谷川岳と一ノ倉岳の間で10分くらい休憩してから再び出発した。
ヘリのホバリングの音はまだ聞こえているのにどこか現実感がない。
すぐ近くに大けがしている人がいるかもしれないのに私の頭の中は、「一の倉岳までの登り返ししんどい」と「紅葉がきれい」でいっぱいだった。
山にいると自分と景色のことで頭がいっぱいになって、それ以外の事に対する感覚がとても鈍くなるような気がする。
これはひいひい言いながら一ノ倉岳に続く斜面を登り切って(と思ったけどまだ先はあった)谷川岳を振り返ったところ。

谷川岳から一ノ倉までのここが一番きつかった気がする。。。疲れもあるだろうけど。

噂のかまぼこ型の避難小屋を初めてみた。
一ノ倉避難小屋。

小屋というよりほんとカプセル。
高さも私の胸くらいまでしかない。
すぐ傍に「遭難碑」があった。
そして山頂。


この一ノ倉岳の山頂についていろんなレコで「とても山頂と思えない」「しょぼい」「何もない」とさんざんに言われててちょっと可哀そうになった。
ええやん、標識立ててくれてるだけでも。。。
ここまでかなり登り返しがつらかったし、この先茂倉岳までの道、最後うっすら登り返しがあるような気がしてちょっとげんなりするも、ここからの稜線は最高of最高だった。
正面にこれ。

そして左手(たぶん)にこれで

右手にこれ。

振り返ってもこれ(右端にちいちゃく谷川岳)。

うーん最高だ。。。

最後の登り返しは疲れた身にはちょっと応えたけど、茂倉岳、15分位で到着。

頂上には私と後からすごいスピードで追いついてきた女の人の2人だけ。
この人は、天気があまりにも良かったのでこっちまで来てしまった、と言っていたけど、すごい体力だわ。。。
今からあそこまで降りていくのだ、と女の人に教えてもらって気が遠くなる。

馬蹄形縦走もいつかしてみたい。。。

馬蹄形縦走に思いを馳せながら、茂倉岳避難小屋方面に向かって降りる。


避難小屋前で腰を下ろしてまた少し休憩した。
15時24分の水上行の電車まではぎりぎりだ。
しかし私は焦らない。
時間に追われる山歩きはちょっと嫌になったもので。。。今日のコンセプトは「楽しむ」なので。
越後湯沢まで4000円くらいでタクシーで行ける、ということを事前に調べたので、今日は土樽の駅から「HEY、タクシー!」とやるつもり。
その方が土樽から水上、水上で乗り換えて高崎、高崎から乗り換えて新幹線で、、、とやるよりも早い(越後湯沢までタクシー、そして新幹線、のたった1回の乗り換えで済む)。
大人は金で時間と体力を買うのさ、と心の中で嘯きながらおやつのパンを食する。
こんなことしてるからお金が溜まらないんだろうな、知ってる。
茂倉避難小屋でトイレを済ませてチェーンスパイクは外してゆったり出立。
あの一番先が「矢場の頭」かなぁ。

茂倉新道は結構な悪路でぬかるんで滑って転びそうになったりとか、一歩足つるんと滑らしたらそのまま斜面にさよならしそうな崩落しかけた細い道とかかなり神経を使った。
が、足元ばかり見ていてふっと顔をあげたときに、近づいてきた矢場の頭近辺がなんだかすごいことになっててどきっとした。

・・・なんか紅葉が衝撃的にきれいなのですが。
私の下手な写真では全然伝えられないけど、実物はこれの3倍色鮮やか。


両側ももちろん美しい。


なんか・・・すごいところに来てしまった。

矢場の頭で休憩していた若者2人に「めっちゃきれいですねー」と思わず話しかけてしまった。
この日、前後して土樽まで降りたのは、私と先ほどの女の人とこの若者2人組だけ。
(レコを見ると他にもいた様子)。
この景色をほぼ独り占め。最高だ。
少し矢場の頭で休憩した後は、天にも昇る心地で茂倉新道を降りる。
しかしこの茂倉新道、道中はそれこそ天国のように美しいんだけど、


想像以上の悪路、という。

この上の道、左側はすっぱり切れ落ちている。
木の根をまたぐときにちょっと躓いたりつるっと滑ったりしたらそのまま左にサヨナラである。
こっちもそう。
ピンクリボンがついているのでこの木の根っこが登山道なんだろうけど、根っこの下、土があるように見えるけれどもそれは目の錯覚で何にもない。

そう、文字通り何にもない。
木の根っこからつるんといったり根が折れたりしたらそのまま垂直落下だろう。
何十mかはわからないけど。
後もう途中で写真撮るのもつかれてしまったんだけど、泥っぽい湿ってぬかるんだ急斜面が至るところにあって、何度も滑ってこけそうになった。
これ、下るのもやだけど登るのも嫌だ。。。
相当な悪路。
雨が降らない時期が続いたらまた違うのだろうか。
しかしなだらかな斜面の金色に明るいブナ林もあったりして、本当にきれいだった。
下山後、駐車場から見える紅葉も御覧の通りの美しさで、思わず、昔見た風の谷のナウシカのセリフ、「その者、青き衣纏いて金色の野に降り立つべし」を呟きそうになった。
今日は黒き衣だけど。

この時点で14時50分。
走れば水上行の電車に間に合ったかもしれないけど、今日はリッチにタクると決めてるので急がない。
道中、「安全登山の広場」を撮ったり、道のわきに沸いてる湧き水で靴やゲイターを洗ったりしてのんびり土樽駅に向かう。

工事車両以外は全く通らず人家もない道をてくてく歩き、土樽駅の10分くらい手前でタクシー会社に電話をする。
事前に確認した通り、20分程で着く、とのこと。
土樽駅に到着して身支度を終えた頃にタイミングよく来たタクシーに乗って、越後湯沢着。
新幹線の中では爆睡してしまったので、やはり電車で何度も乗り換えるより私はこっちのほうが楽だ。。
山行時間合計10時間。
レコをみると谷川岳から一ノ倉岳、休憩時間を差し引いても1時間かかっているので、如何にばてばてだったかがわかる。


電車を待ちながら画像フォルダを眺めて1人でにやにやしてしまった。
茂倉新道、もう一度行くかというと気軽にうんとは言えないくらいの悪路ではあったけど、でもあの茂倉岳からの紅葉は本当に本当に素晴らしかった。
この日は全行程素晴らしい景色と紅葉を眺められたけど、やっぱり最後のあの茂倉岳からの尾根を下り極彩色の矢場の頭に近づいていく時の感動と興奮は忘れられない。
とてもすてきな道と季節を見つけてしまった。
谷川連峰と天気の神様、ほんとに有難うございます。