ミュージアム | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2016年 日本
監督: 大友啓史
 
 
しばらく映画以外の記事が続いたのでなんだかお久しぶり気分です。WOWOWにて録画鑑賞。原作の漫画は知らないのですが、結構グロそうなサイコスリラーとのことだったので、劇場鑑賞は棄権して(笑)、WOWOW解禁になるのを待っていました。実際には、覚悟していたほどの直接的なグロい場面はなくて内心ホっ。残虐行為の”結果”が映るシーンはありましたが、まぁそれも一瞬なので大丈夫。映像やカメラワークも迫力があって、役者さん達の鬼気迫る演技に惹きこまれて雰囲気で魅了されました。面白かった・・・と思って、後から反芻してみると辻褄合わないところとか説明放置プレイなところとか結構あることに気が付くんですけれど(苦笑)。観ている間は夢中でゴチャゴチャ考える余地がなかったので、やっぱりよく出来てるんだと思います(´ω`*)。
 
 
ある日、女性の惨殺死体が発見され、関端警部(松重豊)を筆頭に菅原(丸山智己)、沢村(小栗旬)、西野(野村周平)ら警視庁捜査一課一係の刑事たちが捜査を開始。現場からは「ドッグフードの刑」と印字された紙片が発見されていました。時を置かずして、今度はニートの男性の惨殺死体が発見されます。そして「母の痛みを知りましょうの刑」の紙片。やがて被害者2人の共通点が過去に起きた「幼女樹脂詰め殺人事件」にあったことが判明。2人ともその事件の裁判員でした。
 
 
沢村の妻、遥(尾野真千子)も当該事件の裁判員をしていました。警察は事件に関った裁判官、裁判員らの保護に向かいますが常に一歩遅く、次々と裁判関係者が何者かの「私刑」によって殺害されていきます。沢村も妻子の安否を心配しますが、仕事ばかりで家庭を一切顧みずにきた夫との生活に疲弊し1人で孤独と心の闇を蓄積させた遥は2週間前に息子を連れて家を出たまま消息不明の状態でした。やっと居所を突き止め沢村も捜査一課も急行しますがまたしてもあと一歩の差で犯人に先を越され、沢村の妻子は誘拐されてしまいます。
 
 
犯行は何故かいつも雨の日に行われ、目撃者情報で雨合羽とカエルの覆面をつけていることから「カエル男」と通称されるようになる犯人。「幼女樹脂詰め殺人事件」の容疑者だった大橋茂は死刑宣告の後に刑務所内で自殺しているため、大橋の親族縁者らの恨みによる犯行かと思われましたが、該当するような被疑者が一人も見つからず操作は難航します。犯人の目的は何なのか。なぜ、沢村の妻子については誘拐以降何の兆しもないのか。
 
 
自分の身内が事件被害者となった沢村は捜査から外されますがジッとしていられず、勝手に独自の捜査を続けます。カエル男とも直接対峙し、あともうちょっとのところで取り逃がし目の前で妻子を連れされられたのだから、大人しくなんてしていられるわけがない。しかも、家でした遥を探す過程で自分が知らずにいた遥の秘密を知り、気が付かずに自分がどれだけ愛する家族を傷つけていたかをやっと知り始め、自戒の念も合わさって執念となり沢村に逸脱した行為を取らせます。警察の監視の目を逃れ暴走し、カエル男同様に危険人物として追われる立場になっても、もう止まりません。
 
 
沢村の野生的ですらある勘の良さと執念でついにカエル男=霧島早苗(妻夫木聡)の招待と居場所を突き止めた沢村は単身で乗り込み、カエル男と乱闘になりますがまたしても際どいところで霧島の手に堕ちてしまい、囚われの身となった沢村は霧島の”ゲーム”に弄ばれることになってしまいます。この時点で、未だに沢村の妻子の安否は不明。霧島によるゲームの筋書きは?絶体絶命の状況から沢村はどう挽回するのか?クライマックスまで、息を呑む怒涛のサスペンス・スリラーな展開が続きます。
 
直接的なグロいシーン(現在進行中の)はあまりないのですが、監禁中の沢村に与えられるコーラとハンバーガーの食料、このシーンが一番キツくてグロかったように思います。シーンそのものではなく、そこから深読みして想像してしまう、考えないでおこう・・・と思っても考えてしまう”仮説”が、そのシーンがグロくて、自宅鑑賞でしたがこの日はたまたまお酒もオツマミも食事もしながらではなくてよかったです(>_<)。死体で発見されるカエル男が自分の芸術作品だと自称する5つの死体も、たいていはその完成形が提示されるだけですが、その拷問の時間を、苦痛をありありと想像してしまって身の毛がよだちます。直接的な描写ではなく、想像させることで恐怖を煽る作り方が本当に上手い(>_<)。ので、想像力豊かな方は覚悟してご覧ください。
 
 
カエル男の、スキンヘッドと脱色した眉毛と睫毛と逸脱性は一瞬「蛇にピアス」のARATA(=井浦新)さんを思い出しましたが、狂気っぷりがそれどころじゃない^^;。ムッキムキの肉体改造まで完璧で、本当にこれ、妻夫木聡さんなの?!Σ(・ω・ノ)ノ!と慄きました。恐ろしいほどの演技力。小栗旬さんも妻夫木聡さんも、尋常じゃない迫力で、間違いなくこの2人の対決が映画全体の緊迫感とまとまりと完成度を牽引していたと思われます(*'ω'*)。
 
 
主演が輝き作品の完成度も秀逸な映画は、必ず脇を固めるキャスト達が素晴らしいものです。血や死体が苦手な繊細で真面目な新米刑事を演じた野村周平さん。出番は多くないのですが、オラオラ感皆無の地味な存在感が輝いていました( *´艸`)。今まで観た、彼が演じた役で一番好きカモ。松重さんは言うに及ばず、同僚刑事を演じた丸山智己さんの役も光ってました。
 
 
尾野真千子さんも相変わらず!ジワジワと夫への不満や孤独に蝕まれていく主婦の心理、命がけで我が子の命を守ろうと必死の形相、平穏な日常に戻って穏やかな日々を過ごすフリをしながら土足で突然押しかけてくる不穏な陰に不安と嫌悪が露わになる瞬間・・・夫役の小栗旬さん始め共演者の迫真の演技を受けとめて、しっかりボールを返しています。回想シーンで少しだけ登場する、沢村と同じ刑事で殉職した父親を演じた大森南朋さんもよかったなぁ(´ω`*)。
 
 
カエル男=霧島の主治医だった橘幹絵(市川実日子)のミステリアスな雰囲気もよかったのですが、市川実日子さんの雰囲気が良かっただけに、何か惜しかったかと。彼女自身の精神性や内面、霧島との関わりの具体性とか色々なことが思わせぶりなまま中途半端で手付かず放置な印象で、彼女の存在だけこの映画の中で妙に浮いていたように思います。もうひとさじ、ふたさじ、肉付けあって良かったんじゃないでしょうか。
 
ともあれ、サイコ・スリラーとしては迫力の画力と演技で中々見応えのあるいい出来だったと思います。あまり詳しいジャンルじゃないので、普段からお好きな方が観たらどう感じるのかは解かりませんが・・・繰り返しになりますが、後から色々ツッコミながらも、観ている間はそんなことそっちのけで画面から目が離せず、存分に楽しみました。(楽しむって・・・内容に対して言葉がどうなんでしょうね?いや、残虐な事件を扱っていてもエンタテイメントであることは違わないのだからいいのですよね・・・?^^;)
 
ちなみに、スピンオフドラマの「ミュージアム-序章-」も続けて観たのですが、こちらは全然良さを感じませんでした(;´Д`)。ただ単純にダラダラと卑しく残酷な二重三重の拷問に打ちのめされ続けるだけで、何の救いもなければドラマも含蓄も真理もないように感じました。乱暴な言葉をご容赦頂ければ、まさに”ムナクソが悪い”だけでした・・・。監督や製作スタッフも全然違うのですね。もっと、事件の前日譚とか(カエル男の「実験」「練習」という意味ではそうなんですが、もっと内容のある、という意味で)、霧島の子供の頃の両親の事件のこととかが描かれているのかなぁと勝手に期待してガッカリしたのですが。シリアルキラーの試験的拷問のプロモーションビデオを見せられたような気分でした(;´Д`)。観なくてもよかったかな・・・と思いましたが、それも実際に観て納得すること。後悔はしません。映画はいい出来だったのだな、と改めて思いました^^。
 
 

 

ミュージアム [DVD] ミュージアム [DVD]
4,309円
Amazon