行われた四大陸選手権から、ショート、フリーともに平昌で五輪を連覇したショパンの「バラード第1番」と「Seimei」に戻すことになった。



憧れのスケーターに捧げるとした「Otonal」と「Origin」には並々ならぬ思い入れがあった。ファンもモヤモヤするジャッジが続いていた。もしここで適切な評価が得られていたら、こうした展開にはならなかったかもしれないけれど。

昨年末の全日本選手権、一夜明け会見ではこんな発言もあった。

 



「正しく努力をして、正しくいろんな力を使って、貪欲に努力していれば、報われる瞬間がいつか、奇跡だったとしても来るんじゃないか・・・」

一番苦しかった時の胸の内を、吐露した言葉だったのかもしれない。

結弦くんはその頃、多分、自信を失いかけていた・・・。これまで信じてきた自分の努力というものを、信じられなくなっていたのかもしれない。もちろん、全日本には過密日程による疲労というものも、大きな要因としてあったと思うけれど。

「正しい努力」だとか、「方向性」だとか、結弦くんの口から飛び出す迷いの言葉に胸が詰まる。結弦くんのせいではないのだ。正しい方向を向いて、正しい努力を重ね、それが正しい評価に結びつかなかったら、誰だって・・・どうしてよいか、わからなくなるだろう。

 



でもそんな暗く、長いトンネルに光が差した。練習中に、思い出したようにバラード第1番のワンフレーズを滑ってみる。エキシビションで過去のプログラムを滑ってみる。・・・試合のプログラムから離れたそんな遊びの中に、蘇ってきた感覚。そして、戻ってきた自分の努力を信じる気持ち。

 



「スケートやっていて本当に良かったなって思いました。やっぱりこの達成感とか爽快感とか、自分を表現することに関しては、やっぱりフィギュアスケートしかないなって思うんですよね。だからやっていて良かったです」

四大陸選手権はきっと、このトンネルを抜け出す突破口となったに違いない。ジャッジの問題は一朝一夕では変わることはないかもしれない。でも、結弦くんは覚悟を決めたのだろうと思う。自分の信じる道を歩いていこうと。

 



「バラード第1番」と「Seimei」。結弦くんに帰る場所があってよかった、と思う。

結弦くんに限らず、私たちは生きている以上、どこかで自信を失ったり、迷ったりする。時にはもう、二度と浮上できないのではないか、ぐらいに落ち込んだりすることもあるけれど、そんな時、結弦くんが大きな成功を収めた過去のプログラムに立ち戻ったように、自分の達成感が満たされた過去の出来事を思い起こすことは結構、効果的なことなのかもしれない。

それは、自分を甘やかす、というのではなく、自分を取り戻す、作業なのだ。そしてまた、過去の最高の自分を超えることは容易ではない。

 


結弦くんの「バラード第1番」の音源、とされているピアニストのクリスティアン・ツィメルマン。

 

巨匠の名をほしままにしている彼ではあるけれど、13歳で初めてステージに立ったジュニアのコンクールで大失敗、頭の中が真っ白になって33人中ビリ、という結果に終わったという・・・。

 

審査員の間でささやかれるネガティブな言葉が耳に入り、「人生で、最悪の瞬間」を迎えた彼は、何とか最後まで演奏すると会場から飛び出て家に戻ったそうである。

きっとネガティブな思いに打ちのめされて、相当落ち込んだであろうツィメルマン少年が取った行動とは・・・。



家に帰るとすぐさまピアノに向かい、自分が得意なラフマニノフのプレリュード嬰ハ短調を弾き続けたそうだ。


「何時間もその曲だけを弾き続けました。そうして自分の気持ちをニュートラルにもっていこうとしたわけです。しばらくの間はこのトラウマから離れられず、トリルのある曲は弾けませんでしたが、4カ月後にワルシャワの別のコンクールに参加し、優勝することができました。それでようやく立ち直ることができたのです」*

結弦くんの場合は内的な要因というよりむしろ外的要因の方が大きいので一概に比較はできないけれど、ツィメルマン少年も結弦くんも、落ち込んで自分を見失いそうになったところからの回復への道すじが、どこか似ている。

ツィメルマン少年が得意なラフマニノフのプレリュードを何時間も弾きながら自分を取り戻していったように、結弦くんも大好きな「バラード第1番」と「Seimei」を滑りながら、どこかで見失いかけた自分を取り戻していったのではないだろうか。

多分、「大好きなもの」は、人が帰る場所なのだ。落ち込んだ時、魂の回復を待つ場所なのだ。結弦くんに、そんな場所があって本当によかった。

さて、私のそれは、何なのだろう・・・。

 

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新型コロナウィルス、日に日に深刻になっていますね・・・。これ以上事態がひどくならないよう願っています。

 

皆さまもどうぞ、お気をつけください。

 

結弦くんも十分気をつけて、そして、良い練習が積めますように。

 

* 朝日新聞DIGITAL

初のコンクールでビリ。ツィメルマンは日本大好き

https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019080600007.html?page=2

 

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牛田くんのコンサート

20歳となった俊英の現在(いま)を聴く
牛田智大 ピアノ・リサイタル

日時・場所:    
2020年3月26日(木) 19:00
サントリーホール 
7:00p.m. Thursday, March 26
Suntory Hall

https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=792

 

”公演に寄せて
演奏家はその日その時に出来る最高の演奏を目指し、聴衆はその瞬間の感動を期待し会場に集まるはずだ。
評論家を含むジャーナリズムは、演奏家としての本質的な価値とさらなる発展の余地、永続性を論じ、教師はそれぞれの生徒の能力と個性を最大限に花開かせることに尽力する。
それぞれの見方と立場があり、誰が見ても明らかな結果が出るスポーツと違い、音楽が芸術である以上みんなから同じ評価を得ることはまずあり得ない。
牛田くんの演奏を初めて聴いたのは彼がまだ小学生の頃。コンクールの審査員という立場でだったが、その時の彼の小学生らしからぬ完成された素晴らしい演奏と同じくらいに衝撃的だったのは彼の演奏に対して全ての審査員が必ずしも高い評価を与えなかったこと。
彼らには文句を言いたかったが、なんとか思い留まった。演奏にはいろんなスタイルがあり、演奏家にも様々なタイプが存在する。
牛田くんにしても、また先輩にあたる辻井伸行くんにしても中学生の頃までにはもう完全に自分の音楽を持ち、その表現のための技術は習得していたであろう早熟なタイプだ。
だからこそ世の中に知られるのも早かったが、演奏家として見ると一人の人間としての更なる成長と進化の過程こそが興味深いと思う。そういう意味でも、ようやく二十歳になる牛田智大くんのこの日のリサイタルが彼にとっても、また聴きにいらっしゃるお客さまにとってもこの瞬間にしか味わえないかけがえのないものとなることを確信している。

横山幸雄(ピアニスト)”

 

コンサート情報

https://eplus.jp/sf/word/0000053526

https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=C2170008

https://l-tike.com/classic/mevent/?mid=439848

 

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