閉幕が近くなるにつれ、リング上を歩くのも大変なぐらい夢洲はどこも混雑してきた。人ごみをかき分けるように動画や写真をたくさん撮りながら歩いた、この熱気のなかにいたことも、後で振り返ればいい想い出になるのだろう。今を楽しみたい。様々な国のパビリオンを巡るたび、彼の優しさと知的な会話に魅了されて心が少しずつほどけていくのを感じた。
閉幕まで1か月を切ったある日のこと。未来社会ショーケースで「これからの暮らし」をテーマにした展示を見ながら、彼がぽつりと「君とこんな未来を過ごせたらいいなぁ」と言った。私は驚いて彼の顔を見た。真剣な眼差しに、胸が高鳴った。でも彼は照れ隠しのように、急にパビリオンスタッフの顔に戻った。
「このスマートポール、充電も出来るし発電も出来るって知ってた?迷子さがしも出来るねん、まあ、あんまり知られてないけど。ミクさんだけ特別に教えてあげる」「特別に?ありがと。私が迷子みたいだから?」「いや、別にそういう訳じゃないけど」帰り道、海風が頬を撫でる中、彼が私の手を握り直した。
「夢洲で出会えた奇跡、信じていい?」
そう聞かれ、私は静かにうなずいた。もう過去にとらわれていなかった。夢洲ラブストーリーは、短く終わる夏の花火じゃなくて、未来へときっと続いていく。彼とならもう一度、恋を信じてみてもいいのかもしれない。
「ミミさんってさ、本当の名前はなんて言うの?ずうっとミステリアスガールやん」ミキヤくんには本名を明かしていなかったのだ。こんなに親しくなっているのに。どこかで心にブレーキをかけて本気で関西人に恋をしないようにしていたのかもしれない。関西人を本気で好きになってまた傷つくのが怖いから?でも、もうそんなこと、どうだっていいのかもしれない。
「分かった。ミミは活動名で、本名は加藤美空。ミクだよ」「そうなんだ。やっと本名、教えてくれたね。ありがとう」そう言うと彼は少し首を振って「にしても名前、ずるいね」「えっ、どういうこと?」「名前がミャクミャクってさ」「ええっ?」「ミャクミャクを略したらミ・クやん」彼はいたずらっぽく笑う。ああ、そういうことか。「名前と誕生日はレミオロメンの3月9日で覚えて。3月9日は私の誕生日なんだ~」それ以外のネタは今まで思いつかなかったのに。関西人は発想が面白い。二度と関西人に恋なんてしないつもりだったのに。どんどん惹かれていく。関西人に本気になったらダメだって、分かっているのに。
~to be continued~
※実体験を元にしたフィクションです。
大阪・関西万博2025スピンオフ小説
大人のためのちょっと切ない
ラブ・ショート・ストーリーを
書いています。
自分を慰めるために書き始めた
「夢洲ラブストーリー」ですが、
予想外に多くの方々にも
読んで頂いているようで
大変嬉しく思っております。
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ライターのゆきこです。
ご訪問して頂きありがとうございます![]()
愛知県で
ミニコミ誌のライタ―をしております。
万博は終わったけど想い出は永遠だ~!
ということで続きをアップしてみました。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございます![]()
前回のお話はこちら
夢洲ラブストーリー
<これまでのあらすじ>
失恋と失業でピンチの主人公ミク。偶然行った関西万博沼にはまり、「ミミ」として配信をはじめる。万博ボランティアをしている大学院生ミキヤと知り合う。過去の失恋経験から関西人との恋に臆病だったミクだが、彼のやさしさに次第に心惹かれてゆく・・・(続)。
エネルギーの研究者であった父の自伝「偲」を2024年に出版し、2025年より記者をはじめました。
最近は「フィラデルフィア日記」(20歳でアメリカ留学したときのお話。文学を捨てなかったルーツはここにあり⁉)を書籍出版を目指して執筆中です。書き散らしていたものを1冊の本にするのは大変!ですが、やりがいがあって楽しいなと思っています。フィラデルフィア日記の一部はこちらのアメーバブログで(アメリカンデイズ)アップしておりますが、全容は電子書籍パブーにて「フィラデルフィア日記」無料公開中です‼ コメントなどお待ちしています。
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