



ツェルマット(&サースフェー)山旅5日目。
翌日の行程に対する緊張のあまり殆ど寝られないまま5時過ぎに起床。

前日にチェックアウトの手続きを済ませておいたので無人のフロントに鍵を返却し、朝一のゴルナグラート鉄道に乗るために駅に向かう。
この日の予定はツェルマットからモンテローザ小屋への移動のみなのでそんなに早く出る必要はないかも、と思ったけど、ローテンボーデンからモンテローザ小屋までのコースタイム4時間は自分には絶対無理(たぶん6時間はかかる)と思ったし、あまりにも日中暑いので早く出て早く小屋に着いておきたかった。
朝一の鉄道、結構並ぶかと思ったけど思ったほどではなかった。
チケットは前日にオンラインでローテンボーデンまでの片道を購入済。
確かお薦めは進行方向右側(だった気がするけど違うかも)、と聞いた気がするので右側に陣取る。


素晴らしいと思うけど、明日の行程に対する不安と、そもそも今日無事にモンテローザ小屋にたどり着けるのかという不安であんまり景色が身に入ってこない。
一応モンテローザ小屋のHPから紙地図はダウンロードしているし、ローテンボーデンから小屋までのルートは氷河さえ迷わなければ目印のペンキがあるはずだし、その氷河も一応目印のポールがたっていると小屋のHPには書いてあったけど。。。
ただ、鉄道&バスのツェルマットーサースフェー間の移動だけでも結構疲れていたのに同じ全荷物を背負っての徒歩4時間以上の行程をこなせるのだろうか。
不安を抱えながらローテンボーデンで下車。
駅の近くにトイレがあって助かった。
トイレを済ませて、ちょっと坂を下り、この標識の下に重いザックをデポ。

せっかくなのでリッフェルゼーの逆さマッターホルンを見にいく。

きれいだけど、今日と明日に対する不安で気もそぞろ。
もう行かねば。。。

荷物を背負い直して、「モンテローザヒュッテ」の標識がさす方角へ一人歩き出す。
この日の朝一便で降りた人達のうちこちらに来る人は私一人だった。

誰もいない、と思って歩いていたらローテンボーデンを出発して間もないころに2人組とすれ違ってびびったんだけど、この人達はどこから来たのだろう?
ゴルナグラート駅から降りてきたんだろうか?モンテローザ小屋から来たとすると夜明け前に小屋を出発して暗闇の中岩場を歩いてきたことになるけど。。。謎だ。
ちなみに私はコミュ障で山の中で人とすれ違ってもよっぽどのことがない限り話しかけたりはしないので、山行中に謎だと思ったことは大抵謎のまま終わる。
後ろを振り返るとマッターホルン。

前には氷河。


そして周りには誰もいない。最高。
この辺りで前日からの緊張がちょっと和らいできて、この最高の景色を独り占めできる喜びがじわじわ湧いてきた。
氷河歩きはちょっと緊張するけど。。。
景色最高や。。。これが見られただけでも来たかいがあった。

あまりにも巨大で一瞬たぬきかと思ったマーモット。

最高の景色に加えてマーモットも見られた幸運に気分が上がる。
途中でゴルナグラートとの分岐があった。だいぶすごい傾斜だったけど。。。間違っても登りで使いたくはない。

ちなみに1つ不思議なことがあって、yamapでの位置情報は使っている時はこんな感じで大まかな位置情報しか出ず登山道は表示されない。

と思ってたんだけど後からyamapのログを見返すと登山道らしきものが表示されている。


これは私はプレミアム会員じゃないから登山道がリアルタイムで表示されないんだろうか?
それとも使い方が悪くて見逃しているだけ?
私には紙地図を読むスキルがないので、リアルタイムでyamapの地図上にこの登山道が見えていればこの翌日のデュフールに向けたルートファインディングはもう少し楽だったのかな、と思ったりした(それじゃだめだと自分でもわかっているけど)。
という疑問は後から湧いてきたもので、この時はただ、粛々と登山道を歩いていた。
ローテンボーデンから氷河までは迷うことはないと思う。

だいぶ平べったくなってきて池塘っぽいものがぽつぽつ見えてきた辺り。
この辺りに標識があって、モンテローザヒュッテ、3時間、とある。

こっちはモンテローザヒュッテ(オールドルート)3時間15分、の標識。

この標識の辺りでちょっと大休憩を取った。

ローテンボーデンからモンテローザ小屋まではパノラマルートとオールドルート(Alter weg)の2種類あり、一応2025年時点でモンテローザヒュッテのHPではパノラマルートの方が(recommended variation)の表示が出ていたので私はパノラマルートを選択した。
ただこのrecommended variationの意味について、私はヒュッテが「こっちの道がお薦めやで」と言っているのだと解釈したんだけど、もしかしたらそれは私の英語力が低い故の誤解で、「この道を行くにはバリエーション行けるくらいのレベルを持っとくことをお薦めします」ということなのかもしれない。謎。
今回私は行き帰りともにパノラマルートを使ったけど、行きパノラマルート帰りオールドルート、としている人達も結構見かけた。
ただ、オールドルートの氷河上の標識はちょっとわかりにくい、という記録も見かけたので注意が必要かもしれない。
休憩後、出発。
ひたすら歩いていたら、今まで見下ろすばかりだった氷河が視線の高さと同じくらいに見えてきた。


どこら辺から取りつけばいいのかな、とちょっとドキドキしていたけど、恐らくここかな、というポールがある辺りで氷河に乗り移る。

氷河の取りつきには垂直のハシゴがあると色んな記録で読んで楽しみにしていたので何にもなくてちょっと拍子抜けした。
これは私の下調べ不足で、恐らくあの有名なハシゴがあるのはオールドルートなんだと思う。
ヒュッテのHPにもオールドルートの方は氷河の入り口に「15mのハシゴ」と書いてあるし(でもclimbing "up" a 15 m ladderってあるんだけど降りるんじゃないのか?謎だ)
いよいよ楽しみでもありこの日最大の不安でもあった氷河歩きが始まる。ドキドキする。

取りつきの手前でアイゼンを装着し、一応ピッケルをザックから外して背中に挟み、そのまま普通に歩いて氷河に乗り移る。落石がすごい。

一応氷河上にこういうポールがたっている。なのでそのポールを探しながら歩く。

これは昔の落石が残っているのか今でも後ろの山から落石が続いているのか。

私は行きはヘルメットは装着しなかったんだけど、帰りはこの落石がちょっと怖かったのでヘルメットをして氷河を渡った。
まぁ、この後ろの山からの落石なのだとしたらヘルメットごときじゃ衝撃を吸収しきれないと思うけど。。。一応気休めに。
氷河を数m歩いて思ったのは、
意外と固い、
という感想。
なんか、雪面というよりは氷面に近い。
まぁ、考えてみれば「氷」河なので氷に近い強度なのは当たり前なんだけど。
暑さで氷河の上に川が流れているほどだったので、たぶん少しは硬さも緩んでいるんだろうけどそれでも想像の数百倍固い。
アイゼンの爪があんまりきちんと刺さっている感じがしなくて、非常に心もとない、と思った。

あちこちに水が流れたりその水が溜まっていたりしてきれいだった。
クレバスはあるにはあるけど、まぁこれくらい別に怖くはないな、と思っていた。

甘かった。
進むにつれて、当初大したことないやん、と思っていたクレバスがどんどんでかくなってくる。

ポールがあっちにあるということは、クレバスをどこかで横断する必要があるということ。

しかし足もとはアイゼンがあんまり刺さっている感じがしなくて下手するとつるっと隙間に吸い込まれてしまいそうでちょっと怖い。。。

何か所かクレバスを渡ったけど、1か所、幅は大したことないけど向こう岸(?)が数10㎝高かったためにどうしてもそのままぽんと飛び越えられなくて、先にザックを向こう岸にあげてから、ピッケル突き刺してよいしょ、と乗り越えたところもあった。

これはクレバスに挟まったこの岩をつたいながら乗り越えるんだけど、足つるっと滑らせたらそのまま奈落の底にグッバイすると思われる所で、最初は(まじでこれ進むんか??)となった。

ポールの指し示す通りに進んだら多分これが正規ルートだと思うので私は行き帰りともにここを通ったけど、帰りはこれを巻いて違う所から進んでいた人達も見かけたので、ポールを目印に自分が正しいと思う、自分にとって渡れそうな道を行くしかないと思う。
クレバスだらけの氷河。
氷河上でポールを探しながら1時間程歩いたらようやく氷河終わりが見えてくる。

ここ↑も結構こわいなと思ったポイント。
何が怖いって、この雪面というか氷の面は斜めっていて、さっきも書いたようにアイゼンはあんまりしっかり刺さっている感じがしない。
何かのはずみに足滑らせたらそのまま左に滑ってクレバスの隙間にグッバイ、だと思う。
一応ピッケルも手に持っていたけど、これ万が一クレバスの隙間に落ちても氷面が固すぎてピッケルやアイゼンではとてもじゃないけど滑落を止められないだろうな、という気がした。
クレバスは狭いところもあればこんな巨大なところもある。

ようやく氷河が終わってさてどこへ行くべきだろう、と思ったけど、地図とポール目印からすると恐らくこの岩場を上がるべきっぽい。

見るからにツルツルっぽいなぁ、と思ったら案の定滑ってこけ、右手の薬指に軽く穴が開いた(ここでもグローブは無事だったけどその下の皮膚をやられた。布って強い)。
ただでさえ右手の小指ちゃんがうまく曲がらないのにここで薬指くんにもダメージ入るの痛い。

振り返って氷河を眺める。滝みたいで面白い。

本来の氷河の取りつき(ローテンボーデンからくる場合は氷河の終わり)はここからもう少し先にあるんだけど、帰りはここに先人の切ったステップがついていたので私はここからピッケル刺し刺し氷河に上がった。
ここからは青白青のペンキ、あるいは青〇のペンキを目印に進む。

ローテンボーデンからモンテローザ小屋に来る場合はそこまで迷うようなところはないと思う。
道がわかりにくいな、と思ったのは2か所くらい。
但し帰りは道迷いをしてしまい、個人的にモンテローザ小屋→ローテンボーデンは結構道を見失いやすいように思った。
モンテローザ小屋まではほんのもう少しに見える。。。
湖の上、写真上の中央辺りに宇宙船が見える。

こう見るとめちゃくちゃ近いんだけど、ここからが遠かった。。。。
私はここでばてまくり、結局後の電車で来たであろう人達2組くらいに抜かされた。。。

進んでも進んでも岩場だし。。。

ちょっと足もと悪いところもあるし。。。

何より暑い。。。

モンテローザ小屋は近いようで遠い。。。(この尾根超えたら小屋があるんじゃないかな)というのを10回くらい思った(つまり10回くらい尾根を越えて岩場をトラバースした)。
渡渉箇所も大きいところは1か所だったけど、ちょこまかと流れを横切る所があった。
危険な所はそんなにないと思う。
ちょっとつるつるで怖いなと思うようなところにはこうやって金属ステップつけてくれているし。

しかしあまりにも暑くて氷河終わりからの岩場のトラバース路が長くて、最後の方は無になりながら歩いた。

最後の方は写真を撮る気力もなくし、何とかひねり出した気力でこれを撮ったときもたぶん虚無の気持ちだった。

最後干からびたみみずみたいになりながらようやく、モンテローザ小屋到着。

正確な時間は図ってないけど、たぶん6時間はかかったんじゃないかなと思う。