長い旅だった。
西ドイツのレーゲンスブルクからウィーンを経て、ハンガリーのブタペストへ。
出入国管理の厳しいユーゴスラビア、ブルガリアから最後はルーマニアの港町スリナで旅を終えた。
ドナウ河に沿って3,000㎞を行き、最後は絹子が望んでいた黒海の朝陽を見た。
50歳の絹子の気持ちに寄り添い、彼女の17歳年下の恋人・長瀬に感情移入し、シギーやペーターと共に絹子の娘・麻沙子を見守りながらの不思議でスリリングで充実した旅だった。
図書館で、(長い小説だなー)と思いつつも、借りてよかった。
1983年11月から1年半、朝日で連載されていたそうだ。
数年後、ベルリンの壁が崩壊することを考えながら読めるのも、後から来た読者ならではの恩恵だろうか。
長編小説を楽しさを改めて認識させてくれた、文字通り「大河ドラマ」だった。