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お手数おかけ致しますが、
なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
ご協力して頂けると助かります。
35歳の眼科医女性の、
妊娠と血圧が徐々に上昇。
出産後に心停止、
蘇生を行うが死亡し。
遺族が裁判を起こし、
約1億2380万円の支払い判決。
<控訴審(第2審)の判断>
東京高裁令和3年11月18日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
<第1審>
東京地裁令和2年1月30日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
前回の記事
前回までのまとめ
⬜︎ 昭和54年生まれ、
当時35歳の眼科医の女性B。
⬜︎ 平成26年に妊娠、
Yクリニックに里帰り分娩の為に受診。
〈 Yクリニックの経過 〉
平成26年8月27日(妊娠20週0日)
初診。
その後も通院を続ける。
【平成26年12月18日(妊娠35週頃)】
血圧:126/80
ヘモグロビン:11.6g/dl
ヘマトクリット:35.4%
血小板数:16/1×104/μl
【平成26年12月25日(妊娠36週頃)】
血圧 1回目:137/88
血圧 2回目:125/85
【平成26年12月29日】
1回目の計測:142/91
2回目の再検査:132/95
→ 血圧上昇の傾向を示す。
【平成27年1月5日】
1回目の計測:143/106
2回目の再検査:125/84
→ 軽度の妊娠高血圧症候群と診断。
翌年1月7日に、
分娩誘発の為の入院を予定。
【平成27年1月7日】
入院
【 1月8日 】
7:00
分娩誘発剤のアトニン(オキシトシン)投与
【 1月9日 】
18:03
緊急帝王切開を開始
(分娩停止のため)
18:10
女児誕生
18:40
帝王切開終了
18:50
回復室へ移動
【悪露の量】
リカバリー室入室後
1時間時点「多100」
2時間時点「多100」
3時間時点「100+α」
4時間時点「200」
【女性の状態】
18:50
回復室へ入室
20:50(術後2時間後)
強い痛みを訴えだす
20:50(術後2時間後)
〜
22:50分(術後4時間後)
尿量の増量見られず
23時
Y医師到着
▶︎ 子宮内のコアグラを除去したが、
子宮底圧迫で出血、
DICを疑い、
パスロン(DIC治療)と、
パルタン(子宮収縮させて止血)投与。
*DIC:体内のいたる箇所で、
血液が固まり血栓ができると共に、
出血が起こる、危険な疾患。
しかし、
輪状マッサージで出血が起こる。
【 1月10日 】
0:30 緊急搬送を決定
1:10 救急隊到着
1:12 意識状態を確認
・呼びかけ開眼あり
・呼びかけで手を握る事ができる
(運動機能あり)
・錯乱状態、見当識障害
(ここはどこ?など)
1:18 救急車で出発
同乗者:夫・Y医師・C助産師
心肺停止になり、
蘇生処置をしたが、
心肺停止のままa病院に到着。
1:27 a病院到着
蘇生と止血が行われる
1:41 自己心拍再開
1:47 心室細動
3:08 自己心拍再開
しかし、循環不全
7:30過ぎ 心室細動
7:57 死亡
女性Bの回復室でのモニターの記録は、
オンコールのJ助産師が、
印刷前に、モニターの電源を切り、
記録がない。
106.病院が控訴する
⬜︎ YクリニックとY医師が、
地方裁判所(第一審)の判断を不服として、
控訴して、
第二審へ進んだ。
⬜︎ 控訴を起こされた遺族(夫と子ども)は、
地方裁判所で認められなかった、
約2000万円の部分を求めた。
107.搬送の義務
⬜︎ 高等裁判所は、
日本産科婦人科学会や、
日本産婦人科医会など、
各ガイドラインを基準にして、
医師が搬送すべき義務を、
怠ったか検討した。
108.午後10時50分時点
帝王切開終了が午後6時40分、
約4時間の時点で、
搬送の義務があったか検討した。
⬜︎ 帝王切開後も出血は続く傾向で、
累計出血量は、約500mlあまり、
手術中を含めると、
合計約1025mlになっていた。
⬜︎ ショックインデックスという、
ショック状態を示す指数は0.99。
【血圧】
午後7時50分 121/84
午後8時50分 122/85
午後10時50分 107/71
【心拍数】
午後7時50分 76
午後8時50分 79
午後10時50分 106
⬜︎ 血圧は低下傾向、
逆に心拍数は増加傾向で、
SpO2(酸素飽和濃度)96%。
【尿量(術後の累計尿量)】
午後6時50分 100ml
午後7時50分 250ml
午後8時50分 300ml
午後10時50分 300ml
⬜︎ 尿量は減少傾向(作られていない)。
⬜︎ 子宮の硬度はやや不良。
109.搬送義務なし【22:50】
⬜︎ 各ガイドラインに照らし合わせると、
午後10時50分の時点で、
出血量は帝王切開で危険となる、
2L以上には達しておらず、
ショックインデックスも0.99で、
1以上となっておらず、
分娩時異常出血の基準には、
該当しない。
⬜︎ もっとも、
ショックインデックスでは、
ほぼ1になっているので、
分娩時異常出血の基準には、
ほぼ該当する。
そのため、それ以降は、
以下をすべき場面とする余地がある。
☑︎ 搬送の考慮
☑︎ 血圧、心拍、SpO2、出血量、Hb、尿量をチェック
☑︎ 出血原因の探す、取り除く
⬜︎ 裁判所は、
午後10時50分に、
直ちに搬送すべき義務はない
と判断した。
110.午後11時40での搬送義務
⬜︎ 第1審の地方裁判所の判断は、
以下の通り。
「午後11時10分の、
コアグラ(血の塊)の除去から、
30分後の、
午後11時40分頃にも
まだ出血も持続して、
乏尿 または 無尿だった。
これは、各ガイドライン上の、
産科危機的出血と言える。」
111.第一審を大きくくつがえす
⬜︎ 第一審では認めていたが、
「午後11時40分頃に、
産科危機的出血に陥っていた」
と認めるには、
高等裁判所では、
証拠がないと指摘した。
⬜︎ 止血の治療の為に、
午後11時10分頃のコアグラを除去の他に、
午後11時30分頃に、
パスロン(DIC効果あり)を、
投与している。
112.パスロンも投与している
⬜︎ 第一審では、
「コアグラ除去の効果を見るとして、
30分待ったとしても、
30分後の11時40分にも出血があったし、
乏尿か無尿だった」
とするが、
午後11時30分に投与した、
パスロンの効果を観察する必要もある。
⬜︎ 搬送していなくても、
「医師としての専門的な裁量を、
逸脱した判断であるとは認められない」
と裁判所が判断。
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