この日は朝6時半に、ちのステーションホテルから美濃戸口までタクシーをお願いしていた。
予約したときに「6時半に茅野ステーションホテルから美濃戸口まで」と言ったら、電話口でタクシー会社さんがちょっと沈黙して「つかぬ事をお伺いしますが。。。お一人ですか?」と言うので、他に同じ時間に同じ目的地まで予約したパーティがいるのかな、と思った。
予想は当たっていたようで、美濃戸口に着いたらちょうどタクシーを降りた二人組のパーティと出会った。
どちらまで、と訊かれて天望荘ですと言うと、同じですね、と返ってきた。
さすが八が岳。ド平日にも人がいるんだな。
と思いながら7時に出発。
美濃戸までの車道は封鎖されていた。途中でスタックする車が多いんだろうか。
足もとはチェーンスパイク。
確かに去年の同じ時期に比べると雪が少ない気がする。
時間はあるけど、回り道が面倒くさくて何度かショートカットを通った。
えっちらおっちら登っていて、ふと顔をあげたら、鹿のご遺体があって、チキンハートが口から飛び出かける。
今シーズンにもう一度ここを通ることがあっても、ショートカット使うのはもうやめよう。。。
まだ8時だけど暗い。
美濃戸山荘の前で小休憩してから出発。
今回は南沢を選択。
南沢を下りに使ったことはあるけど、登りは初めてな気がする。
私にとっては結構急な所もあって、写真を撮りつつゆっくり登る。
ド平日だけど、この辺りで行者小屋から下ってきたパーティと一組すれ違う。さすが八が岳。
南沢は北沢に比べて登りがきつい気がするけど、この最後の開けた沢?みたいなところから見る景色は最高だと思う。
一応予定していたよりは少し早く行者小屋着。
テントが数張りある。
行者小屋の辺りは無風で日差しも温かいので、ここでかなりの休憩をとった。
ここで、美濃戸口で会ったお二人と一緒になったので少し話す。
一人が地蔵尾根を登ったことないので、今日は地蔵尾根から赤岳天望荘に向かうという。
「地蔵尾根を登ったことはない」というものの、これまでガイドさんと一緒に赤岳は主稜や南峰リッジなど色々登ったとのこと。
話を聞いていると、八が岳以外にも、前穂北尾根(う、頭が。。。)や槍の北鎌など、主にバリエーションを登られているとのことだった。
すごいな。
30分程休憩してから、また後程、と一人文三郎に向かう。
ここからは、装備を換装して足元はアイゼン。ストックを1つしまってピッケルを出し、マムートのハードシェルとヘルメットはすぐ出せるようにザックの上に括り付ける。
阿弥陀岳の北稜?の方から、コールが聞こえてきて、登ってる人がいるんだな、とわかる。
樹林帯に落ちてたブラックサンダー。この後もう一つ落ちてた。
下ってきた人達に「ブラックサンダー落とされませんでした?」という謎の声掛けをしながら登る。
めっちゃきれいだ。。。
既に息切れしまくってへろんへろんだけど。
階段の手前でヘルメットを装着し、ジャケットを着る。
この階段の雪の付き具合みると、やっぱり、今年は雪が少ないのかな、と思う。
初めての雪山講習で赤岳に登った3年前の写真と見比べると階段の露出具合がすごい。
大好きな横岳方面も、雪の付き具合が少ない気がする。
北アルプス?南アルプス?全然わからん。。。ちょっと勉強しよう。。。
雪が少ないと思いきや、ここら辺の岩は真っ白で、3年前より雪がついているようにみえる。
最高の景色を眺めつつ休憩がてらお湯を飲み、残っていたストックも仕舞った。
ヒヨコ脚力を補うものがなくなったことにより、鈍牛並みのスピードに落ちる。
この辺りから風を浴びるようになり、風に巻き上げられた雪煙が本当にきれいだったんだけど、私のゴミみたいな写真の腕では撮れるはずもなく。。。
初めての雪山講習の時も、ここから見上げる青空をバックにした雪煙がめちゃめちゃきれいだった。
ひいひい言いながらガイドさんにロープでつながれついていくのに必死で、とても写真を撮る余裕なんてなかったけど。
今日は一人だし、休みがてら写真を撮りまくり、同じような写真を50枚くらい量産した。
しかし肝心の雪煙、全然撮れず。。。
違うこうじゃない。
もう諦めて動画を撮ることにする。あんまりうまくいっていないけど。。。
世の中の写真家の方々への尊敬の念を新たにしつつ登る。
この辺りでブラックサンダーの落とし主に追いついて無事、手渡すことが出来た。
初めての雪山講習のときに怖いと思ったところ。
今日は高速道路並みの道がついてた。
天気最高。
中央少し左、先行する人達の姿が見える。平日だというのにさすが八が岳。
怖くはないけどもうへろへろのへろ。
ここのはしごが露出しているのを見ると、やっぱり雪少ないのかな、と思う。
3年前ははしごが全部埋まっていた気がするし、2年前ももう少し埋まってた気がする。。。
ひいひい言いながらも、赤岳山頂着。
やっぱり天気が良いときの文三郎尾根、好きだなぁ。。。
時間はめちゃめちゃ余裕があったので、しばらく休憩する。

休憩してたら、長野側(真教寺尾根の方角)からヘリの音が近づいてきて、しばらくして真教寺尾根と県界尾根の間で止まってホバリングし始めた。
捜索か救助かな、と思っていたらしばらくして天望荘の方に飛んでいき、また戻ってしばらく辺りを飛んだ後に見えなくなった。
捜索なら早く見つかるといいな、と思いつつ、気合を入れなおして天望荘まで向かうことにする。
一見怖い所はないように見える赤岳頂上から天望荘の間だけど、時々人が落ちたというニュースを聞く。
ガイドさんは、落ちて即死ということはあんまりないけど、救助が来る間に凍死することが多い、と言っていた。
時間もあるし、ゆっくりゆっくり向かう。
さよなら赤岳。
天望荘まで降りてきて、入る前に明日行く横岳方面を眺めた。
幸か不幸か、これでもか、というくらいの明確なトレースがついているのが見えて、ちょっとがっかりした。
2年前のリベンジとして、まっさらなところを自分で進んでみたかった。
これが躓いた2年前の時の写真。こう見ると今年の方が雪多いようにも見える。。。よくわからない。
ちょっと残念な気もしつつ、天望荘に入ろうとしてアイゼン外していたら、ハーネスにギアをじゃらじゃらつけた、赤と黄色のド派手なジャケットのお兄さんが出てきて吃驚しつつ挨拶した。後からもう一人同じおそろいのジャケットを着た人が出てきて、山岳会でも泊まっているんだろうか、と思って天望荘の中に入ったら、同じ赤と黄色のジャケットの人が10人以上いて、あ、これは山岳救助隊か、と理解した。
山梨側で対応云々、と話しているのが聞こえつつ、チェックイン。
コロナ対応がさらにパワーアップして、使い捨てのシーツ、襟カバー、枕カバーが支給されていた。
この布団のボタン、山小屋の人がつけてくれたんだろうなぁ。。。
ほんと、有難うございます。感謝しかない。
お汁粉を飲もうと思って食堂に行ったら、救助隊の人たちが三々五々出ていっているところだった。
朝に見かけたお二人も食堂から引き揚げようとしてて、「談話室で飲んでるのでよかったらどうぞ」と言って頂く。
山では飲まないことにしているけど、まだ14時だし、3人だけの宿泊客っぽいし、まぁちょっとくらいなら大丈夫か、と思ってグラスワインとポテチを買ってお二人に合流する。
2人ともとても社交的で、行った山の話やガイド山行の話やギアの話を聞けて、楽しいお酒だった。
前も書いたけど、いつかのA氏みたいにべったりずっと一緒、というのは発狂しそうになるけど、山小屋で色んな人と話すのは好きだ。楽しい。
お2人は元々別の共通の趣味のお知り合いで、山はほぼいつも2人で登られているとのこと。
自分は一人がすきだけど、そうやって何度も一緒に行こうと思える程ペースや気の合う相手がいるのは素敵なことだなと思う。
夕食の後も談話室で3人で少し飲んでから、消灯前に就寝。
結構風の音が強くなってきた気がして、昼に見た救助隊の事を思い出した。
お二人が聞いたところでは、ヘリも救助隊も滑落したご遺体を回収するために来たとのこと。
ご遺体は目視できているけど、ヘリでも地上からも近づくのが難しかった、ということだった。
救助隊が引き上げたということは回収できた、ということなのだろうか。
すぐそばで自分が楽しく一日を過ごし温かい布団の中にいることが申し訳ないような、でも現実感がないような気がしながら眠った。