子宮外妊娠から3年後、体外受精でも妊娠せず。裁判へ発展。 | 岩城産婦人科妊活ブログ

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【不妊治療分野の弁護士が解説】

  

妊娠兆候が見られるけど、

子宮内胎嚢がない

  

便秘と判断するも改善せず、

救急車で搬送されてから

子宮外妊娠がわかる。

 

 

 

サムネイル

スーツ 解説を担当致します。

不妊治療分野/離婚分野の、
弁護士の、
甲野 裕大(こうの ゆうだい)
です。

 
 

前回までのまとめ

 

 

⬜︎ 患者Aは、

妊娠を疑い病院のB医師に受診

妊娠ならば、

中絶を希望していた。

 

 

⬜︎ 4年前にも、

患者Aは、B医師に、

中絶手術を受けている。

 

 

⬜︎ 尿中のhcgは1000を超えていた

吐き気や、

出血混じりのおりものもあった。

 

 

⬜︎ 1回目のエコーで、

8㎜のものが見えるが、

胎嚢とは断定できず、

1週間後の2回目受診でも曖昧で、

さらに、5日後の3回目の受診で、

11㎜程度の胎嚢と断定し、

正常妊娠と判定

 

 

⬜︎ 掻爬術(ひっかき出す手術)を受けた。

 

⬜︎ しかし、

胎芽や絨毛と思われるものは見られず、

病理検査にも出さなかった

 本来、通常でれば、

病理検査は必須と考える

 

 

⬜︎ これまで血液検査で、

hcgの数値を見る事もしていない

 血液検査すべきだった。

 

 

⬜︎ これまでの経緯から、

医師Bは、

子宮外妊娠の可能性も考えたが、

患者Aに説明する事はなかった

※ 説明すべきだった。 

 

 

⬜︎ 中絶手術を受けた日の深夜から、

激痛が襲う

 

 

⬜︎ 一時的に便秘を疑うも、

救急車で搬送され、

子宮外妊娠がわかる

 

⬜︎ 出血性ショックが起こっていた。

 

 

  

 【概要11】右卵管切除

 

 

⬜︎ 午前11:45から、約1時間、

他の産婦人科医の緊急手術を受けた。

 

⬜︎ 開腹時、

腹腔内の出血は多量

 

⬜︎ 医師は凝血塊(血のかたまり)を除去

→ 視野を確保し、

右卵管膨大部に妊娠を確認

右卵管を切除

 

⬜︎ 術中出血量は2153㎖

 

⬜︎ 6単位の輸血(濃厚赤血球)

 

⬜︎ 術後の血液検査で、

ヘモグロビンは6.7g/dl、

血小板5400/ulで低値。

 

 

⬜︎ 急性DIC(播種性血管内凝固症候群)のスコア4点。

濃厚赤血球2単位

新鮮凍結血漿6単位

追加輸血

 

ノイアート2500単位、

フサンでの抗DIC治療を実施。

 

  

 

 医学的な解説【出血量】

 

鉛筆 このような状況下では、

2000㎖を超えると、

基本的に重症と言えるでしょう

 

 

右差し 必ず、輸血が必要な状態です。

 

 

雲 子宮外妊娠は、

診断が遅れると、

危険な状態に陥りやすく

最悪、このように卵管破裂を起こし

生命に危険を及ぼします。

 

  
  

 【医学的な解説】DICとは

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)とは

 

“体内のいたるところで

血が固まり(血栓)、

同時に

血が止まらなくなる(出血)状態です。 

 

 

がんや重症の感染症をきっかけに

生じることが多いのですが、

お薬によって

生じることがあります。“

 

 

引用元:重篤副作用疾患別対応マニュアル

厚生労働省

https://www.pmda.go.jp/files/000240128.pdf

 

 
 

 【概要12】診断ミスと認める

 

 

*9月2日が中絶手術、

9月3日に救急車で搬送。

 

 

⬜︎ 患者Aの母親は、

9月8日、B医師に説明を受けた。

 

 

⬜︎ 結果は子宮外妊娠での、

卵管の破裂であり、

子宮筋腫があったにしても、

診断にミスがあったと認めた。

 

 

⬜︎ 治療費や、

その他の件について、

責任をもって対処すると言った。

 

 
 

 【医学的な解説】診断について

 

 

鉛筆 子宮外妊娠は、

診断が難しい事もあります。

 

 

右差し ただ、客観的に、

今回の裁判の文章を読めば、

中絶手術日の9月2日には、

エコー検査で見えた可能性が、

かなり高いです。

 

 

鉛筆 翌日の9月3日には、

18㎜✖️20㎜の胎嚢があった

という事で、

エコー検査で、

十分に見える大きさです。

 

 

ランニング また今回、

着床が認められた「卵管膨大部」とは、

卵子と精子が出会う受精場所であり、

本来は受精後に、

受精卵は卵管から子宮へ移動して、

子宮内膜に着床します

 

 

 

 

 

 

鉛筆 また、裁判の文章を見ると、

子宮筋腫があったようですね。

 

 

鉛筆 どうやら、

エコー検査で子宮筋腫を見て、

胎嚢と思っていた

という事みたいですね。

 

 
 

 【概要13】治療費と100万円

 

 

⬜︎ 患者Aは、9月10日、

術後の経過良好で退院。

 

 

⬜︎ B医師は、9月16日、

患者Aに手術日の9月2日の、

経膣エコー検査が誤っていた

として、

治療費6070円を返金

 

 

⬜︎ 10月2日、

患者Aと母親は、B医師に、

今回の事で抗議をした。

 

 

⬜︎ B医師は、

深く反省しており陳謝する

として、

100万円を支払いたい」と伝え、

患者Aと母親は、

その提案を持ち帰った。

 

 
 

 【概要14】500万円の要求

 

 

⬜︎ 10月3日、

患者Aの母親が、

B医師に電話をした。

 

母親:「少なくとも500万円は

支払ってもらいたい

 

 

 

⬜︎ B医師は、

500万円を支払う事はできないと考え、

代理人(弁護士)に、

その後の対応を任せた。

 

 
 

 【概要15】それから約3年

 

 

 

⬜︎ 患者Aは、

平成29年12月5日、

妊娠を希望して、

全く別の病院を受診

 

(医療法人Eクリニックを受診し、

同医院のF医師の診察を受けた。)

 

 

⬜︎ 子宮卵管造影検査を受けたところ、

両側卵管が閉塞している事が認められた

 

 

⬜︎ その後、

体外受精を2回試みたが、

妊娠することはできなかった

 

 
  

 患者Aの訴え

 

 

⬜︎ B医師は、

適切な検査をせずに、

子宮外妊娠を、

正常妊娠と誤診

 

 

⬜︎ そのまま中絶手術をしたので、

子宮外妊娠の早期治療の機会を失った

 

 

⬜︎ また、生命に現実的危険のある状態に陥り

右卵管を切除したので、

妊娠能力を失ったと主張。

 

 

⬜︎ 損害賠償として、

2050万円を請求

 

 

*内訳:慰謝料500万円、

妊娠能力喪失による損害1500万円、

弁護士費用50万円

 

 
 

解説:弁護士 甲野裕大

 甲(きのえ)リーガル法律事務所
  

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法的な解説:弁護士 甲野裕大
医学的な解説:院長 岩城雅範

文・イラスト:理事 岩城桃子

 

 

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