ボストン美術館の至宝展 (東京都美術館) | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

ボストン美術館の至宝展

会期: 2017/7/20(木)~2017/10/9(月)

会場: 東京都美術館

公式サイト: http://boston2017-18.jp/

 

 

約50万点もの世界有数のコレクションを誇るボストン美術館から、40年ぶりとなる日本での総合展の開催。古代エジプト美術、中国美術、日本美術、フランス絵画、アメリカ絵画、版画・写真、現代美術と分野別に展示室が別れた、まさに「ツタンカーメンから村上隆まで」の多彩な厳選されたコレクション80点!こんなに多分野に渡る美術品を一堂に観られるだけでも貴重。80点という点時数も見応えがあります。が・・・80/500,000点ですからねぇ・・・全コレクションのほんの0.016%!どんな数字やねん(;゚Д゚)。いや、それをいったらその7倍近い所蔵品があるエルミタージュ美術館とか、ますますどゆことやねん!・・・と、ちょいと思い付きで算数してみてビックリするわたくしでした。

 

雨の連休ど真ん中の午後というタイミングが悪かったのでしょうか、思った以上に混雑していました。自分自身と、その場に一緒にいた友人にしか通用しない尺度で言うとほぼ「エリック・カール展」レベル。特に、会場入ってすぐは詰まりやすいため最初の古代エジプト→中国美術→日本美術までは、人の行列もほぼ進まず、行列の後ろから覗き見する隙間もないほどでした。いくら待っても本当に進まないので、古代エジプトのエリアはほとんど見られなかったという残念・・・。なので、どうしても観たいものだけはしつこく粘って、後はそれなりに割り切って妥協して、の寒暖差をつけての鑑賞となりましたが、十分楽しかったです。元々あれもこれもと欲張り体質な私には、この”なんでもあるよ”感溢れる企画内容は向いていたようです( *´艸`)。

 

東洋美術のコレクションでも有名なボストン美術館。やはり、中国美術と日本美術の展示室は特に充実していました。行列が進まないのは納得。古代エジプトはじっくり鑑賞は諦めましたが、ここは私もネバりました。それと、モネとミレーが比較的沢山あったのが嬉しかったです^^。エドワード・ポッパーの版画と、アンセル・アダムスのモノクロ写真はこの展示で覚えた新しいお気に入り♪ゴッホによる、郵便配達人のルーラン夫妻の肖像画が揃って来日というのは目玉のひとつとして扱われていましたが、ここ最近、この夫婦の別バージョンの作品は目にする機会が意外と多かったので、そして夫人の方はどれもほぼ同じ構図だし、特に新鮮味も特別感も感じなかったという罰当たりな贅沢ズレ^^;。

 

陳容 《九龍図巻》 (部分) 南宋、1244年(淳祐4年)

 

私が今回の展示で一番感動したのが、陳容の《九龍図鑑》です。雷雲轟く空と荒れ狂う波間で様々に飛翔する九頭の龍達。髭が白くなった高齢の龍が若い龍に教えを与えている場面(↑画像の一番下、左側)などは特に印象的。龍って、老いるんだ?!白髪になるんだ!寿命ってどのくらい?(←驚きと疑問が小学生レベル^^;) 陳容はこの絵を、しこたまお酒を飲んで泥酔した状態で、恐らく半分トランス状態で書き上げて、その後自分でほとほと感嘆したそうです。10メートルにも及ぶ大作なので、ポストカードでは十分雰囲気が再現できず・・・この小さいレプリカが欲しい・・・この作品のためだけにでも図録を買いそうになりましたが、取りあえず思いとどまってしまいました(>_<)。

 

喜多川歌麿 《三味線を弾く美人図》 江戸時代、1804-06年(文化1-3年)頃

 

箱根の岡田美術館で、138年ぶりに《深川の雪》と《吉原の花》が、そしてワシントンのフリーア美術館にある《品川の月》の原寸大高精度レプリカと三部作展示が話題の歌川喜多麿も。《深川の雪》のような大作も圧巻ですが、どちらかというと《三味線を弾く美人図》のようなしっとりした作品の方が好みです。伏せ目がちに視線を斜め横に流しながら三味線を弾く女性の左側には恋の歌が5篇。ほぅ・・・っという切ない吐息が聞こえるようです。

 

酒井抱一 《花魁図》 18世紀

 

大好きな江戸琳派の酒井抱一の《花魁図》も、意外で新鮮。そしてやっぱり繊細で美しい~。この着物の柄、素敵・・・(*‘ω‘ *)。

 

英一蝶 《涅槃図》 江戸時代、1713年(正徳3年)

 

そして今回の目玉、巨大な《涅槃図》にはやっぱり圧倒されました。感動。何時間でも観ていられる、吸い込まれそうな引力。釈迦の入滅に集まってきた無数の実在/架空の動物たち、人々、異形の者たち。犬のようにお腹を出して仰向けになって身体をよじる白い像のサイズ感がたまらない(*‘ω‘ *)。この涅槃図、初めての日本への里帰りだったそうです。日本の素晴らしい美術品が海外に流出してしまったのは残念な気持ちもありますが、そのお陰でその価値を認める人たちの手によって大切に保存されてきたのだから、有り難いことです。今回1年近くかけて修復した様子の映像も展示されていました。修復作業の一部は、一般の見学者に公開して行われたそうで、こういう発想や取り組みは、やはり海外の美術館ってすごいなぁと感心します。

 

モネ 《くぼ地のヒナゲシ畑、ジヴェルニー近郊》

 

モネの《水連》もやっぱり素晴らしいけれど、今回展示されていた(4点くらい?)モネの中ではひなげしの赤い花の色が印象的なこの↑作品が一番気になりました。ミレーも、しみじみ、よかったです(*‘ω‘ *)。

 

ルノワール 《陶製ポットに生けられた花》

 

人物や風景の印象が強いルノワールの静物画も。これ↑実物初めて観ましたが、素晴らしかったです。手を伸ばして丸みを帯びた花弁の一つ一つに触りたくなる、その感触まで手の平に伝わってくるような。それにこの色彩・・・!ポストカードも買いましたが、雰囲気が全然違うんですよねー。恐るべし本物のパワー。クールベのタチアオイの花も素敵だったなぁ・・・(*‘ω‘ *)。

 

ジョン・シンガー・サージェント 《フィスク・ウォレン夫人(グレッチェン・オズグッド)と娘レイチェル》 1903年

 

アメリカ絵画のブースでは、あっそういば私、昔サージェントの絵がやたらめったら好きだった頃があったな!と思い出しました。改めて観ても、本当に優雅で美しいですよねぇ~。そして美人母娘!この絵を描くにあたって、最初ウォレン夫人は自分のお気に入りの緑色のドレスを着てきたそうですが、サージェントは肌の色や光のバランスから絶対にこっちの光沢のある薄ピンクのドレスを着るべきだとしつこく説得したそうです。そのアドバイスが大正解だったことは明白。

 

ジョージア・オキーフ 《グレーの上のカラ・リリー》 1928年

 

そういえば、私の大好きなジョージア・オキーフの絵もありました!しかもしかも、花の中で一番好きなリリーの絵!( *´艸`) 幸せ~。

 

アンセル・アダムス 《白い枝、モノ湖》 1947年

 

アンセル・アダムス 《Ansel Adams - Frozen Lake and Cliffs, Kaweah Gap, Sequoia National Park》 1927年頃

 

版画好きな私。エドワード・ホッパーやウィンスロー・ホーマーの版画の数々にも感銘を受けましたが、それ以上の衝撃だったのがアンセル・アダムスの写真たち。昔の技術で、どうやってこんな質感の写真を撮ったんだろう?写真というより絵画のようです。写真集、欲しくなっちゃいます(*'ω'*)。

 

・・・ここまで書いて、これだけお気に入りが沢山あったのなら(多くなりすぎるので敢えて割愛した作品も多々あり)、やっぱり図録買うべきだったか?とイマサラ気になり始めます^^;。うーん。