4日目、うとうとして朝4時頃起床。
部屋は半分くらい人がいなくなっていた。
前日同じように撤退してきたロドリゴのベッドは空だったので、どうやらもう一度頂上に挑戦しにいったらしい。
やる気と元気がすごい。
自分はもう、全然頂上に再チャレンジしたいという気持ちを持てなかった。
前日一緒にお昼を食べている時に「テートルース小屋からここまでの岩場が思っていたより怖かった」という話をしたらロドリゴが心配して、
「下山のタイミングがあえば一緒にロープをつなぐよ」
「有難う。でも一人で大丈夫」
「ほんとに?ロープつなぐよ」
というやり取りを3回くらいしたので、ロドリゴがいなかったのは正直ちょっとほっとした。
ロドリゴは来る途中にもアイゼン履くのが初めてという他のソロの登山者に出会い心配してロープをつないだ、と言っていたくらいほんとに優しい気のいい兄ちゃんで、私のことも心配してくれたんだと思うんだけど、私は一人で降りたい。
この後のマルゲリータ小屋への山旅の時にもちょっと思ったんだけど、私は一人が好きだし一人で行くからには例え事故って死んでも一人で完結したい。
でも体力も技術もない私のようなぴよぴよのチキンがそんなことを思っても結果的にそれが他の登山者や救助・捜索の人達に迷惑かけることになるかもしれないし、この考えが正しいのかはよくわからない。
ロドリゴ、3度目の正直で頂上踏めるといいな、と思いながら支度。
この日も指定の朝食時間には微妙に合わない時間の出発だったんだけど、前日夜受付でそれを言ったら「picnic用意できるよ」と言われたので、この朝は朝食には行かず購入したpicnic(軽食)をたべた。
たしか12ユーロとか20ユーロとかそんな感じだったと思う。
軽食の内容はこんな感じ。だいぶ充実。
食事を終えて玄関で出発準備をしていたら、同じく1人で出発準備している若者から「一人?」と聞かれた。
「一人だよ。あなたも?」と聞くと「僕ガイドなんだけど、クライアントが昨日高山病でヘリ下山しちゃったんだよね。だから一人」という回答が返ってきた。
前日お昼を食べてトイレで歯を磨いていた時にヘリの音がするなと思ったら一瞬グーテ小屋の横に着地してまたすぐ飛び立っていって、この時間に荷揚げするんだな、と思っていたけどあれは高山病の人を下山させるヘリだったのか。
高山病だけは幾ら準備しようが体質もあるだろうしどうしようもない事態だと思うので自分が発症しないかはほんとに怖かった。
頂上には行けなかったけど幸いヘリを呼ばなきゃいけないような事にもならずここまで無事でいられたことに感謝しながら出発。
一番気が重かった岩場が始まる。
帰りは、前日怖いなと思った尾根は全部巻いた。これは巻いたところを振り返って撮った所。
微妙に足跡がついていたりしたので巻く人もいるんだとは思う。
ただ、結構ざれざれで気を付けないと落石を引き起こしそうな所ばかりでめちゃめちゃ神経を使った。
巻き道をそろそろと下っていたら尾根から逸れてこっちに来ようとする登りパーティがいたので一応「こっちは正しい道じゃないですよ」と声をかけたんだけど、「君が下ってきてるってことは正しい道だよね」と返されてしまった。
いえ、チキンなので巻いてるだけです。
ほんとはこういう尾根をずっと上り下りするのが正しい。
落石を引き起こすと下手すると前々日の私みたいに下にいる人に石が飛んでいく事態になりかねないので、下りも登りと同じくらい神経使った。
しばらく下ってグランク―ロワールが見えてきた時はほっとした。
2日ぶりのグランク―ロワール。下りは楽。
テートルース小屋をスルーしてそのまま下る。
前日夕食のテーブルが一緒になったガイドパーティはテートルース小屋の横から伸びてる雪斜面を下るつもりだ、その方が早いよ、と言っていたけどたぶんここの事かなぁと思う。
ただ私はチキンなので下調べしていない急斜面を一人で行く勇気はない。おとなしく来た道を戻った。
テートルース小屋からは何もつけていない人が多かったけど私はちょっとでも怖いなと思ったところはチェンスパを使った。
ただチェンスパは荷物が増えるだけであんまり持ってきても意味ないかも、とは思った。アイゼンがあれば良いように思う。
来る途中はヘロヘロ過ぎて周りを見る余裕があんまりなかったので下りは景色を満喫しながら下った。
ここも横に滑ったらちょっと怖いなと思ったけど、落ちても10mくらいだし大きな問題は起きなさそうな所なのでここはそのまま通過。
ここは尻セードしている人が多かったので私も尻セードでおりた。
尻セード後、ちょっと一息入れようかなと軽食のナッツを食べていたら、向こうからアイベックスが近づいてくるのが見えた。
めっちゃ近くまでやってきて私を認識して立ち止まったアイベックス。
蹄をかんかん、とやられたんだけど、後から考えればあれは(俺の進路を塞いでんじゃねえぞこのゴリラ)という威嚇だった気がする。
気づかずすみません。
ニーデーグル小屋で大休憩した後、帰りは線路沿いに帰ることにした。
行きに通った下の道とはまた違う展望の良さでこっちの道も素晴らしい。
モンラシャの駅は改装中なのか、石垣だけ詰んであった。
モンラシャ駅(跡地?予定地?)で休憩後、そのまま線路を下る。
ベルビューにある標識。
「ニーデーグル:2時間35分」とある標識の方に行くと私が行きに使った道を辿ることになる。
モンブランに行く人は線路沿いをそのまま上がっている人が殆どのように思った。
前半涼しい道を行って最後一気に高度を上げるか、かんかん照りの中日よけのない道をゆるゆると登っていくか、の二択。
ベルビューからケーブルカーとバスを乗り継いでシャモニーに帰着しポワンイザベルにチェックインしてモンブラン山旅終了。
結局ヘタレ過ぎて頂上には及ばなかったけど、色々良い経験になった旅だった。
岩場がほんとに苦手というか下手くそなんだな、というのを再確認できたし。
体力も、結構この旅に向けて準備したつもりなんだけど及ばなかったな、というのも反省点だった。
モンブランが周辺含めてMontblanc massif(モンブラン山塊)と呼ばれるのを身をもって実感した気もする。
Yamapの記録で見るとそれほど長い距離を歩いてはいないんだけど、ベルビューから登り始めたせいか、歩いても歩いても遠いな、という印象を持った。
グーテ小屋からコースタイム5時間、と聞くとそんなに遠くは感じないんだけど、3日目は高度のせいなのかエネルギー不足なのか寒さへの恐怖か、登っても登っても同じ景色が続くようで登り続けたいという気持ちが保てなかった。
もうちょっと準備していれば(小屋に朝食の代わりに軽食を頼んだり自分のウェアを出発前にきちんと見直したり)もう少し進めたのかな、という後悔はある。
後悔も含めて結構満足してしまったので、もう一度挑戦したいかと問われれば今の時点では正直Noかなと思う。
ただ、もし気が変わって来年また挑戦する機会があるのであれば、今度はもっと準備をして臨みたい。