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裁判所の判断:注意義務違反
【裁判所の判断】
※熊本地裁令和3年3月31日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
【1】B医師の過失があったか。
注意義務違反について
女性Aの主張
hCG定量検査を行う義務があり、
その後2,3日ごとに、
hCGの数値の変化を確認すべきだった。
しかし、
B医師がこれらを怠ったので
子宮外妊娠を見落とした。
裁判所は、時系列順に、
B医師の過失の有無を検討。
1回目の診察の過失の有無
平成26年8月19日時点
【過失なしの判断】
●経膣エコー検査で、
子宮内に胎嚢は
明確に認められなかったが、
試薬で尿中hCG値が、
1000mIU/ml以上が判明。
●B医師がこの時点で、
子宮外妊娠の疑いを持つ事は可能だ。
●この日から、
hCG定量検査を開始していれば、
より早期に子宮外妊娠を、
見つけられた可能性があった。
●しかし、正常妊娠であっても、
妊娠5週前半では、胎嚢が小さく、
判断が困難な事も多い。
● B医師が平成26年8月19日の時点で、
hCG定量検査までせず、
様子を見るという判断は、
不合理とまでは言えない。
2回目の診察の過失の有無
平成26年8月25日時点の過失
【過失ありの判断】
●妊娠6週0日で、
正常妊娠ならば子宮内にリング状で囲まれ、
卵黄嚢がある胎嚢が認められるべき時期。
●経膣エコーで、
子宮内では胎嚢が不鮮明だったので、
この時点で、
子宮外妊娠を強く疑う事が、
十分可能だった。
●経膣エコー検査だけでなく、
hCG定量検査を
開始すべき義務があった。
実施していれば、
遅くとも3回目の診察の8月30日の診察で、
子宮外妊娠を診断できたと言える。
●B医師が各措置を早期に採らなかった結果、
患者Aは、
本来不要な中絶手術を受け、
腹腔内出血、
出血性ショック等での多大な苦痛を受け、
開腹手術での右卵管切除となった。
(腹腔鏡で切除できない段階に)
したがって、
「損害を賠償する責任がある」
と裁判所は判断。
3回目以降の診察の過失の有無
3回目以降の診察の過失
【過失ありの判断】
●3回目の診察は、
妊娠6週5日で、
正常妊娠であれば胎嚢が認められる時期。
●実際、経膣エコーで11.3㎜×11.5㎜の胎嚢のようなものが認められものの、
子宮外妊娠では、
子宮内に貯留した血液や分泌物が変形し、
胎嚢に紛らわしいリング状エコー(偽胎嚢)を
呈することがある。
●2回目の診察時点までに、
胎嚢が不鮮明だった事を考慮し、
3回目の診察時も子宮外妊娠の鑑別の為に、
hCG定量検査を行う義務があった。
→過失あり。
●中絶手術当日の時点で、
経膣エコーで子宮内に16.6㎜×11.7㎜の胎嚢のようなものがあったとしているが、
この所見は誤りであり、
胎嚢は存在しなかった。
●手術日もhCG定量検査を行うべきだった。
→過失あり。
裁判所判断:結論
誤診の結果、
早期に子宮外妊娠の治療を受ける機会を失い、
9月3日午前3時頃から
下腹部の強い痛みに苦しんだ上、
B医師から坐薬や浣腸の処方等、
子宮外妊娠の治療に効果を有しない対応をされて帰宅した
(B医師は同日患者Aを直接診察していない。)。
その後大量に出血して
B病院での卵管切除術を受けるに至ったので、
「B医師は、
患者Aが被った損害を賠償する責任がある」
と裁判所は判断しました。
金額決定の際に認定された点
【裁判所で認めれた点】
●子宮外妊娠を誤診して、
早期に適切な治療を受けられず、
多量の腹腔内出血で、
出血性ショック及び急性DICスコア4点の
播種性血管内凝固症候群を発症した。
●腹腔内出血等による痛みを訴えた時も、
適切な診断・治療を受けられず、
直接B医師が診察もせず、
自分の身体にどのような異変が起きているのか分からないまま、
帰宅を余儀なくされ、
自らの側で救急車を呼び、
緊急搬送された。
●午前11時45分頃の右卵管切除術まで、
長時間にわたって、
甚大な肉体的・精神的苦痛を被る状態に置かれた。
●右卵管切除術後、
9月10日まで入院治療を要した。
不妊との因果関係は認めず
B医師が速やかに検査をしていれば、
卵管切除術ではなく、
卵管保存術を受ける事が可能であった
と認定しました。
しかし、右卵管保存術を受けたとしても、
その後再発等で、
右卵管切除に至った可能性があること、
も同時に指摘しました。
また、左卵管(着床していない)に至っては、
閉塞の判明が3年以上後であり、
因果関係が認められない
と指摘しました。
裁判所では、
不妊症になった過失は認められず、
妊娠能力喪失との因果関係までは認められない
と判断されました。
認定金額
裁判所は、
【慰謝料200万円】
を認定しました。
*その他に、弁護士費用相当額として20万円を認定。
弁護士の解説
「疾患の見落とし」や、
「適切な検査を怠った過失」が、
実施に認められる事は、
ハードルが高いことも多いです。
しかし、今回は、
ハッキリ見えてくる時期の、
妊娠6週0日の時点で、
胎嚢の有無が未だ不鮮明
という状況だったため、
「子宮外妊娠の可能性を強く疑う状況だった」
と判断されました。
さらに、
「hCG値の定量検査をしなかった」
という点が、
『医師の裁量を超え、
過失に該当する』
という判断に至りました。
解説:弁護士 甲野裕大
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文・イラスト:理事 岩城桃子
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