2023年

コロナ禍で自粛生活となったのをきっかけに、いろいろな出来事を記録しようというくらいの軽いノリで書き綴ってきた『僕の自粛日誌⑨』も、なんと『その⑩』にまでになった。

ある程度は元の生活に戻して行こうという社会の流れに合わせ、タイトルに “やや終わりに差し掛かった” と入れはしたものの、コロナ第9波の猛威から “また逆戻りとなった” と入れ直し、これからも自分の記録として、気楽に書き続けて行こうと思う。

 

6月末頃

やれやれ、出口の見えないコロナ禍には、本当に気が滅入って来る。

景気対策を優先する政府が、コロナの新規感染者数の情報発信をしなくなってから早1ヶ月。僕とかみさんは定点観測と「下水サーベランス」から感染の状況を判断する事にしていた。

その結果、これは第9波の入り口であろうと早めの自己判断をして、僕はヤマノのミュージックサロンの対面型レッスン休講の延長を決定し、またかみさんと2人で元の自粛生活に戻った。

といっても、僕の方は今までと変わらずハーモニカのオンラインレッスンの生徒さん方の定期予約が続いており、かみさんの方も元々自宅での仕事なので、今までとほぼ変わらない半おこもり生活のままだった。

 

 

ただ、コロナ対策を自分から進んで続ける僕らは、人と会う機会があるたび、「何?まだ、マスクとかしてんの?、もうコロナいいんじゃない?」なんて言われ続けるので、コロナとの向き合い方の差に一定の人間関係の気まずさが残った。感染対策を「気にする側」と「気にしない側」が対等に共存するためには、仕方のないやりとりなのだろう。

 

ロシアのウクライナ侵攻で、大きなニュースが舞い込んで来る。ロシアの民間軍事会社ワグネルのプリゴジンがロシア軍に反旗をひるがえし、軍の不正を正すという名目で、ある地域の一部を部隊で制圧、武装蜂起し首都クレムリンを目指すと発表する。

一旦は外出禁止などの緊急措置が発表されたロシアは、内戦突入かという一触即発の大きな注目を集め、これは「ロシアの内紛によって、いよいよ世界を巻き込んだ戦争が終結に向かうきっかけになるのでは」と期待されるも、なんと翌朝にはなんらかの取引きにより、ロシアは平常に戻ったと発表になる。

たった1日の事だったけれど、戦争終結への淡い期待をさせられた分、世界中からため息がもれた。(追記~ちなみにこの数ヶ月後、このプリゴジンは、当たり前のように飛行機事故に遭い亡くなる。まぁ暗殺なのだろう)

 

月が変わらぬ内に、ようやく「コロナ第9波に入ったようだ」との発表が、大手メディアから出始める。

やや先手を打ち、教室の休講を決めた僕からすると、正直「やはりそうだったか」という残念な想いと、これで自分だけが「神経質なコロナ恐怖症」のように思われないで済むという、独特な安堵感があった。

沖縄などはすでに深刻な医療逼迫を迎えていて、かつての緊急事態と同じような状況らしい。沖縄の現場からは月の中旬頃から危険信号が出ていたのに、大手メディアが今の今まで、完全にコロナの「コ」の字も出そうとしなかったからだ。

これでは経済対策どころではなく、明らかな失策だろう。妥当な報道ができていれば、入院者や死亡者ももっと防げていたのだろうから。

 

しかもこの時期は、子供を中心に「インフルエンザ」や「ヘルパンギーナ」なども感染拡大が止まらず、学級閉鎖どころか学校閉鎖が相次いでいて、医療現場の逼迫はかなりの深刻さとなっていた。

この時期にネットで見掛けた記事によると、子供達が「先生、マスクをして下さい」とお願いしても「もう(マスクを取るよう)決まった事だから」と説明し続け、それがクラスターにつながったなんて話まであった。

G7で格好がつかないからという理由で「ノーマスク」を強要させた責任を、果たして政府はこの先、どう取るのだろうか。

皮肉にもこのタイミングで、そもそも日本が参考にしていたイギリス自体が、「コロナ脱却を読み誤った。マスク着用なども含め、警戒を続けるべきだった」と、公式に発表する。

 

 

7月を迎える。

この時期、コロナにうなだれながらも、僕にとってはひと勝負のタイミングのため、無理やりにでも気分を一新させ、気合を入れ直した。僕とかみさんの新作動画「Mr.コールの旅」シリーズを、いよいよ公開させるのだ。

これは、誰もいない世界を孤独に旅する「Mr.コール」の寂しげなハーモニカでの呼び掛けに、画面越しで自分のハーモニカの音を返すという、いわばバーチャルコミュニケーション遊びのYouTubeコンテンツだ。

 

 

「遊び」とはいえ、ゲームというほど砕けたものではない。とはいえハーモニカの練習用教材と言うには、少々自由度が高い。微妙な路線の、楽器で楽しむ新しいタイプの娯楽動画を目指しているのだ。

ブルースミュージックでいうところの音での会話「コール&レスポンス」をテーマにしていて、「Mr.コール」の名前はここから来ている。

非常に説明しづらい内容なので、お時間のある方は、まずこちらの遊び方説明動画を、ぜひご覧いただきたいものだ。

 

 

このシリーズは「森」「海」「空」「滝」「砂漠」と、5つのバリエーションがある。

その1つがこちら。

 

 

専用の記事は<こちら>

 

このシリーズは、僕のオンラインレッスンの、「ブルース・カリキュラム」を一段落させた生徒さんの教材として、すでに使っていただいている。練習と言うよりはチャレンジに近いレッスンになるのだけれど、僕の方は実践的なフレージングのアドバイスをしやすい内容なので、非常にレッスンが進めやすい。

通常のレッスンだと、ブルースやロックなどのジャンルを希望する生徒さん達は、定番のフレーズのレッスンになるのだけれど、最近は目的などを特に決めず「何気なく、気分でハーモニカを吹きたい」というような事を目指す方が顕著に増えて来ているので、今後はこの動画を大いに活用できそうだ。

 

けれど、この日の動画公開の反応は、予想もつかなかった問題が起き、期待通りのものにはならなかった。

僕のコンテンツは、動画であれ記事であれ、Twitterを最初に公開する事になっているのだけれど、この日、アップする段階になり、急にTwitterが動かなくなった。「API呼び出しの回数制限を超えました」という謎の表示で、自分のページに記事を公開できないようになってしまったのだ。まさか初日の情報拡散の段階でつまずいてしまうとは。

急ぎ「Twitter 不具合」で調べると、なんと経営者であるイーロン・マスクの独断経営による大幅な社員削減で、今までのキャパをこなせなくなってしまい、Twitter側の勝手で接続制限を実施したとの事だった。なんというワンマンな!やはり現代では「メディアを支配する者が世界を動かす」という事のようだ。

(ちなみに僕はTwitterを今後も「X=エックス」」とは表記しないつもりだ)

 

そんな混沌の中、めでたくも、僕ら夫婦は27周年の結婚記念日を迎えた。本当に時が過ぎるのは早いものだ。元々僕らは小学校の同級生なので、出会ってからはなんと43年にもなる訳だ。

子供の頃は「フリータイム委員」というクラスの「お楽しみ会の準備係」を2人でやっていたので、動画制作やWeb番組の配信など、形を変えつつチームで同じような事をやっているのが笑えてしまう。

という事で、コロナ禍が始まって以来の、最大級の感染状況が懸念される第9波の中を、僕らは出来る限りの感染対策をしつつも、結婚記念日の旅行に向かう事になった。

 

目指すは「鴨川シ―ワルド」。宿泊するのは隣接する「シーワールドホテル」だ。

千葉は僕とかみさんが子供の頃を過ごした古巣でもある。

途中通過する「海ほたる」はなかなかの混み具合で、記録的な熱波もあってか、ほとんどの人がノーマスク状態。もちろん「マスクをはずせ」と政府が力を入れた訳だから無理もない。

僕らはコロナに気をつけると決めた側なので、マスク姿のためにすれ違う人達に若干は「ギョッ」とされる。とにかく僕らは、混んでいる場所やレジに並ぶような店は避けつつ、慎重に移動する。

海の上に浮かぶ島とあって、旅行のついでに、「絵になる景色でワンフレーズ」というハーモニカの動画撮影企画に向いた景色を探すも、それなりの絶景ではあるものの、いざスマホのカメラを構えると小さなハーモニカとのスケール感がまるで合わず、ほぼNGとなってしまう。

仕方なく車に戻ると、意外にも駐車場の景色がなかなか都合が良いと分かり、急遽、複雑に絡み合う道路や行き交うトラックを背景に、ハーモニカを撮影してみる。

それにしても、絶景は数あれど、僕の企画は全てハーモニカの映り方が軸になるので、かなり風変わりな背景やアングルばかりになってしまうようだ。

 

他にも数か所の寄り道をしつつ、目指すホテルは素泊まりなので、その近くで夕食の場所を探す。

まずかみさんが希望していた店を探すも、入店後、突然の店側の都合という事で入店を断られ、他のお客もみな同様に、店長さんに何度も謝罪されながら追い出される事となった。

ちなみに、かみさんが目をつける店は、このような事になりやすい。店が急な休みなんて当たり前だし、すでに閉店し、更地になってなっていた事すらあった。それで僕らがケンカになって以来、一応事前に調べてはくれるのだけれど、結果は相変わらずだ。

以前、かみさんが選んだとある天ぷら屋を目指した時は、1回目が店側の不幸、2回目が店側の法事と続き、さすがに怖くなった。

 

そんな中、たまたま現地で見掛けてぶらりと入った店が、驚くほどオシャレで、その上、声が出るほどの料理の旨さだった。インテリアのセンスも良いため、急遽ここでもハーモニカの動画撮影を行う事にする。

気分上々でホテルにチェックインすると、平日のため混んでもいなかったせいもあり、窓からのオーシャンビューが最高の部屋だった。

となれば、すぐにここでも一息つく間もなく、ハーモニカの動画撮影を始めるのだった。

 

このホテルでの主目的はもちろんシーワールドなのだけれど、僕らが予約したのは今回で2回目となる「夜の水族館ツアー」と、初めて申し込んでみた「早朝の水族館ツアー」のオプションだ。

夜の方はすでに2回目だけれど、他に来場者はいないのはもちろん、生き物達が寝ていたり、飼育員さん達が作業していたりと、実に趣深い魅力がある。巨大なシャチが4頭並んで寝ている様などは、なかなかの景色だ。

特に、朝の方ではハーモニカを並べての記念撮影もしてみようという事で、チャレンジに胸が踊った。さすがにその場で音は出せないので、動画版のフレーズは後合成で処理をしてみた。

 

 

ところが、この夜の散歩の方が予想外の大人気で、50人を軽く超えるほどの参加者となってしまった。そのほとんどがノーマスクの方々で、子供達は絶えず騒ぎ跳ね回り、室内では完全な密状態になってしまっていた。

今は沖縄、大阪を始め小児科は全国的に危機的な状況で、診察の受け入れもできないと聞く中で、もしクラスターにでもなったらと不安にさせられる。

僕ら夫婦と他数名だけがマスクをしていて、共になるべく列の後ろに並びたがり、とにかく集団との距離を取ろうとする。一方、最後尾のスタッフさんは、僕らが変な行動をとる迷惑客である可能性も考え、絶えず監視の目を光らせる。

前に詰めかける大多数、後ろに逃げ回る少数、そして2つの集団をまとめたいスタッフと、その奇妙な動き方は、まるでおかしなゲームをしているようだった。

 

翌日は早めにシーワールドを引き上げ、魚介のうまい店だけは事前に決めつつも、あとは特にあてもなくノロノロと寄り道を繰り返しながら帰宅。

そしていつものように大急ぎで洗濯などを終わらせ、早寝をし、次の日にはまた完全に切り替わった頭で、忙しい日常に戻るのだった。

 

このタイミングで、なんと「新型コロナ対策相」から「現状は第9波とは考えていない」との信じがたい公式コメントが出る。「5類に移した事で正式な感染者のデーターが取れないので、判断がつかないからだ」と言う。まぁ、経済を優先するために、事前に折り込済みのコメントとはいえ、ここまで来るとさすがに詐欺のようなものだ。

こんなのを信じる人がいたとすれば、それはさすがに自分の危機管理が足りな過ぎるのだろうけれど。そういう人は「国の発表を信じたのに!」とか、後で言うのだろう。

 

ちょうどこの頃、廃炉のための原発処理水の海洋放出の是非が話題になる。

僕はこれには断固反対。日本だけでなく、韓国、中国、もちろん西側だろうが東側だろうが、世界中どこの国でもやってはダメだ。薄めようがなんだろうが、海に危険な物を流す事自体がダメ、そんなのは当たり前の事だ。

僕は、日本を非難する国を擁護するとかではなく、海に排出する行為自体に反対なのだ。よく他の国はもっと酷いという話が出るけれど「よそはよそ、うちはうち」だ。

まして日本は「廃炉のため」と言いつつ、G7では別の原発を積極的に稼働させると公言しているので、そんなものを捨てる資格はすでに無いのだ。せめて限界まで陸で保管場を増やしつつ、完全ろ過技術を研究し続け、未来に託すべきだろう。

 

7月中旬

結婚記念日に続いて、かみさんが僕の誕生日を祝ってくれた。少し前に見つけたばかりの地元の洋食屋へ行く。岐阜時代お世話になっていた洋食屋のマスターが他界され、ちょうどその店の雰囲気にも似ていた。美味しかった上に、店の感じもすこぶる良かった。

ただ、15人も入らないほどの小さめな店で、ギリギリまでマスクをしつつ、食事が来しだい黙食をする「気にする側」と、団体で来て大声ではしゃいでいる「気にしない」側とが混在してしまうため、お互いに気まずさが残ってしまう。もちろん双方を責められない。ともに非は無いのだから。

ただ感染者は依然として増加を続け、もはや救急車を呼べない地域も増えているというのに、この浮かれようを見ると、この先どんな結果になるのだろうかと不安になる。

ネットではすでに広まってはいる話だけれど、日本は5月以降、WHOに感染者数も死亡者数も報告をしていないのだそうだ。国は世界に好印象を持たせ、かつてのように海外からのインバウンドで稼ぎ切るつもりだろうけれど、結局のところ感染がこのまま広がれば、その何倍も稼げない期間が増えるのだ。それどころか、さらに取り返しのつかない事態にもなり兼ねない。

そんな事を考えながら食べる外食は、常にどこかモヤモヤとしてしまい、なかなか以前のようには楽しめなくなってしまった。

 

ちなみに、今年の誕生日プレゼントは、コーヒー用の注ぎ口の細いポットだった。

 

 

もともとは僕の希望だった物だけれど、当然2人で使う物だ。以前かみさんに「遠心力で水切りするサラダボウル」を買ってもらったけれど、ある意味でこういう「専門的な物」は無駄にテンションが上がる。

僕はアレルギー対策で、今はノンカフェインのコーヒーしか飲めないので、せめて毎日豆くらいは自分で挽いて、手間を掛けて入れるようにしている。このポットで、その手間をさらに楽しめるという訳だ。

 

連日、熱波が異常な範囲になり、日本中で40度に近い状況に、誰もが悲鳴を上げていた。

地元の小田原ですら34~35度で、神奈川でも割と高めというくらいだった。これで7月の夏の始まりな訳だから、8月の夏本番は一体どうなるのだろうかと恐ろしくなる。

家仕事の僕とかみさんは、異常な値上げを続ける電気代を恐れつつも「クーラーを消したら死ぬかもしれない」との酷暑から、いつも以上に、家に閉じこもる生活を送っていた。

同じ頃、線状降水帯という気象現象の影響で、1日で1ヶ月分の降水量があったという地域が日本中にいくつも現れ、「災害」と呼ぶべき水害が起こり続けた。しかも韓国や中国でも同じような災害が相次いで報告されている。もはや地球規模の環境破壊は、絵空事ではなくハッキリと現実になったのだ。

 

ロシアのウクライナ侵攻から始まった戦争の影響もさらに世界中に拡大し続ける上に、相変わらずコロナも収束のメドが立たない。暑さと不安とでおかしくなりそうな中、あるニュースが話題となった。

ジャニーズの創設者ジャニー喜多川の性加害問題から派生して、レジェンドとも言われるミュージシャンの山下達郎が、性加害自体は非難しつつも、自分のラジオ番組で取引先で恩人としてのジャニー喜多川をかばう発言をする。さらに「自分の考えを受け入れられない人は、自分の音楽を聴かないでもいい」という発言で締めくくった事で、その後大炎上するのだ。

問題の深刻度合いを理解していないという側面と、そこまでの地位に上り詰めてもなお、まだジャニーズを非難できないという、一強企業の闇の深さを知らしめる結果となった。

 

僕も当たり前のように山下達郎の曲は聴いて来たし、それなりに尊敬はしている方だと思う。この話題も最初のうちは「まぁ、大御所なんだから、そりゃあキャリアを棒には触れないんじゃないの」と考えていた。

けれどこの問題が多くの運動家達の解説で論じられるごとに、やや遅れて発言の深刻さを理解するようになった。つまり、魅力的で絶大な説得力を持つ人物が、悪質な犯罪に公で目をつむったのだから。暗に「同じく、つむらない奴とは、俺は仕事をしないよ」と公言したようなものだ。

 

さらに70代の高齢者が2人が、10歳にも満たない頃にジャニー喜多川からの性加害を続けられ、悪質で狡猾な手口によって苦しんで来た事実を告白する。こうなると業界の問題ではなく、異常な件数の性犯罪を繰り返し続け、むしろそれを続けるために起業した人物の異常事件という事になる。

もはやかばうのは論外と言わざるをえない。告白した側の勇気も凄いし、異常な件数の犯罪を続けたジャニー喜多川は「稀代の悪」と言えるだろう。

 

「偉大なる力には偉大なる責任がつきまとう」これは映画「スパイダーマン」で叔父がピーター・パーカーに送った言葉だけれど、山下達郎の件はまさにそうなのかもしれない。影響力のある人こそ、弱者のための正義でなければいけないはずだ。

 

7月末になる。

異常な熱波はなおも続き、35度超えだの40度に迫るだのという数字が全国で相次ぐ。

世界中の科学者達が「地球は未知の状況に入った」「地球温暖化ではなく沸騰だ」などとメッセージを出し始めたほどだ。

「やがては‥」ではなく、すでにそうなったのだ。

 

そんな状況ではあるものの、我が家に嬉しいニュースが飛び込んで来る。近郊に友人の家族がバカンスでやって来るのだ。

友人はグレゴといい、僕の教則本の英語版を翻訳してくれた方だ。

ちなみに、こちらのCM動画もグレゴの編集である。もともと映像をやられていた方なので、見事なものだ。

 

 

ちなみに僕の英語用の声のアテレコも、グレゴにやっていただいている。

 

 

グレゴの奥さんは日本の方で、元気なお子さんもいらっしゃる。この時はグレゴのご両親もカナダから来日されていたので、実ににぎやかな集まりになった。

僕ら夫婦の方は、普段は人に会う生活を送っていないものの、グレゴ側には小さなお子さんがいらっしゃるという事で、事前に電話で話し、「お互いに体調は大丈夫か」や「マスクをどうするか」などを連絡し合う。

コロナ禍に入ってしまってから、グレゴ家のバカンスの機会は2度あったのだけれど、その両方が僕の長引く体調不良のため実現しなかった。そんな事からも、3年ぶりともなる今回の機会は感無量だった。

 

楽しい時間が過ぎると、しばらくはお互いに様子見の期間となる。

やがて5日間が過ぎ、どうやらコロナの問題は無かったようだと胸をなで下ろす。やはり相手方には小さなお子さんがいるので、僕ら側は迷惑を掛けぬようにと、つい慎重になり過ぎてしまう。

何にしても、お互いに気をつけ合う事の繰り返しが、この第9波を乗り越える最低限の体制なのだ。

 

そして夏休みモードに入った僕らは、スタジオ・ジブリの宮崎 駿の新作映画「君はどう生きるか」を観に、これまた久しぶりとなる映画館に行った。

映画館に出向いたのは実に2年ぶりくらいだろうか。感染拡大中ながら深夜のレイトショーでならと、ギリギリまで入場者状況を見定め、僕とかみさん以外は「あと2人のみ」という席の予約状況を確認し、ようやく僕らは映画館へと入った。

当然他の2人も人がいないのを狙っての来場だろうし、かなり離れて座っていながらも、物音1つ立てない様子から、運命共同体のような意思が伝わって来る。始まるギリギリでもう1人入って来たものの、その人もやはり僕らと同じく、忍者のごとき沈黙具合だった。

 

この映画は全く宣伝もせず、かなりの情報規制をしいたようで、前情報がイラスト1枚という謎めいた状況からも注目度が高く、おまけに観た人の評価が星1か5(最高か最低)の2極化という異例づくしで、僕は「一体どんな作品なのか!?」と見たくて見たくて仕方がなかった。

とはいうものの、僕はその内容を半分以上理解できず、観覧後、かみさんに無限に質問を繰り返し、ようやくその見方や内容の価値に気づかされたのだった。

(前にもこんな事があったな)とぼんやり考えてみると、それはかつての映画「千と千尋の神隠し」だった。自分とジブリ映画と相性が悪いとは思わないのだけれど、なぜかみさんはそこまで理解が出来るのかと不思議になる。そしてその知性の差から、気のせいか、かみさんがいつもより神々しく見えて来る。

そんな僕は、急に自分の感性に自信が無くなり、無意識の防衛本能から「グーテンモルゲン、グーテンモルゲン」と、どこかの国の意味の分からない言葉を頭の中で連呼しつつ「自分はバカじゃない、バカじゃない」と、繰り返すのだった。

それはさておき、映画館の大画面、大音量の環境は他に代えがたい価値だと再確認した日だった。

 

この頃、モデルナの推計で、全国の感染者推計が11万人を超えたと発表される。第8波と同じ範囲にまで行くのはもはや確実となった。

僕は8月のヤマノミュージックサロン有楽町の休講の延長を決め、スタッフへ連絡をとる。加えて、異常な熱波はなおも続き、今まで以上の完全なおこもり生活が続いた。

 

一方、メディアでは「ビッグモーター」という車買取会社が、修理を依頼された車を組織的により破壊させて高額請求をしていたり、販売してもいない車にまで保険を掛けていたり、商品がより見えるようにと周りの街路樹を枯れさせていたりと、保険金詐欺を始め、考えられない業務実態が溢れるように表に出て、話題を独占する。

 

この期間、僕とかみさんは1つの山場を迎えていた。「吹いて!歌って!ブルースハーモニカ音頭(おんど)」という僕のオリジナル曲の、プロモーション映像を制作していたのだ。

この曲は遥か4年前の2019年7月にすでに発表している曲で、僕の作詞作曲だ。おまけに、僕がハーモニカの演奏以外に「歌」まで歌っている唯一の曲でもある。

僕がかなり歌が下手なので、悲しいかな、歌う事に周りの反対も多いのだけれど、本来この曲は「皆さんにご自分で吹いて歌ってもらうために用意した曲」で、言わばカラオケの方がコンテンツの主体と言える。つまり僕の歌は「歌見本」と、まぁ、ここで「見本」という言葉を使うのもおこがましいけれど「参考音源」程度のものなのだ。

「音頭」というジャンルをテーマにしているものの、ブルースハーモニカを主役にしているだけに「サニー・ボーイ」や「リトル・ウォルター」のように、歌って吹くという1人2役スタイルこそが重要となる。それもあって、やむをえず僕が歌う必要があった訳だ。

という事で、この動画は僕の歌声に我慢をしながら、なんとかお楽しみいただければと思う。

 

 

●「吹いて!歌って!ブルースハーモニカ音頭♫」専用ページ

 

「なぜかつて発表した曲を今更?」という話になるのだけれど、この曲の今回の映像完成までには本当に紆余曲折があったのだ。もちろんコロナ禍に入ってしまったというのが最大の問題で、イベントとして盆踊り自体が全国で中止になる中、この曲を発表すること自体が不謹慎のように感じていたからだ。

さらにカラオケを制作してくれた中村アキラさんや、ミキシングを担当してくれた渡邉英一さんの忙しさなども重なり、音源が完成したのが、なんと今年だったのだ。

これに加えて、僕が制作した最初の動画が、かみさんからのまさかの「完全なダメ出し」をくらい、ゼロからの制作となり、映像部分の撮影も、本格的なグリーンバックでの撮影の難しさや、結局はNGにはなってしまったドライアイス前での演奏シーンなど初めての事づくし、その上編集ソフトを変えたのもあって、ようやく完成したのがこの時期だったのだ。

 

 

ちなみにこの企画にも、私のオンラインレッスンの生徒さんOBのマルモさんに挑戦していただいているので、ぜひ<こちら>もご覧いただきたい。

 

さて、実はこの時期、じわじわと笑みがこもれる事態が訪れていた。なんと、今まで4~5年に渡って苦しんで来た「脇腹のつり」による激痛が、2ヶ月近く収まっていたのだ。

掛かりつけの内科での頓服薬や、整体の先生の鍼治療など、様々な治療を続けては来たものの、かろうじて痛みがやや浅くはなったようには感じるだけで、確実に治って行くような実感までは持てず、相変わらず発作のように訪れる激痛に悶え苦しむ日々は続いていた。ここに、さらに新たな処方を追加していたのだった。

 

それは「漢方」だ。かみさんがネットで見つけた昔ながらの漢方薬の店で、見るからに古い建物に高齢のご夫婦がお二人で営まれており、ドアを開くのもかなりの勇気だった。

診察を受けるのも普通の和室で、清潔そうではあるものの、せんべい布団の上に寝そべり、先生が色々と触診をして行く。先生の耳が遠いせいもあり、会話もほとんど通じず、僕が「痛い」と言っている幹部と全く違うところばかりを触診し続けていた。

僕は「脇腹のつり」の件だけれど、かみさんも別件で漢方を処方してもらう事になった。保険が利く訳ではないのでかなり高額で、オマケに処方されている内容もよくわからない。さらに大変なのは、ティーパックのようにされたむき出しの木の欠片みたいなものを、生姜の塊と一緒に、毎日30分も煮込むのだ。それを3度に分けて、朝昼晩飲み続ける。当然、恐ろしく不味い。先生いわく、毎回宇宙に向けて「ありがとう」という言葉を添えて飲むようにとの事だった。

こんなものを一体いつまで続けるというのか。しかも何を持って「効果」と言えるのか。正直、僕はこのメドの立たない処方に、腹を立てていたほどだった。

 

ところが、気のせいか、恐ろしい熱波が続く日々だというのに、そこはかとなく体調は良いように感じていた。

それなりに感染対策をしつつも、時期的に人に会う機会が続くため、付き合い上、食事療法をれない時も出て来る。そこに気の緩みが出て、ある程度禁を破る食事をするようにもなって来ていた。それでもなお、「脇腹のつり」症状は起きなかったのだ。

そうなると、これは、やはり「漢方の効果」と言わざるをえなくなって来る。

僕は西洋医学派なので、この東洋医学にはかなり抵抗があったけれど、鍼治療によって両肩を、漢方薬によって、内臓の諸問題を克服したのかもしれなかった。

 

振り返れば、コロナ禍に入ってから通った歯科医院で、たまたま見つかった僕の歯の奇形から「普通の人と症状が異なるはず」との診断を受け、北斗の拳のサウザーが「心臓が逆にある」みたいなものかとは思いつつも、この先、どれだけ面倒な身体なのだろうとゆううつだった。そんな中にあって、この東洋医学へのシフトは大きな前進なのかもしれなかった。

なんとか、演奏活動を本格的に再開させるまでには、しっかりとメドを立てたいものだ。

 

と、日誌に書いたその日から今度は膝が腫れ始め、その流れからか実に1ヶ月以上ぶりの「脇腹のつり」があった。今回も期待した分、痛みより悔しさの方が先に来る。

緊急時用の、とりあえずの痛み止めとなる「コムレケア」を飲み少々待つも、なぜか、その後に来る強烈な痛みまでは襲っては来なかった。その日の夜にも同じような2度目の症状が来るものの、今度は勇気を持って薬も飲まずに様子を見てみる事にする。やはりつるだけでその後の激痛が来ず、やがて静かに収まって行くだけだった。

まぁ、つるだけでもかなり痛いのだけれど、もはや慣れもあり、この程度なら生活面にまでは影響をして来ない範囲だ。やはり症状は改善しているという実感を持つ事ができた。

内科の薬なのか、鍼治療なのか、漢方薬なのか、あるいはその全てなのかはわからないけれど、治ってくれればもうなんでもいい。とにかく、これをしばらく維持しようと思う。

 

8月中旬頃。

いよいよお盆シーズン突入。

僕らはまたひとつの山場を迎えていた。ブルースハーモニカ音頭の英語版動画の公開だ。

今回はアート関係の翻訳でお世話になった「山本道子さん」に急ピッチでお願いしての制作だった。タイトル、歌詞の意味、カラオケ動画の使い方解説なども全て英訳されているので、ぜひご覧いただきたいものだ。

 

 

●英語版専用ページ

 

山本さんは曲の背景や制作の意図なども汲み取り、的確なアイデアで言葉選びをしてくれるので、誠にありがたい存在だ。

この動画の関係で、僕は初めてFacebookやInstagram、Twitterなどの表記やハッシュタグを全て英語に変え、必死で拡散を試みた。Facebookのコミュニティーなどは以前から知ってはいつつも、入会したこともなければ投稿した事も無かった。英語圏ならなおさらだ。かなり緊張しながらの初投稿となった。

反応が来るかどうかは分からないけれど、僕は初めての下手な歌まで披露しているので、内心ビビリまくってはいた。

 

お盆明けの定点観測での新規感染者数が出始める。モデルナの推計では23日段階で新規感染者が13万人を超えている。数字は予測ではあるものの、当たり前のように新規感染者増加が止まらないようだ。

と言っても、国の側は正確な数を出さない以上はそれを公には認めないだろうし、メディアが国に合わせている限りは、大多数はコロナは終わったものとしてノー対策のままだろう。

一部の政治家達は、どの団体からいくらもらっているのか知らないけれど、依然として「ハッキリと第9波とは言い切れない」などと異常な発言を繰り返す。

皮肉にも、ここまで経済優先で嘘をつき続け、第5類に引き下げた経済効果は、結局のところほぼ無かったらしい。単純に感染者が増えた分だけ消費が減ったからだ。どの家庭でも今後増大するのは、医療費と高騰する生活費くらいなものだろう。

せっかく4年も掛けて今まで築いた新しいライフスタイルが、一部の政治家達の暴走で、見事に崩れ去った訳だ。しかもそれを隠すために、これからは今まで以上に必死になってコロナ問題を隠し続けて行くのだろう。

 

この段階で、僕はヤマノの対面レッスンについて、9月も休講の延長を決めた。

もはやその根拠を論ずるのも疲れて来た。すでに、対立構造の二極化は完成している。リスクを恐れない派と恐れる派、どちらが正しかったのかは、後に分かるのだろうから。

とにかく、僕ら夫婦は今後もできる範囲で気をつけた生活を続けようと思う。その中で出来る表現活動を続けて行く事だろう。

 

そして8月24日。

日本の未来を大きく決めた日となった。

政府は80%を超えるほとんどの人達の反対を押し切り、原発処理水を海に排出する判断を下し、それを実行した。

ネットでは右派と左派で「説明が不十分」という部分に関してもめていたけれど、完全に論点がずれているように感じた。ダメなものはダメ、どう説明したって「解明されていない物質」を海に捨てる事自体がダメなのだ。

声をそろえて「科学的に立証」などと言うけれど、専門家いわく、厳密に言えばまだ解明され切っていない未知の領域で、誰も言い切れないはずの話らしい。それを、今までさんざん文章を改ざんしたり、嘘を付き続けて来た東電と政府コンビが出した情報で、よく呑気に信じる人がいるものだ。

 

だいたいが、よく右派左派というけれど、左派は少数でも駅前とかで見掛けるけれど、右派はネットの中のアカウントだけで、実在してる人間はついぞ見た事がない。これが、かの「ナラティブ・ロンダリング」攻撃だったなら、AIに誘導された右派寄り思想の人達は、無駄な戦争の引き金にまんまと使われているのかもしれないのだ。

改めて、今回の件で日本人は平気で嘘をつくし、元々が隠蔽体質なのだと身に染みてわかった。

 

この問題の責任は今後数十年掛けて、全日本人で受ける事になるのだろう。これが選挙で誰も投票しなかった結果で決まった、どこかの代表者達が決めた事なのだ。

国会議員達が率先して「福島産の魚介を食べる」とか、国会の弁当はそれらのおかずで通すなんて今はいろいろ言っているけど、彼らがそれ以外は食べる事ができない法律でも作るならまだしも、全てはいつもの一過性の嘘で終わるのだろう。秋口頃にはもう覚えてもいないはずだ。

 

原発処理水排出の当日13時、ネットのニュースではなぜか音声も無く、その様子が上空からのライブ中継で配信されていた。海外でもこの件は大きく報道され、海外の日本領事館に抗議で乗り込み逮捕された人達までいたらしい。

この日、日本の海産物の最大輸出国である中国は、予告通り日本からの禁輸を決定し、今後は海産物以外も検討するらしい。この問題によって中国ですぐに食塩の買いだめ騒動が起こったのを見ても、海外で出店する日本人達への誹謗中傷が心配される。

ネットでは当たり前のように「ちょうどいいから中国と断交しろ」などの無責任な言葉が飛び交う。

また見事に問題がすり替わっている。東電と政府が決めた事で、僕ら日本人全体が早速責任を取らされ始めたというのに。その風評被害で本当に心配すべきは、国内のでは無く、世界中からのだ。そして今始まったばかりで、この先もずっと続いて行くのだ。

僕ら日本人は、世界から根本的な部分での信用を失ったように感じる。海外で活動する日本人達も、今後海外へ行く日本人達も、これからはその前提で行動しなければならなくなったのだ。

まぁ、それをある程度防げるとすれば、日本が誇る「漫画・アニメ」などのサブカルチャー文化ぐらいなのだけれど、10月に控えるインボイス制度により、その大部分の人達がもれなく致命的な経済的ダメージを受ける事になる。

本当に日本政府は、この先、国民をどうしたいのだろうか。

 

まだまだ炎天下が続く8月末。

新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長の退任が報じられる。

政治家達の無策を医療側になすりつけられても、なお頑張って情報を発信し続けたこれほどの功労者に対して、ねぎらいの言葉以外に「罵倒」が相次いだのは全く理解できなかった。コロナは両極の存在を作った事で、結果、大量の負け組を作り出したからなのだろう。

主に落ち目のYouTuberなどがそれら罵倒のリーダーとなっているところを見ると、かつての注目を取り戻すための手段として、叩ける相手を探していたのだろうけれど、あまりにも見当違いで愕然とさせられる。

まんまと政府の責任のすり替え作戦に引っ掛かったという人達という事か。子供レベルの疑いの無さというか、あるいは何か利益構造があるのかだ。

以前、孤独な高齢者が、慰めに確実に「フォロー」や「いいね」を集める手段としてヘイト拡散に賛同して、やがて「ネトウヨ」になったという記事を読んだ事があった。あまりにも惨めな老後だ。寂しさで相互フォローをあてにするにも、時代的にはすでに相手は「バイト」から「AI」へと変わってしまっているだろうに。

 

そんな中、なんの前触れも無しに、いきなりの嬉しいニュースが飛び込んで来た。

以前、箱根甘酒茶屋劇場「箱根八夜」で上演した演目「耳なし芳一」のYouTube動画をご覧になられた「ひだまりおはなし会」という団体の方々が、かみさんの「オリジナル耳なし芳一」の文章を気に入っていただいたらしく、かなり大きな舞台で採用をして下さったのだ。

しかも『令和5年度子供の読書活動優秀実践団体』として文部科学大臣賞なる賞を受賞し、高畠町文化ホール開館30周年記念事業と併せて、朗読劇『耳なし芳一』を公演されたというのだ。

映像資料では大型ホールに、かみさんの名前が高らかに響いていた。

 

 

実際に彼らの目に止まった「箱根八夜版の紙芝居」動画はこちらだ。もちろん絵もかみさんが担当している。

読みは「ブルースハーモニカ音頭」の英語版翻訳を担当してくれた山本道子さんだ。

 

 

この吉報のおかげでやや気分も軽やかになり、あまり社会的な問題ばかりを考えていると「エコーチェンバー」状態でおかしくなりそうなので、これを機に、僕らはすでに発信した企画の援護射撃を始める事にした。

 

「Mr.コールの旅」シリーズのサポートコンテンツの制作だ。

これは映像の評判は良いものの、企画意図がまるで伝わってないらしく、新たに補足説明や攻略法のようなものを追加コンテンツにする必要があった。

そんな折、ハーモニカ教室OBでテストプレーヤーのマルモさんが、このシリーズのベースとなる「コール&レスポンス」という行為について、人には「おはよう」と言われたら「おはよう」と返すのと同じだと説明していますと、笑いながら話してくれた。

この話にヒントを受けた僕は、この「コールの旅」を、楽器熟練者のクリエイティブなコンテンツからビギナー向けの初めての音遊びへ、まるで正反対のアプローチへと転換する事にしたのだ。不思議な事に、クリエイティブな遊びであれば、ビギナー向けの紹介が熟練者向けを兼ねる事にもなる訳だ。

そうなると使う言葉も表現方法も様変わりするので、かなり大変な解説内容の再構成となる。何度もラフ試作を作り直しては、マルモさんの感想を聞いて、さらに作り直す。

そしてとうとう「これならば!」と意気込める内容ができたので、来月から本撮影に入る事になった。

 

 

9月になった。

かなりしんどい内容を書こうと思う。

1日、関東大震災の追悼式典がニュースなどで報道される。さすがに僕ら世代でもおじいちゃんおばあちゃんからもこの話を聞かされており、日本人なら誰もが知っている歴史的な大災害だ。

この機に僕ら夫婦は、また映画館に行く事になった。「福田村事件」という、非常に凄惨な残虐殺人事件の実話を元にした映画を観るためだ。

かつての関東大震災の時に、その混乱から「在日朝鮮人や中国人が、放火や強盗、強姦や毒物混入などの犯罪を犯しているらしい」というデマが人づてや新聞により拡散されたのが元で、合計で6000人以上が殺されたという、およそ常識では考えられない歴史的な大事件があり、その中には、どさくさに紛れ、当時身分が低いとさげすまれていた日本人や、国にとって不都合だった運動家までが含まれていたらしい。

混乱に乗じて、ただの偏見や私利私欲のために起こされた異常な凶悪犯罪の数々で、これを知ってしまうと、とてもではないけれど、僕ら日本人がロシアを非難できる人種ではないのを思い知らされる。暴動になると即座にテレビを盗むアメリカ人など、まだ普通と思えて来るほどだ。

 

さて「アベンジャーズ」のような豪華なハリウッドスターが活躍するものばかりを観ている能天気な僕が、なぜこういう作品をお金を出してまで観たのかと言うと、圧力により「上演が危ぶまれている」との話を聞いたからだ。

(それほどの大事件を、今更隠そうとでもいうのだろうか?)と単純に疑問に思う矢先、官房長官から「当時の資料がないので確認ができない」とコメントする様子がニュースが流れ、思わず「えーーーっ!!」と声が漏れた。これには流石に度肝を抜かされた。このデータ管理時代に、そんな事が起こる訳がないではないか。

始めてリアルタイムで「公に隠蔽する」歴史的な瞬間を見た。少し前に東京都知事も「この事件には諸説ある」という考えで追悼文を送る事を拒否したらしいのだけれど、本当に日本政府全体で、歴史上無かった事にする気らしい。

今では毎週、汚職スキャンダルなどを隠蔽するのが当たり前のようになってしまった日本政府だけれど、これほどの規模の命が奪われた黒歴史を無かった事にできると、本当に考えているのだろうか。

 

という訳で全く皮肉な事に、国として隠蔽しようとした事で、僕ら同様、逆に興味を持ってしまった人を大量に生み出し、結果、話題の映画作品となった訳だ。

官房長官や東京都知事が「この時事件を忘れてはいけない」という強い想いの元、変化球的な応援として発言を行ったのであれば、誠に功を奏したという事になる。意外にもそうだったりして。。。

この時期にしてはかなり大入りだったこの映画は、最後まで見るのも辛いほどの内容だったけれど、日本人として観ておいて良かったと思う。僕ら日本人が彼らから恨まれたり、信用されない理由が、明確にある事がわかったからだ。

僕が高校の頃にも、在日朝鮮人や中国人を悪く言う生徒が学年に数人くらいいたけれど、それをあえて気に留めた事は無かった。けれど、何となく僕ら日本人をむやみに嫌っている人達なんだろうなという刷り込みを、されてしまってはいたのだろう。

それがむやみにではなく、相応の怒りだったのだ。もちろん、かつての大日本帝國軍の侵略戦争の歴史もあるのだし。

 

映画を見終わった後は、これを「上演禁止」にしようと動いていたという一部の政府関係者やメディアは、まさに恐ろしい存在だと思えた。なぜなら、この過ちを確実に伝えなければならないと立ち上がった、かつての新聞記者達の物語でもあったからだ。

最低限、沈黙も含めて、映画への圧力に加担した記者やメディアの人は、真摯に向き合って筆を断つべきだろう。その仕事には全く向いていない人達だ。

 

その映画から数日後、ラジオ番組の出演者がジャーナリストが、Twitterの「百年前新聞」というアカウントで、関東大震災の時の報道をリアルタイムのような臨場感で観る事ができたと言っていたので、僕も時系列で読んでみた。

記事では1日の震災直後から、3時間ぐらいですぐに朝鮮人に関するデマが出る異常さから始まり、その日の夜には虐殺が始まり、翌日2日には全国に惨殺が広がり、各地で当たり前のように数十人規模で惨殺が横行したと記されてあった。その夕方には、警察が目をつけていた社会主義者の日本人を勾留し殺害、それらを他の警察達も止められない状態だったらしい。

3日にはようやくそれが誤報である事が新聞で報じられるも、それを承知で惨殺が続けられて行き、警察自体が朝鮮人と中国人を警察署で保護するものの、そこへ乗り込んだ群衆が惨殺を続けたらしい。そして各地で同様の状況が繰り返され、6日には映画で見た「福田村での惨殺事件」も報道されている。

この惨殺事件の新聞記事のコピーもあれば正式な警察の記録もある。普通に一般にも公開されている。これほどの歴史的な大事件を「記録がない」だの「諸説ある」だの、歴史的に無かった事にしようとするのは、やはり世界中から、日本という国自体が狂って来ていると言われても仕方がない。

 

子供の頃に読んだ永井豪の「原作のデビルマン」のラストシーンは、初めて読んだ時からなぜか絵空事ではない説得力を持っていたけれど、この時の日本の史実を元にしているからかもしれないと思えてならなかった。

 

そんな最悪の気持ちで迎えた9月初旬。

月を変えてもコロナは全く収束の気配を見せない。

サーベイランスで、東京の新規感染者が第8波ピークの1.5倍になったというニュースをネットで見掛けた。しかもインフルエンザの爆発的な増加に伴い、その表はもはや漫画の表現で見るような急な傾斜になっている。

特に子供の感染は深刻で、神奈川だけでコロナで97学級、インフルで79学級が学級閉鎖らしい。埼玉では140校が学年・学級閉鎖らしい。「ダブルパンデミック」や「ツインデミック」と書いている人もいたほどだ。

 

僕のオンラインレッスンの生徒さんにも数名コロナに感染された方がおられた。やはり「感染に心当たりがある」との話だった。感染した生徒さんからは「先生は絶対にかからないで下さいね、本当に大変だから」と何度も言われ、その後悔の深さが伝わって来た。

当然の事ながら「絶対の安全」はないので感染は仕方がないし、全員で自粛していれば良いってものでもないのだけれど、「コロナは終わった」だの「そもそもただの風邪だった」という次元の発言を繰り返す人達は、あまりにも異常だろう。

まさに「5類にすると、こうなるよ」と言われていた通りの最悪な状況だ。

自分の周りにも「5類にすべき!」と強く主張していた人が数人いたけれど、いつの頃からかSNSをやめてしまっていた。心変わりか、感染による重症化か。何にしても力一杯主張していた人や拡散して来た人達は、せめて潔く謝って欲しいものだ。

僕がネットでつながっていた人達の中にも「コロナ認めない派」の人が数名いたけれど、いつの間にかアカウントが消え、今となっては元々存在していたのかどうかさえ分からない。

バスの運転手の感染から小田急バスを始め数社が運休、郵便局も臨時休業が相次いでいる。それを最近になってNHKがテレビニュースで報じた事で「ようやく信じる人」が出て来たらしい。

うちはすでに数十年テレビがない生活だけれど、こんなあてにならない局が、実際に観てもいない相手に、スマホを持っていれば視聴料を要求できるよう求めて行くというのだから、呆れてものも言えない。

 

話は変わるけれど、「オミクロン株」の変異株以降、「BA-2」や「EG-5(エリス)」など、どうも覚える気にもなれない名称が続いている。できれば「オミクラ」「オミクガ」など、僕らファミコン世代が緊張感を維持できるような名前にしてもらいたいものだ。

 

この時期、おこもり組としては、とても楽しみにしていた番組が配信になった。漫画「ワンピース」の実写化である。NETFLIXの8話構成のドラマで、海外で制作されたものだ。

かつての日本の漫画の実写化で、多くの不安を抱えるファン達に向け、作者本人が異例のお墨付きを与えた通り、僕ら夫婦も初めてに近いほどの「実写化での満足感」を得る事ができた作品だった。特にアニメの声優陣による吹替版とオリジナルの英語版の両方で楽しめるのも、今までにない楽しみ方だろう。

僕個人としては戦闘シーンが短か目なのも嬉しい。戦闘シーンが無駄に長いのは、原作もアニメも物語を進行させ過ぎないための苦肉の策で、本来は物語の別の描き方くらいなものだ。このワンピース実写版は、あえてそれを上手く取り入れてみたとの事だった。

この時期、ちょうど「キングダム」という漫画の実写化の成功があり、「ゴールデンカムイ」への実写化の発表へと続く流れもあった。この分野はかなり勢いづくのは必至だろう。

 

ここで、すでに失敗した「デビルマン」の実写化や、すでに暗礁に乗り上げてしまった「コブラ」の再検討もぜひお願いしたいものだ。ちなみに「デビルマン」の方は国内のテレビの特撮ヒーロー枠の50話組で。「コブラ」の方は海外の「スターウォーズシリーズ」の「マンダロリアン」チームでの制作を希望する。

などと、書いたそばからコブラの作者寺沢武一さんの訃報が発表される。68歳はまだ若い方だけれど心筋梗塞では仕方がない。漫画家という過酷な仕事に身を捧げた影響なのだろうか。実に残念だ。

フランス大使館からもお悔やみが出たくらいなのに、何も発信しない日本のメディアは、冷たいというか無関心というか。そのくせ「世界に誇る我が国の漫画アニメ文化」などと平気で言うのだからびっくりだ。

以前、偉大な漫画家「松本零士」の追悼番組でもコメンテーターの男性3人共が「作品を見たことがないので、この方の事はよく解らない」と無礼な発言し、そのまま番組を最後まで続けた事で炎上していたけれど、漫画やアニメを知らない事が文化人らしいと思っているのだとしたら、50年クラスの時代遅れだろう。松本零士のご家族の方にもファンにも無礼だし、放送した局はオワコンどころか、もはや電波の無駄遣いの範囲だ。

 

9月の中旬頃、秋を思わせる風が吹く時が出て来る。

新規感染者の増加は相変わらずの上がり調子で、すでに第8波のピークを超え、前回下がり切らずに上昇した事で、今回が最悪になるのではと語られ始める。定点観測の結果異常な上昇値は止まらず、さすがに大手メディアも医療逼迫という言葉を使い始めたらしい。それも申し合わせたように横並びでだ。

僕は対面レッスンのヤマノミュージックサロンへ、休講延長の連絡を入れる。「再来月には下がるだろうか」なんて、もう考える事すら虚しくなる。

たまに顔を出す知人の店でも「コロナって、まだあるの?テレビでやってないよ。あれ、もう重症化とかはしないんでしょう?」なんて平気で言われる。やはり、この状況を食い止めるには大手メディアの発信しか無いのだろう。

けれど、今更、報じ方を変えられるのだろうか?もう終わったかのように伝えたのは自分達なのに。むしろ、やっきになって隠し続けるしかないのではないだろうか。

 

原発処理水の海洋放出から約半月、中国のバッシングが急激に鎮静化したとの報道が流れ始めた。メディアに出演する国際情勢の専門家などは、理由は中国側の国内不安を日本叩きですり替えようとした事での失敗だと、口を揃えて分析していた。そしてすでに処理水の問題は解決したとも。

僕はこの物言いに違和感を感じた。まるで処理水自体に関しての問題が、全て解決したかのような報道にすり替わっているからだ。またリアルタイムで、政府と東電がマスコミを使ってすり替えるのを見せられた気がした。

海外で動く日本人が危険に遭う可能性が減ったのなら、それ自体は良かったのだけれど、僕ら日本人の評価が落ちたのは依然として変わらない事実だ。

まったく、こんなすり変えで騙されるような人が、本当にいるのだろうか。今どき、中学生でも気がつくだろうに。

 

ちょうど同じタイミングで、ジャニーズ事務所側が性加害問題を認め、大きな会見を開き、謝罪し補償に入る事を発表する。芸能界としては大きな節目なのだろう。「薄々は誰もが知っていながら、無かった事としてごまかしたツケ」で、今になり、いきなり全てが吹き飛んだ訳だ。

これが、僕には処理水の海洋放出問題と重なって見えた。

数十年後、こうして誰かが頭を下げ、周りは「薄々は問題に気がついていました」と当たり前に言うのだろう。無論、その時には誰かへの補償というレベルの話ではなくなっているはずだ。全ての国は海でつながっているのだから。

 

そして9月末。

ここで「Mr.コールの旅」という動画コンテンツシリーズの、方向性を変えた解説映像が完成する。

 

 

実はこの動画は、セッティングこそかみさんにお願いをしているものの、撮影は全て固定画面により1人で行った。いつも3時間近くに渡る僕の撮影作業に付き合わせるのが、申し訳ないからだ。

誰も人がいない中、1人でブツブツ言いながら撮影したにしては、なかなか自然に撮れている。途中確認などもしないので、3時間後に全く撮れていなければ、どれほど落ち込むのだろうかと考えながらの撮影だった。

この後、来月には「ハーモニカ音頭」のサポートコンテンツも、基本的には1人で撮影するのだけれど、果たして上手く行くだろうか。かみさんは自分の方の制作が始まったので、嫌が上にも、自分1人でのやり方に慣れて行くしか無いのだけれど。

 

まぁ、そうはいっても、時間が掛からず半分は遊びのような企画は、もちろんこれからも付き合ってくれるらしい。

例えばこれ、「ダッシュで息切れワンフレーズ」企画だ。

場所や季節を変えるものさる事ながら、ネタを考えるのに毎回頭をひねっている。

最近、これはなかなかだと思えたのは、この2点だ。

 

 

 

1つは急な方向転換を、もう1つは楽器を飛び越えてみた。

一緒に付き合ってもらっているOBのマルモさんも、地元の「ウルトラマンストリート」をモチーフにしたシリーズで、なかなか注目を集めているので、僕も頑張らなくては。

 

と、ここまで書き、一区切りのアップをしてみたいと思う。

前回の『その⑨』から、タイトルに”やや終わりに差し掛かった”と入れられたのに、今回は “また逆戻りとなった” と早くも撤回させる感染状況にはなってしまったけれど、いつかは「もう”終わりとなった”自粛日誌」と銘打ちたいものだと、『その⑪』に期待したいと思う。

 

2023年9月27日 広瀬哲哉