若い頃、クレーム処理の天才と自負しておりました。
相手が興奮して喚(わめ)けば喚くほど、スーッと気持ちが落ち着くのを感じておりました。
勿論自らが激昂(げっこう)して、我を忘れるなどと言う事はありませんでた。
お客様であると言う立場を盾(たて)に、無理無茶・難題を突きつけてくるナーバス(悩ましい)な、いわゆるモンスタークライアント(怪物顧客)の対応には自信を持っておりました。
まず相手を恐れない・嫌わないを基本に、粘り強く、ただただ粘り強く、誠意を持って対応する。
それでも“ゴネ得”を許さないと言う大原則はしっかり守ります。
お金を払って処理するという安易な解決は、こちらに余程の手落ちが無い限り行いません。
時間が掛かります、手間が掛かります。それでも粘り強く、時間と労力を惜しまず、淡々と対応します。
が、しかし添乗中はこの限りに有らずです。
一人の顧客に時間と労力を割いている事は許されません。
毅然とした態度で“ごね得は許さない”原則を胸に、他の顧客の利益を守らなければ成りません。
離団勧告という伝家の宝刀があります。
むやみやたらと使えませんが、言葉を尽くし説明しても聞き入れない、大声で喚く、暴力を振るうと言う事態になれば、他の顧客の利益を守る為、敢然(かんぜん)と実行しなければなりません。
具体的には、その瞬間までの消費した経費を差し引き残金を返還します。更に、その瞬間以降団体から離脱して頂きます。
海外で言葉も地理もその他何もかも知らないところで、放り出すことは大変危険でもあります。
勿論、帰国に必要な手立てを整えての事です。
その後そのまま帰国するか否かは、あずかり知らぬ事と成ります。
今まで350回超の海外添乗で、この伝家の宝刀を振るったことは有りません。離団勧告は申し上げた事あります。ほんの数回。
殆どの方が以降、借りてきた猫のようにおとなしくなられます。気の毒なほどに。こうなれば添乗員として時々優しい言葉をかけ、労(いた)わります。
“旅行中に起きたトラブルは旅行中に完結せよ”。つまり、クレイムを日本に持ち帰るなと言う、添乗員の大事な勤めがあるからです。
今思うと、これらの事を平然とこなしておりましたが、大変な体力を要する事だと、63歳になって感じております。
気力体力が落ちた今日この頃、変に怒りっぽくなったように思います。
でもまだ理性があります。我を忘れて激昂する事は有りませんが、いつまで持つ事やら。
家庭において、嫁さんや子供たちに大声で怒鳴ったり、ましてや手を挙げるなど一度もしたこと有りません。
それでも常に父の気迫を子供たちに示し(娘には通用しなかった)、威厳を保ってきましたが、この先、心もとない感じです。
このような状態で海外添乗をこなす事、あたわず。
ごくごく親しい方々との旅行に限ろうと思います。
一つ一つの事例を紹介しながら進めようと思いましたが、思い留まりました。手柄自慢になってしまいますもんね。
逢って話す機会があればいつでも披露しますよ。苦労?話。
27th, July, 2012 / T.Konishi