選挙の勝ち方教えます | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2015年 アメリカ
監督: デヴィッド・ゴードン・グリーン
原題: Our Brand Is Crisis
 

日本未公開作品。WOWOWで録画したんですけれど。作品情報にサンドラ・ブロック主演の「コメディ」とあって、かつこの邦題。おやサンドラ姐さん、今度はポリティカル・コメディ?と期待膨らませていたんですが・・・これ、コメディじゃないでしょうΣ(゚Д゚)。配給会社とか、番組紹介の担当者とか、ちゃんと内容把握してますかー?こういう違和感、たまに出くわしますが・・・。確かに途中でドタバタなお笑い要素は若干あるものの、全然コメディではない。後から知ったことには実話ベースだそうで、さらに同じ原題”Our Brand is Crisis”のドキュメンタリー映画の焼き直しだそうで、そりゃ、ますますコメディにならないじゃん・・・^^;。

たぶん、普通にポリティカル・ドラマ。サンドラ姐さん、主演だけじゃなく製作総指揮の筆頭に名前連ねてらっしゃるし。実話と実在のモデルとドキュメンタリー映画に感銘を受けて、自分なりの政治の世界でトライ&エラーを繰り返しながら自己研鑽していく女性の姿をストレートに映画にしようと思ったのではないでしょうか?邦題のセンスとか番組紹介の説明とかはサンドラ姐さんのせいでも製作元の責任でもないけれど・・・展開や脚本にも不自然や唐突すぎて感情が乗り切れない残念な部分もあったりしました。ジェニファー・ローレンスが主演した「ジョイ」のようであるべきだったんじゃないかなぁ、あんな感じの仕上りが理想だったのでは・・・と思うのです。



ただ、色々肩すかしに戸惑ったり、何か足りない感じはするものの、これは確か。サンドラ姐さんは裏切らない(笑)。珍しい金髪のサンドラ姐さん。その存在力で、不自然な脚本も多少カバーしつつ、政治の世界に幻滅と理想の両方を抱える主人公を好演しています。サンドラ・ブロック好きなら観ても損はなし。

やり手の選挙コンサルタントとして活躍していたジェーン・ボディーン(サンドラ・ブロック)ですが、6年前に関った選挙で大敗し、その一因がジェーンにあると噂を流され「疫病神ジェーン」という不名誉なあだ名をつけられて、政治の世界に色々と失望もしたジェーンはそれきり引退し自然に囲まれた田舎でナチュラルな生活をしていましたが、ボリビアの大統領選の圧倒的に不人気な元大統領でもあるペドロ・カスティーヨ(ジョアキム・デ・アルメイダ)の選挙戦略担当として昔の仲間に誘われます。もう政治の世界に興味はないの~と言っていたジェーンでしたが当選確実と言われている対立候補がコンサルタントとして雇ったのが、宿敵パット・キャンディ(ビリー・ボブ・ソーントン)だと知るとあっさり決心を翻してカムバックします。



打倒キャンディに闘志を燃やしていたハズのジェーンでしたが、実際現地に向かう途中のテンションの低さ!着いたら着いたで高度の高い土地柄のせいで高山病にかかり、顔面蒼白でボロボロで使い物にならないし、その後もとにかく何もしようとせず完全に戦力外状態。宿敵キャンディと遭遇しても”フリ”ではなく本当にやる気のないそぶり。このやる気のなさは何故?ていうのと、その後でキャンディの策略による騒動が巻き起こった途端、別人のようになってテキパキ指示を出し始める突然の変化も、何の説明もないし理由も思いつけず違和感だらけなんですけどね^^;。



とにかく、ジェーンの本領発揮!嫌われ者のカスティーヨの支持率を少しでも上げよう、人に好かれようとあがいていた陣営でしたがジェーンが打ち出した戦略は、カスティーヨの特徴をそのまま活かす方法。戦略テーマはタイトルの”Our Brand is Crisis”。すなわち、今がボリビアの危機的状況であり、そういう状況に求められるのは強い力のある指導者であり、お人よしではない。今必要なのは人柄ではなく行動力と実行力であると、不利を逆に有利にする作戦。それが当たって、徐々に支持率を伸ばし始めるカスティーヨ。



ジェーンを誘ったネル(アン・ダウド)の裏のコネも使いまくり、死んだ父親がカスティーヨの熱烈な支持者で、彼が以前大統領だった子供時代にカスティーヨに抱き上げられた写真を大事に飾っている若いスタッフなど、有能なスタッフたちの能力をフルに活用しまくってイケイケドンドン!でも、キャンディはさらに凄腕で、激しい反撃の数々に、勝負の行方は一進一退の激しい攻防戦。



選挙キャンペーンに向かう途中、対立候補とキャンディたちのバスと出くわして追い越せ追い抜けの子供っぽい張り合いをしたり、飲みすぎて暴れた挙句にジェーンが逮捕されて留置場行きになったり・・・えぇー、マジ?な、かつそれ必要?なドタバタもあり。途中で選挙モノだったということを見失いそうにもなったり。これがコメディであると主張する人は、多分このあたりの流れを指してなんだとは思いますが・・・でも、あくまでも途中のドタバタ寄り道にすぎず、あの騒ぎやあの騒ぎも結局映画の中ではどんな意味があったの?何だったの?気分。



仲間のリチャード・バックリー(スクート・マクネイリー)もジェーンの実力を認めてだんだん打ち解けてリスペクトしあったり、過去のトラウマをちょっと語ってみたり。政治の世界に抱いた幻滅と、それでもやっぱり捨てられない理想を抱え、緊張感あふれる現場の空気とカスティーヨの健闘ぶりにかつての情熱と希望を取り戻し始めるジェーン。それでもキャンディは本当に手ごわい。



選挙活動の終盤になって、キャンディの策略でカスティーヨにまた不利な状況になってしまい、候補者同士の討論会当日、ドヤ顔で近づいてきて嫌味三昧のキャンディに対し、諦念と悔しさに強がってますよ、という顔でゲーテの『ファウスト』を読みながら、この言葉が今はとくに沁みるわね・・・と、鉛筆で線を引いてみせます。すっかりいい気分になったキャンディはご機嫌で立ち去りますが、これは実はジェーンが仕組んだ巧妙なワナ。



討論会本番。まるで独壇場とばかりに熱弁をふるう対立候補。またしてもキャンディの”してやったり”で、決定打とも言うべき発言で会場が湧きたちます。もはやカスティーヨの敗退は決定的?と、思われたところで成り行きを見守っていた仲間にジェーンがネタバレ。実はキャンディがまんまとジェーンのワナにはまって自滅をしてくれた決定的瞬間でした。いくらなんでも、この大事な場面で、ネットだって発達した現代で、裏取りもとらずそのまま信じるかな・・・といまひとつ納得いかなかったのですが、実話ベースなんだから、まぁ、その通りだったんでしょうね。



結果、接戦の末に見事にカスティーヨの当選が当確!やったー!最高の気分。仕事への情熱もすっかり取り戻し、これで本当によい世界になると信じるスタッフや民衆の姿にもいい気分に浸り、選挙コンサルタントの仕事はここまで、自分の仕事はもう終わり。この先はもう自分にできることはない、後はカスティーヨが見事に期待に応えるかどうかよ・・・と清々しく帰国の荷造りをしていたのですが。



なんと、大統領に就任そうそう、瞬間掌返しで思いっきり公約違反な行動に出たカスティーヨ。選挙中はあんなに「頼りにして」「信頼して」「目にかけて」いた若者の訪問も無視。町では裏切られた国民たちが大掛かりなデモを起こしています。でもそれはこの国の問題。自分達の仕事とは関係のないことだし、口出しできることでもない。彼らは彼らの、自分達は自分達のやるべきことがあると、割り切って空港に向かう選挙コンサルチームの面々でしたが、ジェーンはモヤモヤ。親しくなった青年スタッフの「あなたはこの後、何をするんですか?」の言葉も耳から離れません。



そして、最後の最後にジェーンが選んだのは。ジェーンのクライマックスなシーンですが、その決断も唐突で、かつ、それで具体的にどうするの?どうなったの?というのがわかない。熱気あふれるシーンではあるのだけれど、でも・・・それで、何がしたいの?どうするつもり?という疑問しかわかないので今一つ感動しきれず・・・。最後に、最初のインタビューのシーンに戻るのですが、それがいつのインタビューなのか答えが何なのかもわからないからなんだか消化不良。ボリビアの大統領選のことなんてまったく知識がないし、ドキュメンタリー映画も観ていないから、ベースになってる実話の情報がないとうーん。元ネタの結末というか、その後の展開を分っていれば色々腑に落ちるのかもしれませんが。日本未公開なのも頷けます。



なんだかガッカリ部分の感想の方が多くなってしまいましたが、でもでもまぁまぁ、ポリティカル・ドラマとしてはそれなりに面白かったです。サンドラ姐さんの演技はよかったし、オマケ要素としてどのシーンもジェーンの身に着けているファッションがシンプルかつセンスよくほどよくカが抜けているのに綺麗で、良かったです(*´з`)。あと、選挙参謀チームのひとり、ルブラン(ゾーイ・カザン)がすごく印象的でなんだかめちゃくちゃキュートでした( *´艸`)。彼女の他の出演作も観たくなっちゃいました。

という訳で、手放しでお勧め映画というわけではありませんが、サンドラ・ブロックだし、もし興味あれば一度観てみてもいいかもレベル。あくまでも個人の印象ですが(笑)。取りあえず、邦題と、コメディっていうのだけは、まっさら捨ててからご覧ください(´ー`)。