わたしを離さないで | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2010年 イギリス、アメリカ
監督: マーク・ロマネク
原題: Never Let Me Go
原作: カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』

 
WOWOWにて録画鑑賞。今さらですが、カズオ・イシグロさん、ノーベル文学賞!おめでとうございます。原作の小説を読んで(翻訳でしたが。そしてこの作品に限っては一般的には評価の高い土屋政雄さんの翻訳がいまひとつだと感じてしまったのでいつか原文で読み直したいのですが)、綾瀬はるかさん、水川あさみさん、三浦春馬さんのドラマ版を観て、映画版もいつか観ようとずっと思っていました。やっと念願かなって観て見たら、なんと思った以上のお宝キャスティング!わぉー。でした(´ω`*)。

1952年
不治とされていた病気の治療が可能となり、
1967年
人類の平均寿命は100歳を超えた


不治の病気を克服した治療法とは。臓器移植が目的のクローン人間を製造、保有、管理し健やかな状態の臓器を必要に応じて常に供給できるようになったから。クローンは18歳になるまでは世間から隔絶された学校施設で育成され、18歳になるとコテージと呼ばれる全国に存在する共同コミュニティで暮らしながら臓器提供の時を待ちます。提供者によっては最初の臓器摘出手術で、多くとも3度目までで大抵の提供者はその役目を終えます。提供がまだ始まらない者は希望すれば一定の研修の後に提供者の術後の回復センターでのケアを担当する「介護者」となることもできます。



優秀な介護者として従事している提供者予備軍のキャシー(キャリー・マリガン)は、ルース(キーラ・ナイトレイ)やトミー(アンドリュー・ガーフィールド)と共にかつてヘールシャムと呼ばれる寄宿学校で育ちました。提供者たちが育てられる学校施設のうちでも特別な存在だったヘールシャムの校長先生を演じたのは、シャーロット・ランプリング。うぅむ、なんてピッタリ。



子供時代のルース(エラ・パーネル)とキャシー(イゾベル・ミークル=スモール)。特にキャシーが、成長後のキャリー・マリガンと雰囲気そっくり!(*´▽`*) おませで目立ちたがり屋のルースと、大人しく控えめなキャシーは、ルースの方が我が儘で一方的のように見え勝ちだけれども、それでも大切な親友同士。そして女の子の友情に歪が入るのは、いつだって男の子の存在が原因です(´艸`*)。



子供時代のトミー(チャーリー・ロウ)がめちゃめちゃ可愛い(´艸`*)。癇癪持ちですぐにからかわれるトミーは、でも明るくてやんちゃで心優しい少年。トミーとキャシーの間には特別な何かが育まれていくのですが、それを敏感に感じ取ったルースが、押せ押せでトミーを掠奪。それまではトミーのことを馬鹿にしていたのに、なぜ?



ヘールシャムに新任教師としてやってくるルーシー先生に、今や時の人、百変化女優のサリー・ホーキンス。トミーたち生徒に自我を持たせようとするような発言があったり、「あなたたちには知らされていない真実」を独断で語ってしまったりした後いつの間にか退職してしまいます。映画では出番も少なく通りすがりの脇役程度にサラっと終わってしまうのがちょっと残念。勿体ない。



キャシー、ルース、トミーはヘールシャム卒業後も同じコテージを選び、各地の他の学校で育った面々と共同生活が始まります。キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールド、若手実力派のイギリス俳優がズラリ、豪華です~。キャリー・マリガンって、キーラと共演した「プライドと偏見」を含め「華麗なるギャツビー」や「ノーサンガー・アベイ」などの文芸作品がよく似合います(´艸`*)。好きな女優さん。



そして、コテージの先輩カップルの彼氏の方、ロドニーを演じているのはドーナル・グリーソン!映画「ブルックリン」でもおや!と思いました、ハリポタシリーズの赤毛のウィーズリー家のお兄ちゃんビル・ウィーズリーがここにも!何故だかわかりませんが、ウィーズリー兄弟には妙な思い入れがあるので、彼らが成長し活躍している姿を見るとつい興奮してしまうのでした(笑)。



どこか荒涼として無機質なほど冷たい色彩で映し出される寄宿学校やイギリスの風景が、哀しくも美しい映像。子供の頃の恋なんて長続きしない、ましてやルースはそもそも本当にトミーのことを愛しているようにも見えなかったのに、ルースとトミーの交際は続き同じコテージで生活するキャシーの目の前でいちゃつかれたり、これみよがしに喘ぎ声を聞かされたり・・・子供の頃からずっとトミーのことが好きだったキャシーはいたたまれなくなり、介護者研修を申し込んで1人コテージを去ります。キャシーがコテージを去ってほどなくルースとトミーは破局し、やがてずっと一緒だった3人はそれぞれ別々に。お互い再会することのないまま年月が過ぎていきました。



ある日、自分が担当する提供者の最後の手術を見守ったキャシーは同じ病院で2度目の提供を終えて衰弱していたルーシーに再会します。ルーシーの希望で一緒にトミーのいる回復センターまで面会に出かけ、久しぶりに3人一緒の時間を過ごします。トミーも2度目の提供を終えていましたが、ルースに比べるとまだ健康を保っている方でしたが、どちらにせよ痛々しい姿のルーシーとトミー。ルースは自分の最期を予感し、キャシーへ許しを請いました。



遅すぎはしましたが、ようやくトミーとキャシーは結ばれることができました。そしてコテージ時代に耳にした、「本当に愛し合っている2人がその愛が本物であると証明できれば数年間の猶予を与えられて一緒に過ごすことができる」という噂を頼りに、ルーシーが生前苦労して突き止めたヘールシャムの”マダム”の住所を訪ねていきますが・・・。

何度観ても(読んでも)、何とも言えない世界観。映画版も、キャストが素晴らしく見応えありました。ただ、2時間程度の映画にまとめるためにはやむを得ないのですが原作の内容をだいぶはしょってしまっていて、登場人物もキャシー、ルース、トミーに絞り込んでしまっているのが少々残念。もっと、深く掘り下げて欲しいところが沢山・・・原作を知らずこの映画を最初に観た人は世界観や状況を上手く呑みこめたのかな?原作を知った上で観る分には、上手く映像化されていて堪能できました。そして、原作を読んだ時にも思いましたが改めて、舞台を日本に移植してのドラマ版での再現性は見事だったなぁと感心しました。

 

 

 

 

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