松本でバスターミナル目の前のホテルに前泊して、7時50分発の始発のバスに乗った。
平日だけど明らかに中の湯で降りるんだな、と思われる格好の4名(含む自分)が乗車。
本日の予報は曇り時々雪。でも翌日土曜日は素晴らしい晴天が約束されている。

絶対明日は最高の景色が見られるに違いない、とわくわくしながら中の湯着。
沢渡から乗ってきた1人併せて、計5名全員がここで降りた。
バス停の前がすんごいきれいだった。

天気予報見て思っていたよりも天気が良い。

バス停から釜トンネルまでは少し歩く。


色々写真を撮ったりトイレ(トンネル前の売店裏に仮設が設置してある)に行って身支度していたりするうちにあっという間に1人になってしまって、しまった、と思った。
忘れてたけど、今日の私にとっての核心部ここだった。
釜トンネル。

真っ暗でヘッデン必須という釜トンネル。
東京都チキンハート選手権で優勝できる自信があるくらいチキンっぷりに定評ある自分にとって、ここをどう乗り越えるかが初日の問題だったのに。。。
…やってしまった。他の4人がいる間にこそこそ後をつけて出発すべきだった。
…しかしもうどうしようもない。
行くしかない。
大丈夫大丈夫。
と思ってとりあえずヘッデンのスイッチをオンにし、頭の中身をオフにして出発した。
もう「無」。とりあえず「無」。
心頭滅却すれば火もまた涼し。
数十mも行くと辺りはヘッデンのランプのほんのりした光以外は一寸先は闇状態になった。
とりあえず「無」。
意外とこれは行けるかもしれない。。。と思い始めて数分後、真っ暗な進路方向で、赤い光が点滅しているのが見えてきた。
いつもの私だったらきっと口から心臓が飛び出ていた。
でもこの時は「無」なので普通に歩けた。
まぁ宇宙猫みたいな顔になってたかもしれないけど。
近づいてわかったけど、どうやら、天井についている赤い非常灯(帰りにわかったけど信号機)が一定の間隔で点滅している。
もう映画だったら完璧に「出る」5秒前の奴。
エイリアン/ホラー映画で、いきなり謎に電源が落ちて、確認しに行ったら真っ暗な中で赤い非常灯が点滅している。。。よくありそうなシーン。
この辺りで「無」がいっそう深まって今なら悟りも開けそうな気がした。
宇宙猫状態のまま非常灯ゾーンを通過したら再び真っ暗闇ゾーンに突入した。
自分の足音しか聞こえない真っ暗闇を「無」のまま歩き続けること…どれくらいたっただろう。
中間地点に電気が煌々とついている場所があって、そこからは、ぽつぽつとだけど灯がついていて一気に気が抜けた。
自分の携帯の画像フォルダをみると、さっきの入り口の写真の次がこの写真↓。

960m近く「無」だったんだと思う。
出口が見えた時ちょっとテンションあがった。

日の光万歳。
ここからが2つ目のトンネル。

この日だけなのか、いつもなのか、このトンネルは等間隔で電気がついていたのでヘッデンは不要だった。
他のレコでもこっちの2つ目のトンネルはヘッデン不要と書いているのが多い気がするので、これが通常運転なのかもしれない。
ライト最高だな。。。と思いつつ上高地の端っこ着。

確かに曇りだけど予報対比で天気は良い気がする。

砂防事務所へ折れる場所は目印の看板が埋もれていたらどうしようと思ったけど、すぐにわかってほっとした。

トレースもきちんとあるし、

なんならテントもあって吃驚した。

中の人はいない様子。
登っているのかな、と思ったけど、結局このテントの主に会うことはなく、私が下山したときには撤収されていたので、前日に霞沢岳に登ってこの日は上高地散策とかだったのかもしれない。
西尾根の取りつきはフィックスロープか鉄塔が目印、というのを事前に調べていたけど、目印を探す必要は全くないくらいしっかりトレースがついてた。

トレースの先、木立の間に、目印の一つである「鉄塔」がみえるのを確認。
もう一つの目印である「フィックスロープ」は結局どこなのかわからなかった。

これが目印の鉄塔。
フィックスロープよりこれを目指して登っていったほうがわかりやすい気はする。

うっすら白い山が見えてテンション上げながら登山スタート。

古いトレースでしっかり道が出来ていて、その上に新しいトレースがついている。

風が強い所は消えているところもあるけど、でもとりあえず尾根沿いに登っていけばよい、と読んだから、迷うようなことはなさそうだ。

一応、yamapで先人の軌跡もダウンロードさせて頂いているので安心感はある。

思ったより天気がよくて、嬉しくてわくわくしながら登っていた。

最初は大変歩きやすい。

たまに深い落とし穴があるけど。

景色も大変良いので、ぜえはあしつつもテンションはあがる一方。

誰ともすれ違わず、誰にも抜かされなかった。
自分でも不思議なんだけど、前に茶臼岳ー朝日岳に行った時はその山域で最後の1人になることが怖かったような気もするんだけど、この日は全然怖くなかった。
1人だとか1人じゃないとかそんなことすら考えず、ひたすら楽しく幸せに登っていた。
この岩は、参照したレコでは左巻き、と見たけど、この日はトレースが右についてて、私も右に巻いた。

こういう岩が何か所出てきたけど、最初以外は全部左に巻いたような気がする。。。でも過去のレコは全部左だったりするし、きっと雪の付き方によっても違ってくるんだろう。
私なんかは、(こっちにトレースついているからこっちかな)と登っているけど、最初に判断してトレースを付ける人はほんとすごいと思う。
…それにしてもめっちゃ天気良いじゃん。なんだこれ。

ここもテントを張れそうと思ったけど、まだまだ時間もあるので先に行くことにする。

景色最高だし。


この日はテント張るだけだなので、スーパースローペースで登った。それでもぜえはあとしていたけど。
結構な急登で、ストックで登ったけど、部分的には手をついて登るような所もあった。
それはまぁいいとして、辟易したのは、登るにつれて結構狭い木立の間をすり抜けたり倒木の下を這いつくばって抜けたりするような場所が出てきて、そのたびにテン泊重装備のザックが引っかかること。
危ないと思うところはテント場までは特になかったけど、こういう荷物の引っかかりに地味に体力を削られた。
*3/8日追記*
7日、ここを下山中に1800m地点で滑落して亡くなった方がいたそうなので、「危ないと思う所は特になかった」というのは、私が危険に気づいていなかっただけの可能性がある。
下調べではテントを張れそうな箇所は1900mから2100mの間に点在する、と読んでいたけど、私がこの日選んだのは1920地点。

ザックが置いてある辺り。

ザックを置いて少し上まで登ってみたけど、結構な急登っぽかったので、1920m地点を今日のお宿とすることにして設営を開始する。
幸い以前にも誰かが設営したようだ。

ここで、プチトラブルが発生。

ピッケル兼ショベルをショベルとして使うために刃の部分を取っ手に換装しようとしたんだけど、凍ってしまったのか、外れない。
この黒い部分を指で押すと、刀の目釘の役割をしている銀色の所が外れて刃が抜ける仕組みになっているんだけど、うんともすんとも言わなかった。。。
仕方ないので、刃の部分にオーバーグローブを巻き付けて作業したけど、ウェアを破かないかひやひやした。
ちなみに、アレな話で申し訳ないけど、整地しようと少し掘ったらトイレの痕跡が出てきてげんなりした。
速攻埋め立て直してさらに雪かぶせて踏み固めまくった上に、グラウンドシートはできるだけ離れたところに敷いた。
自分の記憶も抹消した。

…エマージェンシーだったのかもしれないけど、せめてもうちょっと離れた所で。。。いや、まぁもういいんですけど。
とりあえず、
これから霞沢岳西尾根の1920m地点にテントを張る方、トイレの痕跡があってもそれは私ではありませんのでご了承下さい。
ということは自分の名誉のために(みみちいけど)主張しておく。
グラウンドシートの上にテント本体を置いた所。

samayaのテント、フランスっぽいなぁと思ったのは、仕舞い方。
samayaのテントは、よく山雑誌で紹介されているような、「端と端を合わせて、あごを使って半分に折って、更に端と端を…∞」みたいな丁寧な畳み方をしない。
samayaの「テント設営チュートリアル動画」をみると、仕舞うときは、まるで親の仇のようにがしがしと端から雑にテントを収納袋に突っ込んで行き、ぎゅうぎゅうに押し固めてはい終了(つまりシュラフみたいな収納の仕方)。
…それでこそおフランス。ザ・適当王国。
その代わり取り出すと↑みたいな可哀想な見た目になるけど。
ペグは、一応割りばしも持ってきていたけど、付属のプラスチックのペグを使ってみた。
おもちゃみたい。

一応刺さるけど、この日予報では風は割と強かったので念のためガイラインは1か所だけ、木に巻き付けた上でペグを打った。

samayaのテント、いいな、と思ったのは両側に収納の網がついているところ。

天井にもついていて、これは便利。

ダイニーマのいい所は軽い所の他に光が通る所かも、と少し思った。
フロアだけじゃなくて側面も下の方はダイニーマなので日中はテント内は明るい。

テントを設営完了。

今見返して気づいたけど、天井部分の短いポールを通すの忘れてるな、私。
でも別に不自由はなかった。

時間がありあまっていたので、紅茶を飲んだ後は、風避けのブロックを積み上げようとショベルで壁作成にいそしむ。
崩れまくる新雪と格闘していたら、上から人1人が降りてきて吃驚した。人が登ってるかも、ということを完璧に忘れていた。
下の青いテントの方ですか、と聞いたら違い、日帰りで登って降りてきたとのこと。すごすぎる。
朝は吹雪で雪も深いし景色見えないし修行かと思った、7時間もかかった、と苦笑されていた。
それでも頂上まで行ったのがほんとすごいと思うし、おかげ様でトレースがあったから私はここまでたどり着けた。
ほんと有難うございます。
明日は絶対天気がいいからモルゲンが見られるように5時くらいに出発すると良いよ、とアドバイスをもらい、わくわくが高まった。
もうどう考えたって最高の天気だし、今日はこれから人なんてきっと登ってこないだろうから、明日5時に出発すれば一番乗りで山頂に行けるかもしれない。素晴らしい景色を独り占めできるかもしれない。
この日、嬉しかったのは、最初の遠見尾根でのテン泊の時と違い、1人であることが全く怖くなかったこと。暗くなっても全然普通に外を散歩できた。
最初のテン泊の時はどきどきしながらヘッデンを抱きしめて眠ったのに、この日は邪魔だったので天井の網棚に置いて寝袋に入ったくらい何にも思わなかった。
朝、宇宙猫状態で釜トンネルを歩いたのが嘘のようだ。。。あれは何だったんだ。。
雪から水を作って6時くらいにご飯を食べて、携帯で妹に写真を送ったり(docomoは電波が入った)、明日の天気をチェックしたりしてから、就寝。
寝る前に見た空は一面天の川かと思うような満天の星空だった。
天気予報も最高だ。

明日は頂上から最高の景色が眺められるに違いない…と期待しながら寝袋に入る。
…その後一睡もできないなんて、想像すらしなかった。