前回の記事
【不妊治療分野の弁護士が解説】
妊娠の兆候が見られるけど、
子宮内に胎嚢がない。
便秘と判断するも改善せず、
救急車で搬送されてから、
子宮外妊娠がわかる。
前回までのまとめ
⬜︎ 患者Aは、
妊娠を疑い病院のB医師に受診、
妊娠ならば、
中絶を希望していた。
⬜︎ 4年前にも、
患者Aは、B医師に、
中絶手術を受けている。
⬜︎ 尿中のhcgは1000を超えていた。
吐き気や、
出血混じりのおりものもあった。
⬜︎ 1回目のエコーで、
8㎜のものが見えるが、
胎嚢とは断定できず、
1週間後の2回目受診でも曖昧で、
さらに、5日後の3回目の受診で、
11㎜程度の胎嚢と断定し、
正常妊娠と判定。
⬜︎ 掻爬術(ひっかき出す手術)を受けた。
⬜︎ しかし、
胎芽や絨毛と思われるものは見られず、
病理検査にも出さなかった。
※ 本来、通常でれば、
病理検査は必須と考える。
⬜︎ これまで血液検査で、
hcgの数値を見る事もしていない。
※ 血液検査すべきだった。
⬜︎ これまでの経緯から、
医師Bは、
子宮外妊娠の可能性も考えたが、
患者Aに説明する事はなかった。
※ 説明すべきだった。
⬜︎ 中絶手術を受けた日の深夜から、
激痛が襲う。
⬜︎ 一時的に便秘を疑うも、
救急車で搬送され、
子宮外妊娠がわかる。
⬜︎ 出血性ショックが起こっていた。
【概要11】右卵管切除
⬜︎ 午前11:45から、約1時間、
他の産婦人科医の緊急手術を受けた。
⬜︎ 開腹時、
腹腔内の出血は多量。
⬜︎ 医師は凝血塊(血のかたまり)を除去
→ 視野を確保し、
右卵管膨大部に妊娠を確認。
→ 右卵管を切除。
⬜︎ 術中出血量は2153㎖。
⬜︎ 6単位の輸血(濃厚赤血球)
⬜︎ 術後の血液検査で、
ヘモグロビンは6.7g/dl、
血小板5400/ulで低値。
⬜︎ 急性DIC(播種性血管内凝固症候群)のスコア4点。
↓
濃厚赤血球2単位
新鮮凍結血漿6単位
追加輸血
ノイアート2500単位、
フサンでの抗DIC治療を実施。
医学的な解説【出血量】
このような状況下では、
2000㎖を超えると、
基本的に重症と言えるでしょう。
必ず、輸血が必要な状態です。
子宮外妊娠は、
診断が遅れると、
危険な状態に陥りやすく、
最悪、このように卵管破裂を起こし、
生命に危険を及ぼします。
【医学的な解説】DICとは
播種性血管内凝固症候群(DIC)とは
“体内のいたるところで
血が固まり(血栓)、
同時に
血が止まらなくなる(出血)状態です。
がんや重症の感染症をきっかけに
生じることが多いのですが、
お薬によって
生じることがあります。“
引用元:重篤副作用疾患別対応マニュアル
厚生労働省
【概要12】診断ミスと認める
*9月2日が中絶手術、
9月3日に救急車で搬送。
⬜︎ 患者Aの母親は、
9月8日、B医師に説明を受けた。
⬜︎ 結果は子宮外妊娠での、
卵管の破裂であり、
子宮筋腫があったにしても、
診断にミスがあったと認めた。
⬜︎ 治療費や、
その他の件について、
責任をもって対処すると言った。
【医学的な解説】診断について
子宮外妊娠は、
診断が難しい事もあります。
ただ、客観的に、
今回の裁判の文章を読めば、
中絶手術日の9月2日には、
エコー検査で見えた可能性が、
かなり高いです。
翌日の9月3日には、
18㎜✖️20㎜の胎嚢があった
という事で、
エコー検査で、
十分に見える大きさです。
また今回、
着床が認められた「卵管膨大部」とは、
卵子と精子が出会う受精場所であり、
本来は受精後に、
受精卵は卵管から子宮へ移動して、
子宮内膜に着床します。
また、裁判の文章を見ると、
子宮筋腫があったようですね。
どうやら、
エコー検査で子宮筋腫を見て、
胎嚢と思っていた
という事みたいですね。
【概要13】治療費と100万円
⬜︎ 患者Aは、9月10日、
術後の経過良好で退院。
⬜︎ B医師は、9月16日、
「患者Aに手術日の9月2日の、
経膣エコー検査が誤っていた」
として、
治療費6070円を返金。
⬜︎ 10月2日、
患者Aと母親は、B医師に、
今回の事で抗議をした。
⬜︎ B医師は、
「深く反省しており陳謝する」
として、
「100万円を支払いたい」と伝え、
患者Aと母親は、
その提案を持ち帰った。
【概要14】500万円の要求
⬜︎ 10月3日、
患者Aの母親が、
B医師に電話をした。
母親:「少なくとも500万円は
支払ってもらいたい」
⬜︎ B医師は、
500万円を支払う事はできないと考え、
代理人(弁護士)に、
その後の対応を任せた。
【概要15】それから約3年
⬜︎ 患者Aは、
平成29年12月5日、
妊娠を希望して、
全く別の病院を受診。
(医療法人Eクリニックを受診し、
同医院のF医師の診察を受けた。)
⬜︎ 子宮卵管造影検査を受けたところ、
両側卵管が閉塞している事が認められた。
⬜︎ その後、
体外受精を2回試みたが、
妊娠することはできなかった。
患者Aの訴え
⬜︎ B医師は、
適切な検査をせずに、
子宮外妊娠を、
正常妊娠と誤診。
⬜︎ そのまま中絶手術をしたので、
子宮外妊娠の早期治療の機会を失った。
⬜︎ また、生命に現実的危険のある状態に陥り、
右卵管を切除したので、
妊娠能力を失ったと主張。
⬜︎ 損害賠償として、
2050万円を請求。
*内訳:慰謝料500万円、
妊娠能力喪失による損害1500万円、
弁護士費用50万円
解説:弁護士 甲野裕大
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Tel:03-6416-1595
E-mail:
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文・イラスト:理事 岩城桃子
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