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お手数おかけ致しますが、
なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
ご協力して頂けると助かります。
妊娠を極端に嫌がる、
内縁の夫。
産婦人科に騙して連れて行き、
中絶手術を受けさせる。
仙台高等裁判所昭和36年10月24日判決
高等裁判所刑事判例集14巻7号506頁
前回の記事
解説を担当致します。
弁護士の、
甲野 裕大(こうの ゆうだい)
です。
【取り扱い分野】
不妊治療分野/離婚分野
・不妊治療クリニック顧問
・凍結胚トラブル
・精子提供、卵子提供
・不妊治療中の離婚
・不倫
など
前回までのまとめ
昭和34年
⬜︎ 1月 女性Aと男性Yの挙式
同棲を開始
⬜︎ 3月 妊娠発覚
男性Yは、極度に妊娠を嫌がった。
【男性Yの考え】
女性Aは、気もきかないし、
自身の母と折り合いが悪く、
離婚したいと思ってた。
中絶させて、別れよう。
【女性Aの考え】
出産すれば、
入籍してくれるかもとも思った。
男性Yに、中絶を勧められたが、
中絶する気はなかった。
⬜︎ ある日、男性Yは、
入籍の手続きと言って、
女性Aを外に連れ出し、
「産婦人科に一度行っておこう」と、
産婦人科のT医院へ連れて行く。
⬜︎ T医師に、
裏で中絶を依頼していた。
⬜︎ 中絶手術と知った女性Aは、
手術台から飛び降りて逃げる。
⬜︎ しかし、男性Yに、
「中絶すれば入籍、しなければ別れる」
と言われる。
⬜︎ 男性Yと、
事情を知らない看護師に、
手を引かれて手術室へ行き、
最後には仕方ないと思って、
中絶手術を受ける。
⬜︎ 約束と違って、
中絶10日後に、
男性Yから別れを告げられる。
14.女性が被害届を出す
⬜︎ 女性Aが、
中絶を無理に受けさせられたことで、
警察に被害届を出す。
15.刑事裁判になる
⬜︎ 男性Yが問われた罪状は、
「不同意堕胎罪」。
⬜︎ 検察が、
「不同意堕胎罪」で起訴し、
刑事裁判となった。
解説：不同意堕胎罪とは
「不同意堕胎罪」とは、
女性の同意なく、
強制的に堕胎をさせた時に、
成立します。
刑法第215条で、
6ヶ月以上・7年以下の懲役に、
処せられると定められています。
今回の裁判の争点は、
【女性Aの同意があったか】
という点が、
大きな争いのポイントとなりました。
16.男性の主張
⬜︎ 男性Yの主張は、
「女性Aは、
最終的に堕胎に同意・承諾した為、
この罪が成立しない」
とのことだった。
17.裁判所指摘：偽りの情報
⬜︎ 男性Yは、最初から、
入籍手続をすると偽っている。
⬜︎ その後、産婦人科へ行く時も、
「一度診察を受けておいた方が良い」
と伝えるのみで、
T医院に連れて行き、
堕胎させようとしていた。
⬜︎ 女性Aが、
「堕胎すれば籍を入れる」
という男性Yの言葉を信じて、
中絶の承諾の意思表示をしたとしても、
それは、任意で、
真意に出た承諾ではない。
18.裁判所指摘：結果が変わる
⬜︎ つまり、
堕胎しなければ別れると脅され、
尚かつ、
堕胎すれば必ず入籍すると言われ、
騙されているとは知らなかった為、
最終的には堕胎することを承諾した。
⬜︎ もし、
『堕胎させて身軽にした上で別れよう』
という男性Yの、
悪意(真意)を事前に知っていたら、
堕胎への承諾は、
しなかっただろう。
19.裁判所指摘：同意の意味
⬜︎ 裁判所は、
刑法215条の不同意堕胎罪の、
「同意がない場合」とは、
単に同意がなかったという意味ではない。
⬜︎ 任意であり、
尚且つ、
真意に基づく同意でなければならない。
⬜︎ つまり、
形式的に同意をしたように見えても、
相手から騙されたり、
脅されたりしていた場合は、
真意に基づく同意とは、
認められない。
20.判決
⬜︎ 男性Yは、
懲役6ヶ月、執行猶予2年の判決
となった。
軽い刑になった理由
懲役6ヶ月と最も軽い刑になった理由は、
おそらく、
女性が入籍狙いで堕胎を決めた部分が、
決定打となっていると思います。
また、医者も、
夫からこっそりと、
堕胎をさせるように依頼されており、
何も知らない女性に、
同意なしに、説明なく、
手術台に乗せています。
男性Yは悪いことはもちろん、
女性Aも、医師も、
子どもにとっては、
全員加害者で、
一番の被害者は子どもだった
という事件でした。
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