皆様へのお願い
*現在、DHEAとメラトニンは欠品してます。
お申し込みいただけません。
ご質問など頂く際に、
「匿名」様
「匿名希望」様
以外で、
お名前をつけてくださると幸いです。
匿名・匿名希望が多く、
過去にご質問頂いた内容が、
わからなくなってしまいます。
お手数おかけ致しますが、
なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
ご協力して頂けると助かります。
前回の記事
不妊治療分野の弁護士の解説
妊娠後の異変と治療。
子宮内胎児死亡、
子宮摘出。
劇症Ⅰ型糖尿病、DICの発症。
県を相手に裁判。
※さいたま地裁平成18月11月17日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
前回までのまとめ
⬜︎ 女性Xは、
平成6年に結婚して、
平成10年に第一子を妊娠。
⬜︎ 平成10年3月、
Y病院の産婦人科へ行って、
その後も、妊婦健診に通院し、
出産も行う予定だった。
⬜︎ 平成10年9月10日に、
食欲不振と、
2.5~3.0kgの体重減少で、
Y病院の産婦人科と内科に受診。
⬜︎ 特に異常は見られず、
9月10日、11日、12日は、
電解質・ビタミンの点滴を予定していた。
⬜︎ 9月11日の夜まで、
胎動があった。
⬜︎ 9月12日の朝、
胎動がなくなったので、
点滴を受ける前に診察を希望したが、
看護師が医師に伝えなかった。
⬜︎ 点滴中と点滴後も、
同様の希望を看護師に伝えて、
当直医が夕方、
やっとエコー検査を実施し、
胎児の心拍停止がわかった。
⬜︎ 担当医も診察し、
子宮内胎児死亡と診断され、
胎児娩出の為に、
そのまま入院となった。
⬜︎ 13日と14日に、
娩出のために処置を行っていたら、
DICを発症、意識がなくなる。
※DIC:全身で血が固まり(血栓)、
同時に、血が止まらなくなる(出血)状態。
⬜︎ さらに、帝王切開中に、
血糖値が963とわかる。
⬜︎ 数時間で発症し、
血糖値が急上昇する、
激症Ⅰ型糖尿病を発症。
26.女性Xが裁判を起こす
⬜︎ 女性Xは、
Y県に対して裁判を行った。
⬜︎ Y病院の医師が、
糖尿病や糖尿病性ケトアシドーシスの、
検査・治療を適切にしなかった為、
胎児死亡と、
子宮摘出に至ったなどと主張。
⬜︎ 損害賠償として、
2200万円を求めて裁判を起こした。
裁判所が採用した医学的見解
【 子宮内胎児死亡 】
胎児が何らかの原因で、
子宮内で死亡する病態で、
原因は様々。
また、子宮内胎児死亡は、
DICの原因疾患のひとつである。
【 糖尿病 】
インスリンの作用不足で発症する。
血液中の糖、アミノ酸・脂肪の消費が減少し、
腎症、網膜症、単神経障害等をきたす。
糖尿病には、Ⅰ型とⅡ型がある。
Ⅰ型糖尿病:インスリンの欠乏が原因
Ⅱ型糖尿病:肥満等が原因
*今回の女性が発症したのは、
Ⅰ型糖尿病です。
【 糖尿病性ケトアシドーシス 】
糖尿病での、
代謝異常の極限状態を言います。
「代謝性アシドーシス」のひとつ。
インスリン作用の絶対的な不足で、
血中に弱酸性のケトン体が増加し、
体液が酸性に傾く。
激しい口渇、
多飲、
多尿、
全身の倦怠感、
体重減少、
悪心、
嘔吐、
腹痛等の症状があり、
クスマウルの大呼吸(過呼吸)が出現し、
呼気はアセトン臭(果実臭)がある。
意識混濁、
糖尿病性昏睡に陥り、
死に至ることも。
糖尿病性ケトアシドーシスの診断は、
ケトン尿、
300mg/dl以上の高血糖、
血中ケトン体の上昇、
pHの低下などを見る。
27.裁判【検査・治療義務】
⬜︎ 女性Xの主張は、以下の通り。
遅くとも9月10日までには、
糖尿病、または、
糖尿病性ケトアシドーシスを発症したのに、
この日に診察したB医師・F医師が、
見過ごし、
適切な治療を行わなかった
と主張しました。
⬜︎ 裁判所は、以下を指摘。
●女性Xは、
妊娠前に糖尿病と診断された事はない。
●妊婦健診で、
6月16日〜8月25日の、
各尿糖検査も全部陰性だった。
●9月17日の血液検査で、
HbA1cが5.8%と正常だった。
*HbA1c:直近1〜3ヶ月の、
平均血糖値の目安になる数値。
●9月10日のB医師とF医師の診察時、
食欲がすぐれず、
体重が2.5〜3kg減少していたが、
激しい口渇を始めとした、
糖尿病性ケトアシドーシス特有の症状はなかった。
●9月14日午後1:35頃に、
女性Xの血糖値は、
169mg/dlであった事。
【裁判所の判断】
女性Xの糖尿病の発症は、
9月14日午後1:35頃〜午後4:45頃と認定。
結論は、
9月10日・11日の時点で、
糖尿病、または、
糖尿病性ケトアシドーシスを発症した
とは認められない
と判断しました。
28.帝王切開前にできた事
【帝王切開手術開始前の、
糖尿病性ケトアシドーシスの治療義務】
⬜︎ 女性Xの主張。
・遅くとも9月14日午後4:45に、
糖尿病性ケトアシドーシスを発症していたと主張。
・ さらに、
糖尿病性ケトアシドーシスは、
DICを促進する事があり、
帝王切開手術を行うと、
止血は困難と予想できる事から、
医師として、
帝王切開前に、
糖尿病性ケトアシドーシスの
治療を行うべき義務があったと主張。
これに対して、
裁判所は、以下の点を指摘。
●9月14日午後4:45に、
血糖値が963mg/dlと、
非常に高い事と、
今回の発症の可能性の、
「劇症Ⅰ型糖尿病」は、
糖尿病性ケトアシドーシスを伴って、
発症する特徴があると認められる。
● 血糖値が963mg/dlの頃に、
糖尿病性ケトアシドーシスをも発症していた可能性が全く無いと言えない。
●一方では、
以下の事が起こっていた。
・同日午後1:00頃、
既に代謝性アシドーシスを発症
・同日午後から出血傾向があり、
午後4:00過ぎにはDICと診断された
・DICの治療は、
原因となる疾患の治療をすべき
→今回で言えば、
原因疾患は子宮内胎児死亡が可能性になる。
・子宮内胎児死亡が、
代謝性アシドーシスもDICも、
原因疾患となりうる。
●総合的に考えると、
死亡胎児を出す為に、
帝王切開は必要だった
と考えられる。
●さらに、平成10年当時、
「妊娠がきっかけで、
劇症Ⅰ型糖尿病の発症がある」
という医学的見識は、
知られていなかった。
●帝王切開手術の時、
糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスを、
発症を疑うべき事情は認め難い。
●以上からすると、
帝王切開の開始を遅らせてでも、
糖尿病や、
糖尿病性ケトアシドーシスの有無を診断し、
認められれば、
優先して治療を行うべきだった
と認めるには、
証拠が足りない。
29.子宮内胎児死亡の原因
⬜︎ 裁判所は、
女性Xが医師の過失だと主張した、
その他の点についても、
医師の過失を認めませんでした。
⬜︎ なお、女性Xは、
子宮内胎児死亡や、
子宮摘出に至った原因は、
医師の過失だと主張。
⬜︎ しかし、裁判所は、
子宮内胎児死亡の原因は、
臍帯過捻転であって、
医師の過失ではない
認定しました。
⬜︎ 胎動が感じられなくなった朝より前に死亡、
つまり、
点滴をしに、
病院に着く前に死亡した
と見られています。
⬜︎ 死亡推定時刻は、
胎動を感じた夜、睡眠中の事です。
30.裁判所の結論
結果として、
女性Xの訴え・請求は、
全面的に認められませんでした。
LINEでのご相談・ご連絡は無料です。
LINE:
Tel:03-6416-1595
E-mail:
yudai_kono@kinoe-legal-law.com
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
ブログ、コメントなどで、当院がお答えする内容は、あくまでもお話をいただいた情報に基づいた一般的な見解をお示しするもので、実際の診察(セカンドオピニンオンを含む。)ではありません。
直接医師と対面しての診察、検査を行なっていないため、お伝えした内容の正確性を保障するものでは全くありませんので、予めこの点を十分ご理解ください。
当院の医師の診察(セカンドオピニオン含む。)をご希望の方は、恐れ入りますが電話やメール等での診察は行っておりませんので、ご来院をお願いいたします。
また、当院でのオンライン処方をご利用の方も含め、メールやメッセージで直接のご相談をいただいた場合、当ブログでご回答が可能な範囲の内容を当ブログで取り扱わせていただく以外は、個別のご相談ご回答に応じることはできかねますので、予めご了承ください。
(メールやメッセージでご相談をいただいても個別のご相談に対してメールやメッセージでの回答は行っておりませんのでご注意ください。)
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚✽.。.:*・゚
当ブログの内容には細心の注意を払っておりますが、当ブログの内容はあくまでも投稿時点における研究発表の内容や、医療水準に基づいて記載しているものであり、内容について将来にわたりその正当性を保障するものではありません。
当ブログの内容の利用はブログをご覧になられる皆様の責任と判断に基づいて行って下さいますようお願い申し上げます。
上記利用に伴い生じた結果につきまして、当院はその一切の責任を負いかねますので、予めご了承下さい。
実際に、お身体のことで、ご体調などについてのお悩み、お困りのことなどございましたら、必ず、専門の医療機関を受診の上、医師の診察を受けていただきますようお願い申し上げます。
✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
当ブログの内容、テキスト、画像等にかかる著作権等の権利は、すべて当院に帰属します。
当ブログのテキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――
医療法人社団 岩城産婦人科
北海道苫小牧市緑町1-21-1