箱入り息子の恋 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2013年 日本
監督: 市井昌秀


知人のお勧め作品ということでDVDをお借りして観ました。新垣結衣さんとの共演ドラマ「逃げ恥」およびその主題歌の”恋ダンス”で一気にメジャー化した星野源さんの映画初主演作品。私も「逃げ恥」で初めて星野源さんを知ったクチ。そして、だからといって特にどうということもなく、別段好きでも嫌いでもないのですが。かねてからの星野ファンにしたらたまらない、これぞ星野源の真骨頂!という感じらしいです。奥手で意外と自尊心は強く自己防衛の殻の内側にこもっていた地味男子の、その殻をブレイスクルーして成長する純愛ストーリー。


 

天雫健太郎(星野源)、市役所勤めの独身男。入所して13年ずっと「記録係」で昇進知らず。黙々と仕事をこなして17時きっかりには帰宅。35歳になっても実家暮らしでプライベートでの他人との交流もお金の使い道もなく趣味は貯金と一人でやるテレビゲームくらい。出世欲もなければ結婚願望もサラサラない。オタマジャクシを育てたらそのまま立派に成長したペットのカエルが唯一の心の友。何の取り柄も特徴もない、というのが逆に特徴な、究極の箱入り息子。草食男子を超えた完全自己完結のミドリムシ男子とでもいいましょうか。

 


そんな息子をこれまで甘やかしつつも、行く先と天雫(あまのしずく)という珍しい苗字の一族断絶を危ぶむ両親は思い切って代理婚活パーティーへ。秋吉理香子さんの『婚活中毒』を読んだばかりだったので思わず「おっ。」(笑)。同小説の中にも親の代理婚活のエピソードがあって、プロフィールが魅力的な娘・息子の両親の席には面談希望の長蛇の列だけども不人気な子供の親は誰も来ないブースでポツネンという描写がありましたが、まさにそんな状況に陥る天雫夫妻(苦笑)。



ところで箱入り息子の初恋?のお相手、ヒロインは今井奈穂子(夏帆)。健太郎より9歳年下のお嬢さま。徐々に視力を失う病気で今ではほぼ全盲。ある日偶然街で奈穂子と出会った健太郎はその可憐な姿に一瞬でポォっとなる運命の出会い。ですが、ほんの一瞬のすれ違い。目の不自由な奈穂子には健太郎の姿はわからないし、不器用な一言をかけるだけが精いっぱいだった健太郎。お互いどこの誰ともしれなず、育ちも環境も全く異なり普通は交差しようがない2人。二度と出会えないのが普通。でも再会できるから、映画( *´艸`)。しかし最初しばらく夏帆ちゃんだと気が付かなかったです。可愛いし、演技、上手いのね。盲目の演技もあまり意識しないようにしたとメイキング映像で語っていましたが天性の女優さんなんだな、と知りました。



高級ホテルの高級料理店の個室にちんまり顔をそろえる天雫一家、健父・寿男(平泉成)と健太郎と母・フミ(森山良子)。全然振るわなかったはずの代理婚活パーティーでしたが、何故か素敵なお嬢さんのご両親からお見合いの申し出が。そんなの興味も自身もない健太郎は乗り気ゼロでしたがお相手のプロフィール写真を見た途端態度が変わりました。その理由は・・・。



はい、お相手の今野家一同。会社経営者の父・晃(大杉連)と美しいセレブ妻・玲子(黒木瞳)に挟まれているのはなんと一目惚れの君、奈穂子嬢!実は婚活パーティー会場で一度言葉を交わすものの天雫家の息子(=健太郎)のサエないプロフィールとサエないどころじゃないスナップ写真にとっとと見切りをつけた晃でしたが、ある理由があって玲子が強く奈穂子に勧めて段取りをつけたこの場でした。が・・・経済的基盤、価値観が大きく違う両家の間で共通点が全く見つからず速攻険悪ムード、即解散の雰囲気でしたがここで一言、健太郎が勇気を出して奈穂子に声をかけた。健太郎、一世一代の清水寺!



お見合いの席は結局ご破算モードで、このご縁もここまでか・・・と思われたものの、健太郎の人柄と奈穂子の気持ちを察した玲子のサポートに支えられて後日再会を果たす健太郎と奈穂子。健太郎のお昼休みに、「健太郎さんがいつも食事するお店に連れて行って欲しい」という奈穂子のオネダリで、ぎこちなく吉野家へエスコート。ツユダクについてしどろもどろ緊張しながら説明したり、紅ショウガを奈穂子の丼にとってあげたり、一生懸命ナイトぶる健太郎の姿が微笑ましい( *´艸`)。



玲子が送り迎えする公園を基点にした昼休みデートを重ね、互いに不器用ながらも少しづつ打ち解け合い、ついに手をつなげるようにまで関係が発展!超不器用なファーストキスも・・・( *´艸`)。そしてついに休日の一日デートまでこぎつけると、奥手な2人の交際もここまでは順調。玲子の視線も暖かく、皆ホクホク。見合いの席で奈穂子の父親に奈穂子を養ってフォローするだけの経済力も度量もないと蔑まれた健太郎は、生まれて初めて、昇進試験を受ける決心もします。自分のできる限りの努力をして、少しでも奈穂子さんに相応しい男に近づき、お父さんに認めてもらえるように・・・。



ところが、てっきり見合いの席で終わったつもりだった、健太郎の価値をまったく認めていない大反対の父親にデート現場を目撃されてしまいます。お前は俺の娘にふさわしくなぁぁぁあい!分をわきまえて身を引け!と怒鳴られて、それでも健太郎が踏ん張って「奈穂子さんの為なら何でもできます。どうかお付き合いさせてください!」と必死に粘るのでついカッとなって・・・止めに入る玲子も含め、ひと騒動。そして思わぬアクシデントが。
 

 

次々と襲い掛かる障害についに引き離されてしまう2人・・・でも奥手男の執念岩をも貫く?!捨て身の健太郎の渾身の暴走でマサカマサカの展開に。星野源さんも体当たり。汗だく、泥だらけ、運命の恋に燃える男は汚れてナンボ。だからってここまでする?こうなる?の正真正銘、命がけの恋。実際に、健太郎は二度も死にかけます(苦笑)。箱入り息子の初めての恋、殻を破って色々成長を遂げた健太郎、成就なるか。

 

 

えぇー?ビックリ。マジで。な展開もありつつ、ほんわか暖かい人情ドラマでもあり。天雫家のご両親、森山良子さんと平泉成さんの夫婦も本当にいそうですごくよい感じだし、ちょいちょい勝手に上がり込むお隣のおばさん(竹内郁子)の存在も憎めないアクセント。初の休日デートにお洒落&初コンタクトの健太郎に家族よりも一番にツッコミを入れるのもこのお隣さん(笑)。こんなお隣さんが実際にいたら、ちょっと迷惑だけれども、他人事として眺めたら楽しい限り(笑)。

 

不思議なほのぼの感溢れる、星野源さんらしい、そして共演の皆さんの相性も抜群にまとまった作品でした。星野源さんと夏帆ちゃんの純愛がメインなのですが、それはそれとして、大杉連さんのお姿が画面に映る度にまた別の感傷が溢れ出るのでした・・・(/_;)。

 

 

 

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