※2016/11/3 12:30 追記
NHKにも続報が出ていまして、コミー長官が司法省の反対を押し切って今回の発表に踏み切ったとか。ますますもって、故意に介入する意図を持って今回の挙に出た感じでしょうか……
コミーが黒だとして選挙までにコミーの黒を明確に証明はできないだろう。となるとヒラリー陣営はFBIを敵に回して選挙戦を戦う事になる。

オバマ大統領 メール問題で捜査再開のFBI批判か
11月3日 12時05分 NHK NEWS WEB

捜査の再開を巡っては、FBIのコミー長官が上部機関の司法省の反対にもかかわらず独自の判断で明らかにしたとされており





アメリカ大統領選挙、ヒラリー・クリントンの私用メールサーバ問題は甚だきな臭くなってきました……金曜日の夜に第一報が流れた時、わざわざ鈍った英語力に鞭打って海外サイトまで情報を集めに行って「中身は大した事ではなさそうだ」と判断したのですが……問題は中身じゃなくて、有権者の心証に与える影響だった。メディアも両陣営もてんやわんや。結局ヒラリーの悪印象に注目が集まって、トランプはぶいぶい唸っている。

報道の中身を見ると、FBIのコミー長官に対する批判が声高になってきている感じがします。コミーは職務に従った結果、たまたまこの時期にヒラリーのイメージを悪化させる発表をする事になってしまったのか。それとも故意にこのタイミングを狙ってニュースを流したのか。

まずはグレー派の意見を。たとえば冷泉先生の昨日も引用した11月1日の記事では「コミー長官は職務に忠実に振る舞っただけで、それを取り上げて大騒ぎするメディアこそが問題」といった論調です。

ヒラリー「第二のメール疑惑」の誇大報道
2016年11月01日(火)17時00分
冷泉彰彦(作家・ジャーナリスト)Newsweek日本版

FBIのコミー長官にしてみれば、仮にウィーナーの「性的ツイート疑惑」の捜査絡みでPCの内容を調査していて、万が一「政治的に問題になる」ようなアベディンやヒラリーのメールが出てきた場合には大変なことになるので、その「万が一」に備えて、「投票日前」に「一応自分たちはこういう捜査はしていますよ」というアナウンスをする必要があったようです。
それにもかかわらず、各メディアが一斉に「スキャンダル再燃」とか「トランプがアベディンにありがとうと言った」などという誇大報道をしていることが問題です。



また、こちらの10月31日の記事。サマリーは「わざとなのか?」みたいな内容ですが、本文を読むと、論調としては「わざとではない」っぽい書き方です。ただし、結果的には「誤解」を招く行動であり、正すべきミスだった、と批判。

メール問題、FBIはクリントンの足を引っ張ったのか?
Why the FBI Is Reviewing More of Clinton's Emails
2016年10月31日(月)18時40分
カート・アイケンバウム Newsweek日本版

真実は、皆が思うほど劇的なものではない。…(中略)…FBIが捜査を「再開した」とメディアが書き立てているのも間違いだ。この捜査はそもそも終わってないし、継続中のケースに新たな証拠が加わるのはよくあることだ。
肝心のFBIのジェームズ・コミー長官は28日の夜、新たに浮上したメールに機密情報が含まれていたかどうかを捜査中だと公表したきり、口を閉ざしたまま。
…(中略)…
真実の一部だけを明かして残りは隠そうとしたことで、コミーは大統領選の帰趨を左右しかねない誤解を招いた。もしこれを正さなければ、FBIの歴史でも最悪の汚点として記憶されかねない。




これに対し、コミー長官は故意にヒラリー陣営にダメージを与えたのだ、という記事も出ています。以下の記事では、コミー長官は今回のメールの一件を「発表を先延ばしにしたら、かえって問題になるから……」とこのタイミングで暴露しているが、トランプ陣営について「妙にロシアと仲がいいぞ」「陣営にロシアとのコネクションがあるみたいだぞ」「トランプが大統領になった方が有利なロシアが、クリントン陣営にハッキングを仕掛けて選挙戦の行方を左右しようとしたんじゃないか」などなど問題になった際、「少なくともロシアの介入があった」という調査結果の公表を「今はまずいよ……」と出ししぶったと告発している。本当なら、まっ黒ですね。

クリントンよりトランプの肩を持ったFBI長官
2016年11月2日(水)16時32分
ルーシー・クラーク・ビリングズ Newsweek日本版

米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントンの陣営は、投開票まで11日となったタイミングで「メール疑惑」に関連するかもしれない新たなメールの発見と捜査の再開を発表したジェームズ・コミーFBI長官について、「あからさま」「開いた口が塞がらない」とダブルスタンダードを批判した。コミーは一方で、ロシアが米共和党候補ドナルド・トランプを支援する目的で米大統領選に介入していることの公表には反対していたからだ。



また、こちらの「ガーディアン」誌の記事に至っては「コミーは前々から職権濫用を繰り返している」と告発。さぁ、どうなんだ、コミーは黒なのか???
勢いで訳しちゃったので長々と引用しますが、これを読むと「オバマさんはしょーもない勘違いでコミーをFBI長官なんかにしちゃったけども、そいつ最低の人権侵害野郎っすよ」という事になる。

James Comey has been abusing his power for years
Monday 31 October 2016 16.50 GMT
Trevor Timm the guargian

Liberals were once enthralled when Obama appointed the Republican as FBI chief in 2013. They talked about Comey as if he was above reproach because of his role as acting attorney general under George W Bush, when he threatened to resign over an aspect of the president’s illegal warrantless wiretapping program.
「2013年にオバマがこの共和党員(訳者注:コミーの事)をFBI長官に任命した時、自由主義者たちは一時はすっかりコミーに魅了されてしまった。彼らはコミーについて、G.W.ブッシュ政権下で、大統領の令状のない違法な盗聴計画に関する一件で離職するよう脅された時の、司法長官代理としての役割のゆえに、まるでいかなる批判の余地もないかのように語っていた。」

As Glenn Greenwald explained at the time of Comey’s confirmation in 2013, this story is incredibly misleading. Yes, Comey did curtail a small part of the NSA’s sprawling surveillance program in 2004, however, that occurred before the public ever knew of the existence of any NSA domestic program. The version of illegal warrantless wiretapping that the New York Times revealed in 2005, which sparked a firestorm of liberal criticism and widespread accusations of illegal conduct, was the program that Comey was totally fine with and signed off on.
「2013年のコミーの承認(訳者注:恐らくオバマ大統領によるFBI長官指名に対する受諾のこと)当時、グレン・グリーンワルドが説明したように、この話は驚くほどに誤解を招くものだ。確かに、コミーは2004年に、国家安全保障局(NSA)の際限無い調査計画のほんの一部を削減した。しかし、それはNSAの国内での、いかなる計画の存在も、公に未だ知られる前に起きたことだ。2005年にthe New York Timesがすっぱ抜いた当時の令状のない違法な盗聴は、自由主義陣営の批判と違法行為に対する広範な告発を烈火のごとく巻き起こしたのだが、これはコミーにとっては全く問題無く、ゴーサインを出した計画だったのだ」

Why he is celebrated as anything close to the hero is baffling. During the Bush administration, Comey also aggressively defended the arrest and due process-free imprisonment of a US citizen, Jose Padilla, on US soil. He was held as an “enemy combatant”, tortured, and refused a lawyer for three and half years – to this day, one of the most egregious violations of the constitution by the Bush administration.
「なぜ彼がヒーローか何かのように祝福されるのか、理解に苦しむ。ブッシュ政権下で、コミーは合衆国の国土において、合衆国市民のJose Padillaの逮捕と、しかるべき手続きを経ない収監を強硬に擁護した。そして三年半にわたり弁護士を(訳者注:恐らく、Jose Padillaにつけることを)拒否した。これは今日に至るまで、ブッシュ政権による最も甚だしい憲法に対する違反である。」


ああ、そういえばあったなぁ……いろいろときな臭い話が。アメリカが同盟国の政府にまで盗聴を仕掛けてドイツのメルケル首相に不快感を示されたとか、Apple社にテロ犯の所持していたiPhoneのロックを解除するように迫ったとか……
ただ、コミーという人は英語版Wikipediaの記述によれば2005年から2013年にかけては公職を離れていたようで、別にずっとFBIを牛耳っていたアメリカ政治の黒幕、とかではないです。念のため。
アメリカ大統領選挙ウォッチ続けます。ヒラリー・クリントンの私用メールサーバ問題がFBIのコミー長官の手で再燃しているわけですが、さらにFBIはビル・クリントン元大統領(もちろんヒラリーの旦那)のスキャンダルに関連した文書を公開したとか??Newsweekのトップ記事に載っていました。もう疲れて中身をよく読めていないんですけど……

FBI NOW RELEASING DOCUMENTS ABOUT BILL CLINTON AND MARC RICH
11/1/16 AT 3:48 PM
MATTHEW COOPER AND NINA BURLEIGH Newsweek

FBIはおおっぴらに政治介入する決意なのか??
一応、なんか、トランプのスキャンダルもNewsweek日本版のアクセスランキング上位に出ているんですけどね。

トランプ、大物コンサルに契約金未払い、寸借詐欺も
2016年11月1日(火)17時51分
マックス・カトナー

しかし、この霞んでる感は一体……
フィクションのようなFBIの動きから目が離せないという。なぜこうなった……?


それで肝心の情勢ですが……これが、選挙人の獲得予想までトランプが追い上げているんですよねぇ〜〜〜

RealClear Politics(英語サイト)
日々の世論調査結果
現在の選挙人の獲得見通し

トランプ大統領を、覚悟せねばならないかもしれませんよ……?
悪夢のようだ。世界は壊れないだろうか。大丈夫なのか。
アメリカ大統領選挙まで、残り7日、一週間です。

民主党ヒラリー・クリントン候補が国務長官としての職務において私用の(つまり米国政府として、やりとりする情報の機密性を確信できない)メールアドレスを利用していた問題で、FBIが一旦は「重大な問題は無かった」という調査結果をまとめたにも関わらず、此の期に及んで「新たに調査すべきメールが発見されたので、調査を再開する」と発表した。

当ブログでは「直後の世論調査は無風」「調査に時間がかかるということだし、FBIは別件の調査の中で偶然メールを発見したので調査を始める、というだけで、新たに発見されたメールが重要なものかどうかは分からないと言っているし、続報が出ないまま終わるだろう」などと書いてきましたが、なかなかどうして、少なくとも報道は大嵐、ドナルド・トランプが支持率でヒラリーを追い抜いたという調査結果も出るくらいです。何事か。



■何が起きたのか?

問題の発端は、以下の記事に掲載されている写真の左側の、痩せたガイコツ面の男性。

ヒラリー「第二のメール疑惑」の誇大報道
2016年11月01日(火)17時00分
冷泉彰彦(作家・ジャーナリスト)Newsweek日本版

もとニューヨーク州選出のアメリカ連邦下院議員(日本で言うところの衆議院議員)だそうです。が、複数の女性に対する不適切な「ツイート」で、最初は政治生命を断たれ、その後は政治評論家として復活したものの、再び評論家としても発言の場を失い、未成年者相手にやらかしたせいで、とうとうFBIの捜査を受けている。

で、この人がなんと、ヒラリーの側近中の側近である女性の夫だった。それで、押収されたパソコンが夫婦で共有していたパソコンだったもんで、ヒラリーの側近の扱っていたメールも入ってた。これはヒラリーのメール問題に関連して調査せにゃならんぞ、ということで、FBIは改めて捜査令状を取って、このメールに目を通し始めているところ。

従って、ヒラリーの側近がデリケートなメールは自分のパソコンを通したりせずに、慎重に扱っていたとしたら、何の問題も出ないはずではあります。「大問題が隠れている模様!」というわけではない。
もっとも、どうも「世界に冠たる」アメリカの要人でも、けっこうサイバーセキュリティに関する意識は低いみたいなんで、何が出てくるかは分からないっちゃぁ分からないですね。



■実際、事の意義はどうなんだ?

私は、やはり、本来なら大した事ではないんじゃないかと思っています。ヒラリーがセキュリティに甘かったのは動かぬ事実。でも、それはずっと前に出てきていた事実。新しく出てきたのは側近が(やっぱり私用のアドレスで)扱っていたメールだが、今のところ、捜査当局は、これが特別ヤバそうな臭いを放っているとは言っていない。従って我々一般ピープルとしては「新資料発見だけど、中身はよくわかんねぇってよ」「ふぅん」という以上の反応はしようがない。FBIの長官も、彼なりに気を使って発表したっぽくは聞いています。先ほど引用した冷泉先生の、事件のあらましの要約を引用しましょう。

要するに、今回の問題はFBIのコミー長官が「投票直前に選挙を歪めようとしている」というより(もちろん多少はそうした非難を受けても仕方ないにせよ)、ヒラリーと直接は関係ない事件で、直接は関係のない別人のメールを捜査しているという問題なのです。



■各人の反応は?

・トランプ
もちろんノリノリ。「ヒラリーの欺瞞を暴け! 正義が実現する時だ!」
米国版のNewsweekでは、トップ記事でこんなこと書かれてますけどね↓

DONALD TRUMP’S COMPANIES DESTROYED EMAILS IN DEFIANCE OF COURT ORDERS
10/31/16 AT 7:00 AM(米国時間)
KURT EICHENWALD Newsweek

Donald Trump has a long, troubling history of destroying and hiding important documents in lawsuits, but he thinks Hillary Clinton’s the one who should be going to jail.
「ドナルド・トランプは訴訟において重要な書類を破棄し、あるいは隠匿してきた長い、ゴタゴタ続きの前歴を持っているのだが、彼はヒラリーこそ牢屋に入るべき人間だと思っている(拙訳)」


・ヒラリー
けっこうキレている。FBIに喧嘩を売っている。怖い。
個人的には、「FBIにはFBIの果たすべき使命があり、彼らは正義を明らかにするために仕事をしていると信じている。彼らは適切に調査をし、結果を我々アメリカ国民に報告するだろう。もちろん私は私自身や側近の身の潔白を信じて疑わない」どーぞお好きなだけお調べください、私は有権者に政策を訴えるのに忙しいので、これにて失敬、みたいな余裕のある態度を取って欲しかったかな、とか。


・FBIのコミー長官
この人が共和党員だという事も、特にヒラリー陣営がブチ切れる原因のひとつみたいですね。本人はノーコメントで、淡々と仕事をしているのか?


・メディア
冷泉先生は上記引用記事中で「「トランプ大逆転か?」などという調子に乗った解説まで出ている」と、お怒りです。どのメディアがどんな論調、というところまで把握していませんが、やいのやいの、騒いでいるようです。
ヒラリーや側近が何をしていたか、またFBIが何を察知したか、といった事より、最終的に有権者の決定を左右するのは、メディアが何を報じたか、かもしれません。その点では、メディアさんの動きは重要なカギかもしれません。


・有権者
「支持率でトランプがヒラリーを追い越した!」という報道も出ていますが、個人的にはその流れはメール問題が噴出する前から淡々と進行しており、メール問題の噴出後も、特に流れが加速しているわけではないと思うのですが。
ただ、そうなるとメール問題と無関係に進行した調査結果の「トランプ復権」は何なのか、頭を抱えます。
とにかく、ヒラリーはトランプを突き放せない。



■今の情勢は?

こんなにゴタゴタでも、選挙人の数となると、圧倒的大票田カリフォルニアとニューヨークを「solid(盤石)」に押さえているヒラリーのリードは大きなものです。

RealClear Politics(英語サイト)
日々の世論調査結果
現在の選挙人の獲得見通し

もっとも、トランプ支持者は(トランプがお下劣すぎるから)あまりおおっぴらに支持を表明できないとかで、調査結果よりも「隠れトランプ支持者がいる可能性がある」とかいう意見も。

【写真特集】究極の選択をするアメリカの本音
2016年11月1日(火)20時12分
Photographs by Q. Sakamaki

トランプへの熱心な支持を公言する人を見つけるのは、クリントン以上に難しかった。特に高学歴の共和党員はトランプが候補であることを恥じている様子で、トランプを支持はしないが党の理念存続のために「仕方なく」投票すると、小さな声で答える印象だった。
先週時点までの世論調査どおりなら、大統領選ではクリントンが手堅い勝利を収めることになる。気になるのは、表に出てこない「隠れトランプ支持者」の動向だ。クリントン勝利の予想に安心した浮動票層が投票に行かなくなれば、「クリントン阻止」の票が逆に上回る可能性もゼロではない。