フランスねこ:廃棄物処理場を持たない台湾 | 乖離のぶろぐ(*´∀`)吸い込んで応援
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/2-47b8.html
2012年2月 8日 (水)
廃棄物処理場を持たない台湾、「世界で最も危険な原発」の建設を再開/ルモンド紙(2月8日)

台湾で1月に行われた大統領選挙では馬英九総統の再選が決まりました。その馬政権の下で、国民の反対を押し切って原発の建設が再開されようとしています。

1. 台湾の原発:福島原発と同型・同時期の原子炉

昨年3月に福島で起きた原発事故の後、台湾人たちは自らの国にも福島原発と多くの共通点を持つ原発がいくつも建てられていたことを発見した。例えば、台湾の原発第一号機である金山原発(注)は、福島にある6基の原発のうちの5基と同じGE社製の「マーク1」型の原子炉を使用しており、事故を起こした福島原発とほぼ同時期(1978年)に作られた同型の沸騰水型原子炉だ。台湾では、日本と同様に強い地震と大規模な津波の危険性がある。


2. 放射性廃棄物の処理場、「存在せず」

台湾には現在3基の原発があるが、最初の原発が建設された34年前以来、台湾政府は放射性廃棄物を処理することなく敷地内にそのまま溜め込んできた。(「一つの中国」を推進する)中国の反対で国連に加盟できず、国家としてのステータスをも認められていない台湾は、海外に廃棄物処理を依頼することができない。また、台湾によるプルトニウムの抽出とこれに続く核兵器の開発を恐れる米国と中国の反対によって、国内での処理も実施できないままに現在に至っている。処理がなされていない大量の放射性廃棄物は、原発事故が起きた場合には国民を高度の危険にさらすことになる。

現在ある使用済み核燃料用の貯蔵プールの一つは、2014年にはいっぱいになると見られている。また、他の貯蔵プールについても、他の廃棄物と放射性廃棄物が混ぜて捨てられているなど、ずさんな管理が指摘されている。放射線防護協会の会長をつとめるピーター・チャン教授は、蘭嶼にある低放射性廃棄物用の中間貯蔵庫が、5年前より既にいっぱいになっていると指摘している。又、近隣の畑や田んぼでは1999年以来セシウムが検出されており、放射能漏れが指摘されている。政府は新たな廃棄物貯蔵庫の設置場所を探しているが、受け入れを表明している自治体は皆無である。


3. 高まる不安

チャン教授が1月の大統領選前に実施した調査では、70%以上の人が台湾の原発に関する安全対策は日本の対策に比べても劣っていると考えており、80%の人が、原子力に関連する事故が起きた際には、政府はうまく住民を避難させることができないだろうと考えている。


4. 新政権下での新規建設の再開

こうした中、1月14日に誕生した台湾新政権は、政権が誕生したその日に、建設が中断している第4号機の建設再開を指示した。第4号基は先に米国GE社とウェスチングハウス社が合同で建設した3基の原発と異なり、国営企業である「台湾電力」が建設を監修している。しかし台湾電力は第4号基の建設以前に原発を建設した経験が無く、これまでに多くの欠陥工事が指摘されている。台湾当局内で原子力の安全を所管する原子力委員会の安全局チェン・イービン局長は第4号基の建設工事を「完全な失敗」と指摘しており、政府内でも工事を完成させることへの支持は低い。第4号基の建設には、当初予定の4倍の20億ユーロ(約2千億円)の予算が必要と推定されている。

(注)<参考>台湾の原子力施設(日本原子力産業協会 資料)
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2007/taiwan_map.pdf 


(以下の2つの記事から一部を抜粋・編集しました。2月9日に一部の和訳修正を行いました。)

●ルモンド紙「台湾という原子力魔女の弟子」2月8日
(Florence de Changy, « Taïwan, l’apprenti sorcier du nucléaire », Le Monde, 2012.02.08)

●ルモンド紙「國聖、金山―世界で最も危険な二つの原発」2月8日
(Florence de Changy, « Kuosheng et Quinshan, deux centrales parmi les plus dangereuses au monde », Le Monde, 2012.02.08)
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2012年2月 8日 (水) 原子力発電 | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月 6日 (月)
福島で故郷を思う ~原子力施設をかかえる仏自治体の首長らによる南相馬市訪問(1)/ルモンド紙(2月2日)

1月末、フランス各地で原子力施設をかかえる自治体の市長たちが南相馬市を訪問しました。これから数回に分けて、彼等の目に映った福島の様子、そして彼等自身が自分の町の将来について考えたことについて御紹介します(小見出しは訳者によるものです)。

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●フランスから福島へ

「美しい福島の農村が、今日こうして放射能に汚染されて、そして次々と車窓を通り過ぎてゆくのを見る時、私は自分の故郷のことを思わずにいられません。そして私たちの土地がこれからどうなってゆくのか、と考えずにいられないのです。」

心の中の思いが、言葉となって一度にあふれてゆく。バスの窓際で福島の美しい自然の風景に目を見張りながら、アンドル・エ・ロワール県シノン市からやってきたイヴ・ドージュ副市長はつぶやいた。

雲一つない空に高く太陽がのぼり、雪を頂く山々を背景に、もはや耕されていない田園とどこまでも続く森が広がっている。この絵はがきから抜け出したような美しい風景に魅せられているのは、イヴ・ドージュ副市長だけではない。(原子力施設を抱える)フランス各地の自治体からやってきた他の7人の首長たちも同様だ。

彼等は、日本の北東地域に位置する福島県で数日を過ごすためにやってきた。旅の目的はただ一つ。

「福島原発での事故と事故による被害に、日本の地方自治体たちがいかに立ち向かっているのかを見届けること。」

である。

今回の旅は、フランスの地方自治体による活動を国際的な舞台で支援する「都市連合」が、日本にある同様の団体組織「クレア」と協力して1月12日から14日までの日程で企画した。2011年3月に福島第一原発で起きた事故に日本もフランスも同じく強い衝撃を受けたことをきっかけに生まれた企画だ。

招かれたのは、原子力施設を抱えるフランス各地の自治体で活躍する市長たちだ。マンシュ県ラ・アーグ市、シノン市、上ライン県フュッセンハイムからも参加があった。

3月11日の大地震と津波、そして特にチェルノブイリ原発事故以来、史上最悪の原発事故に見舞われたこの地に、数日の間全身で浸る―この大きな悲劇を身をもって体験するこの機会について、(旅の企画者であり)フランス都市連合の代表をつとめるベルトラン・ギャレは、「この学び多き旅にもっと多くの首長が参加してほしかった」と残念がる。                                                                                                                  
●未来予想図

「学び多き旅」、そして激しく心を揺さぶる旅でもあった。

「私たちにとって」

とイヴ・ドゥージュ副市長は言う。

「この旅は(これから私たちの町で起きることの)具体的な例を示しているのです。耳にしたこと全てにひどく心が乱れます。将来、誰がここに住みたいと願うでしょうか?どんな会社がここに投資をしたいと思うでしょうか?」

なぜなら、これらの市長たちはこの数日の間、日本でも最も広い県の一つである福島を早足で歩き回り、事故を起こした原発の周辺20キロ半径に設定された立ち入り禁止区域を訪れ、地元の議員、首長たち、そして住民たちからの話に耳を傾けて、10万人以上の人を避難させなければならない事態を招いた大惨事、その収拾に今後40年の時間と1兆1500億円もの経費を必要とする非常事態の現状を、まざまざと目の当たりにしたのである。ただしこの時間と経費の試算には、今後数年のうちに何千人もの人々の身体に感じられることになるであろう健康被害の影響や、長い間続くであろう放射能による汚染の問題は考慮されていない。

(続く)

(Philippe Mesmer, « A Fukushima, des maires français face à « l’ennemi invisible », Le Monde, 2012.02.02)
http://www.lemonde.fr/planete/article/2012/02/01/a-fukushima-des-maires-francais-face-a-l-ennemi-invisible_1637285_3244.html

2012年2月 6日 (月) フランス政府の対応 | 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年2月 3日 (金)
「テント村を守れ」世界から枝野大臣に数万人の抗議メッセージ/フクシマ・オーバー・ブログ(1月28日)

他に例を見ない世界運動が展開している。数万通にのぼる(世界からの)抗議メッセージが、一日のうちに枝野経産相大臣に届けられた。経済産業省の前で、原子力利用の永久停止と福島県の汚染地域からの公的避難を求めキャンプを続ける市民と福島の母親たちを支援する何百もの人が、この日経産省が立ち退きの期限に指定した時間に集まった。

経産省は立ち退きを強行しなかったが、立ち退き命令を取り下げていない。これらの市民は、あなたの支援を必要としている。

(一部編集)

( « Tokyo : la tente est restée debout ! », Fukushima Over Blog, 2012.01.27)
http://fukushima.over-blog.fr/(本件に関する記事は下の方にあります)

2012年2月 3日 (金) 脱原発 | 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年2月 1日 (水)
原発労働者を裏切り続ける日本政府(3)―「契約の無い仕事」/Rue 89(1月15日)

これまで2回にわたって掲載して来ました「Rue 89」紙ティエリー・リボー記者による「なすび」さんへのインタビューの最終回です。被差別部落の出身者からフィリピン人まで、福島で働く原発作業員への差別と搾取の現状を伝えています。

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●臨時雇用の原発労働者たちは、会社と契約を結んでいるのですか?

原発労働者で契約がある人は非常にまれです。ですから、予定外の勤務地に送られるということが起こります。契約無しの仕事は、下請け労働の一つの特徴です。一次請け、二次請けであれば契約があるかもしれませんが、それ以上の下請けになるとありません。

こうした契約無しでの雇用は現在社会の批判を浴びており、雇用者の中にはこれまでの態度を改めて契約を結ぶ人も出てきています。ただし、労災の申し立てをしないという約束をしなければ、労働者は契約をもらえない条件になっています。たくさんの労働者たちが、このような非合法的な契約取り引きについて証言しています。

こうした状況にも関わらず、(福島原発事故が発生した)2011年3月11日以来、日雇い労働者たちは自らの労働条件の改善を求める運動に取り組み始めました。私は『被ばく労働自己防衛マニュアル』というパンフレットを出版しました。でも、(現場で働く原発労働者による)ストライキが一番効果的な抗議行動であることには変わりありません。


●このパンフレットには何が書いてあるのですか?

(原発労働者を雇用する)企業には原発で働くための基本情報を原発労働者に伝える義務があります。でも、企業はきちんとこうした情報を伝えていません。このパンフレットでは、労働者が雇用者に契約を求めることができること、労働者が浴びた放射能の被ばく量を企業が記載する被ばく手帳を手に入れることができること、について説明しています。企業は労働者と労働契約を結び被ばく手帳を配布する義務がありますが、大概はそのことを労働者に伝えていません。また、労働者もそうした権利について知らないのです。

パンフレットでは、つなぎ服を正しく着用する方法、マスクにフィルターを設置する方法を説明しています。企業の側はつなぎ服もマスクのフィルターも、たいがい準備していません。基本的には昔から原子力分野で働いている古株の労働者たちがこうしたことについて説明できるのですが、現在の福島では原発で働いた経験を持たない初心者の労働者がたくさんいます。


●どんな人が労働者として福島原発に来ているのでしょうか。

労働者は日本全国からやってきます。外国人もいます。現在はたくさんのフィリピン人労働者たちが福島原発で働いています。日本人の原発労働者たちによれば、フィリピン人労働者たちは日本人が手を出さない最も危険な仕事をまかされています。被差別部落出身の人たちもいます。大雑把に言えば、貧しい家出身の労働者たちがやってくるのです。


●今後はどんな活動をする予定ですか。

福島に原発労働者のための常設相談窓口を開きたいと考えています。被ばくした原発労働者のためだけのものではありません。たとえば、公共事業の現場で働く他の労働者たちにも(彼等を守るために必要な情報提供を行うという意味で)同じように関係があります。

また、政府の関連省庁や福島に(違法な形で)労働者を送っている人材派遣会社と交渉して、(福島原発以外の)他の分野に労働者を送るよう交渉しなければなりません。

たとえば、東京の山谷で集められた日雇い労働者たちが福島市の下水処理施設に送られたケースがありました。労働者たちが現場に到着すると、被ばく対策のためのつなぎ服や防御マスク、原子炉の中で使用する作業道具が渡されました。でも労働者たちは仕事場の放射線量を知らされませんでした。常設の相談窓口を開くことができれば、たくさんの人が相談に来ると思います。

原発事故の被害に対する損害賠償を定めた法律では、(原発に関連する被害については原発事業の責任者である)企業に最終的な責任があると定められています。ですから、私たちは原発作業員を福島原発に送っている派遣会社に対して(作業員を違法な形で派遣しないよう)交渉し、次に東京電力と交渉するつもりです。今に至るまで東京電力は(被曝労働者に対し)全く賠償を行っていません。他の原発に関わる電力会社も同様です。そして労働組合は決して裁判を起こそうとして来ませんでした。私たちはこのような状況を変えてゆきます。

    (了)

(Thierry Ribault, « Nucléaire au Japon : « L’Etat est un traître pour les travailleurs », Rue 89, 2012.01.15)

http://www.rue89.com/rue89-planete/2012/01/15/nucleaire-au-japon-letat-est-un-traitre-pour-les-travailleurs-228381

2012年2月 1日 (水) 原発作業員 | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年1月30日 (月)
コリンヌ・ルパージュ元フランス環境相からの緊急メッセージ「福島のお母さん方、そして枝野大臣へ」/EcoEchange France(1月28日)

枝野幸男経産相は1月24日、原発利用の廃止を求め130日以上にわたって経済産業省の建物前で座り込みの抗議行動を続けてきた日本市民らに対し、退去命令書を送付しました。市民らによるテント村「テントひろば」は、原発廃止に向けた署名活動や情報交換の要所として活用されてきました。しかし、経済産業省は火気の扱い等に不安があることを理由に退去を求めています。

<参考>「"脱原発テント村"退去期限迫る!」ニコニコニュース(1月27日)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw185973

テント村が危機に瀕していることを耳にしたフランスの元環境相コリンヌ・ルパージュ氏は1月28日、抗議を続ける福島県の市民、および枝野経済産業省大臣に対し緊急メッセージを発表しました。

●コリンヌ・ルパージュ元環境相によるメッセージ(動画、日本語字幕付き)
http://www.youtube.com/watch?v=9vCMMSQmy5M&feature=player_embedded

「枝野大臣、私は大臣の感受性の高さを理解しています。私たちは(...)大臣が何とか苦境に持ちこたえることを心から願っております。」
「日本が大惨事を経験した後、世界にお手本を示してほしいのです。(...)私たちは日本がどんな結論を出すのか、非常に注目しています。」

ルパージュ氏は環境相時代から積極的に原発問題に取り組み、昨年9月には福島を訪問しました。日本はどんな答えを出すのでしょうか。

(この情報はユキさんより御紹介頂きました。ユキさん、ありがとうございました。)

2012年1月30日 (月) 民主主義 | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年1月28日 (土)
原発労働者を裏切り続ける日本政府(2)―「女は売春、男は原発」/Rue 89(1月15日)

前回に引き続き、Rue 89紙のティエリー・リボー記者が昨年12月に行った「なすび」さんへのインタビューの第二回目を御紹介します。

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●原発で働く日雇い労働者たちはどこからやってくるのでしょうか。

さまざまなところからやってきます。他分野が専門の人たちもいます。しかし大多数は仕事が無い地方からやってきます。原子力という分野では特定の資格や適正を持った人をそれほど必要としません。だからこそ、この分野で働く労働者たちは差別を受けるのです。

こうした労働者たちを集めるシステムは、売春婦の雇用体系に似ています。やくざが仕事の無い女性たちを売春に追いやり彼女たちの仕事を管理するように、やくざは男たちにこう言うのです。

「原発へ行け」

と。女性の場合は売春で、男性の場合は原発です。そしてフェミニストたちが性産業で働く女性たちを支援しないように、労働組合もまた、原発で働く男性労働者たちを支援しません。


●やくざはどんな役割を演じているのでしょうか。

19世紀の末以来、(日本の)労働界では表と裏の世界が存在してきました。裏の世界を支配するのがやくざです。19世紀の末、日本政府は国家の近代化という目的のもと国土の開発と整備を行うため、産業界および暴力団と手を組みました。国は社会の底辺層から輩出される労働者たちを手配する暴力団の働きを必要としたのです。

原子力はこうした慣行が行われている分野の典型です。政府と東京電力は公式には2次請け、3次請けまでしか下請けは無いと言っています。でも実際には8次・9次にまで下請けがなされていることをよく知っています。このように国と東京電力は、暴力団を介した労働者の雇用が行われていることを全面的かつ暗黙のうちに認めているのです。たとえそれが、当然ですが、法律で禁止されているとしても、です。

私たちが関連省庁と(原発労働者を守るための)交渉を行う中で、これら労働者の雇用手続きについて多くの情報が明らかになってきました。原発労働について記事を書いた記者もいます。政府は(もはや)暴力団が原発労働者の雇用にかかわっていることを否定できません。

でも私たちが現状を調査するよう政府に求めると、政府は「東京電力に調査するよう指示した」「でもその結果は『暴力団の関与はない』というものだった」と反論します。政府は東京電力のこんな回答を真に受けて、これまで一度も公式の調査を行って来ませんでした。

(昨年)4月、政府と東京電力は福島原発事故後の復興事業に非合法組織が参加するのを防止するための委員会を設置しました。背景にあるのはこんな理屈です。「今までやくざが公共事業に関わったことはなかった。しかし今やくざは復興事業に参入したい意向を示している。だからこれを防止しなければ。」

この論理で、国は自らがやくざと闘っているかのように見せかけて自分の体面を守ることができます。でも実際にはやくざは既にいるんです!このように、国は原発で働く労働者たちを裏切っています。


●原子力産業で働く労働者たちの中で労災に遭う人はいますか?

日本の原発は1966年に稼働を始めました。以来、50万人の労働者がこの分野で働いて来ました。その中で労災事故の申請を行ったのは、たったの20人に過ぎません。そしてそのうち10名の申請が認められています。

昨年6月まで、厚生労働省は決してこうした数字を公表してきませんでした。私たちが交渉する中で初めて明らかにされたのです。正確に言えば、7件の労災申請が認められていることが分かりました。そしてあとの3件については、厚生労働省が申請を行った労働者本人に(労災が認められたことを)全く通知していないことが分かったのです。

労災を申請するには、労働者は原則として働いた期間を証明する書類を提出しなければなりません。でも雇用者がそうした証明書類の提出を拒むことがあります。

労働者が強く書類を要求すると、会社側はしばしば労災証明を出す代わりに6百万円から3千万円の間での示談金の支払いを持ちかけます。


●こうした示談は多いのでしょうか。

たくさんあります。そして労働者たちがこのような示談を受け入れると、そのことを口外しないよう約束させられます。こんな風に労災が隠されているために、原子力のせいで亡くなった労働者は一人もいない、と豪語する政治家が現れるのです。

(続く)

(Thierry Ribault, « Nucléaire au Japon : « L’Etat est un traître pour les travailleurs », Rue 89, 2012.01.15)

http://www.rue89.com/rue89-planete/2012/01/15/nucleaire-au-japon-letat-est-un-traitre-pour-les-travailleurs-228381

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2012年1月26日 (木)
原発労働者を裏切り続ける日本政府(1)―隠される差別と搾取の現実/Rue 89(1月15日)

福島原発事故直後の高度放射能汚染の中で事故処理にあたり、「フクシマ・フィフティー」と賞賛された原発作業員たち。日本政府はこれまで原発労働者にどのように接して来たのでしょうか。

仏リベラシオン紙の元記者たちが2007年に立ち上げたRue 89紙。マルクール原子力施設で起きた爆発事故の際には、事故処理に立ち会った警察官が同紙に投書を行ったことで、即死した移民原発労働者の悲惨な最期と放射能汚染の状況が明るみになりました。今回は、同紙のティエリー・リボー記者が昨年12月に日本を取材訪問した際に行った「なすび」さんへのインタビューを数回に分けて御紹介します。

なすびさんは長い間、原発労働者の問題にとりくんできました。密室で行われる危険な原発労働の実態、日本人が手を出さない高濃度の放射線に汚染された環境で作業に狩り出されるフィリピン人労働者たち。過酷な労働環境とともに、請負い制度による搾取と差別の構造が語られています。

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一人の女性が、「原子力反対」の声をあげながら歩いてゆく。手にした横断幕には「何が起るの、お母さん?」の文字。

なすびは1986年以来、日雇い労働者を守るための活動を行ってきた。特に、東京の山野や大阪の釜ヶ崎、横浜の寿を中心とする寄せ場―やくざが支配する日雇い労働者の市場ーが主な活動場所だ。

2011年7月、なすびは『被ばく労働自己防衛マニュアル』(注)を出版した。私たちは12月11日、東京で行われた原発反対デモの出発直前、経済産業省の建物の前で彼女へのインタビューの機会を得た。


●なぜ原発労働者の問題にとりくむようになったのですか。また、どのような活動を行っているのですか。

私が原発反対運動にとりくんでいるのは、原子力分野で働く労働者の生活と労働環境、そして彼等を喰いものにする「下請け制度」の存在を社会に知らせるためです。私はもともと、日雇い労働者の権利を守るための運動に参加していました。日雇い労働者の多くが、昔も今も、原発で働くために集められ現場に送られています。

原発問題にとりくむ人たちは皆、原発労働者の問題について知っています。でも特定の問題をのぞいては十分な取り組みがなされていません。日本の労働組合もまた、原発労働者の権利を守ることに関心を示しません。原発で働く作業員の多くが癌で亡くなっています。それ以外の労働者たちは深刻な病気に悩まされています。それでも、労働組合は常に沈黙を守って来ました。

これまでで唯一、原発労働者の問題に取り組んだ組合運動は、1981年から1987年にかけて福井県の敦賀原発で行われたものだけです(注:敦賀原発第一号機の送水システムが故障し、高濃度の放射性汚染水16トンが冷却装置から流出した事故を指す。この事故は1981年4月、事故が起きてから40日を過ぎて初めておおやけにされた)。


●なぜ労働組合は原発労働者を無視してきたのでしょうか。

原発労働の現状は常に隠されてきました。中で実際に何が起きているのか、(外からは)よく分からないのです。そして、原子力分野で働く労働者は差別に苦しめられてきました。差別をするのは、労働組合も例外ではありません。労働組合の活動が正社員の払うお金でまかなわれているから、という理由だけで差別が起きるのではありません。原子力という分野が、原発で働かざるをえない社会の下層階級の人々にかかわっているからです。

これは政治的かつ微妙な問題です。実際、全国規模の大きな組合は原発を推進しています。小さな組合は原発推進の立場に決して異を唱えませんでした。請負い作業員として働く原発労働者の状況や労働環境をあえて問題にしようとはせずにこれまでやってきたのです。

●原発の分野で働く正社員たちの状況はどうですか?

(「原発労働者」の現状とは)全く違っています。東京電力(注:事故を起こした福島原発の責任事業者)の社員は、大企業のエリートですから、被曝するような仕事はしません。彼等は管理室でコンピューターを操る係です。原発労働者の大部分をしめる日雇いの労働者たちが原子炉の掃除をし、原子炉に直接入って仕事をするのです。

(注)『被ばく労働自己防衛マニュアル』http://2011shinsai.info/node/400

(続く)
http://www.rue89.com/rue89-planete/2012/01/15/nucleaire-au-japon-letat-est-un-traitre-pour-les-travailleurs-228381

2012年1月26日 (木) 原発作業員 | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年1月23日 (月)
日本政府、原発稼働年限の延長へ/ユズィン・ヌーベル(1月18日)

日本政府の藤村修(ふじむら おさむ)官房長官は1月18日、原子炉の稼働年限を60年に延長する旨を法律に明記する予定であることを明らかにした。これは米国で既に実施されている前例に従うもの。日本を代表する広報担当官である藤村氏は「稼働年限の延長は、原子炉の安全が保障される場合に限って特別に承認されるものです」とした上で、

「日本は世界基準の仲間入りを果たすのです」

と述べている。今回の藤村氏の発言は、福島原発事故への対応を担当する細野環境大臣が原発の稼働年限を40年に定めると宣言した直後になされたもの。

「原発の稼働年限を60年に延長することで日本人がさらされる危険は、とうてい受け入れられるものではありません。既に福島原発事故による被害を受け続けているというのに。」

環境団体グリーンピース・ジャパンの代表者である佐藤潤一は言う。日本にある54基の原発のうち、3基が既に40年を超えて稼働しており、16基は稼働30年を超えている。

(抜粋、一部編集)

( Barbara Leblanc, « Le Japon va revoir la durée d’exploitation des réacteurs », L’Usine Nouvelle, 2012.01.18)
http://www.usinenouvelle.com/article/le-japon-va-revoir-la-duree-d-exploitation-des-reacteurs.N166772

2012年1月23日 (月) 政府の対応 | 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)

2012年1月22日 (日)
東電、10年間の国有化へ/ルモンド紙(1月21日)

3月11日に事故を起こした福島原発の事業責任者である東京電力は、今後少なくとも10年間の間、国有化を余儀なくされる。共同通信が内部筋の話として1月21日に公表した。日本政府は原発事故による被害への対策費用として1兆円の資金を東京電力に注入し、同社を国の監督下に置く。1兆円の資金は国と国内に原発を所有する企業がまかなう。

東京電力は株式を引き続き公開するが、公的機構の監督下に置かれる。共同通信によれば、東京電力の今後の経営計画は3月に最終案が作成される予定。東京電力側は問い合わせに対し「現時点では何も決まっていない」と回答している。

今回の公的資金受け入れは、枝野産業省大臣が12月の時点で東京電力に検討を求めていたもの。同社は既に日本政府の資金援助を受けているが、3月11日に起きた原発事故の被災者数万人への補償のみならず、福島原発の廃炉や今後40年にわたる高額な事故処理のために資金を必要としている。

(一部要約/編集)

( LeMonde.fr & AFP, « Fukushima : Tepco devrait être nationalisé pendant dix ans », Le Monde, 2012.01.22)
http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2012/01/21/fukushima-tepco-devrait-etre-nationalise-pendant-dix-ans_1632708_3216.html#ens_id=1493262

2012年1月22日 (日) 東京電力 | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月21日 (土)
スイス市民、福島事故1周年を期に脱原発デモを企画/RJB(1月15日)&スイスinfo(1月12日)

スイスで原発に反対する市民たちは、福島原発事故の発生から1周年を迎える3月11日、ミューレベルクとベツナウにある原発の即時停止を求める「ミューレベルクへの行進」デモを実施すると発表し、大々的な参加者の募集を開始した。

スイスのベルン州北部にあるミューレベルク原発については、近隣のヴォーレン湖ダムの耐震性が確認されておらず 、大地震の際に決壊し原発事故を起こす可能性があるとして問題視されている。スイス連邦核安全監督局は同原発を運営するBKW社に対しダムの耐震性を立証する報告書の提出を求めてきたが、11月末の提出期限を過ぎても提出されていない。

デモの企画者たちは3月11日の行進を通じ、他の市民にミューレベルク原発の欠陥について情報提供を行う予定。特にヴォーレン湖ダムが決壊する危険を伝えることを計画している。

スイス政府は福島原発事故の発生後に段階的な原発の廃止を決定しており、ミューレベルク原発は2022年、ベツナウの二基の原発については2019年と2022年に廃炉が予定されている。

(抜粋、一部編集)

●「スイスの原発 ストレステストで再検査」(スイスinfo、1月12日)
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=31928350 

● « Ils vont marcher contre le nucléaire », RJB, 2012.01.15
http://www.rjb.ch/rjb/Actualites/Regionale/20120116-Ils-vont-marcher-contre-le-nucleaire.html

2012年1月21日 (土) 脱原発 | 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)

«「原子力税は合憲」ドイツ裁判所が判決/ロマンディ・ニュース(1月14日)