誰も傷つけるわけじゃない
罪を犯すわけでもない
法には触れない程度の「うまいやり方」で
その場をしのぐことができるよ
そう言われてショックだった
仮にも人の道を説くような仕事をしているはずの人が
そんなことを言うのか・・
困っている私のことを思って
急場をしのぐ方法を教えてくれたのはわかっている
もしかしたらそうすることが普通なのかもしれない
それが普通の人の感覚なのかもしれない
でも
私はそうできない
私だって清廉潔白なわけじゃないし
聖人君子でもない
ズルイ気持ちや
どす黒い思いが渦巻くことだってある
だけど
自分の中の羞恥心がストップをかける
そんなコソコソしたやり方じゃなく
大手を振って胸を張って生きていけるような
真っ当なやり方で
幸せになりたいんだよ
誰もが後ろめたさを誘われるようなことなく
背筋を伸ばして幸せに生きられる
そんな優しく美しい世の中だったらいいのに
子どもの頃ずっと嫌いだった父のことを
今ならとてもよくわかる。
高潔を求め清貧だった父。
その頑固さとそれゆえの貧乏な暮らしを
子どもだった私は嫌ったのだけれど。
私は確実に父の血を受け継いでいる。
この複雑怪奇な世の中と己の自尊心、
折り合いをつけて生きていくのは
大変なことだね。
私の中にも流れる亡き父の血は
忌まわしくもあるけれど、仕方がない。
どうあがいても、これが私。
幸いなのは夫にも似た血が流れていること。
おそらく私よりもずっと色濃い血が。
おかげで2人して損ばかりしている。
悔しさや憤りを感じながら
それでも同じ「大事なもの」を
汚れないように大切に抱えて
支え合って生きている。
仕方ない、これが自分たちの選んだ生き方。
願わくは
この私たちの血を受け継いでしまったであろう娘たちが
できるだけ苦しまずきれいなまま生きていけますように。