僕は夢を時々は覚えているが大半は忘れてしまう。何故かと言えばくだらない夢しか見ないからだ。それに
夢ってナンセンスで不条理であんまりこんなものに拘泥していると頭がおかしくなってしまうように思う。昔、
堤義明が絶頂だった頃、「俺は夢なんか見ない」と不遜なことを言っていた。それもどうかと思う。
この本は1955年から1988年まで横尾が実際に見た夢を書き留めたもの。百五十編以上あり、1976年
が一番多い。漱石の「夢十夜」と違って(僕は夢十夜は創作だと思う)本当の夢なので奇妙で白痴的で気持ち
が悪い。まともに読んでいると行っちまいそうになる。UFO、宇宙人、三島由紀夫、死んだ両親の夢が多い。
横尾は自分の夢をこんな風に言っている。
そして、もうひとつは夢の中にUFOや宇宙人が頻繁に現れることだ。なぜこんな夢ばかり沢山みるのだろう
と長い間思い続けていた。もしかしたらこの夢は単なる無意識の欲望や願望の具現化した常識的な夢では
なく、もっと全く別の回路からやってくる夢ではないかとも考えていた。
そして、霊夢という異次元から発信される夢があり、1987年に宇宙の意識体からコンタクトがありそしてそれら
の夢が彼等から発信されたテレパシー夢であったことが彼等から直接明かされた。のである。なんとも言いよう
がないです。宇宙の意識体はアーリオンと名乗る天使であるらしい。(何時も思うのだが何故、宇宙人はエレミア
とかカイエとか洋風の名前なのだろう)。まともに考えると頭が破裂してしまうが、UFOが出てきたり三島由紀夫が
出てきたりで常人のつまらない夢より遥かに面白い。「波乱へ!」という自伝を読むと幽体離脱を経験したり、幻覚
に襲われたり、幽霊を見たりしている。本当にヤバイんじゃないかという感じもする。ただこれが横尾忠則の表現の
源泉なのではないかと思う。夢を見るのと絵を書くのがほぼ同じことなのだ。自伝を見て思ったのだが横尾忠則は
「女」を表現上、必要としてはいなのだ。全てが死のイメージに行き着く表現には「女」は必要ではないのだ。
良くても悪くても女は生の象徴であり、悪ふざけと狂気、頽廃と腐敗が好きな人間には「女」は関係がない。
横尾は何かに非常に傾倒するところがあり、それがジョン・レノン(これが音楽的にではないところが面白い)であった
り三島由紀夫であったりするわけで、三島とは一緒に仕事をしたりして多大な影響を受けた。もともとそういう気質を
持っている横尾が夢や宇宙人に惹かれていくのは三島が自殺した以降であり、三島の存在が担っていた部分を
UFOや宇宙人が肩代わりしたようにも思える。それから死んだ両親についての夢も多く、本当に横尾は死に憑かれて
いるのだと思った。
この本はAMAZONで元値420円が確か1200円くらいだった。人気のある本なのだと思うが、入れ込んで読むと頭
がおかしくなってくる。