※本記事、書きかけのまま放置していたものを2016年末に公開しました。


2016年アメリカ大統領選挙。ドナルド・トランプが次期大統領に選ばれた。

アメリカで勉強している友人がFacebookに大学の様子を書いていた。ニューヨーク市にある大学の構成員は、学生も教員もヒラリー派ばかりだ。

ノリは、大失恋の翌朝に似ている。皆、夜を泣き明かして、朝になっても何をしていいかわからない。日常のことが手につかない。教壇に立った教授が泣きそうだという。若者も年寄りも同じ日に大失恋の朝を迎えているというのは、何やら独特だ。

冗談みたいなニュースも流れた。

カナダの移民サイトがダウン、トランプ新大統領誕生恐れ閲覧殺到か
2016年11月9日(水)15時05分

トランプが大統領に選ばれるアメリカに危機感を感じた人々がカナダに移住する事を検討してアクセスが集中したのが原因ではないかと言う。
無理もないと思う。アメリカには多くの移民がおり、その中には祖国の政治的な不安定、はびこる暴力を避けてアメリカに来た人も少なくないのではないか。彼らがトランプの煽り立てた憎悪のうねりを見て、手近な安定した国への再移民を検討するのは、むしろ賢明な判断だろう。不当な暴力が否定され、あるいは警察力・軍事力のような、一応制御された暴力すら、用いる事に躊躇や拒否感を感じることは、私などは当然の事と思いがちだが、実は世界的に見れば稀な事だ。いや日本でも決して当たり前ではないのかもしれない。

トランプが実際どんな大統領になるのかは、正直、よく分からない。周囲がトランプにどれだけ手綱をつけられるか次第だろう。それと、トランプがどれだけ口約束を真剣に守るか…か。
しかし、トランプ大統領そのものより怖いのは、トランプを選んだ社会だ、というのがヒラリー派の本音ではあるまいか。あれほど野卑な振る舞い、あれほど無知無節操な言動を許す社会なのだ。
それでもトランプ支持者の全てを恐れる必要は、もちろん無い。かなりの人数はトランプには嫌悪を抱きつつ、自分はトランプではなく共和党に投票するのだと考えただろうし、かなりの人数は今回の選挙について、各候補の発言やその評価をテレビで断片的にしか知らずに投票しただろう。しかし、今回トランプに投票した者たちの0.1%でも、トランプのように振る舞う事は許されると考えたら、社会は十分動揺すると思う。
一夜明けてトランプの大統領選出に抗議する人々の姿が伝えられているが、彼らが暴力で沈黙を強いられるような時が来ない保証はない。
昨日アメリカで起きた事は、そういう事だと思う。

その上で、アメリカは国民をもう一度統合せねばならない。
アメリカだけではないんだろう。先進国は安定した国家であることにあぐらをかき過ぎたのかもしれない。国民統合は努力なしに達成されるものではなかったのだ。


自分は東京に住む日本人で、選挙権すら有していない。しかし、一夜明けても何となく落ち着かない自分がいる。
世の中の多くの大統領選ウォッチャーよりはこの結果を覚悟していたはずなのだが。少なくとも、見ず知らずの訪問者の皆様に「可能性がどんなに小さくとも起きたら激震だから、株取引などをされている方は気をつけて」などと余計なおせっかいまで焼いていた。それでも何となく落ち着かない。
あれだけ野卑な言動を繰り返し、また国民の憎悪を煽ったドナルド・トランプがアメリカ大統領選挙に勝ち、次期大統領に選ばれた。結果に失望した人々が「not my president」を標語に掲げて、早くもデモを繰り広げている。


【動画】「トランプはわたしの大統領ではない」全米各地で抗議デモ
2016年11月10日(木)17時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


しかし、「国民の憎悪を煽った」ドナルド・トランプを批判したら、憎悪の矛先を向けられるのではないか……? と思っていたらデモの現場で銃撃事件。思わずタイトルを見て「うっ」と呻いてしまった。


トランプ抗議デモで銃撃発生 シアトル警察が捜査
2016年11月10日(木)15時39分
ロイター Newsweek日本版

負傷者は5人、うち2人は重傷とのこと。
銃撃がデモに関連しているかどうかは現時点で明らかになっていない


下手をすると、これからアメリカ国民同士の暴力事件が続発する可能性がある……
アメリカ大統領選挙。

金融業界はなんでも「トランプが意外とマトモそう」と言って株価は急回復したらしい。冗談だろう。トランプの政策についての発言はハナから矛盾していて、自分を支持したコアの有権者の期待に応えられない。極め付けは移民排斥を訴えながら当選して、勝利宣言で国民の融和を呼びかけたことだ。移民排斥を撤回して支持者を裏切るのか、国民の融和をリップサービスでしたと撤回して次期大統領としての最初の発言から虚言を弄したことになるのか、はたまた既に彼の意味する「国民」にムスリムやメキシコからの移民は含まれていないのか。

可能なのは、被害を最小限にとどめること、だけでしょう。

メディアは選挙結果予想を外して大反省会。有名人ではマイケル・ムーア監督(アメリカ社会の歪みを告発するドキュメンタリー映画で話題をさらってきた。ただし、ドキュメンタリーの製作技法には無知・無神経なところが目立ち、どちらかといえば今回の大統領選挙で民主党予備選に嵐を巻き起こしたバーニー・サンダースと同類の左派ポピュリストと思いますが)がトランプの勝利を断言していたと話題になっています。

ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう
投稿日: 2016年07月29日 16時36分 JST
更新: 2016年07月30日 21時09分 JST
マイケル・ムーア(映画監督)THE HUFFINGTON POST

もっとも、処方箋も述べて、外したら「処方箋が実行された結果だ」と言えたので、言ったもん勝ちという見方もできますが。しかし、大胆な論評は読みやすい上に、それなりに面白いかなと。