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ベランダのうた


気がついたら空は夕焼け
ひとりぼっちの午後
約束も責任も
ましてや恋人も
この部屋にはありまへん

夜の野郎が忍びより
野良猫がビートを刻む
本音も建前も
へたすりゃ時間さえ
この空にはありまへん

ベランダでうたおう
どこにもいかないで
ベランダであそぼう
月がのぼるまで

夜露のベランダ

君の家のマンションは
遠く離れた丘の上
夜露に濡れた世界
赤、白、黄色
しかくい星が揺れる

野球場の照明が
鉄塔の影を照らして
生き急ぐ者たちの
哀しい花火が爆ぜる

飛べるものなら飛んでゆきたい
このベランダから君の家のベランダへ






嘘と汗


君の涙を追求した
それが僕の若さだった
灼熱の風に揺れる雑草
パンツの中まで汗をかいてた

すべてを欲しがったのは君で
目をそむけていたのは僕で
涙を流すのは君で
謝るのはいつも僕だった

いつかきっと君に会う
でも何を話したらいいだろう

猫のミント

ミントはミントチョコレートの
段ボールに入れられ酒屋の脇に捨てられていた。
僕らはそいつを拾い飼うことにした。
どちらが先にその安易な名前を付けたかで
一度君と言い合いになったけど、
名付けたのは間違いなく君だった。

ふだんは引き下がる僕が
最後まで引き下がらなかったのは、
君が「ミント」とあいつを呼んだ瞬間を
しっかりと覚えていたからだ。

ミントのトイレだとか、餌だとかを
家の近くのホームセンターに買いに行った帰りだ。
プラタナスの街路樹がやたらと均等に並ぶ
長い坂道のちょうど真ん中あたりで、
君はとつぜん「ミントがいいね」と言ったんだ。
僕は振り返って「それがいいね」と言った。
僕らが登って来た坂道は白く照り返していて、
遠くで小田急線が多摩川の高架を渡っていた。
なにもかもを僕は覚えていたんだ。

ミントが昨日、死んだよ。

家に来てからもう何年経っていたんだろう。
君が出て行ってからもずっと、
あいつは元気で暮らしていたんだ。

ミントは最後に、小さな声で鳴いた。
僕らが拾って来たあの日と同じくらいか細い声で。
なぜだか、あいつが君の名前を呼んだ気がした。

ミントが死んだことを、君に連絡するべきか。
僕はもう半日ばかり悩んでいる。




失恋666

約束のカフェに
あの子は来ない

プレゼントを
隠し持っているのに

アイスコーヒーの
氷もだいぶ溶けた

気まずいメールを
送ってしまった7分後

入り口のドアが
ようやく開いた

そこに立っていたのは
半袖の外人 半袖の外人 
冬なのに半袖の外人
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