第19回ショパン国際ピアノコンクール
二次予選3日目(2025.10.11.)
印象に残った演奏について書きます。
今回は前半は辛口です。
素人の感性による個人的な感想なので
審査とはリンクしないのは承知の上で
(皆様もそこのところご了承願います)
正直なことを言うと、
昼の部の演奏はどれも上手いなと思いましたが
いいなと思う演奏はありませんでした。
Eric Lu アメリカ27歳
フォルテになると金属的な音が耳障りで、
よく言えばキレがいい指捌きも
私には硬い表現に思えました。
もともと私が、ふわりと柔らかく
ロマンティックな演奏が好きだからでしょう。
彼の演奏は上手いけれど
なんだか機械的に感じてしまいます。
私の記憶が正しければ、
前大会1位のブルース・リウと
似たタイプなのかなと思います。
審査員ウケはするのだろう、
きっと次のラウンドに進むのだろう、
(前々大会で4位になったくらいですし)
と予想しますが、私は一次予選から一貫して
彼の演奏は好きではありません。
Philipp Lynov 中立個人参加(ロシア)26歳
エリックとは正反対のタイプで
柔らかくゴージャスな響きが心地よく
エレガントな表現が私好みです。が、
曲の理解が細部まで行き届いていない印象で
おそらく練習不足もありミスタッチが多く
曲が自分のものになりきっていないように見えました。
予選通過は難しいかもしれません。
しかしこの「理解不足」「練習不足」は
彼に限ったことではなく、
予備予選、一次予選と戦ってきて
ここで「ストックが尽きた感」のある
コンペティターは他にも何人かいて
彼はまだずっとマトモな方だと思います。
もっと勉強不足・準備不足が明らかで
勢い任せの薄っぺらい演奏を聴くと
なんとも言えない気持ちになります。
Tianyao Lyu 中国16歳(今月21日に誕生日)
16歳という若さを考えると驚くほど上手いのですが
パッション(楽曲に関する自分なりの解釈と
それをどうにかして表現たい!聴かせたい!
という溢れる思い)は感じませんでした。
夜の部では個人的に好きなタイプの演奏で
注目・応援しているこの方たち
の感想をば。
中川優芽花 日本23歳(12日に誕生日)
10月12日が誕生日ということで
日本時間では24歳になりたてでの演奏。
登壇前は少し緊張の面持ちでしたが
始まってしまえば優芽花ワールド。
英雄ポロネーズでは
小さな手が精一杯鍵盤の上を躍動。
進むにつれて緊張もほぐれ
惹き込まれる演奏でした。
ポロネーズを終えるとたっぷり間を取り
上がった息を整え気分を一新して
プレリュードをスタート。
緩急を繰り返しながら物語を紡ぎ
no.15雨垂れで感情が溢れ出します
(優芽花さん自身の目からも涙が・・)。
流れを切らぬようそのままno.16を強く演じきり、
涙を拭いて気分を変え温かくno.17、
鼻水を我慢してno.18、
急いで鼻を拭ってたおやかにno.19、
no.20~各曲の雰囲気をしっかり表現し分けつつ
フィニッシュに向けて徐々に力を溜め、
no.24は感情が波のように寄せては返しながら
全力を出し切ってフィニッシュ(打鍵はグーで)。
楽曲と彼女自身の感情が共鳴しつつ
全体の流れを止めないような配慮も忘れず
全霊を演奏に注ぎ込んでいる様子に心打たれました。
彼女のキャラクターが存分に発揮された
人間味溢れる素敵な演奏でした。
ミスタッチと音量レンジが弱い方にずれているのを
補って余りある気迫と表現力!
と審査員も思ってくれるといいなと思います。
Piotor Pawlak ポーランド27歳
透明感ある伸びやかな美音。
天に昇るような清らかさや優美さを感じるたび、
日本で生まれ育った私は
西洋の伝統文化や宗教観に支えられたセンスを
真には感受できていないのかもしれない
と切なく思うのですが、
そんな切なさも小さなことで
芸術・美を感じる心は根っこのところで
誰しもに備わる普遍的なものだから
目の前にある美しさを
自分なりに楽しめばいいんだ
と思わせてくれる優しくて温かい
包容力を感じる演奏でした。
今回のショパコンに関する記事の
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ショパコン2005目次
最近ショパコン聴いてばかりいて
ボクのお世話がおろそかになってるんじゃにゃい?
