ツイン・ピークス / ローラ・パーマー最後の7日間 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

1992年 アメリカ

デビッド・リンチ 監督

原題:  Twin Peaks: Fire Walk With Me

 

 

あの「ツイン・ピークス」の25年ぶりの続編がついにWOWOWで放送開始!ということで、旧作品のリバイバル放送中。テレビシリーズは途中で録画しくじったのでサイトの配信でチビチビと観なおしていますが、併せて劇場版もこの機会に復習しました^^。ツイン・ピークスという田舎町で女子高生の死体が発見されるところから始まり「誰がローラを殺したのか?」のミステリーが一番の軸になっていたテレビシリーズ。そのローラが「世界一美しい死体」となる前日譚が映し出されます。

 

相変わらずのザ・リンチ監督ワールド。いちいち意味深で思わせぶりで謎めいていて突拍子がなくて独特。意味が分からずとも脳裏に焼き付かれるシーンの数々。全てを理解するために観る映画ではありません(苦笑)。このシーンのココは、もしかしてこういう意味が込められているのか?画面端っこのコッチは、もしかして・・・?と、気になり出したら1コマ1コマ気になってエンドレス。しかも全てに回答は用意されていないから永遠にモヤモヤ。もしかして、思わせぶりなだけでリンチ監督自身明確な答えや理由は設定していないのでは?という気もしてきます。

 

公式回答は得られないにしても、あーでもないこーかもしれないと色々と想像を膨らまして思考するのがひとつの楽しみ方ではありますが、前述の通りボンヤリな私が気が付くことだけ列挙してもキリがないので、カルト的な解釈や論争、指摘はネットに溢れているので別途サーフィンして楽しむこととして、ここでは基本的にはざっくりあらすじを紹介するだけに留めたいと思います(´・ω・`)。

 

まずはローラの事件より1年前、ツイン・ピークスでテレサ・バンクスというブロンドの少女の死体が発見されるところから始まります。FBIがこの事件の捜査に乗り出し、声が大きい、でお馴染のゴードン・コール(デヴィッド・リンチ)に呼び出されたのはデズモンド捜査官(クリス・アイザック)と検死官のスタンリー捜査官(キーファー・サザーランド)。

 

飛行場で落ち合ったゴードンが「事件の概要を説明しよう」といって指さした先にいた、しかめっ面でクネクネと変な動きをする赤い服を着て胸に青いバラをつけた女性の存在感と画力が、もうしょっぱなからインパクト大有り(笑)。ゴードンと別れた後、?マークだらけのスタンリーに謎解きを説明するデズモンドです。「彼の(捜査の)やり方は少々変わってるからな」と言ってたゴードン、アナタもですよ(笑)。それにクーパー捜査官とか、彼とか彼とか・・・この世界のFBIなら、X-Fileのモルダー捜査官はきっとノビノビ活躍して出世コースだったに違いない(´ω`*)。

 

ツイン・ピークス周辺で苦労しながら聞き込みや捜査を進めるデズモンドとスタンリー。それにしても、キーファー・サザーランド、わっかい!初々しくて新鮮~。ちょっとしたお宝映像です(*'ω'*)。ですが、捜査の途中で突然デズモンドは姿を消してしまいます。そこで、バトンを渡されたのが我らがクーパー捜査官(カイル・マクラクラン)という流れ。

 

テレサが住んでいたトレーラーハウスを調べに行って、不審な痕跡に目を付けたり、夢の中?であの「赤い部屋」に行ったり。ローラの事件の前から、ツイン・ピークスにも赤い部屋にも関わりがあったんですね。結局、テレサの事件の真相はわかりませんでしたが、クーパーは「これで終わりではない。また事件はきっと繰り返される。問題はそれがいつかが解からないことだ」と、ローラの事件を予見しています。

 

ところで、こんなお宝映像も!デヴィッド・ボウイ!!(*'ω'*) 2年前から行方不明だったというジェフリーズ捜査官が、FBIオフィスのクーパー達の目の前に突然姿を現します。そして謎の言葉を色々と述べた後、また突然消えてしまいます。一体彼が何者なのか、どういう関わりがあるのかは勿論説明ナシ!(笑) でもどうやら、彼は彼で別の事件を担当している時に、赤い部屋を行き来するようになったみたいですねー。

 

そしてテレサの事件から1年後。ハイスクール・クイーンのローラ(シェリル・リー)が、明るく優等生らしく楽しそうに、親友ドナ(モイラ・ケリー)と一緒に高校生活を過ごしていました。皆の人気者、友達にも両親にも愛されて、憧れの対象のローラですが、医者の娘で堅物優等生の親友ドナを時々不安にさせる影がしっかり存在していました。

 

あれ?ドナちゃん、顔が違ってる??ドラマでは↑ララ・フリン・ボイルがドナを演じていましたが、諸事情により劇場版ではモイラ・ケリーに。最初は少し違和感がありましたが、モイラ・ケリーのドナも結構良かったです。甲乙つけがたし。それにしても、やたらと美人の多い町だ、ツイン・ピークス(*'ω'*)。

 

表面上はくったくのない高校生活を謳歌しているように振る舞いながら、内面に誰にも言えない闇を抱えて苦しんでいたローラ。考えて事実を突き止めることから逃げるように、恐怖から逃れるように、お酒やドラッグや淫乱な行為に溺れて自分の身体と魂をわざと痛めつけようとしているかのよう。

 

娘を溺愛するよき家庭人、よき夫、よき父親に見えたリーランド・パーマー(レイ・ワイズ)ですが、ローラはその父親の自分に対する異常なほどの愛情と執着に本能的に恐怖を感じます。ボーイフレンドのジェームズ(ジェームズ・マーシャル)からもらったハートの片割れのペンダント(昔こういうカップルアイテム流行ってましたね!)を目ざとく見つけたリーランドは恐ろしい勢いでローラを叱責します。

 

勿論、キラー・ボブ(フランク・シルヴァ)も登場します。12歳の頃からボブという謎の男が部屋に侵入して自分の身体を狙っているという想念に捕らわれていたローラ。ある日の午後、自室で侵入してきたボブと遭遇してしまい「やっぱりボブは実在したんだ!」という衝撃と共に必死で屋外に逃げ出します。しばらく草陰から様子を伺っていると、なんと家から出てきたのは自分の父親リーランドでした。考えたくなかった、知りたくなかった事実を目の前に突き付けられたようで動揺するローラは自暴自棄になり益々ドラッグにのめり込みます。

 

 

ローラと同じ高校の黒髪のロネット(フェーベ・アウグスチヌス)、そしてテレサは実は同じ乱交パーティや売春グループでの顔なじみでした。そして1年前まで、リーランドは自分の娘への歪んだ愛情のはけ口を、見た目がローラに似ていたテレサに求めていたのです。

 

 

テレサが指にはめていたはずなのに事件後見つからなかった緑の石の指輪は、悪魔に魅入られた者の印なのでしょうか。ローラが赤い部屋に入った時、小人はローラにその指輪を差し出し、「その指輪を受け取ってはいけない!」という声も届かず指輪に魅入られたように手に取ってしまうローラ。『指輪物語』といい、古から「指輪」は人間の欲、権力、願望、恐怖、誘惑といったものの象徴や契約、まじないに使われますねぇ。そもそもの指輪の発祥や歴史、文化による相違など、物凄くそこが深くて興味深い研究対象ですね、きっと(´ω`*)。

 

ローラの部屋の絵の中からいなくなってしまった天使。暴走したリーランドにローラとロネットが捕らえられて貨物車に閉じ込められ暴行を受けた際、天使が現れてロネットの手をとってくれますが、ローラはそのまま取り残されてしまいます。結果、ロネットは意識不明の状態で発見され、一命をとりとめローラは殺されてしまいます。ローラはついに天使から徹底的に見捨てられて悪魔の手に堕ちてしまったのでしょうか?ところが、死後「赤い部屋」に佇むローラの元に、再び天使が姿を見せます。

 

肉体と、「痛みと苦しみ」=ガルモンボジーアを悪魔に与えられて最後に残った魂だけは、何者にも奪われずローラの元に残り救われたということかなー。だから発見されたローラの遺体は息を呑むほど美しかった?でも、赤い部屋で笑い続けるローラの姿は、単にやっと救われたとほっとした安心や喜びよりも、もっと複雑なもの悲しさや諦念が現れているようで、なんだかちょっと切ないです。

 

近親相姦、ドラッグ、売春、買春、殺人、、、重くてシリアスであまり救いの感じられない内容は辛くなりますが、テレビドラマでは過去の回想のイメージだけで実体として存在しなかったローラの、生前の(少なくとも身体的には)健康で必死に生きている姿が見られたのはちょっと嬉しかったです。すでにハイスクール・クイーンというには年齢が・・・うーん?というのはヤムナシとして、それでも、話が進めば進むほど、ローラの状況がひっ迫するほどに皮肉のように逆にどんどんローラが綺麗になっていくようで、みとれちゃいました(*'ω'*)。

 

そして、今気が付いたのですが。あれ?神と悪魔との美女の魂の取り合いとか、奇妙なクリーチャー的存在とか、ラストの顛末とか、どことなくシーズン3でファイナルを迎えた海外ドラマ「ナイトメア〜血塗られた秘密〜」とちょっと似てません?ジョシュ・ハートネット、ティモシー・ダルトン、エヴァ・グリーンと豪華キャストと衣装で、最初ゴシックホラーかと思えば途中からショーン・コネリー主演の「リーグ・オブ・レジェンド」に方向転換して、さらにしばし迷走して「んんー??^^;」と思いながらもついつい最後までがぶりつきで観ちゃったドラマ( *´艸`)。

 

あっ。そういえば、何かが引っかかるなぁと思っていた「リチャード二世」でのヘンリー四世(ボリングブリック)を演じていたロリー・キニアって、「ナイトメア」にも出てました!フランケンシュタインの1体目のクリーチャーとして。無意識にあのイメージが強く刷り込まれているから、ボリングブリック→ジェレミー・アイアンズの構図がいまひとつ納得いかなかったのかも(笑)。

 

最後思いっきり脇道に逸れてしまいましたが、久しぶりに「ツイン・ピークス」の不可思議で魅力的な世界に浸りました~。あの音楽も、聞くとしばらく頭を離れませんよね~。「バーレスク」の脳内サントラ状態も長く尾を引いたのですが、今は「ツイン・ピークス」サントラと交互です^^;。