アメリカ大統領選挙の第一回テレビ討論会について、引き続き評価が流れてきていますが、そろそろ評価が定まってきたなと感じます。いくつか記事をまとめました。
▪️大手はヒラリー勝利、ネトウヨはトランプ支持揺らがず
NHKは「米主要メディアはクリントン氏が優勢だったと評価」「インターネット上の調査では、トランプ氏が勝ったと思う人がおよそ60%に上るものがある」と指摘するなど、評価が分かれたとしています。
が、「大手メディア・政治の専門家」=エスタブリッシュメント(既成勢力)はもとからクリントン支持だし、ネットはトランプ支持者の溜り場という面があり、各々の支持層は相変わらず意見を変えていない、というだけの結果にも見えます。日本語メディアでも大手メディアの評価はヒラリー勝利としており、たとえばNewsweekでコラムを連載している冷泉先生(私の中では論理だった分析に定評あり)が「クリントン圧勝」とお墨付きを与えています。
米大統領選 初のテレビ討論会は非難の応酬 評価分かれる
9月27日 17時20分 NHK NEWS WEB
討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向
2016年9月27日(火)14時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)Newsweek日本版
ただし冷泉先生の評価は「今後の展開は分からない」そもそもトランプの支離滅裂や下品やメンタルの不安定は前々から分かっていたことで、コアの支持層はこの程度でトランプから離れないでしょうし、ヒラリーにしたところで余程しくじってもコアの支持者がトランプに流れるとは想像し難く、逆に余裕の笑みでトランプを圧倒したと言っても、トランプ支持者からは「調子に乗りやがって、俺たちのトランプを小馬鹿にしやがって、やっぱりいけすかねぇ!」みたいに思われた可能性も高いと思います。
▪️討論直後、両名とも勝利宣言
ちなみに、討論の直後には、二人とも勝利宣言をしたようです。
軍配はどちらに 米大統領選 初の討論
2016年9月28日(水)21時20分
田中正良(ワシントン支局長)NHK NEWS WEB
▪️さて冷静になって……
さて、一日、二日と過ぎて、下記記事。トランプ本人の発言を伝えています。
トランプ、次回TV討論会でクリントンへの雪辱を誓う
2016年9月28日(水)10時57分
ロイター Newsweek日本版
なお、記事のタイトルを見ると、まるで「トランプが自分の負けを認めた上で、次回は勝ってやる、と言った」ように感じてしまいますが、実際は記事中にトランプが自ら負けを認めた明確な表現はありません。「雪辱」は「辱(はじ)を雪(そそ)ぐ」つまり辱めを受けた者が名誉挽回する意味で、トランプが「雪辱」を誓ったのであれば、まず「辱めを受けた(負けた)」ことを前提として認めたことになります。しかし、記事内に紹介されているトランプの発言に、負けを認めたことを示す内容は明確には掲載されていません。
もともと自分の負けを認めない、俺がエラいと言い続ければ俺がエラいことになる、みたいな発想の人だから、実際、なかなか負けは認めないでしょう。
もっとも、同記事ではトランプの発言として「クリントン氏の夫(ビル・クリントン元米大統領)の浮気について攻撃しようと思ったが、娘(チェルシー・クリントンさん)が会場にいたので、思いとどまった」という言葉が伝わっているので、「今回は思うように攻撃できなかったんだ」と言い訳したい気分はあるのかも? とはいえ、旦那が浮気したら政治家として不適格という事になるのか? あまり関係のない主張になりそうな気がしてしまうのですが。私ならむしろ、自らの政策をアピールし相手の政策論上の不備を突くべき時間を浪費していると判断するでしょう。
また、各国での反応の温度差について。
米大統領選、第1回テレビ討論を世界はどう報じたか
2016年9月28日(水)17時06分
デイミアン・シャルコフ
これは実際の勝ち負けがどうか、というよりは、もっぱらトランプが劣勢であることを踏まえた上で、各国メディア(あるいは国家当局)がそれをどんなトーンで伝えたか、という内容ですね。中露はトランプに善戦して欲しいらしい。
それから、事前に過去最高視聴率を叩き出すんじゃないかと噂された視聴者数は、噂より20%ほど少ない模様。
トランプvsクリントンTV討論会、視聴者数は過去最多の8400万人
2016年9月28日(水)19時31分
ロイター Newsweek日本版
▪️総評!
結局どうだったんだよ、というところですが、以下のような感じではないかと。
・討論会の当選可能性への影響
余裕の有無で言えばヒラリーの勝ちだが、各候補とも支持層は互いに意見が相容れない関係であって、お互い今までの調子を繰り返したに過ぎない今回の討論会で大勢が変わることはない。ヒラリーがトランプのペースに乗せられたらヒラリーが浮動票を大きく失うことはありえたが、ヒラリーはリスクを無事回避した。
・当選可能性の推移
ヒラリーが手堅く票をまとめているのは相変わらずだが、そんなヒラリーの安定感に反発と不信感しか感じない不満層がいるという事実を見なければならない。トランプがこれほど馬脚を現し続けても、こんなに海外で不人気でも、世論調査でヒラリーに肉薄できる。それが今回の大統領選挙であり、アメリカ社会の混乱である。予断は許さないし、突発的なニュースで逆転し得る。
・金融市場の反応
これが一番すばやくニュースに反応するわけですが、金融市場。とりあえず大手メディアの評価がヒラリー勝利である事に安堵して株高、といったところでしょうか。しかし、上記の通り、トランプの頑固な支持層は依然として意見を変えていないと見るべきで、大手メディアと、それに頼りがちな金融市場は、ネット界隈でふつふつと滾る不満を(ブレグジット=イギリスのEU脱退国民投票の時のように)過小評価しているかもしれない。いつドカンと来るか、分かりませんよ……
というわけで、リスクは燠火のようにくすぶっております。