- 吉野 弘
- 二人が睦まじくいるためには
- ☆☆☆☆☆
友人が結婚したり出産したりした時に、この本を贈りたい。
そう思った。
電車の中で、老人に席を譲りつづけた娘さんの葛藤をやさしく見つめた
「夕焼け」という詩を、どこかで知っていて、
吉野さんはやさしい人だと思っていたが
この詩集に接して、とても暖かい気持になった。
「生まれる」ということが英語では受身形になるということに
少年が気づいて新鮮な感動を得る「I was born」 にも感動した。
巻末の茨木のり子さんの賛辞も秀逸。
一番印象深い「祝婚歌」を全文紹介させてください。
(著者も「この詩にかぎっては民謡みたいなものだから」と
紹介を許してくれているようなので。)
「祝婚歌」
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風にふかれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい