アメリカ大統領選挙について、そろそろ自分の中にまとめをつけたくなり休日を費やして過去の記事を読み直していたのですが、ポンと面白い記事に行き当たりました。なんでこんな記事を見落としたんだろう。忙しかったのかな?
長めの引用になりますが、引用します。元記事には具体的に筆者が現地で見た人物像も。勉強になる面白い記事だと思います。


予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会
2016年4月11日(月)19時15分
渡辺由佳里(エッセイスト)

共和党と民主党の2大政党制の限界と改善策を語るとき、これまでは「中道」の第3政党の誕生が語られてきた。どちらの党にも属していない無所属の大部分は「中道」だったからだ。だが、2016年の大統領選で起きている現象は、極右と極左の新党の誕生ではない。実は「部族間の抗争」だという意見がある。
「部族」という表現を使うのは、保守の立場から政治を分析するコメンテーター/ブロガーとして有名なマット・ルイスだ。
 ルイスは、現在の政治の雰囲気を「かつては政策とイデオロギーについての高尚な論争が、もっと原始的なものに凋落した」と説明する。共和党の政治哲学だった「保守主義」は、今では「やっかいな極右のポピュリズム」にとってかわってしまったという。
 ルイスは、現在存在しているのは、共和党や民主党ではなく、「労働者階級の白人」と「マイノリティと高等教育を受けたエリート」の2つの「部族」だという。
 私がトランプを含めた複数の候補のイベントに参加して感じたのも、アメリカ国民の「部族」化だ。ただし、部族の数はルイスが言うように2つではなく、もっと細かく分かれているように見える。

支持者たちから話を聞くと、アメリカ国民の「アメリカ像」にはかなりのバラエティがあることがわかる。
問題は、それぞれに自分たちが考える「アメリカ」こそが「真のアメリカ」であり、ほかの「アメリカ像」を受け入れることができない点だ。同じ「アメリカ像」を持つ人と一緒にいれば心地良いし、安心できる。だから、同じ「アメリカ像」を持っている人々が集まって「部族」を作る。そして、それらの部族を代表するのが、今の大統領候補たちだ。

部族化の問題は、アイデンティティが異なる者同士が、このように自動的に「敵」になってしまうことだ。自分とは異なる「アメリカ像」を持つ者も、同様にアメリカ人であり、異なる「アメリカ像」を持つ権利があるのに、部族間の争いがエスカレートすると、自分の部族以外のアイデンティティを持つアメリカ人が許せなくなってしまう。



ここに描かれているのは、国家の深刻な亀裂です。ブレグジットの際にもイギリスについて同様のことが言われていましたが、民主主義は基本的に多数決で物事を決めるため、採決さえすれば意思決定はできるし、基本的にそこには大多数の民意が反映されますが、その過程で異なる意見を持つ者同士の十分な対話や、場合によっては譲歩、ある程度の合意の形成が無ければ、社会に不満が残り、人々の間に亀裂が入って行く。

なお、この記事では続けて、大統領予備選に出ていた各候補と、その支持者のプロファイルも提案しています。これも面白い。


<トランプ部族>
地方に住む、低学歴、低所得、労働者階級の白人男性。移民とイスラム教徒に敵意を持ち、女性差別も強い。(最近のCNN/ORC世論調査によると、女性有権者の73%がトランプに反感を抱いている)

<クルーズ部族>
中絶や同性愛に強く反対するキリスト教右派、原理主義者。トランプの支持者よりも、教育レベルと収入がやや高めの白人。

<ルビオ部族>(ルビオはすでに予備選からの撤退を表明)
都市に住む、高学歴、高収入、軍事的タカ派の保守。ビジネス優先。成功を収めた裕福な移民。キューバ系アメリカ人。

<ケーシック部族>
政策とイデオロギー上の保守を信じる古いタイプの共和党員。高学歴、高収入の中道右派。

<サンダース部族>
収入格差がある現状に反発し、古い政治制度を、急速に、根こそぎ変えるべきだと考える理想主義者。30歳以下の若者。社会活動家。白人が多い地域の労働者階級(移民やイスラム教徒への差別心がないところがトランプ支持者とは違う)。労働組合。民主党内の左寄り勢力。民主党員ではない無所属。

<クリントン部族>
フェミニスト、黒人、イスラム教徒、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)、その他のマイノリティ。年配の女性。銃規制推進派。都市に住む高学歴、高収入、高年齢層のリベラル。長年の民主党員。



これだけいろいろいた中からトランプとヒラリー・クリントンだけ残ったら、大部分の有権者は白けていくでしょうね。消去法で支持者を選んでいる有権者が多いと聞きますが、なるほど、と思います。
少し前に、北京で退役軍人がデモを行った、というニュースが流れて、「?」となりました。

北京 国防省前で元軍人が大規模な抗議デモ
10月12日 8時30分 NHK NEWS WEB

え? なに? 政府の意向を受けた公認デモ? それとも、ひょっとして政府に抗議するデモ? まさか反乱の予兆とかじゃないよね???

ご存知の通り、中国は自由が許される国ではありません。確かに一定の経済活動の自由はありますし、実はある程度自由な言論も不可能ではありません。ただ、政府に煙たがられると見せしめの取り締まりに遭います。一応は法治主義です。法に基づかないで何かするのは難しい。ただし法の運用は恣意的で、しばしば無茶な取り調べの結果、法律は融通がきかなくても、事実の方が柔軟にでっちあげられます。とまぁ、そんな国だと思います。だから、微妙なバランス感覚だけど、やっぱり自由にデモができるほど気楽な国ではない。

その中国の、北京で、退役軍人がデモ?

なお、中国の権力はロシアのように一人に握られる事は少なくて、中国の指導者は何かとつるむ。何人かで、合議制だったり、密談したり、奥方の意見に左右されたり……実は独断専横にはなりにくい。現在は習近平国家主席の他に、何人かの権力者がおり、また軍は軍で弱気な外交姿勢に反発したりとか、いろいろな権力が複雑に絡み合っている。

その中国の軍関係者が不満を露わにしたのだとしたら、けっこうヤバいニュースな気がするんですよね。

と、思っていたら、なんと本当に軍関係者が不満を露わにしたという事みたいですよ!


中国退役軍人が数千人規模のデモ、国防省が問題留意の声明発表
2016年10月13日(木)20時10分
ロイター Newsweek日本版

中国国防省は13日、同省前で11日に発生した数千人規模の退役軍人によるデモを受け、退役軍人が抱える問題に対応する用意があると表明した。

つ、つまり本当に退役軍人が待遇への不満から数千人集まってデモを行い、政府としてなだめるための声明を、それも国外のプレスにまでオープンにして出さざるをえなかった、と!
き、きな臭い……

ちなみに、空軍が特にきな臭いらしいですよ!


トランプ、クリントンいずれでも中国に強硬策は取れず――小原凡司・東京財団研究員に聞く
2016年10月11日(火)11時22分
市川文隆(時事通信社解説委員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

習国家主席の空軍に対する信頼は全幅のものではないだろうと思われます。14年に空軍司令部にだけ突然視察に行きました。一般に党、軍のトップが視察に行くのは、思い通りなっていない、危険だと思うところに行くということです。空軍は押さえ切っていないという認識は持っていたと思います。


といっても最近貧乏くじを引かされているのは、予算を削減されている陸軍だと思いますけども……
私が言ったんじゃないですからね!!!
以下のような記事が出ていました。うわぁ言っちゃったぁwww
これ本国の米国版サイトにも載っているのかな?と思ったらNewsweek以外のサイトに英語版の元記事がありました。
とりま、日本語訳されたバージョンから引用しましょう。

トランプにここまで粘られるアメリカはバカの連合国
2016年10月11日(火)19時42分
マックス・ブーツ(米外交問題評議会のシニアフェロー、専門は国家安全保障)

ドナルド・トランプほど無知で大統領にふさわしくない男が、今年の米大統領選であと一歩のところまで粘っているのはなぜなのか。
大統領選が進むほどに、アメリカ人が無知になり、そのせいで社会が大きな代償を支払わされているのがわかってきたのだ。
1990年代の終わりまでに、高校4年生の3人に2人が、南北戦争のあった年代を正しく選ぶことが出来なかった。2人に1人は第一次大戦があった年代も知らなかった。半数以上が「三権分立」の三権(立法権、司法権、行政権)を挙げることができなかった。大多数はエイブラハム・リンカーン大統領が行った『ゲティスバーグ演説』の内容が何だったか見当もつかず、「ドイツ、イタリア、日本」の3カ国が第二次大戦中に同盟国だったと答えた割合は52%に上った



最後のやつすげぇwwwそれじゃアメリカが原爆を投下したのはどの国の都市だと思っているんだ?もしかしてHiroshimaはロシアか中国の都市だとでも思っているのだろうか??
でも、僕、知ってますけど、中学生くらいだと原爆投下された都市を正しく答えられなくて、広島は出ても長崎が出ないとか、第五福竜丸事件は知らないとか、平気でいますね。日本とアメリカが戦ったことも知らないヤツいるか……いるな。うん。第二次世界大戦自体も、小学生なら認識が薄いことが多い。さすがに成人してしばらくしたら知るだろうか? 毎年ドラマとか映画とかやってますけどね。
まぁ、あえてキツい言葉を使いますが、「ド底辺」になると生きるのに必死で教養どころの話じゃない。そんな人もごまんといる日本社会である。それは知ってますけどね。

だから、んー、まぁ、分かっちゃいる。日本もそんなもんだし、アメリカが酷いとこの記事は書いているけれど、驚くほどでもないかな……いやしかし、これは酷い、信じたくない、バカだなぁと笑って済ませたい、気持ちもある。実際は、筆者の書いている通り、これは目の前にある危機だ。


数年前、米ニューズウィークが1000人の米有権者を対象に、アメリカの市民権を申請する移民が受けるのと同じ試験を受けてもらった。すると3人中1人は米副大統領の名前が分からず、半数はアメリカ合衆国憲法の修正第1条から第10条までを『権利章典』と呼ぶことを知らなかった。合衆国憲法がアメリカにおける最高の法であることを知るのは3人に1人だけだった。
呆然とするほどアメリカ人から知識が失われた結果、一体何が起きているのだろうか。最も顕著な現象といえば、共和党大統領候補でファシストのトランプと、民主党候補指名をクリントンと争った自称社会主義者バーニー・サンダースが、絵空事でしかない政策を掲げながらも、有権者の心を捉えたことだ。
11月8日に何が起ころうとも、現在の状況は、公民教育を緊急に再生しなければならないことを物語っている。現在および将来の有権者が、行政や歴史、地理、国際情勢、経済などに関する基本的な知識を獲得し、十分な情報に基づいて選択できるよう教育を施さなければならない。



というわけで、ポピュリストが人気を博してしまうのは教育が瓦解したせいだ、と。


トランプも、第3の党であるリバタリアン党の大統領候補、ゲーリー・ジョンソンと比較すればまだましに見える。ジョンソンは、シリア北部の都市アレッポを知らなかったし、テレビのインタビューでは自身が敬愛する世界の指導者を1人も挙げることができなかった。無知であることは強みだとさえ豪語している。
ジョンソンは現在、ミレニアル世代のかなりの支持を獲得している
(注:トランプの支持層は高卒以下の白人で、大学生や大卒者は含まれていない。したがって、トランプ支持者はおそらく、ジョンソンへ投票すると思われるこの大学生よりもさらに知識に乏しいだろう。)



この、ジョンソンがテレビ番組でアレッポの話題に「なにそれ?」という顔をしたのは笑いぐさになっていましたねぇ。
まぁ、どうだろう。麻生元首相は南スーダンの首都を即答できるかな? あの人もびっくりさせてくれるからなぁ……ジョンソンに習って小政党の議員から指名すれば、たとえば山本太郎議員あたりにテストするとお茶の間の話題になるかもしれない。(政治的意義は皆無ですが)


私は長年、アメリカの教育制度を楽観視してきた。国際学力調査でアメリカの子供の学力が諸外国にどんどん追い抜かれ、なかでも数学と科学は散々だというのは知っている。それでも、IT革命で世界を牽引してきたアメリカで、学校教育がお粗末なはずはないと思った。
今になって思い違いに気付いた。
公民教育を再生しなければ、アメリカは三権分立の三権が何かさえわからない人々に将来を託すことになる。最近の調査では、正しく答えられたのは3人に1人だ。この驚くべき無知も、ジムのトレーナーや他の多くの仕事をこなすうえでは障害にはならない。だが、投票所で賢明な選択をすることはできない。



残念ながら「長年、アメリカの教育制度を楽観視してきた」のは不見識の極みと思う。アメリカの平均レベルの教養がかなりヤバいのは日本では人口に膾炙した話題だ。
が、まぁ日本も平均を取ったり、特に学校が荒れているような地域でアンケートを実施したりすれば、こんなもんだろう。

教育の再生もぜひ取り組むべきだと思うが、間接民主制の多段階化とか、ちょっと考えた方が良いんでないかなぁ。